9 / 88
2
4
しおりを挟む(やっとこの時間が来たぜええええええ!!!)
なんだか最近面倒な出来事が多すぎてこの時間が何よりの楽しみになっている。
そう、魔法学の時間です!
いやあ長かった。
二日に一回とか言わずに毎日あったら良いのに魔法学。
むしろ毎日毎時間でも良い。
一日中魔法の勉強をしていたい。
あ、嘘、竜に乗る練習もしたいからその時間も欲しい。
愛用の魔法具をピカピカに磨いて授業の始まりを待つ。
今日は先述の通り、以前の結界魔法の続きを行う。
前回は自分への結界だったが、今回も同じ。
少し違うのは、二人一組になって片方が攻撃、もう片方は結界でその攻撃を防ぐ練習という点だ。
体育で良くある『二人一組になってー』というやつである。
今までの俺は最後まで誰にも声をかけられず、かといって自分から動くこともせず一人残されていたが、今は違う。
すぐにデレクの元へと近付き声をかけた。
「デレク、良い?」
「王子は良いのか?」
「組むと面倒だから良い」
「面倒ってお前」
ダリアの視線は痛い程感じているが、取り巻き達に捕まっているのでこちらには来れない様子。
取り巻き達の中にはあのベアトリス嬢もいる。
ダリアの前だとあんなに可愛い顔になるんだな。
恋する乙女だねえ、可愛いねえ。
「二人一組になったかな?じゃあ始めようか」
授業が始まる。
最初はごくごく軽い攻撃魔法からだ。
「剣では叶わないけど魔法では負けないぜ」
「強気だな」
剣術の授業の時と同じくニヤリと笑い合う。
「じゃあ最初に俺から」
「よーし来い!」
デレクが手で魔法陣の印を結び、俺の方へと手の平を向ける。
手の平が白く光り、赤く変化して炎になり、こちらへと勢い良く向かってきた。
「そーれ!」
別に呪文も何もないので適当に掛け声をかけて目の前に結界を張る。
昔アニメで見た盾のような結界。
形もデザインもこだわらなくて良いんだけど、ついつい前世での血が騒いでしまう。
魔力もそうだが、想像力でも色々と魔法の形が変わるので楽しい。
それはそうと、このくらいの炎ならこれで十分防げるはずだ。
デレクが出した炎は結界に弾かれすぐに消えた。
「ちっ、難なく弾いてくれるよなあ」
「そっちこそ全然本気出してないくせに」
「まあな。次行くぜ」
「いつでもオッケー!」
少しずつ大きくなっていく炎にこちらも結界を少しずつ大きく、そして硬くしていく。
周りも同じように片方が攻撃して片方が結界で防いで、と各々練習を重ねていると。
「……随分楽しそうだな」
「……いつの間に」
練習中にいつの間にやってきたのかすぐ後ろにダリアがいた。
ダリアの練習相手は取り巻きの一人。
デレクには劣るが剣術ではいつも優秀な成績の奴。
ちらりとこちらに視線を寄越してすぐに反らされた。
「エル、何故俺と組まなかったんだ」
「何故でしょうねえ」
「俺がお前を守りたかったのに」
「この授業だとガンガン攻撃しないといけませんけど」
「そ、そうだったな。いやしかし、それでもお前と……」
「嫌です。王子絶対手加減しますよね」
「王子と呼ぶなと言っているだろう。手加減は……しないと誓う」
「どうだか」
攻防しながらこそこそと話しかけてくるダリアの相手を適当にする。
しまった、ベアトリスに言われて態度は改めようと思っていたのに全然出来ていない。
ダリアの手には俺と同じくペンの形の魔法具が握られている。
こちらも細かい細工がされているが玉の色は濃い緑。
早い話が俺と色違いだ。
婚約が決まったと同時に揃いでプレゼントされたものである。
紅い色はダリアの瞳の色、そして濃い緑は俺の瞳の色。
なんというか、むず痒い。
婚約破棄したいと考えていたにも関わらずこの魔法具を使い続けているのかこいつ。
とっくにどこかへとなくしてしまい、新しいものに変えていてもおかしくないのに。
それは俺にも言える事だが、手に馴染んだ魔法具を今更手放すのは惜しい。
妙な所に思いを馳せていると。
「きゃっ」
小さな悲鳴。
声のした方に目を向けると、そこにはベアトリスがいた。
結界がうまく張れずに攻撃の魔法で弾かれてしまったようだ。
尻餅はつかなかったが、後ろに大きく下がっている。
相手の魔力が強いのか、それとも結界の魔法が苦手なのか。
意外な弱点だなあと思っていたら、事件が起こった。
「うわ!?」
ベアトリスとペアを組んでいた奴の声。
焦ったような声にもう一度そちらを見ると、彼女が放った攻撃の魔法……雷のようなものを相手が弾いたのだが。
調整がうまくいかなかったのだろう、弾いて消えるはずの魔法が消えなかった。
雷は結界に弾かれまっすぐベアトリスの方へと勢いを増して向かっていた。
「っ、や……!」
結界を張ろうとしているが間に合わず、逃げようにも身体が動かない様子。
今にも雷がベアトリスを襲おうとしている。
「エル!?」
ダリアの焦った声が聞こえる。
けれど聞こえない。
何も考えていなかった。
先に身体が動いていた。
「危ない!」
「……ッ」
動けないベアトリスの身体を抱き込み、そこから勢いよく離れる。
勢い余りすぎてうっかり押し倒すようにして転んでしまったのは許して欲しい。
セクハラとか後で騒がないよな?な?
