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第133話 森田真唯①
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「あなた――――宝塚女優さんね? はじめまして。
それからマリア、久しぶりね……なんて格好してるのよ」
はぁ~~~~と深いため息をついて、その美女は眼鏡を上げた。
マリア?? 先生の事を言っているのだろうか?
そして私の名を知っているこの人物は――――。
「久しぶりねマユっち。相変わらず堅物そうでなりよりだわ」
先生が白衣の美女に笑いかける。
その目は少し悪戯っぽく曲がっていて、二人が気の知れた友達だと語っていた。
とすればこの人が先生の言っていた同期の人なんだろう。
「あ……は、は、はじめまして宝塚女優と言います。先生の一応生徒をやっています」
焦げた頭を燻ぶらせて起き上がり、挨拶をする。
「私はこの診療所を経営している森田真唯よ、よろしくね」
真唯さんと言うのか。
凄く綺麗なメガネ美人だが、すこし気だるそうでくたびれた雰囲気がする。
「マリアから話は聞いてるわ、なかなか面白い生徒なんですって? この生物《なまもの》に面白いと言わせるなんて……あなたとても根性がありそうね」
その一言で、私はこの人と心が繋がった気がした。
「ともあれ、今はまだ診療時間中なの。奥の部屋に案内するから、そこでしばらく待っていてくれるかしら」
「リビングでしょ? いいわ、勝手にお邪魔するから。お茶菓子は買ってきたから、お茶だけ貰うわね」
そう言って先生はガボガボのスリッパをぺちぺち言わせながら廊下を走って行く。
そして診療室やレントゲン室の奥にある扉を開けて消えていく。
「あっちが私の自宅になっているのよ。あなたも遠慮しないでくつろいで待っててね」
薄い笑顔で私に笑いかけると、真唯さんも診療室へと引っ込んでいく。
「あ、え~~~~と、ははは、その……お騒がせしました!!」
一連の騒動にポカンとしている看護婦さんや患者さんにお辞儀をして私も先生の後を追いかけた。
それから二時間ほど。
「まあ、くつろいでと言ったのは私だけどもね……」
仕事を終え、真唯さんがリビングへ来てくれた頃には時計は七時を回っていた。
部屋は意外と小ぢんまりして、家具も安物というわけではないが高級品でもない中級クラスの物ばかり。
人気のお医者さんだと聞いていたからもっと贅沢な暮らしをしているのかと思ったけど、案外普通な感じだった。
そんな普通のソファーに散乱しているビール缶やお菓子の袋を見下ろして顔を引きつらせている真唯さんがそこにいた。
最初は私たちも大人しくお茶をしながらテレビなどを見ていたのだが、そのうち暇になり、おまけにお土産に買ってきた饅頭を私が全部食べちゃったものだから急遽コンビニに行こうという事になって、そしたら先生がビールも欲しいと言い出して、それなら私は肉まんだ、じゃあ日本酒だ唐揚げだウイスキーだと調子に乗ってしまって気がついたら部屋がどっちらけになっていたのです申し訳ない。
「……まあ、この生物が来るって聞いた時点でこのぐらいは覚悟していたけどね」
ソファーに大の字になって眠る酔っぱらい幼女を脇にのかし、真唯さんは私の向かいに座った。
煙草に火を付けて、少し辺りをキョロキョロし、灰皿が見当たらないとわかると、絨毯に転がっているビールの空き缶を代用品として目の前に置いた。
ぶわあぁぁぁぁぁぁ~~~~っと濃い煙を吐き出して私に一言。
「あ、煙草吸っていいかしら?」
吸っとるやんけ~~~~!! しかもソフトパッケージのピースだとう!?
