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カテリーナ編②最初の幹部
残りの幹部
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昼の太陽が暖かく差し込み、リヴィエールの広場にはテーブルが並べられ、見渡すだけでとんでもなく豪華な面々が揃っていた。
アスフォルデの魔女たち。
野蛮な魔女たち。
元審問官の仲間たち。
そして、アナスタシア、ファルネーゼ、ヒシリエ。
いつもなら考えられないような組み合わせだが、健司の周囲では、それが“不思議と馴染んでしまう”から怖い。
今日の昼食は、ミリィとクロエが腕を振るい、アウレリアとリセルがよそっていくという、もはや豪華ホテル並みの連携だった。
しかし、そのテーブルに並ぶ料理とは裏腹に、顔に影を落とす者たちがいた。
野蛮な魔女たち――ブラッドレインを筆頭に、マリエ、シミラ、メルガ、スルネ。
健司は気づき、ブラッドレインに声をかけた。
「どうしたの?ブラッドレインさん。」
ブラッドレインは少し躊躇したが、隠す必要もないと思ったのか、静かに答えた。
「……残りの幹部についてだ。」
「残りの?」
健司が聞き返すと、シミラが補足した。
「セイラ様に従う幹部は私たち以外にまだ3人いる。その3人が……何を考えているか、何を使うのか、全く読めないの。」
ブラッドレインが続けて口を開く。
「魔法は、一切わからない。見たことがない。」
健司は目を丸くした。
「分からない?」
「ああ。ただ通り名だけはある。」
スルネが指を一本ずつ折りながら言った。
「名声のアカレイ。
ネクロのモソロイ。
真実のフミッセ。」
健司はしばらく考えた後、
「通り名があるってことは……魔女ランキングに乗ってる人?」
ブラッドレインが肩をすくめた。
「たぶん、な。フミッセの“真実”なんて、怖くて想像したくもない。」
「モソロイに至っては、老婆の姿は仮の姿かもしれない。」
メルガが小さく言った。
アナスタシアは眉をひそめ、
「私でも情報がないわ。妙ね……」
と言ったほどだ。
そんな空気の中、健司は小さく息を吸い、そして当たり前のように言った。
「そうか。ということはセイラが来るんだね。」
その瞬間――
野蛮な魔女たちは一斉に目を見開いた。
「わかっているのか?」
ブラッドレインが驚いて言う。
「分かっているよ。」
健司は迷いのない声で続けた。
「だけど……通じ合える。」
その言葉に、昼の静寂が広場に落ちた。
“あのセイラと通じ合える”
そんな言葉、普通はただの妄言だ。
だが、それを健司が言うなら――と、誰も完全に否定できなかった。
スルネがふっと笑った。
「そうだね。アウレリアがここにいるのがいい証拠だよ。」
アウレリアはスルネを睨むように横目を向け、
「ちょっと、それどういう意味?」
と聞き返した。
するとスルネはさらりと言った。
「だってあなた……あの頃は“人の心を壊すのが趣味”みたいな魔女だったじゃない。」
アウレリアはぎくっと固まった。
健司は興味深そうに聞いた。
「アウレリア?そんなにすごいの?」
メルガが即答した。
「すごいどころじゃない。幻惑魔法はえげつない。現実と夢の境界を曖昧にするくせに、1%だけ本物を混ぜてくる。本物だと感じた時点でアウトだ。」
シミラが頷きながら言った。
「“心を折るための魔法”としては最高峰だよ。アウレリアに狙われたら、精神が壊れる前提で覚悟するしかない。」
健司は素直に、
「すごいね、アウレリア!」
と目を輝かせた。
アウレリアは耳を赤くしながら、そっぽを向いた。
「……たいしたことないよ。あなたがそのまま破ったからね、健司。」
その瞬間、場にいたみんなの視線が健司に向いた。
アナスタシアが頬杖をつき、