雷は近くの壁、さっきまでベアトリスが立っていた場所に当たり消えたが、それによって壊された破片が飛んでくる。
しかし、その破片も俺達には当たらなかった。
(結界?)
俺達を雷と破片、そして地面から守るように結界が張られている。
俺は助けるのに夢中で何もしていない。
では一体誰が……?
「全く、お前というやつは……!」
「……王子」
少し離れた所で魔法具を構えているダリア。
間違いない、ダリアが俺達に結界を張ったらしい。
「何故飛び出す!?怪我をしたいのか!?」
「っ、ご、ごめん」
すぐに駆け寄ってきてがっしりと両肩を掴まれ物凄い剣幕で起こるダリア。
思わず反射的にそう謝ってしまった。
そうか、ダリアのように結界魔法を飛ばせば良かったんだ。
何も考えず、何の手立てもなく飛び出していってしまった自分に反省する。
「俺が結界を張ったから良いものを……俺の寿命を縮めるな」
「!」
はああ、と大きく息を吐き出し俺の肩に額を預けるダリア。
かなり心配させてしまったらしい。
「……ごめん」
「無事なら良い。怪我はないな?」
「ないけど……あ!ベアトリスは?」
「……っ」
傍らに座したままのベアトリスに手を差し出す。
「ごめん、痛かったよな?思い切り倒しちゃったから」
「……」
「……ベアトリス?」
どうかしたのかと首を傾げる。
全く反応がない。
ぽかんとこちらを見上げて固まっている。
やっぱりどこか痛めたのか?
ていうか俺が手を差し出しても嫌われてるんだから取ってくれるはずがなかった。
やばいこれは確実にセクハラと言われるかもしれない。
セクハラ?
違うよな?セクハラじゃないよな?
手を差し伸べるくらいはセーフだよな?
その前の抱き込んで押し倒したのはアウトかもしれないが……
「ごめん、俺じゃ嫌だったよな。えっと……」
「ベアトリス!」
「大丈夫!?」
どうしようと手をわきわきさせていると、すぐに双子がやってきてベアトリスを助け起こしてくれた。
こちらも突然で動けていなかった様子。
「良かった、怪我ないみたいだな」
少し汚れてしまったけれど目立った傷は見当たらない。
良かった良かった。
女の子に怪我なんてさせられないからな。
まあ八割ダリアの結界のおかげだけど。
「ダリア、ありがとう」
改めて傍らに立つダリアにお礼を言う。
その瞬間、ダリアが僅かに息を呑んだ。
「……っ、お前……っ」
「?どうした?」
「それはずるい」
「え?え?」
口元を手で覆いながらそっぽ向きそう呟くダリア。
何だ?
って、やばいそういえばさっきから敬語忘れてた。
ダリアも普通に呼んじゃったしベアトリスも呼び捨てにしちゃったよ。
……緊急時の無礼講って事で許してくれないかな。
「すみません、不敬でしたね」
「は?いや……!」
「これからは気を付けます」
「だからそうではなく……!」
敬語などいらない。
名前を呼んでくれて嬉しい。
しかも何だその微笑みは。
そう言おうとしたらしいダリアの胸中など俺が知るはずもなく。
おまけに……
「エル、様……」
「……ベアトリス?」
「顔が真っ赤よ?」
その場に佇んでいたベアトリスが顔を真っ赤にして目を潤ませて胸の前で両手の指を組んでぽけーっと俺の名前を呟いていたなんて、これまた気付くはずもなく。
「デレクごめん、練習の続きしようぜ」
「ん?いや、え?あれは放置しとくのか?」
「あれって?」
「……いや、何でもない」
デレクが背後のダリアとベアトリス達と俺とを交互に見て首を傾げているが、もう問題はないだろう。
ベアトリスがセクハラで訴えるのならまた後で一悶着あるかもしれないが。
ともかく俺は早く練習を再開させたい。
ちなみにこの後先生がのんびりとやってきて「危ないから油断しないようにねー」と、のほほんと注意を促していた。
今更すぎるぞ先生。
そして危険だったにも関わらず全く動かなかったのもどうなんだ。
そこまで危なくなかったと言われればそれまでだが。
(さーて、残りの時間も楽しい魔法の練習ですよっと!)
どれもこれも喉元過ぎればなんとやら。
俺は再び魔法具を構え、授業の続きを楽しんだ。
end.
399
あなたにおすすめの小説
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした
Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち
その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話
:注意:
作者は素人です
傍観者視点の話
人(?)×人
安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)
時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~
なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。
一つは男であること。
そして、ある一定の未来を知っていること。
エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。
意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…?
魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。
なんと目覚めたのは断罪される2か月前!?
引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。
でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉
まぁどうせ出ていくからいっか!
北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる