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バンコク(タイ)
腐れ縁
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さて、翌朝。。
朝食に中田さんを誘います。
中田さんと言う人の偉いところは、あまり根に持たないことです(笑)。
中田さんの部屋をノックすると、すぐ出てきました。
「おはようございます。中田さん。昨日はどうもすみませんでした。いまから朝飯食いに行くんですけど、一緒にどうです?お詫びにおごりますよ」
「あートミーさん。。。そんな気を使わなくてもいいのに。。。」
近くの安ホテルのレストランで、アメリカンブレックファーストをみっつ注文します。
トースト2枚にバターとジャム。これにフライドエッグとベーコン。
パイナップルジュースとコーヒーが付いてくる。
我々にとっては、まあ豪華な部類にはいる朝食です。
「・・・・そうだったんですか。。プラーとの件はそんなにモメたんすか。申し訳ないです。上手く話をつけたつもりだったのに・・スミマセン」
中田さんが侘びをいれますが、私の気はすっかり晴れておりますので、もう責める気は毛頭ありません。
「いや、もう済みましたからいいですよ。ただ、中田さんのほうはもう少しプラーと話し合わなきゃいけないかもしれませんね」
中田さんは器用にフライドエッグを真四角にカットしてトーストに乗せます。それにかぶりつき、満足そうな顔をして・・
「大丈夫。そっちはまかせてください。これ以上迷惑はかけませんから・・・ところでトミーさんたちは、これからどうするんですか?」
と聞きます。
「そうですねえ。。日本に帰る前にもう少しタイを旅してみたいなあ・・なあ、タカ。海と山と、どっちに行きたい?」
「うーーん。。」と少し考えて・・
「山・・・ですかね。師匠とビーチリゾートってのも、あまり似合わないし」
・・・ま、そりゃそうかも。。
「と、いうわけで中田さん。僕らは、北タイに行ってきます。できればラオスかビルマまで・・・ああ、そうだ。ついでにチェンマイに送った荷物がどうなったかもチェックしておきますよ」
「そうですか。それは助かります。いつからですか?」
「早速今晩の列車ででも」
「ああ、急ですねえ。。。」
中田さんは本当に寂しそうな顔です。彼はバンコクでは顔が広いし在住日本人とも付き合いがありますが、ある程度気を許せる、五分の付き合いをしているのは私くらいなのでしょう。
「また、バンコクに戻ってきますか?」
「ええ、日本に帰る前には立ち寄ります」
「じゃあ、気をつけて行ってきて下さい。良い旅を」
「ありがとう。中田さんも元気で」
部屋に戻って、簡単に荷造りをして・・・もともと荷物少ないですが。。
「なあ、師匠」
「ん?何?」
荷造りを済ませたタカは、ベットに座り込んでいます。
「中田さんて、結局プラーの件は悪気なかったんですかねえ?」
私もタカの隣に座って、少し考えてから
「どうかな?あるいは、こうなることはある程度予測していたのかもね。中田さんはもしかしたら、僕が本当にムチャクチャ強いと信じているのかもなあ。。僕らが行けば少々のヤバいことでも何とかなると思ったんじゃない?」
「それ、やっぱりひどくないですか?だって、一歩間違えたら命だってヤバかったじゃないですか。それを予測していて、自分はバックレるなんて・・やっぱり師匠、あの人とは早く手を切るべきですよ」
また、タカにたしなめられていますが・・・
「なあ、タカ。人間の付き合いってのは、そう簡単に割り切れるもんじゃなくてね。腐れ縁てやつかもしれないなあ・・・」
タカは不服そうな顔です。
私は話を続けました。
「中田さんて、まるで一流大学を卒業して、商社勤めをしたあと独立したかのような雰囲気あるだろ?服装はいつでも身奇麗にしているし。物腰や態度も丁寧だし・・・でもね、本当はあの人・・家庭に事情があって、17くらいで家出してから、日本では本当に裏通りを歩いてきたんだ。僕らのような甘っちょろい人生じゃなくて、地獄も一杯見てきてるんだよ。そういうことは滅多に人に言わないし、態度にも出さない人なんだ。僕と中田さんはカンボジアで一緒に死線をくぐるような経験をしてね・・・その後、バンコクに戻ったとき、ふと彼の過去の話を打ち明けてくれたんだ。まるで懺悔するかのようにね。彼はバンコクの底辺の人とも本当に仲がいいだろ?女性を口説くときにも美醜をまったく問わない。トップモデルでも安食堂の小汚いウエイトレスでも、まったく同じテンションで口説くんだ。ある意味あの人くらい、人を差別しない人は珍しいよ。・・・そういう人格がどうやって養われたかと言うと、彼は日本の底辺を知っているんだ。普通に日本に暮らしていたら、生涯知ることも無いような世界だよ。そんな泥沼に首まで使って何年も暮らしていたんだ。彼は普通そんなことは言わない。語らない。でも僕には話してくれたんだ。だから彼とは付き合える・・・付き合うに足る人物だと思っている・・・まあ、上手く言えないけど、そういう事だ・・」
「ふ~ん。。。」タカは少し考え込んでいます。
「まあ、ほら、人間の縁というのはいわく言いがたいもので、不思議なものじゃない。タカとの縁だってそうだろ?今時、こんな師弟関係って珍しいじゃない?別に意図してこうなるもんじゃないんだ。な?」
タカは納得したのかしないのか・・・
「うん。まあ、いいでしょう。縁という事で。オレはやっぱ、中田さんとは早く手を切るべきだと思いますけど、腐れ縁じゃしょうがない。。。それにしても師匠。師匠は女性との良縁はないんですかねえ?」
・・・タカよ。おまえ、なんでそうツッコミが鋭くなったんだ??
