嘘告だと思ってOKしたのに、なぜか本気で甘やかされてる

あと

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昼前。待ち合わせ場所である噴水広場に差しかかったときのことだった。
藤崎は自販機の前でミネラルウォーターを買っていて、その横に二人組の大学生らしき女が立っていた。

「ねえ君、もしかして雑誌のモデルの藤崎千影じゃない?」
「LINE交換しない?」
「どこ行くの?私たちも一緒にどう?」

……ああ、やっぱりな。
顔面偏差値が規格外なんだから、そりゃ声もかけられるだろう。

俺は助けようと一歩踏み出しかけて――ふと立ち止まる。
――もしここで俺を放置してナンパに乗ったら?「結局嘘告だった」って証拠を突きつけられることになるんじゃないか?
そんな嫌な予感が頭をよぎり、喉が渇く。

だが次の瞬間。

藤崎がこちらに気づいた。

「――碧さん!」

呼ばれた名前に、俺は思わず足を止める。
ナンパ女たちなんて最初から存在しなかったかのように、藤崎は一直線に駆け寄ってきた。

「すみません、彼氏が来たので!」

そう言い放ち、俺の腕を当然のように掴む。
唐突に腕を組まれて、藤崎の体温が直に伝わってきた。指先まで熱が広がる。

「行きましょう!」

軽やかに言って、女たちを置き去りにしながら俺を引っ張っていった。

疑いと動揺で胸の鼓動が早まっていくのを、俺は必死にごまかしながら歩いた。

昼過ぎ。
藤崎が案内してくれたのは、街中にある人気のカフェだった。
大きな窓からやわらかな光が差し込み、白を基調とした清潔感ある空間。
テーブルには小さな花が飾られていて、どこを切り取っても“映え”る。

……正直、俺には縁のない場所だ。

「……なんでこのお店?」

思わず口にすると、藤崎は照れもせずに言った。

「碧さん、サークルでデザートばっかり爆食いしてたから。甘いもの好きなのかなって思って」

「……よく見てるな」

「そりゃ、好きなんで!」

言い切られて、俺は照れて目を逸らすしかなかった。

「ほら、碧さん。これ、美味しそうじゃないですか?」

メニューを覗き込む藤崎の距離が近い。息が頬にかかる。

「……あ、ああ」

結局、藤崎の薦めで苺タルトとカフェラテを注文した。
ラテアートのハート模様がやけに綺麗で、場違い感が一層増す。

すると当然のように、藤崎がタルトを切り分けてフォークを差し出してきた。

「はい、あーん」

「は!?いや、自分で食えるから!」

「いいから。……はい」

仕方なく口を開けると、甘酸っぱい苺と香ばしいタルト生地の味が広がった。
美味い。けど、それ以上に。目の前の笑顔が直視できない。

「似合ってます。甘いもの食べる碧さん、可愛い」

――やっぱ慣れてる。誰にでも言ってきたんだろ、こういうセリフ。
心臓が跳ねるのをごまかしながら、俺は思わずそっぽを向いた。

「碧さん、こっち向いてください」

「……ん?」

不意にスマホを向けられ、シャッター音。

「……はい、保存。俺の今日一の宝物です」

真っすぐな瞳でそう言われて、心臓が一気に跳ねる。
カフェラテの甘さより、こいつの言葉の方がずっと甘ったるい。

「……なあ、」

「はい、なんですか?」

「俺のどこが好きなんだ?」

俺はずっと疑問に思ってたことを聞く。

「全部です。と言いたいところですが、一番は優しいところですね。今だって、俺の考えたデートプランに嫌な顔ひとつもしない。しかも気遣い屋さん。こんな魅力的な人いません。」

えらく褒めるな。俺は照れて下を向く。

「そうやって、自分に自信ないところも、可愛いです。結婚したいです」

無表情だけどもどこか優しい顔でとんでもないことを言う。俺は恥ずかしくなって突っ伏した。

「大丈夫ですか?」

心配そうな声を出す。大丈夫じゃねぇよ。致命傷だ。
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