高塚くんと森くん

うりぼう

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番外編

高塚くんの誕生日

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「もーりーちゃんっ」
「……なんだその手」
「やだなあもう!わかってるくせにっ」

片方の頬に手を当て反対の指でツンと腕を押され、自分の目つきが一瞬にして冷めるのがわかった。









「……痛い」

目尻に涙を浮かべ、赤くなった頬を押さえて呟く高塚。
先程のセリフとしぐさに頭で考えるよりも先についつい拳が躍り出てしまったのだから仕方がない。

「ひどい、いたい」

さて、いつにも増して沈み方に気合いの入っているように見える高塚。
それがなぜかと言うと。

「酷い、せっかくの誕生日なのに……!」

そう、今日は高塚の誕生日らしい。
何日も何週間も前から周りばかりか本人がしつこくしつこくアピールしていたので、知ってはいた。
両手を出してのおねだりはプレゼントを欲していたのだろうが、オレがそんなものを用意するはずもなく。
結局お見舞いしたのは絶対零度の視線と容赦ないグーパンチのみ。

「酷いよあんな前からアピってたのにグーとか!や、でもそれでも森からのならなんだって嬉しいんだけどでもやっぱりプレゼントがグーってのは切ないっ切なすぎるうううッ!」

うわあああんっと泣き出す(泣き真似)高塚に溜め息。
切なすぎるも何も殴られてそれをプレゼントとして認識するバカがどこにいる。

「あれ、でもそしたらオレってば毎日森からプレゼント貰ってる事に!?」
「なんねえぞ」

いや、ここにいたか。
本当に大馬鹿だこの男。
石野の冷静なツッコミがなかったらまたついでとばかりに手が出てしまうところだった。

(つーか付き合いきれねえ)

常日頃そう思ってはいるのだが、今日程強く思った日は未だなかったかと思う。

「もーりーっプレゼント欲しい!」
「は?やだよ」

わかってはいたが、諦めが悪い。
駄々をこね始める高塚に間髪いれずに答える。

「なんでなんでなああんでえええ!?愛しのダーリンの誕生日なんだよ!?」
「お前がいつ何時何分にオレの愛しのダーリンになった」
「いいっ…たああああ!?」
「あ、わり」

ふざけた今度は足が出た。
さすがに誕生日だから自重しようかと思ったのにいつもの癖でやってしまった。
高塚はというと、スネに爪先が当たり痛みに悶えながらも要求は絶えない。

「ちょーだいちょーだいちょーだいちょーおーだーいいいい」
「うるせえええ!」
「お願いお願いっ、おめでとうって言ってくれるだけでも良いからぁぁぁっ」
「おめでとう」
「足りないぃぃぃぃッ!!!」
「なんなんだあああ!?」

言うだけで良いというから間髪入れずに言ったのに足りないって何だ足りないって。

「もーりぃぃ」
「……っ」

立ち上がったオレの腰回りに抱き付きうるうると捨てられた子犬のような目で見上げられ言葉に詰まる。
抱きつくなと、ふざけんなと言いたいのだが実は犬猫大好きなオレに、この目には抗えない。

やがて根負けしたのはこちらの方で。

「……っ、くそっ!しょうがねえなあ、じゃあ何が欲しいんだよ?」
「え!?」

あまりのしつこさに大きな大きな溜め息を吐きつつ九割方呆れながら問う。

瞬間、物凄い勢いで顔を上げきらきらした目で見つめられた。
さっきまでの涙目はどこへ消えた。

しかしまあ誕生日だっつーなら仕方ない。
我が儘の一つくらい聞いてやろうじゃないか。

「な、な、なんでも良いの!?」
「あんま金かかんなきゃな」

期待に満ちた目で訊ねる高塚に、そう答えた。

「いい!全然いいむしろお金なんてかかんないから!」
「………ちゅーとかぎゅーとかもなしだからな」
「えっ」
「なんだよ」
「え、え、じゃあベロチューも体まさぐんのも森の銜えるのも穴に突っ込むのもナシ!?」
「当たり前だろうがあああ!!!つーかさも普段やってます的に言ってんじゃねえよ変態ッ!」

やっぱりそっちの方かこのやろう。
釘を刺しておいて良かった。

他に考える事がないのかと、えろ事ばかり並べる高塚の頭に拳骨を振り下ろす。
小気味よい音が響いた。

「ま、またグー……」
「……悪い」

またまたやってしまった。
いや、でも今のはこいつが悪い。

「で、何が欲しいんだよ?」

再度訊ねる。

「本当は森が欲しいんだけど、でもちゅーもぎゅーもダメだから、うーん」

ぶつぶつと腕組みをして悩む高塚。
どうせならテスト前とか授業中にこんだけ真剣にしてくれれば良いのにと思ってしまった。

(つーか、オレからのプレゼントごときでマジになりすぎだし)

こいつの事だから他にもプレゼントを渡したいという奴はいっぱいいるだろうに。

あまりの真剣さに思わず口元が緩むのと同じくらいに、決めたらしい高塚が大きく声を上げた。

「よーし、決めた!」

たっぷり時間を掛けて悩んだ末に出した結論。

それは……









「し、幸せ……!」
「……」

帰り道。
いつもの通り、高塚が隣を歩き帰路につく。

上機嫌の高塚に対してオレは今すぐ穴があったら入りたいくらいの心境。
にやにやしまくる変態はいつもの事だが、今日はいつもと違うところがただ一つ。

「森と手繋いで歩けるなんて……!」

幸せいっぱい胸いっぱい。
まさにそんな表情を浮かべる高塚は今にも鼻歌を歌い出しそうである。

ねばりにねばって考えに考えて出した誕生日のプレゼント。

『森と手繋いで帰りたいな』

恥ずかしげもなくさらりと満面の笑みでもって告げられたセリフに絶句。
却下しようとしたところを例によってクラスメイトの面々に非難されはやし立てられ要求を飲まざるを得ない状況になってしまい、今に至る。

「……最悪だ、超恥ずい、ダッシュで帰りたい……」

泣きそうになりながら呟くが、高塚がそれを許すはずもなく。

道行く人が驚いた顔で二度見したり、にやにや笑いながら見たり、ドン引きしているのが俯いたままでも嫌という程手に取るようにわかる。
夜だったら良かったのに、人通りの少ない通りだったら良かったのに。
そうは思っても全ては後の祭り。
せめて罰ゲームだと勘違いして欲しいが、高塚の表情を見ればそうではないという事は一目瞭然。
最悪だ。
マジでほんとしにそうなくらい恥ずかしい。

「へへへっ、森ちゃん手ぇ温かいね」
「うっせえ黙れ!」

話しかけてくる高塚に、いつも以上に棘のある返事をするのも仕方がないというものだ。

ああ、マジ、早く家に着いてくれ。

そう切に望むオレに。

「森、森、今日は付き合ってくれるよな?」
「……………は?」
「いっぱい寄りたいとこあるんだよね。よろしく!」
「な……!?」

にーっこりと男前な笑みで告げる高塚。
直後、オレの叫び声が辺りに響き渡った。






end.



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