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失われし記憶探しの旅
Episode1
失われし記憶探しの旅(1)
Episode1
突如として自らの平和を遮断されたが居た。
自身の身体の崩壊が始まるも、
最後の時まで仲間を守り抜き花びらのようになった者が居た。
仲間と共に辛い過去や現在を乗り越え歩み続いた日々、何度もかけがえのない存在の死の反復。
そして闇に潜む数多な恐怖が、周りに気付かれぬ溶け込むように人々に付き纏っていた。
しかし今、その悲しき物語を終わらせるべく、一つの闇が最後の希望を握りしめる。
ー澄森ー
霞んでいる青空の昼。
澄森で、闇商人である【アル】と【イラ】は、馬荷車の後ろにある【例の商品】を乗せて馬荷車を走らせていた。
そんな時に、アルは馬荷車の後ろにある【商品】が大きく揺れた事に気づいた
闇商人・アル『…今…揺れなかったッスか?後ろにいるガキ…じゃなくて、商品!』
アルは後ろを向くと、
闇商人・イラ『恐らく例の【商品】が目が覚めたか…安心しろ、どっちにしろ逃げられん。
そんな事を心配するぐらいなら、今この場で魔物に出会さないかどうかを心配したらどうだ』
アル『そ、それもそうッスけど……ほんと何なんスかいつも偉そうに…』
イラ『なんだ?』
アル『何でもないっす…』
イラ『言いたい事があるなら、まず後ろの商品を傷付けないように移動しないとな。
出来るだけこの荷馬車をゆっくりと動かさないとな』
荷馬車の後には大きな袋。イラはそれを顎でしゃくってみせた
アル『…それにしても先輩…よく見つけましたね…こんな広い森の中で…』
イラ『こんな空気が澄んでいる森の中で生き物の匂いがすればすぐに分かる。
…お前みたいな素人にはまだ難しいか?』
それを聞いたアルは一瞬不機嫌な顔を出そうとするも、なんとか耐え抜く
アル『そうッスね…』
二人は黙って荷馬車を歩かせる。森の中はそよ風が吹いており、とても魔物がいるとは思えないぐらい新鮮な空気だった。
ふと、アルはこんなことを言い出した。
アル『先輩…気のせいかもしれないッスけど、居なかった気がするんス、少し前にもこの森を訪れた時に…』
後ろの例の【商品】に目を向けた
アル『商品…いや、ガキなんて…居なかった気がするんッス…』
アルは少し恐怖を感じながらも、イラに状況を伝えた
イラ『…確かに、少し前にもこの森を訪れた時はこんなガキは居なかった。
それどころか、人気すら…』
静かに後ろの商品…
すなわち、人間が入った袋に目線を向ける。
イラ『…もう摩訶不思議だらけの世の中だから、何が起こってもおかしくないと思えてきたさ』
闇商人2は少しため息をついてから…口を震えながら話した。
イラ『全く、この世は不思議…いや、意味わかんねぇことばっかだ。
…すべての元凶だった魔王…ヤツを倒せば平和が戻ると思っていたが…』
イラは少し間をおいてまた口を開いた
イラ『いや、一時的に平和にはなったか…あの事件が起こるまでは』
アル『魔王さえ倒せば…手下である魔物…魔族が居なくなって…平和になると思ってたのに…いや…魔族は確かに居なくはなったっスけど…魔物は相変わらず…』
イラ『仕方ない事だ。親玉が死ねば子も死ぬと言う考えを勝手に持ったのは俺らだ。魔王が死ねば魔族も滅ぶ…こんなのは仮定に過ぎない』
アル『…それもそうっスね…』
イラ『…だが…それだけじゃない。
様々な数の未解決事件がこの世に…』
そんな時だった。
二人の闇商人が話していると、澄森の木の枝の上で一人の女性が、気付かれないように例の『商品』を凝視していた
???『あの子が…』
例の『商品』を見つけた謎の女性は静かに
???『…久しぶりね』
と声を漏らす。その後ろの木の枝に佇む女性の気配に、闇商人の二人は気づくことは無かったが。
とてつもない不安に襲われた
アル&イラ『…!!』
二人の背筋が凍った。一瞬、一瞬だが、『何か』の気配が背後に現れた。それは人間とは別の、何かの気配
二人は急いで背後を見るも、その気配は消えていた。
あの【商品】と共に
アル『今のは…!?』
イラ『…あのガキが奪われてる…!?』
あり得ない、商品を奪った後に逃げた?いや…気づかれずにあんな速度で…?
闇商人2『……なにか人間じゃない別の存在が一瞬だけ…何者…だ?』
ー謎の隠れ家ー
一方その頃…謎の人物に助けられた例の【商品】は隠れ家で目を覚ます。
…っ!
身体…痛い、目の前が真っ暗だ…ここはどこ……
全身が痛くおもいっきり負荷がかかったような状態だったが、直ぐに部屋の暖かさによって身体が刺激され、身体の負荷が多少程解消する。
???『目…覚めたか?』
……え?
少年がゆっくりと目を開ける、目の前には女性が一人、その女性の顔はどこか冷たく、雪のような表情で少年に語りかけていた。
…ここは、何処ですか?
それを聞いた女性は不機嫌そうな表情で
???『何処だ…か、答える前にまずはお礼からだろう?私がお前を助けなかったら、身体をバラバラにされて売られる所だったぞ』
…ひ!?
ベッドから身体を起こし、思わず少年は後退る、目の前の女性に強い恐怖感を抱いていたが、直ぐにその心が溶けていき、次第に口をゆっくりと動かして
『あ、ありがとう…ございます……』
目の前の女性は無表情だが、心なしか少しその無表情が和らいだ気がした。しかし彼女は直ぐに無表情に戻り続けて氷のように言葉を放つ
???『それでいい。…名前はなんて言う?何処から来たか覚えているか?』
名前…?名前は…私の………………………
???『アイテル……場所……私が…………場所…………居た所……………』
名前は微かに思い出せるが、何処から来たのかは全く覚えてない、いや、分からないに近い状態だ。
アイテル『分かりません……何処から来たのか………何処で生まれたのかも……何があったのかも………どうして分からないのかも………全部………』
彼女はあたふたしているアイテルを見て確信するように言葉を放った
???『覚えていない…その反応…記憶喪失ってやつか…』
アイテルは困惑した表情で彼女の顔を見上げる
アイテル『きおく……そうしつ?』
彼女の顔を見るも、驚いた様子は無かった、まるで見慣れているかのようだ。
???『過去に大きな出来事で頭に大きな衝撃が入り、その衝撃によって、他にあった過去の出来事は全て脳の奥の方に深く眠ってしまう状態だ、
つまり、君の昔の記憶は深く眠っていて、君はその記憶を思い出せない状態だ』
彼女から淡々と話される言葉に頭が追いつかない、だが、概ね理解はつく。自分の記憶が今、消えていると言う事に
アイテル『じゃあ…つまり…今僕の記憶は…無いって事ですか?』
アイテルの言葉は、ただ知りたがっていた一人の少年の叫びでもあった。それは悪意に満ちていない潤っている瞳で彼女に問いかけた。
???『無い…と言うよりかは、眠っているに近いかもな、一般的にはそれは記憶が消えた、とも呼ばれている』
アイテル『そうで…すか……私の記憶は今消えてるんですね……』
アイテルは悲しそうな表情で地面を見つめる、その地面は湿っていて、アイテルの心を表しているかのようだった。
???『ベリル』
アイテル『え?』
女性に何かを言われた言葉にアイテルは顔を上げた、そこには無表情だった女性が、少し広角を上げて、暖かく、穏やかな笑顔で話しかけていた。
ベリル『私の名前だよ、ベリル、宜しくな』
彼女はそっと手を伸ばす、その手は雪のように白かった。
アイテル『は、はい…宜しくお願いします、ベリル……』
アイテルは彼女の手をそっと触れるように手を重ねた。彼女の手は雪のように冷たく、ひんやりしていたが、同時にほんのり温かかった。
ベリル『ん…それにしても、本当に良かった、アイテル…か。自分の名前を覚えていることが出来て』
その言葉を聞いたアイテルは【はっ!】とする。そして、新たな疑問が浮かび上がり、その疑問をすぐさまベリルに伝えた