「健司、あなた……アウレリアの幻惑を正面から破ってたわよね。あれ、普通の魔女は無理よ?」
と言えば、
リズリィがため息交じりに、
「むしろ、あなたがあれを破ったから、審問官の中に動揺が走ったのよ。特にラグナ様。」
と続ける。
ラグナは腕を組み、健司を見て言った。
「お前……ただの人間じゃないな。」
健司は笑った。
「よく言われる。」
みんなが軽く笑ったが、その笑いの奥には、不安と緊張が残ったままだった。
野蛮な魔女たちはふいに静かになった。
スルネが小さな声で言う。
「……でも、残りの幹部は、私たちみたいにはいかないよ。健司の声が届くかどうか。」
その言葉に、カテリーナが大きな声で返した。
「届くわよ。健司だもの。」
アウレリアが微笑みながら言う。
「そうね。“アスフォルデの環”を落としてみせた男だものね。」
シミラは少し泣きそうな表情で、
「健司って……人の心を溶かすよね。私も、もう敵対なんて考えられない。」
と呟いた。
ブラッドレイン、マリエ、メルガも静かに頷いた。
健司は恥ずかしそうに頭を掻いた。
「ありがとう。でもみんなが変わったのは、僕じゃなくて……みんな自身の力だよ。」
その言葉に、スルネはふっと笑った。
「やっぱり……あなたは敵に回したら一番厄介なタイプだね。」
マリエも肩を揺らして笑った。
「そうね。あんたを憎むのは無理。」
だけど――
その笑いの後ろには、全員が薄々感じていた“最悪の気配”があった。
残り3人の幹部。
そして、その奥にいるセイラ。
彼女たちがここを訪れれば、必ず戦いは起きる。
そして……その戦いは、必ず“誰かの命”を奪う。
だからこそ、この食卓はとても静かで、とても優しくて、とても儚かった。
今日の昼食が、
平和な時間としてはしばらく最後になるかもしれないと、
誰もが気づいていたからだ。
そしてその中心には、健司がいた。
彼の存在だけが、絶望を拒み、未来をまだ信じようとしていた。
その光のような笑顔に――
野蛮な魔女たち全員が、わずかに救われていた。
アスフォルデの魔女たち。
野蛮な魔女たち。
元審問官の仲間たち。
そして、アナスタシア、ファルネーゼ、ヒシリエ。
いつもなら考えられないような組み合わせだが、健司の周囲では、それが“不思議と馴染んでしまう”から怖い。
今日の昼食は、ミリィとクロエが腕を振るい、アウレリアとリセルがよそっていくという、もはや豪華ホテル並みの連携だった。
しかし、そのテーブルに並ぶ料理とは裏腹に、顔に影を落とす者たちがいた。
野蛮な魔女たち――ブラッドレインを筆頭に、マリエ、シミラ、メルガ、スルネ。
健司は気づき、ブラッドレインに声をかけた。
「どうしたの?ブラッドレインさん。」
ブラッドレインは少し躊躇したが、隠す必要もないと思ったのか、静かに答えた。
「……残りの幹部についてだ。」
「残りの?」
健司が聞き返すと、シミラが補足した。
「セイラ様に従う幹部は私たち以外にまだ3人いる。その3人が……何を考えているか、何を使うのか、全く読めないの。」
ブラッドレインが続けて口を開く。
「魔法は、一切わからない。見たことがない。」
健司は目を丸くした。
「分からない?」
「ああ。ただ通り名だけはある。」
スルネが指を一本ずつ折りながら言った。
「名声のアカレイ。
ネクロのモソロイ。
真実のフミッセ。」
健司はしばらく考えた後、
「通り名があるってことは……魔女ランキングに乗ってる人?」
ブラッドレインが肩をすくめた。
「たぶん、な。フミッセの“真実”なんて、怖くて想像したくもない。」
「モソロイに至っては、老婆の姿は仮の姿かもしれない。」
メルガが小さく言った。
アナスタシアは眉をひそめ、
「私でも情報がないわ。妙ね……」
と言ったほどだ。
