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Ⅳ マドウシ、俺。
040: ステキなステッキ
しおりを挟むそんなこんなで。
俺たちは山の中の隠居生活を楽しんでいた。
そんなある日のこと。
「ルキーッ ついに出来たぞ!」
魔女っ子るぅが何かを手に持ってウキウキと走ってくる。先日の活躍でどうやら俺はこの魔女っ子に認められたらしい。まだポメほどではないがかなり階級が上がった。今俺はこいつよりちょっと下のマブダチ扱いであるが。まぁ俺的には許容範囲内だ。
そういえば最近なにやら作っていたようだがついに完成したのか?アーティファクト?アークリッチのこいつが作るものなんで碌なもんじゃないだろ?
「何が出来たって?」
「じゃじゃじゃじゃーん♪」
魔女っ子が何か黒い棒のようなものを俺に差し出したのだが。棒の周りに黒い霧?のようなものが漂っていてよく見えない。ピンボケしているようにも見える。そしてオゾマシイほどの邪気。禍々しい!差し出されたものを前に俺の背中に悪寒が走る。
「ななな?!なんだこれ!」
「ルキの魔法ステッキじゃ!可愛いじゃろ?」
「あぁ?これが?!」
俺が絶句したのは仕方がない。よく見れば黒いオープンハートにコウモリの羽がデザインされている。ゴテゴテとドクロやらクモやら色々グロい装飾がなされてはいるのだが。柄のところにルキ♡と名入れまでされているあたりで俺の専用ステッキなのだろう。漂っている黒いものはステッキから溢れ出る大量の瘴気だ。魔力の弱いものならこの瘴気に生命力を吸われるだろう。
呪われている。これは完全にダメなヤツだ。
「ゲゲッグロい!なんでこれが俺の魔法ステッキなんだよ!」
「ルキは魔力が強すぎて困っておるのじゃろ?兄者に聞いたぞ?違うのか?」
「いやまぁ‥‥その通りだが」
「じゃから!ルキのために!このステッキに偉大なるわらわの呪いをたんと詰め込んだのじゃ!このステッキを持ってルキが魔導を使えば5/6の確率で呪いによるデバフが発動するのじゃ!」
「5/6!?呪いのデバフ!?」
「呪いで発動魔力が1/300になるぞ!すごいじゃろ!」
褒めろ褒めろと俺を見る魔女っ子のキラキラした目に俺は絶句していた。
え———ッと、どっからツっこもうか?
俺の憧れの!大事な魔法ステッキに呪い?なんてことしやがるんだ!更にこのグロデコ。これが可愛い?こいつの美的感覚がおかしい。普通でいいのに!
そんでもって?呪いの発動確率が5/6?80%超えてんじゃん。すんげー高確率じゃね?呪われ武器での呪いの発動って普通10%くらいだよな?どんだけの怨念だって!さらに発動した場合のデバフが魔力1/300って。なんて鬼畜な数字、俺の魔力1になんじゃね?やりすぎだろが!
この笑顔も!パパの似顔絵描いたよ!すごい?と可愛い娘がしそうな笑顔じゃないか!俺パパか?
すごいじゃろって?
うん、すごいなホントにドス黒い。
どんだけの呪いを詰め込んだんだよ。
流石はアークリッチ、やることえげつない、ある意味いい仕事だ。ステッキ自体が黒い霧に覆われててステッキの全容が見えない。瘴気が濃すぎるんだ。なんか呪いのビデオみたいにところどころ歪んで見えるんだけど?
ツッこみどころ満載だがデバフ1/300は素晴らしい。そんだけデバフかかって弱くなれば俺のファイアもファイアらしくなるんじゃないか?これでソロキャンプできるようになるかも!いやきっとできる!俺がきっちり正しい初期魔導ファイアを発動する、その俺の勇姿の瞬間を是非女神様とポメ、スケさんズにも見て欲しいぞ!
俺たちは薄暗い森の奥に移動、女神様との通信用コンパクトをるぅに渡した。女神様もご降臨、ポメとスケさんたちも見守る中、るぅから呪いのステッキを受け取ろうとするがどうも気が進まない。
おどろおどろしすぎだろ!もし仮に俺に呪術抵抗値なるものがあったとしても嫌悪感はどうしようもないし?ハハハ‥‥はぁ。
「おい、これ持ったら装備解除できないとかはないな?一週間以内にコピーして他の誰かに見せないと俺が死ぬとかないんだろうな?」
「安心せい。呪いは魔導発動だけじゃ」
「この呪いで俺不幸にならないか?仕事をクビになるとか恋人と別れるとか借金地獄もないな?そういう呪いじゃないんだよな?」
「くどいぞ、そこもない。あったとしたらそれはステッキじゃなくルキのせいじゃ」
「俺のせいってなんだよ!魔王クビになるのはいいがラブラブ女神様と破局とか!俺が破産したら!断じてお前を許さんからな!地の果までお前を追い詰めてぎったんぎったんに」
『もう!つべこべ言ってないでさっさと撃ちなさいよッ』
女神様の正論の叱責に俺は恐る恐るグロかわステッキを受け取るがもうその禍々しさに正直手放したい気持ちだ。せっかくのあこがれの魔法ステッキだってのに!何だこのコレジャナイ感は!これじゃ技ポーズ決めても肝心のステッキが瘴気で写真に映らないんじゃないか?心霊写真ものだ。
「ちょうどいい岩がある。あれにファイアを撃つのじゃ」
るぅの指示に俺は震える手でグロステッキを岩に向けた。震えるのは怖いからじゃないぞ!
確率5/6でデバフ。裏返せば1/6、16.7%で発動だ。ロシアンルーレット?低いようでいて意外に高く感じられる確率じゃね?いやいや、力を抜け。この確率で当たるはずないだろ?
そもそも?当たったとして?俺、スケジから魔導訓練受けてるんだし?多分普通の初級魔導が発動するわけだからなんの心配もないじゃんか?あ、ちょっと気が楽になった。
意を決して俺は意識を集中、魔力を解放させた。
「ファッファイア!!」
俺の震える声がこだまして辺りが静まり返る。確かに俺の体内で魔導の発動はあったが肝心の火が出ない。ということは?
ゆっくり10カウント数えてそれでも火が出ないことを確認した後に俺は喜びで絶叫を上げた。
「ヤッタ!不発!すっげぇ!流石はるぅ!お前最高だよ!」
「そうじゃろそうじゃろ!苦しゅうない!もっと褒めよ讃えよ!」
魔女っ子とわぁぁッと喜んだ俺がステッキを上に振った瞬間、それは発動した。
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