アイテル『…名前…覚えてる…なんで……記憶は……消えてるはず………あ…言葉も……喋れる………どうして?』
ベリル『記憶が消えるって言うのは、今までの起こった【出来事】が脳の奥に眠っているだけで、経験した出来事は忘れてはいない。
だから言葉と言う存在は、完全にアイテルの【脳】ではなく、【身体】に染付くように覚えている、だから知識は抜け落ちていなかったり、言葉が話せたり出来るんだ』
彼女に説明され、今までの疑問が少しだけ解消されたような気がした。ただ、不満が全く消えたわけではない、これからどうしたらいいのかも分からない状態で生きていくことは到底難しいからだ。
ベリル『…だがな…君の脳はまだ完全に眠っている訳では無いようだ』
アイテル『え?』
ベリル『まずは自分自身の名前が覚えている事、本来もっと酷い症状は名前すら脳の中に閉ざしてしまうからな…そうなれば、記憶を引っ張り出す事がかなり難しくなる』
その言葉を聞いたアイテルは少しだけ安堵する。
アイテル『良かった…完全に記憶が消えてるわけじゃ…無いんですね…だったら記憶が戻る可能性は……』
ベリルはアイテルを安心させるかのように優しく、柔らかい口調で問いかけた
ベリル『高い…とまではいかないが、取り戻すにはかなりの時間が必要だ…まぁ私は…お前の過去の記憶がどんな物かは知らん、何をすれば記憶が元に戻るかは、断言できん』
最後に冷たく放つが、それでもアイテルは彼女がしてくれた事を思い返し、感謝が宿った潤った瞳で彼女に語りかけた
アイテル『ありがとう…ベリルさん』
お礼を言われた彼女は表情を崩し、柔らかな笑顔となった。
ベリル『…ん。』
しかし、アイテルの脳内には最後の疑問が思い浮かぶ、それは…貴方は何者か…と
アイテル『ベリルさん…貴方は…何者なんですか?…どうして私を助けてくれたんですか?』
ベリルはおしとやかな表情でアイテルの疑問を一つずつ解消していくように答えた
ベリル『…そうだな…じゃあ…改めまして…私の名前はベリル・サルス、人間と魔族の間の存在だと思ってくれればいい…そしてお前を助けた理由は』
アイテル『ごくり!!』
ベリル『私の気まぐれだ』
アイテル『カッコいい!!』
…え…今なんて…?
アイテル『え…?今なんて言いました…?…魔族と人間の間…?それに…本当にただの気まぐれで私を助けてくれたんですか…?』
ベリル『…』
アイテル『…ベリルさん…?』
いつかは終わる、彼の記憶探しの旅が、…眠っている記憶と共に、今始まった。
訳あり勇者
Episode1 完
Episode1
突如として自らの平和を遮断されたが居た。
自身の身体の崩壊が始まるも、
最後の時まで仲間を守り抜き花びらのようになった者が居た。
仲間と共に辛い過去や現在を乗り越え歩み続いた日々、何度もかけがえのない存在の死の反復。
そして闇に潜む数多な恐怖が、周りに気付かれぬ溶け込むように人々に付き纏っていた。
しかし今、その悲しき物語を終わらせるべく、一つの闇が最後の希望を握りしめる。
ー澄森ー
霞んでいる青空の昼。
澄森で、闇商人である【アル】と【イラ】は、馬荷車の後ろにある【例の商品】を乗せて馬荷車を走らせていた。
そんな時に、アルは馬荷車の後ろにある【商品】が大きく揺れた事に気づいた
闇商人・アル『…今…揺れなかったッスか?後ろにいるガキ…じゃなくて、商品!』
アルは後ろを向くと、
闇商人・イラ『恐らく例の【商品】が目が覚めたか…安心しろ、どっちにしろ逃げられん。
そんな事を心配するぐらいなら、今この場で魔物に出会さないかどうかを心配したらどうだ』
アル『そ、それもそうッスけど……ほんと何なんスかいつも偉そうに…』
イラ『なんだ?』
アル『何でもないっす…』
