【完結】ヒロイン、俺。

ユリーカ

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Ⅲ ハンター、俺。

024: からのデレでした。

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「わぁ女神様ご乱心!鏡壊れちゃう!落ち着いて~!!」
『うるさいわね!もう!もう!腹立つ腹立つ!何なのよこんな鈍感バカ相手に!ズルいじゃない!私は鏡の中で何にも出来ないのにあの子たちばっかり———』
「え?」

 私は鏡の中なのに?あの子たちばっかり?

 そこで女神様がガチンと固まった。しまったという風に目を見開いて俺を見ている。女神様にしては珍しく語る言葉もしどろもどろだ。

『え?べ、別に深い意味はないのよ?だ、だって女神の私にできないことがあるのが許せないだけで!』

 できないこと?って?んん?

 ピコーン!

「なんだ!女神様も俺になでなでぎゅーとかチュッチュしたいってこと?」
『きゃぁぁぁッ イヤァァァッ 違うッ 違うんだからぁ!!』

 女神様が盛大な悲鳴を上げて手で顔を覆った。

 図星か。わかりやすい。
 鬼のかく乱?あの女神様がデレた?嘘だろ?

 女神様が俺にヤキモチ妬いてくれた?
 メチャクチャ嬉しい!!

「なんだ、そうならそうと言ってくれれば。女神様なら俺なんて撫で放題ですよ。ほら、なでなでしてください」
『違うってば!』
「ん?じゃあいいんですか?なでなで」

 女神様は鏡越しでは俺に触れることはできない。だからこれはエアなでなでだ。触れないんだけどせめてこれで少しは気持ちが落ち着いてくれるといいんだけど。

 俺が鏡に額をくっつけて上目遣いで女神様を見やれば真っ赤な顔の女神様が言葉を詰まらせている。モジモジしてどうしようか悩んでいるようだ。

 おお!これも初めて見る女神様だ!カワイイ!!

 散々迷った挙句、女神様は鏡越しに俺の頭に手を置いた。俺の額には冷たい鏡の感触、だがふわりと何やら後頭部を撫でる感触が加わった。温もりはない。でも柔らかい何かに髪をとかしつけられた。実体じゃない。多分あの強烈エアデコピンと同じ原理。でもどことなく懐かしい手だ。

「女神様?」
『私は触った感触はないんだけど‥‥、痛くない?』
「気持ちいいです‥‥とても。ずっとこうしていられそう」
『そう、よかった』
「‥‥‥‥ごめんね」
『もういいわよ』

 女神様がふっと笑ったような気がした。ご機嫌が直ってよかった。あんなに女神様が怒るとは思わなかった。俺も気をつけないと。

 俺の中に封じられたままじゃ女神様も可哀想だ。本当はもっといろんなことをしたいよね?俺のこともだけどそれに限らずに。だったら俺は俺にできることをするしかない。

「俺、レベリング頑張ります。そうすればいつか女神様の封印が解けるんですよね?」
『そうね、でも無理しなくていいから。今は過負荷に耐えることが優先よ』
「頑張りますって!そんでもって俺の作ったご飯食べてもらいます。うまいんですよ、俺の作ったハンバーグ」
『じゃあ黒焦げじゃない美味しいものを食べさせてね』
「任せてください!」

 なんで女神様は和食とかハンバーグとか知っているのか。なんで俺の料理が火加減が甘い「下手の横好き」だってわかっているのか。

 それは聞いてはいけない事のような気がした。

 きっと俺と同化しているせいだ。そうに違いない。俺はそう結論づけた。



 女神様との甘々なでなでタイムを堪能してしまったため、専用武器を探す時間がなくなってしまった。女神様が俺に会える時間は限られている。明日改めて探してもらおう。

 雨降って地固まる?喧嘩したらラブラブで仲直りだ!なんかもっと仲良くなれたような気がするし。

 そういうわけで俺とポメとで街に繰り出した。偵察の態ではあるが、ちょいちょい買い物をしながら俺たちは物見遊山をすっかり楽しんでいた。リードなしのポメはリーダーウォークで俺にピッタリついてきている。

 昼時も終わった午後の街は鉱夫たちが作業に戻ったせいか人通りも少ない。夜になれば荒くれどもが酒を飲んで騒ぐんだろうな。今は閉まっているが飲み屋も多い。飯はどこで食べようかな?

「大きな街だ。よくこんな土地があったな」

 険しい山に囲まれた地域にここだけ何かに様に盆地である。そこに街ができた。鉱物輸送のための鉄道まで走っている。この盆地から線路を敷けと言わんばかりの渓谷がちょうどよく麓の街まで続いていた。

「へぇ、蒸気機関車まであるのか」

 通りを抜ける途中で遠くを走る黒光りのSLを見やった。俺が知っている形とちょと違う。黒い煙が毒々しい。

 二酸化炭素とか公害とかこの頃はそういうの気にしてないもんなー この世界はまだ温暖化とか大丈夫なんかな?

 産業革命に差し掛かっている。この世界もここから機械化が進んでいくんだろうが。だがなんというか?機械文明に対して科学がものすごく遅れているように思う。科学ありきの産業革命だ。蒸気機関車の原理は水蒸気動力、水が蒸気になりその力で走らせる。それを確立させたのは?

 今までちょいちょい気になっていたのは、人族の知識の低さだ。

 この世の全ては神のよって作られた。万物の創造の説明はその一言で済ませている。陽が上り沈むのは天道説。木からりんごが落ちる理由も気にしない。ダイナマイトなるものも当然ない。文字もある。本もある。だが識字率も低いし教育システムもない。ある一握りの層だけが知識レベルが高いということ、ひどい知識格差だ。
 文明レベルはところどころ高い、なのに櫛の歯が抜けるようにある分野のレベル、科学と物理が原始レベルだ。

 なんでこんなにチグハグ?
 この世界、なんかおかしいな。

 爆薬、火薬という概念がこの世界にない。特に高度火薬、ニトログリセリンの登場は前世の俺の世界の戦争を変えた。平和利用もあったがやはり大量破壊兵器となったわけで。機械化も進んで無人攻撃機が人を襲う。挙句は核だ。俺の喉の奥が苦くなった。

 この世界はまだ剣と魔法で戦うレベル。火薬もないから銃も存在しないようだ。単射式の火縄銃がリボルバー・オートマティックになり機関銃、そしてガトリング砲となる。一度でより大量に殺戮。そうして人類は同じ過ちを繰り返す。やはりこの手の兵器発明はないに越したことはないだろう。

 考え事をしながら歩いていたせいで道に立っていた人にぶつかってしまった。その人の鎧がガツンと鳴った。

「あ、すみません」
「いや、こちらこそ失礼した。大丈夫ですか?」

 手を差し出し礼儀正しく謝罪する相手を見上げて俺はあんぐりと口を開けてしまった。

 これが運というなら俺の運は最悪だ。それは絶対出会いたくない相手。こんな辺境にいるわけがないのに———

「‥‥ルキアス?」

 驚いた表情で俺を見下ろすフードを被る剣士、いや、それは赤毛の勇者だった。

「殿下‥‥なぜここに?」
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