朝食に中田さんを誘います。
中田さんと言う人の偉いところは、あまり根に持たないことです(笑)。
中田さんの部屋をノックすると、すぐ出てきました。
「おはようございます。中田さん。昨日はどうもすみませんでした。いまから朝飯食いに行くんですけど、一緒にどうです?お詫びにおごりますよ」
「あートミーさん。。。そんな気を使わなくてもいいのに。。。」
近くの安ホテルのレストランで、アメリカンブレックファーストをみっつ注文します。
トースト2枚にバターとジャム。これにフライドエッグとベーコン。
パイナップルジュースとコーヒーが付いてくる。
我々にとっては、まあ豪華な部類にはいる朝食です。
「・・・・そうだったんですか。。プラーとの件はそんなにモメたんすか。申し訳ないです。上手く話をつけたつもりだったのに・・スミマセン」
中田さんが侘びをいれますが、私の気はすっかり晴れておりますので、もう責める気は毛頭ありません。
「いや、もう済みましたからいいですよ。ただ、中田さんのほうはもう少しプラーと話し合わなきゃいけないかもしれませんね」
中田さんは器用にフライドエッグを真四角にカットしてトーストに乗せます。それにかぶりつき、満足そうな顔をして・・
「大丈夫。そっちはまかせてください。これ以上迷惑はかけませんから・・・ところでトミーさんたちは、これからどうするんですか?」
と聞きます。
「そうですねえ。。日本に帰る前にもう少しタイを旅してみたいなあ・・なあ、タカ。海と山と、どっちに行きたい?」
「うーーん。。」と少し考えて・・
「山・・・ですかね。師匠とビーチリゾートってのも、あまり似合わないし」
・・・ま、そりゃそうかも。。
「と、いうわけで中田さん。僕らは、北タイに行ってきます。できればラオスかビルマまで・・・ああ、そうだ。ついでにチェンマイに送った荷物がどうなったかもチェックしておきますよ」
「そうですか。それは助かります。いつからですか?」
「早速今晩の列車ででも」
「ああ、急ですねえ。。。」
中田さんは本当に寂しそうな顔です。彼はバンコクでは顔が広いし在住日本人とも付き合いがありますが、ある程度気を許せる、五分の付き合いをしているのは私くらいなのでしょう。
「また、バンコクに戻ってきますか?」
「ええ、日本に帰る前には立ち寄ります」
「じゃあ、気をつけて行ってきて下さい。良い旅を」
「ありがとう。中田さんも元気で」
部屋に戻って、簡単に荷造りをして・・・もともと荷物少ないですが。。
「なあ、師匠」
「ん?何?」
荷造りを済ませたタカは、ベットに座り込んでいます。
「中田さんて、結局プラーの件は悪気なかったんですかねえ?」
私もタカの隣に座って、少し考えてから
「どうかな?あるいは、こうなることはある程度予測していたのかもね。中田さんはもしかしたら、僕が本当にムチャクチャ強いと信じているのかもなあ。。僕らが行けば少々のヤバいことでも何とかなると思ったんじゃない?」
「それ、やっぱりひどくないですか?だって、一歩間違えたら命だってヤバかったじゃないですか。それを予測していて、自分はバックレるなんて・・やっぱり師匠、あの人とは早く手を切るべきですよ」
また、タカにたしなめられていますが・・・
「なあ、タカ。人間の付き合いってのは、そう簡単に割り切れるもんじゃなくてね。腐れ縁てやつかもしれないなあ・・・」
タカは不服そうな顔です。
私は話を続けました。
「中田さんて、まるで一流大学を卒業して、商社勤めをしたあと独立したかのような雰囲気あるだろ?服装はいつでも身奇麗にしているし。物腰や態度も丁寧だし・・・でもね、本当はあの人・・家庭に事情があって、17くらいで家出してから、日本では本当に裏通りを歩いてきたんだ。僕らのような甘っちょろい人生じゃなくて、地獄も一杯見てきてるんだよ。そういうことは滅多に人に言わないし、態度にも出さない人なんだ。僕と中田さんはカンボジアで一緒に死線をくぐるような経験をしてね・・・その後、バンコクに戻ったとき、ふと彼の過去の話を打ち明けてくれたんだ。まるで懺悔するかのようにね。彼はバンコクの底辺の人とも本当に仲がいいだろ?女性を口説くときにも美醜をまったく問わない。トップモデルでも安食堂の小汚いウエイトレスでも、まったく同じテンションで口説くんだ。ある意味あの人くらい、人を差別しない人は珍しいよ。・・・そういう人格がどうやって養われたかと言うと、彼は日本の底辺を知っているんだ。普通に日本に暮らしていたら、生涯知ることも無いような世界だよ。そんな泥沼に首まで使って何年も暮らしていたんだ。彼は普通そんなことは言わない。語らない。でも僕には話してくれたんだ。だから彼とは付き合える・・・付き合うに足る人物だと思っている・・・まあ、上手く言えないけど、そういう事だ・・」
「ふ~ん。。。」タカは少し考え込んでいます。
「まあ、ほら、人間の縁というのはいわく言いがたいもので、不思議なものじゃない。タカとの縁だってそうだろ?今時、こんな師弟関係って珍しいじゃない?別に意図してこうなるもんじゃないんだ。な?」
タカは納得したのかしないのか・・・
「うん。まあ、いいでしょう。縁という事で。オレはやっぱ、中田さんとは早く手を切るべきだと思いますけど、腐れ縁じゃしょうがない。。。それにしても師匠。師匠は女性との良縁はないんですかねえ?」
・・・タカよ。おまえ、なんでそうツッコミが鋭くなったんだ??
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