イラ『言いたい事があるなら、まず後ろの商品を傷付けないように移動しないとな。
出来るだけこの荷馬車をゆっくりと動かさないとな』
荷馬車の後には大きな袋。イラはそれを顎でしゃくってみせた
アル『…それにしても先輩…よく見つけましたね…こんな広い森の中で…』
イラ『こんな空気が澄んでいる森の中で生き物の匂いがすればすぐに分かる。
…お前みたいな素人にはまだ難しいか?』
それを聞いたアルは一瞬不機嫌な顔を出そうとするも、なんとか耐え抜く
アル『そうッスね…』
二人は黙って荷馬車を歩かせる。森の中はそよ風が吹いており、とても魔物がいるとは思えないぐらい新鮮な空気だった。
ふと、アルはこんなことを言い出した。
アル『先輩…気のせいかもしれないッスけど、居なかった気がするんス、少し前にもこの森を訪れた時に…』
後ろの例の【商品】に目を向けた
アル『商品…いや、ガキなんて…居なかった気がするんッス…』
アルは少し恐怖を感じながらも、イラに状況を伝えた
イラ『…確かに、少し前にもこの森を訪れた時はこんなガキは居なかった。
それどころか、人気すら…』
静かに後ろの商品…
すなわち、人間が入った袋に目線を向ける。
イラ『…もう摩訶不思議だらけの世の中だから、何が起こってもおかしくないと思えてきたさ』
闇商人2は少しため息をついてから…口を震えながら話した。
イラ『全く、この世は不思議…いや、意味わかんねぇことばっかだ。
…すべての元凶だった魔王…ヤツを倒せば平和が戻ると思っていたが…』
イラは少し間をおいてまた口を開いた
イラ『いや、一時的に平和にはなったか…あの事件が起こるまでは』
アル『魔王さえ倒せば…手下である魔物…魔族が居なくなって…平和になると思ってたのに…いや…魔族は確かに居なくはなったっスけど…魔物は相変わらず…』
イラ『仕方ない事だ。親玉が死ねば子も死ぬと言う考えを勝手に持ったのは俺らだ。魔王が死ねば魔族も滅ぶ…こんなのは仮定に過ぎない』
アル『…それもそうっスね…』
イラ『…だが…それだけじゃない。
様々な数の未解決事件がこの世に…』
そんな時だった。
二人の闇商人が話していると、澄森の木の枝の上で一人の女性が、気付かれないように例の『商品』を凝視していた
???『あの子が…』
例の『商品』を見つけた謎の女性は静かに
???『…久しぶりね』
と声を漏らす。その後ろの木の枝に佇む女性の気配に、闇商人の二人は気づくことは無かったが。
とてつもない不安に襲われた
アル&イラ『…!!』
二人の背筋が凍った。一瞬、一瞬だが、『何か』の気配が背後に現れた。それは人間とは別の、何かの気配
二人は急いで背後を見るも、その気配は消えていた。
あの【商品】と共に
アル『今のは…!?』
イラ『…あのガキが奪われてる…!?』
あり得ない、商品を奪った後に逃げた?いや…気づかれずにあんな速度で…?
闇商人2『……なにか人間じゃない別の存在が一瞬だけ…何者…だ?』
ー謎の隠れ家ー
一方その頃…謎の人物に助けられた例の【商品】は隠れ家で目を覚ます。
…っ!
身体…痛い、目の前が真っ暗だ…ここはどこ……
全身が痛くおもいっきり負荷がかかったような状態だったが、直ぐに部屋の暖かさによって身体が刺激され、身体の負荷が多少程解消する。
???『目…覚めたか?』
……え?
少年がゆっくりと目を開ける、目の前には女性が一人、その女性の顔はどこか冷たく、雪のような表情で少年に語りかけていた。
…ここは、何処ですか?
それを聞いた女性は不機嫌そうな表情で
???『何処だ…か、答える前にまずはお礼からだろう?私がお前を助けなかったら、身体をバラバラにされて売られる所だったぞ』
…ひ!?
