君の名はベヒーモス

ユリーカ

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第一章: ベヒーモス

第一話: 運命の出会い

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 よくいそうな普通の女子。自分を説明するのにちょうどいいと思う。二十五歳会社員。彼氏なし一人暮らし。
 背はちょっと低め。ボブ好きだが毎朝癖毛に手を焼いている。犬猫大好き。週末は好きなゲームでストレス発散している。

 そんな神宮環かみみやたまきはペットショップの前で足を止めていた。

 ここは駅前の商店街。郊外型のスーパーが乱立する中でちょっとさびれた‥もといレトロな感じの商店街だ。環の帰宅ルートはここを通り抜ける。

 ある日そこに見覚えのない店があった。確かこの間まで空き地だったはず。いつの間に店ができたのだろうか。しかもペットショップ。今更こんなところにペットショップ?

 見上げる看板がさらに怪しかった。
 「ペットショップ あやかし」

 んん?あやかし?妖怪を扱っているペットショップ?なんだろうこれ?ああ、そうか。これはオーナーさんの名前かな。苗字があやかしさん。

 環は一瞬怪訝な顔をしたがすぐに自己解決して納得した。変わった名前だがいっそ宣伝にいいかも!
 
 夕日の中で店の中を覗き込むも降ろされたロールスクリーン越しではよくわからない。普通宣伝に窓際に動物飾ったりしない?それさえないの?きっと出来て間がないから準備できてないのかな?

 そうとなれば、中にいる生き物が気になった。
 環は動物が大好きだった。実家では犬二匹と猫三匹を飼っていた。今は寂しい一人暮らしだ。ペット可のマンションにしたのは、いつかペットを飼いたい!という野望があった。

 普段はそんなことはない。こんな衝動的に店に入ることもないのに、環は導かれるように店の扉を押しあけた。

 そこはがらんとしていた。ペットショップのように透明なゲージが並んでいるが中は空。人の気配さえない。

 環は落胆した。せっかく少しの癒しを得ようと思ったのに。裏でお世話されているのか、それとも本当に開店したばかりなのかもしれない。だから接客の店員さえいないのか。
 
 なんの気もなく店の奥まで進む。意外と奥は深かったが躊躇いなく進んだ。そうして一番奥のゲージにいたその生き物と目があった。

 それは猫だった。

 まだ仔猫。ふさふさの毛がとても愛らしい。濃い茶の長い毛の中から緑がかった金眼が環を見据えていた。体の濃い毛に対してお腹は真っ白な長毛。四本足は白足ソックス。そして口と肉球がピンク。口元から覗く舌もピンクだ。
 その猫はゲージの中で寝そべって嫣然えんぜんと環を見上げていた。長いもふもふのしっぽがぺたんぺたんとゲージの床を叩いている。

 その姿に環はずぎゅんと撃ち抜かれた。心臓を押さえよろよろとゲージに張り付いてしまった。

 か!か!かわいい!これはノルヴェージャンフォレストキャット!!なんて美人なの!!超好み!!

 環は愛読の猫写真集を脳内で開く。写真集は脳内の電子ブックになるくらい読み込んでいた。

 猫では大型の部類に入るがとても人懐こい。その美しい姿は万人を魅了する。疲れた時に見る環のお気に入りのページだ。いいね!ボタンがあれば鬼連打するところだ。

 目の前にいる猫は、美人度でその写真集の上をいった。
 
 やだなにこれ?運命?運命の出会い?!

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