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Ⅲ ハンター、俺。
035: 俺にできること
しおりを挟むこんな山間にゴーレムの格納庫なんてあったっけ?
辺りを見まわし、そこで気がついた。あるじゃないか。まるで平らにならされたような場所が。二千年が経った今はそこに街ができている。だが段差は?ゴーレムが登れる高さじゃない。いや、一箇所だけ道がある。
緩やかな渓谷。今は線路が敷かれ蒸気機関車が走っているがあれは本当はゴーレムの出入路だ。
「あいつら!街に向かってるんですか?!」
『うーん、そうなるわね』
元格納庫である街に向かって動き出すゴーレムたち。街を襲っているようにも見えるがそうじゃない。ゴーレムに害意はない。だがゴーレムがただ街中を歩き回るだけで街は壊滅必至である。
そもそもが、知らなかったとはいえゴーレムの格納庫に勝手に街を作ったのは人族だ。女神様も二千年後にまさかこんな展開になると思っていなかっただろう。俺がスイッチ入れたのが悪いんだが。
勇者たちもゴーレムの目的地に気がついたのかゴーレムに切り掛かっているが相手ができているのは英雄二人だけだ。それでも1体ずつの足止め、倒すまでに至っていない。
「るぅ!スケさん達であれを倒せるか?!」
「どうじゃろうな。ちと相手がデカすぎるかの」
「ならば足止めでいい!ゴーレムの足を狙わせろ!」
俺の意図を理解したスケさんたちが一斉にゴーレムに襲いかかった。ゴーレムの背後からすり抜けざまに、踵を掬うようにスケイチが剣を薙ぎ払った。バランスを崩し轟音を立ててゴーレムが仰向けに倒れた。続け様に他のゴーレムも仰向けに倒していく。それを見た勇者も真似しているが、これを出来るのはこの二人だけだろう。他のスケさんたちや聖女兵士にはこの力技は無理だ。だが仰向けに倒れたゴーレムも時間をかければ起き上がってくる。これは時間稼ぎでしかない。根本的に解決しないと。
聖女とスケジが魔導で地面を抉りゴーレムを転ばせている。スケゾウはゴーレムをうまいこと誘導して崖から落としている。みんな頑張っているのに‥‥
俺は?俺にできることはないか?
俺のせいで街が壊滅とか!あんな場所に作ったとはいえせっかくここまで発展した街なのにもったいない!
俺の意図じゃないけどこれはヤバすぎるでしょ!
「ゴーレムの弱点は?どこが急所ですか?」
『頭の真ん中に魔石がある。そこを壊せば起動停止するわ』
無理ゲーだ。あんなデカいゴーレムの、岩でできた頭部の核を壊せとか。
「ポメ!俺を山頂へ運べ!』
すくい上げるように俺とるぅを背に乗せたポメが時空に飛び込んだ。抜け出したのは先ほどの崖。ここら全体が見下ろせるが山間のそこかしこでゴーレムが蠢いているのが見えた。その様子に俺はゾッとした。
「一体何体いるんですか?!」
『一大プロジェクトだったから100は超えているわ』
「100?!」
『劣化したものいるはずだから今動いていのは80くらいじゃないかしら』
80、それでも数が多すぎる。俺の初級魔導ファイアで吹っ飛ばそうかと思ったがアレを連射したらここは火の海だ。せっかく女神様が殖林したのに!じゃあウォータジェット?ウィンドカッター?どっちも森にダメージがいく。なんで俺、火力調整できないんだよ!
手はある。魔王だ。脳内ポイント切替機であいつを呼び出せばいい。だがあいつが俺の望み通りに動くかどうかの保証はない。俺はあいつを操れないんだから。なんとなくなんだが、あいつはこういうことに頓着しない気がする。そこで女神様の声がした。
『私が出るわ』
「え?」
『元はといえば私のせいだし。巻き込んでごめんなさい』
「ちがッそんな!これは俺のせいです!」
『‥‥過負荷来るだろうけど耐えてくれる?』
コンパクトの中の女神様が微笑んだ。
女神様が出る。もう本当にこれしかないのか?悪いのは俺だ。俺が何もわかっていないからトラブルを起こして無自覚に皆を巻き込んでいる。結局他力本願だ。自分でなんとかしたいのに俺はこんなにも無力。何が魔王だ!
考えろ!俺にできることは本当にないのか?!
イライラと辺りを見まわして何故かそれに俺の意識がいった。
「そういえばこの岩は?女神様が積んだんですか?」
『植林に邪魔だったから崩した硬岩ね。ふるいにかけて集めたものよ。ゴーレムでも破砕出来なくて私がやったから』
これ全部ふるいって!ゴーレムでも崩せない岩を女神様が粉砕。女神様ってば怪力!だがゴーレムでも崩せない硬い岩ねぇ‥‥
ざっと見回すがこちら側には鉱山ができていない。鉱脈がなかったためか?鉱山の条件は色々あるんだが、ひょっとしてこっち側は岩が硬いんじゃないか?ここが海底から隆起した場所なら角岩もありえる。非常に硬い岩だ。
そこで俺に一つのアイディアが浮かんだ。
アイディアと呼べる代物でもないんだが。
「女神様、ゴーレム達を破壊して構いませんか?」
『構わないわ。本来は作業完了で魔石を壊して岩に戻す予定だったものだから』
「ちょっと試してみたいことがあるんですが。こんな風にこうやってこう‥‥」
俺の脳内を理解したのか女神様が絶句した。反対されたらやめようと思ったけど女神様は俺を止めなかった。
『可能だとは思うけど‥‥当てられるの?』
「どうかな。久しぶりなので‥‥ちょっとやってみましょう」
ちょっとした思いつきだ。うまくいくとも限らないがうまくいけばこの暴走を止めることができる。
女神様の初期スキル怪力があるからパワーは問題はない。これのカギは俺のコントロールと体力、スタミナだ。
るぅにコンパクトを渡し、俺は腰に下げたスコップを手に取りアレをイメージして魔力を送る。そうするとスコップの形がみるみる変わった。柄が長くヘッドが丸い、金属でガットの再現はさすがに無理だった。よって金属面に穴が空いた形になった。見た目大きなしゃもじ?フライ返し?るぅが興味津々で俺の手のものを覗き込んだ。魔女っ子は好奇心が強いな。
「なんだこれは。これで何をするのじゃ?」
「テニス」
「テニス?なんじゃそれは?」
「俺の得意な球技」
中学の頃はスポーツ系部活に入れという校風があり俺は三年間テニス部にいた。サッカーとテニスがモテ部として人気だったがサッカーはスタミナ系ということでテニスを選んだ。入部後にテニスも相当な運動量だとわかったんだが。
大会に行こうとかそういう気概は一切なかったが、そこそこ上手かったため名義だけでもいいと頼まれてキャプテンにもなった。特にサーブではフォルトなし。そこは定評があったのだ。
今の俺に物理攻撃力はない。魔導もダメ。あるのは怪力とこの丈夫なスコップだけだ。
そして目の前には超硬い岩石。
結果こうなった。
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