ベッドから身体を起こし、思わず少年は後退る、目の前の女性に強い恐怖感を抱いていたが、直ぐにその心が溶けていき、次第に口をゆっくりと動かして
『あ、ありがとう…ございます……』
目の前の女性は無表情だが、心なしか少しその無表情が和らいだ気がした。しかし彼女は直ぐに無表情に戻り続けて氷のように言葉を放つ
???『それでいい。…名前はなんて言う?何処から来たか覚えているか?』
名前…?名前は…私の………………………
???『アイテル……場所……私が…………場所…………居た所……………』
名前は微かに思い出せるが、何処から来たのかは全く覚えてない、いや、分からないに近い状態だ。
アイテル『分かりません……何処から来たのか………何処で生まれたのかも……何があったのかも………どうして分からないのかも………全部………』
彼女はあたふたしているアイテルを見て確信するように言葉を放った
???『覚えていない…その反応…記憶喪失ってやつか…』
アイテルは困惑した表情で彼女の顔を見上げる
アイテル『きおく……そうしつ?』
彼女の顔を見るも、驚いた様子は無かった、まるで見慣れているかのようだ。
???『過去に大きな出来事で頭に大きな衝撃が入り、その衝撃によって、他にあった過去の出来事は全て脳の奥の方に深く眠ってしまう状態だ、
つまり、君の昔の記憶は深く眠っていて、君はその記憶を思い出せない状態だ』
彼女から淡々と話される言葉に頭が追いつかない、だが、概ね理解はつく。自分の記憶が今、消えていると言う事に
アイテル『じゃあ…つまり…今僕の記憶は…無いって事ですか?』
アイテルの言葉は、ただ知りたがっていた一人の少年の叫びでもあった。それは悪意に満ちていない潤っている瞳で彼女に問いかけた。
???『無い…と言うよりかは、眠っているに近いかもな、一般的にはそれは記憶が消えた、とも呼ばれている』
アイテル『そうで…すか……私の記憶は今消えてるんですね……』
アイテルは悲しそうな表情で地面を見つめる、その地面は湿っていて、アイテルの心を表しているかのようだった。
???『ベリル』
アイテル『え?』
女性に何かを言われた言葉にアイテルは顔を上げた、そこには無表情だった女性が、少し広角を上げて、暖かく、穏やかな笑顔で話しかけていた。
ベリル『私の名前だよ、ベリル、宜しくな』
彼女はそっと手を伸ばす、その手は雪のように白かった。
アイテル『は、はい…宜しくお願いします、ベリル……』
アイテルは彼女の手をそっと触れるように手を重ねた。彼女の手は雪のように冷たく、ひんやりしていたが、同時にほんのり温かかった。
ベリル『ん…それにしても、本当に良かった、アイテル…か。自分の名前を覚えていることが出来て』
その言葉を聞いたアイテルは【はっ!】とする。そして、新たな疑問が浮かび上がり、その疑問をすぐさまベリルに伝えた
アイテル『…名前…覚えてる…なんで……記憶は……消えてるはず………あ…言葉も……喋れる………どうして?』
ベリル『記憶が消えるって言うのは、今までの起こった【出来事】が脳の奥に眠っているだけで、経験した出来事は忘れてはいない。
だから言葉と言う存在は、完全にアイテルの【脳】ではなく、【身体】に染付くように覚えている、だから知識は抜け落ちていなかったり、言葉が話せたり出来るんだ』
彼女に説明され、今までの疑問が少しだけ解消されたような気がした。ただ、不満が全く消えたわけではない、これからどうしたらいいのかも分からない状態で生きていくことは到底難しいからだ。
ベリル『…だがな…君の脳はまだ完全に眠っている訳では無いようだ』
アイテル『え?』
ベリル『まずは自分自身の名前が覚えている事、本来もっと酷い症状は名前すら脳の中に閉ざしてしまうからな…そうなれば、記憶を引っ張り出す事がかなり難しくなる』
その言葉を聞いたアイテルは少しだけ安堵する。
アイテル『良かった…完全に記憶が消えてるわけじゃ…無いんですね…だったら記憶が戻る可能性は……』
ベリルはアイテルを安心させるかのように優しく、柔らかい口調で問いかけた
ベリル『高い…とまではいかないが、取り戻すにはかなりの時間が必要だ…まぁ私は…お前の過去の記憶がどんな物かは知らん、何をすれば記憶が元に戻るかは、断言できん』
最後に冷たく放つが、それでもアイテルは彼女がしてくれた事を思い返し、感謝が宿った潤った瞳で彼女に語りかけた
アイテル『ありがとう…ベリルさん』
お礼を言われた彼女は表情を崩し、柔らかな笑顔となった。
ベリル『…ん。』
しかし、アイテルの脳内には最後の疑問が思い浮かぶ、それは…貴方は何者か…と
アイテル『ベリルさん…貴方は…何者なんですか?…どうして私を助けてくれたんですか?』
ベリルはおしとやかな表情でアイテルの疑問を一つずつ解消していくように答えた
ベリル『…そうだな…じゃあ…改めまして…私の名前はベリル・サルス、人間と魔族の間の存在だと思ってくれればいい…そしてお前を助けた理由は』
アイテル『ごくり!!』
ベリル『私の気まぐれだ』
アイテル『カッコいい!!』
…え…今なんて…?
アイテル『え…?今なんて言いました…?…魔族と人間の間…?それに…本当にただの気まぐれで私を助けてくれたんですか…?』
ベリル『…』
アイテル『…ベリルさん…?』
いつかは終わる、彼の記憶探しの旅が、…眠っている記憶と共に、今始まった。
訳あり勇者
Episode1 完
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