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しおりを挟む「……さすが、いくら可愛くても隊長さん達は立派な男だったぜ……」
ふっ、と遠い目をする。
「………………と、とりあえず手当てしよう!な?!」
「そ、そうだな!保健室行こう保健室!」
隊長さん達の凄まじさを聞いた友人達が苦い笑みを浮かべながらそう促す。
するとそこへ。
「恵、いるか?」
「……げ」
邪魔な奴がやってきた。
俺のぼろぼろな姿を見て目を見開き、即座に駆け寄ってきたのは……
「恵?!なんだその格好?!誰にやられた?!まさか、誰かに襲……っ」
「うるせえ会長耳元で叫ぶな寄るなうるせえ」
そう、一番最初に正体のばれた会長である。
「うるさいって二回言ったな」
「うん、相当虫の居所悪いな」
正体がばれてから事ある毎に教室へとやってくる会長は既に友人達の間では馴染んでいて。
俺が暴言吐こうが会長が俺を口説こうがもう慣れっこで、扱いはそこそこ酷い。
「う、うるさい……?!」
「あーうるさいうるさいうるさい近寄んな。そもそもあんた達が『めぐむ』にちょっかい出さなきゃこんな事にはならなかったんだ」
机に突っ伏したまま恨みがましくぶつぶつと呟く。
「……なんだ?何かあったのか?殴られた事と関係あるのか?」
「……ふん」
優しく髪を梳く手を振り払い、顔を反対に向けて無視をする。
「あー、会長さん。恵は今傷心中だからちょっかい出すのやめといた方がいいよ」
「傷心中?」
「そうそう。ちょっとある人達と一悶着あってね」
「ある人達?誰だそれは?」
「それ言っちゃったら会長さんお仕置きしちゃうでしょー」
「それは恵が望んでないので教えられませーん」
「ああ?!」
「うわっ、怖っ、会長さん睨むなよー」
「恵が今理由言わないって事は会長さんには知られたくないって事なんだから、まあまあお引き取りくださいな」
「はい、撤収ー」
「あ?ちょっ、おい?!」
言いながらぐいぐいと友人達の手により会長はあえなく教室から追い出された。
*
それから数日。
「……」
「おおう、更に沈んでるぜ恵ちゃん……」
「日に日に屍に近付いていくな」
「机と一体化しそうだなあ」
ずずーん、と机に突っ伏したまま動かない俺に友人達ぼそぼそと話す。
あれからの隊長さん達といえば。
(……こないだは走って逃げられた)
ばったりと廊下で鉢合わせた瞬間、ギッと睨まれ回れ右をされた。
そして昨日。
(……あからさまに無視された……)
確実に俺の事は視界に入っているはずなのに。
しっかりと視線が合ったはずなのに。
隊長さん達は思い切り無視して行ってしまった。
「……はああ……」
まさか隊長さん達にああいう態度を取られるのがこんなに堪えるとは思ってもみなかった。
『めぐむくん!』
『良かった……!』
『もう会えないかと思った……!』
そう言われ、抱き着かれて泣かれたのは記憶に新しい。
(あん時の隊長さん達めっちゃ可愛かったなあ、もうマジで男でもイケるって思うくらい可愛かったなあ)
なのに、あんな敵意剥き出しの視線を送られるだなんて。
「あー……へこむ……」
何度思い出しても胸が痛い。
元はと言えば、自分のせいなんだけど。
想像以上にへこんでいる自分にびっくりだ。
このまま隊長さん達に冷たい目で見られて無視されて逃げられるくらいなら……
「…………学校辞めちまおうかな」
「「「!!!」」」
なんて。
出来るはずもない事をぼそりと呟く。
「……おい、本格的にへこんでるぞこいつ」
「何に対しても基本無頓着なのに……!」
「そんなに隊長さん達の事気に入ってたのか……!」
友人達がぴしりと固まり、そんな事を言って目配せしあっていたなんて、この時の俺には気付けるはずもなかった。
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