君の名はベヒーモス

ユリーカ

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第一章: ベヒーモス

第四話: お譲りください!

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 環は自分の手を見た。さっきまで抱き上げていた仔猫。店員に押し付けた時に手を掻いていたように思う。環と離れたくない、と言わんばかりだった。それがまた愛らしい。やっぱり飼いたいなぁ。再びふぅとため息をついた。

 ベヒーモス?ベヒーモスって飼えるの?本当にあのベヒーモス?想像上の生き物でしょ?

 環は眉間の皺を深めてうーんと唸る。そして青年の言葉を反芻してはたと思い当たった。


 こいつはね、ベヒーモスっていいます。


 あれ?これって名前を教えてもらったんじゃない?あの猫たんにはもうベヒーモスって名前がついてるんだ!きっとそうだ!
 ノルヴェージャンフォレストキャットのベヒーモス。めっちゃ強そう。なあんだそうか!そうなんだ!!
 全くどこのファンタジーよ!もう少しで勘違いするところだった!

 環は今回も勝手に自己解決する。この思い込みで過去何度もトラブったのに身にしみていない。ただ今回のケースではこう勘違いするのも仕方がない。

 そうとなれば急いで戻らないと。別の飼い主に攫われては一生悔やんでも悔やみきれない!!
 熱々のコーヒーを一気飲みし、会計して走り出した。夜も遅い。お店が閉まっていなければいいけど!

 慌てて店の扉を開ければ、奥の窓際のテーブルにあの青年が腰掛けていた。そのテーブルの上には先程の仔猫。大人しく座っていて、入店してきた環に振り返っていた。

「ああ、さっきの。決まりましたか?」
「是非!お譲りください!一生大切にします!」

 お嬢さんを僕にください!と言わんばかりの勢いで、テーブルにだん!と手をついて環が懇願した。なーっと仔猫が鳴くのがさらに愛らしい。環は涙目で身悶えデレる。

「えーと、確認ですが、こいつベヒーモスですけどいいですかね?」
「はい!ノルヴェージャンフォレストキャットのベヒーモスですね!大丈夫です!かっこいい名前ですね!!」
「うん?ちょっと違う。」
「え?かっこいいですって!いい名前です!!」

 青年の笑みがさらに深くなる。それを喜んでもらえたと環は勘違いして微笑み返した。

「うーん?まあ引き取っていただけるのならいいのですが。」
「ありがとうございます!幸せにします!ワクチン注射は済んでますか?もしよければ動物病院をご紹介ください!えっと、ベヒーモスだから男の子かな?」

 環は仔猫を抱き上げてあちこち見るが仔猫だとわかりづらい。仔猫の性別は病院でないとまずわからない。

「ネームプレート用意しなくっちゃね。家猫にしますのでマイクロチップはいいかな。でも病院には行かないと。去勢手術の相談もありますし。あ!でもブリーディング的には去勢しない方がいいですかね?この子の遺伝子は残した方が未来遺産、いや世界遺産として絶対いいですし!絶対そうだ!そうに違いない!!」
「うん!やっぱりちょっと落ち着こうかな!!」

 青年が環を宥める。テーブルの仔猫は去勢、の辺りで完全に引いていた。


 







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