高塚くんと森くん

うりぼう

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女誑しの高塚くん

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「好きなんだ、オレと付き合って」

と言われたので

「え、嫌だ」

即答してしまった。









帰り道。
校門を出たあたりで声をかけてきたのは一年の時から同じクラスの男。
だが、お互い同じクラスだったなくらいの面識でそんなに親しくはない。
話した事はこの一年とちょっとで一度か片手で余るくらいではないだろうか。
というかタイプが全く違うのでわざわざ話す話題もない。

多少制服を着くずしたりはするものの髪を染めた事もなければピアスも開けた事もなく、可もなく不可なくなオレ。

それに対してコイツ、高塚は明るい茶色の少し長めの髪に緩いパーマなんてかけていて、両耳に大きめのリングのピアス。
頭は悪いが顔だけは良くて、自分から行かなくても女の子の方から声を掛けてもらえるような、その辺は全く不自由したことがなく恩恵にあやかり食い散らかしている、そんなタイプ。

高校二年になったにもかかわらず彼女を作るよりも男友達と騒いでいる方が断然楽しいオレからすると、高塚のいる世界は全く未知のものだった。

何故、と問いたくなるオレの気持ちをわかって欲しい。
繰り返すが、こいつは女たらしだ。
接点も何もない男のオレなんかに告白まがいの事をして一体何が楽しいのだろうか。

「何?なんかの罰ゲーム?」
「違うよ本気!」

なおタチが悪い。
本気って何だ。

そうであって欲しいという質問はあっさりきっぱり力いっぱい否定されてしまった。

「本当に森のこと好きなんだよ。ね、オレと付き合って?」
「や、だから嫌だって」
「なんで!?」

本日二回目のセリフにまたも即答すると、信じられないとばかりに驚かれた。
なんでと言われても。

「今彼女いないんでしょ?」

確かに今彼女はいない。
今というか、今までいた試しがない。
ない、のだが。

「つーか、オレ男とちちくり合う趣味ねえし」
「ち、わっ、やだなあもう森ってば大胆なんだから!」
「……は?」

今のセリフのどの変にオレが大胆だと言われる箇所がある。
キャー!とまるで女の子のように片手を頬に当て肩を小突かれた。

何なんだ。

「まあ確かに色々したいんだけどやっぱりお互いの同意っていうの?必要だと思うんだよね」

そりゃまあ無理矢理にコトを進めるよりはその方が良いだろう。

だがしかし。
もしやその色々したい、という対象がオレか。
オレとキスしたり抱き合ったりしたいのか。
勘弁してくれ。

「あー……女誑しの高塚くん」
「うん?」

否定しろよ。
何普通に返事してんだ。
皮肉だぞ今の。

名を呼んだ時に物凄く嬉しそうな笑顔を向けられて、一瞬見惚れてしまったオレの目はきっと腐ってるんだ脳が疲れてるんだきっとそうに違いない。

「オレがお前と同じ制服着てんの見えてるよな?」
「ちょ、おま、それヤバイって!」
「あ?」

ちょい、と指先でブレザーの襟を摘んで訊ね、返ってきたリアクションに首を傾げる。

「何もー首傾げちゃって!襲われたいの!?」
「は?ちょっ」

がしりと両腕を掴まれ。

「何す……っ!!!???」

ずい、と互いの鼻先が触れる距離まで顔が迫ってきて。
ゲ、と思った瞬間。
反射的に足が出た。

高塚のスネにスニーカーに包まれたオレの爪先が当たる。

「い……っ!?」

痛みに声を上げ怯む高塚だったが、腕を離してはくれなかった。
うっぜえこいつ。

「も、森ちゃん意外と足癖悪いのね……っ」
「お前が無意味に顔近付けっからだろうが!」
「無意味じゃないよ!ちゅーしようとしたの、に゛ッ!?」
「離れろ変態!!!」

ちゅー発言に再びスネを蹴り飛ばし罵ってやる。
危なかった。
危うく男なんかにファーストキスを奪われるところだった。

「何なんだよお前ちゅーとかザケんなよキモイ!!」
「酷いなあ、オレとちゅーしたがるコ多いんだよ?」
「だったらそいつらとやりゃ良いだろ!?とにかく、離離れろ!」

先程から、高塚がオレに声を掛けてきた辺りからそれはもう多数の好奇の視線にさらされている事に気付いていないのだろうかコイツは。
下校する生徒で賑わう校門前で校内一の色男が男に告白しているのだからそれも頷けるのだがいくらなんでもあからさまに見すぎじゃないのかこれは。

慣れていらっしゃるのか高塚は涼しい顔。
ぶん殴りてえ。
ああ、視線が痛い。

「離れてあげるから付き合って?」
「だから、嫌だって何回も言ってんだろ!」

もう嫌だ何だコイツ諦めろよ嫌だって言ってんじゃんバカじゃねえの。
そっちが放してくれないのならこちらから解いてやる、ともがくのに緩まない。
一見優男なくせにどんだけ力あるんだ。

「何で?オレのどこが嫌なの?」
「全部だ全部!」

その言い方が気にくわない。
最初っからそうなのだが、端から断られる事を全く考えていない物言いがムカつく。

「みんなは嫌なとこないって言うのにー」
「知るかそんなもん!誰だか知らねえ奴とオレを一緒にすんな!」
「!!!やきも……」
「違ぇぇぇッ!!!!」

嫌なところがないだなんてありえない事一体どこのどいつが、というかきっと高塚と関わりを持った人間全てなのだろうけれど。
オレが言いたかったのはその『みんな』とやらの意見をオレに押し付けるなという事であって決してヤキモチなんかではない。

「とにかく、オレはお前と付き合う気はこれっっっぽっちもない!わかったか!?」

このままだとこちらが良い返事をするまで続きそうな気がして、そう叫んで走り出した。
いくらなんでもここまではっきり言えば諦めるだろう。
元より本気だったと思いたくない気持ちの方が強かった。

だから背後で

「やっば……かわい……っ」

一連のオレの行動に高塚が顔の下半分を覆い悶えていた事など気付きたくもなかった。





end.



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