そんな空気の中、健司は小さく息を吸い、そして当たり前のように言った。
「そうか。ということはセイラが来るんだね。」
その瞬間――
野蛮な魔女たちは一斉に目を見開いた。
「わかっているのか?」
ブラッドレインが驚いて言う。
「分かっているよ。」
健司は迷いのない声で続けた。
「だけど……通じ合える。」
その言葉に、昼の静寂が広場に落ちた。
“あのセイラと通じ合える”
そんな言葉、普通はただの妄言だ。
だが、それを健司が言うなら――と、誰も完全に否定できなかった。
スルネがふっと笑った。
「そうだね。アウレリアがここにいるのがいい証拠だよ。」
アウレリアはスルネを睨むように横目を向け、
「ちょっと、それどういう意味?」
と聞き返した。
するとスルネはさらりと言った。
「だってあなた……あの頃は“人の心を壊すのが趣味”みたいな魔女だったじゃない。」
アウレリアはぎくっと固まった。
健司は興味深そうに聞いた。
「アウレリア?そんなにすごいの?」
メルガが即答した。
「すごいどころじゃない。幻惑魔法はえげつない。現実と夢の境界を曖昧にするくせに、1%だけ本物を混ぜてくる。本物だと感じた時点でアウトだ。」
シミラが頷きながら言った。
「“心を折るための魔法”としては最高峰だよ。アウレリアに狙われたら、精神が壊れる前提で覚悟するしかない。」
健司は素直に、
「すごいね、アウレリア!」
と目を輝かせた。
アウレリアは耳を赤くしながら、そっぽを向いた。
「……たいしたことないよ。あなたがそのまま破ったからね、健司。」
その瞬間、場にいたみんなの視線が健司に向いた。
アナスタシアが頬杖をつき、
「健司、あなた……アウレリアの幻惑を正面から破ってたわよね。あれ、普通の魔女は無理よ?」
と言えば、
リズリィがため息交じりに、
「むしろ、あなたがあれを破ったから、審問官の中に動揺が走ったのよ。特にラグナ様。」
と続ける。
ラグナは腕を組み、健司を見て言った。
「お前……ただの人間じゃないな。」
健司は笑った。
「よく言われる。」
みんなが軽く笑ったが、その笑いの奥には、不安と緊張が残ったままだった。
野蛮な魔女たちはふいに静かになった。
スルネが小さな声で言う。
「……でも、残りの幹部は、私たちみたいにはいかないよ。健司の声が届くかどうか。」
その言葉に、カテリーナが大きな声で返した。
「届くわよ。健司だもの。」
アウレリアが微笑みながら言う。
「そうね。“アスフォルデの環”を落としてみせた男だものね。」
シミラは少し泣きそうな表情で、
「健司って……人の心を溶かすよね。私も、もう敵対なんて考えられない。」
と呟いた。
ブラッドレイン、マリエ、メルガも静かに頷いた。
健司は恥ずかしそうに頭を掻いた。
「ありがとう。でもみんなが変わったのは、僕じゃなくて……みんな自身の力だよ。」
その言葉に、スルネはふっと笑った。
「やっぱり……あなたは敵に回したら一番厄介なタイプだね。」
マリエも肩を揺らして笑った。
「そうね。あんたを憎むのは無理。」
だけど――
その笑いの後ろには、全員が薄々感じていた“最悪の気配”があった。
残り3人の幹部。
そして、その奥にいるセイラ。
彼女たちがここを訪れれば、必ず戦いは起きる。
そして……その戦いは、必ず“誰かの命”を奪う。
だからこそ、この食卓はとても静かで、とても優しくて、とても儚かった。
今日の昼食が、
平和な時間としてはしばらく最後になるかもしれないと、
誰もが気づいていたからだ。
そしてその中心には、健司がいた。
彼の存在だけが、絶望を拒み、未来をまだ信じようとしていた。
その光のような笑顔に――
野蛮な魔女たち全員が、わずかに救われていた。
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