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第三章: 九尾
第二十三話: 君の名は九尾
しおりを挟む環があやかしの形を口に出して言わなければあやかしの姿は確定しない。思わず拓人が聞き返した。
「え?うさぎ?」
「はい!とってもかわいいネザーランドドワーフですね!オレンジ色でかっわいいです~ この子も飼ってみたかったんです!」
ほうとため息をついて環がぼうっとする。脳内の電子ブックを開いているな、と二匹は理解した。うさぎ本まであるのか。環の脳内ブックのペット本蔵書量はなかなかのものだ。
「‥‥抱いてみますか?」
うさぎ?九尾の狐なのに、仙狐の最上級なのによりによってうさぎ?なぜにうさぎ?拓人も流石に唖然とした。
ゲージから出したうさぎは涙目だった。狐にとってうさぎは捕食動物。これは九尾もショックだろう。
ご愁傷さまです、と言わんばかりに仔猫と仔犬もうさぎから目を逸らす。
例により頬を染めた環が拓人からうさぎを受け取る。ちょうど手のひらサイズのうさぎのもふもふが柔らかくて気持ちいい。環はうっとりした。
「えーと、でしたらこいつも飼ってみますか?二匹は先ほど奥でもうこいつに会っているので大丈夫そうですよ?」
「え?ほんとです?二人とも、飼っていいかな?」
うさぎを抱いて満面の笑みの環が二匹に詰め寄った。どうぞどうぞ!と二匹は涙目のウサギに挨拶を、もとい慰めの言葉をかける。
『兄さん‥、あっしがうさぎ‥‥うさぎ‥‥』
『大丈夫だ、お前は可愛いぞ。中身は立派な狐だ。』
『多分世界最強のうさぎだ。そう思え。』
『兄さん、ありがとうごぜぇやす‥‥』
仲良しそうな三匹を見てやったー!と環は喜んだ。拓人は気を取り直して環にあやかしの名を告げる。
「名前ですが、こいつはですね、九尾といいます。」
「九尾?あの狐の?尾が九本ある日本のあやかしですね。うさぎなのにかっこいい!!」
うん、狐なのにね。
「‥くわしいですね。」
『違うぞ!名はテンコだぞ!』
仔猫の念話が割り込む。九尾に進化しただろうにややこしい。
「えー、あだ名はテンコっていうそうです。」
「そうなんです?名前が九尾であだ名がテンコちゃんですね。了解しました!よろしくね!テンコちゃん!!」
環は素直に復唱しぎゅっとうさぎを抱きしめた。
環謹製バケツでごはん!がざばぁとうさぎにぶっかけられる。見た目以上の破壊力にうさぎは目を瞠った。そしてゲフっと息を吐いた。
それを見た二匹は嘆息した。バケツは小さくなっていない。まだ枯渇の素振りさえない。この主、どんだけ魔力を貯蔵しているのか。
二匹が下を向き嘆息している様子を誤解した環が慌ててうさぎと共に二匹を抱きしめる。
「もす君!リヴァイも!大丈夫だよ。これからもみんなかわいがるから!ぎゅーもたくさんしようね~!」
環のにっこりとした笑みを見て三匹は慄いた。その笑みの背後にビニールプール大の魔力だまりが発生していた。
ここでテンコは初めて理解する。
同じ過食。だが主から魔力をもらうのと兄さん達から魔力をもらうのの決定的な違い。それは話がわかる相手かどうかだった。
環からぎゅーを連発され大波のような魔力にざぶーんと飲み込まれ三匹は完全に沈黙した。
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