たしかバイト先のオヤジが吸っていたのと同じ銘柄だ。
……こ、こやつ出来るな、と私は戦慄の汗を流す。
「ご、ごめんなさい散らかしてしまって、すぐ片付けますから」
私がそう言うと、
「ああ、いいわいいわ、どうせ明日は家政婦さんが来るから、ついでに掃除してもらうわ」
「か……家政婦さんを雇っているんですか??」
「そう、私、独身だしね。仕事も忙しいし、家事をする暇も気力もないから週二くらいで来てもらってるのよ。掃除も洗濯も料理もしてくれるし助かるわ」
ううむ……こんな優秀な美人さんが独り者とは勿体ない……これも時代かのぉ。
でも、女医師の悠々自適な一人暮らし生活かぁ……なんかそれはそれで憧れるなぁ。私も将来そんな生き方をしてみてもいいかもしれない。
「ところでさ。この生物どうしたの? 妙に縮んじゃってるけど?」
捲れた腹をツンツン突っつき生物《なまもの》の顔に煙をかける真唯さん。
「あ、え~~と……それはまぁ色々ありまして……でも、よくそれが死ぬ子先生だってわかりましたね?」
「死ぬ子?? ああ、この生物の事ね……まぁいいわ、そりゃ分かるわよ。ファントムを見ればね。……能力者に取り憑いたファントムはみんな人間と同じく違う顔をしているから、慣れればそれで判別が出来るわ」
「な……なるほど……??」
そうだったのか……しかし、先生のファントムなんて今は出ていないぞ? さっきも出ていなかったはずだし、いつの間にこの人はそれを見たのだろう??
わたしがマジマジと先生を凝視していると、
「ふふ、あなたが見てもわからないでしょ? 私は特に目がいいのよ」
と、笑った。
目? 目がいいだけでファントムって見えるものなのか??
そもそも視力の問題か??
「さて、私もお腹が空いたわ。せっかく遠くから来てくれた事だし、何か出前でも頼みましょうか?」
「マジすか!?」
真唯さんの言葉に、私の疑問は彼方に吹き飛んでいったのだった。
それからマリア、久しぶりね……なんて格好してるのよ」
はぁ~~~~と深いため息をついて、その美女は眼鏡を上げた。
マリア?? 先生の事を言っているのだろうか?
そして私の名を知っているこの人物は――――。
「久しぶりねマユっち。相変わらず堅物そうでなりよりだわ」
先生が白衣の美女に笑いかける。
その目は少し悪戯っぽく曲がっていて、二人が気の知れた友達だと語っていた。
とすればこの人が先生の言っていた同期の人なんだろう。
「あ……は、は、はじめまして宝塚女優と言います。先生の一応生徒をやっています」
焦げた頭を燻ぶらせて起き上がり、挨拶をする。
「私はこの診療所を経営している森田真唯よ、よろしくね」
真唯さんと言うのか。
凄く綺麗なメガネ美人だが、すこし気だるそうでくたびれた雰囲気がする。
「マリアから話は聞いてるわ、なかなか面白い生徒なんですって? この生物《なまもの》に面白いと言わせるなんて……あなたとても根性がありそうね」
その一言で、私はこの人と心が繋がった気がした。
「ともあれ、今はまだ診療時間中なの。奥の部屋に案内するから、そこでしばらく待っていてくれるかしら」
「リビングでしょ? いいわ、勝手にお邪魔するから。お茶菓子は買ってきたから、お茶だけ貰うわね」
そう言って先生はガボガボのスリッパをぺちぺち言わせながら廊下を走って行く。
そして診療室やレントゲン室の奥にある扉を開けて消えていく。
「あっちが私の自宅になっているのよ。あなたも遠慮しないでくつろいで待っててね」
薄い笑顔で私に笑いかけると、真唯さんも診療室へと引っ込んでいく。
「あ、え~~~~と、ははは、その……お騒がせしました!!」
一連の騒動にポカンとしている看護婦さんや患者さんにお辞儀をして私も先生の後を追いかけた。
それから二時間ほど。
「まあ、くつろいでと言ったのは私だけどもね……」
仕事を終え、真唯さんがリビングへ来てくれた頃には時計は七時を回っていた。
部屋は意外と小ぢんまりして、家具も安物というわけではないが高級品でもない中級クラスの物ばかり。
人気のお医者さんだと聞いていたからもっと贅沢な暮らしをしているのかと思ったけど、案外普通な感じだった。
そんな普通のソファーに散乱しているビール缶やお菓子の袋を見下ろして顔を引きつらせている真唯さんがそこにいた。
最初は私たちも大人しくお茶をしながらテレビなどを見ていたのだが、そのうち暇になり、おまけにお土産に買ってきた饅頭を私が全部食べちゃったものだから急遽コンビニに行こうという事になって、そしたら先生がビールも欲しいと言い出して、それなら私は肉まんだ、じゃあ日本酒だ唐揚げだウイスキーだと調子に乗ってしまって気がついたら部屋がどっちらけになっていたのです申し訳ない。
「……まあ、この生物が来るって聞いた時点でこのぐらいは覚悟していたけどね」
ソファーに大の字になって眠る酔っぱらい幼女を脇にのかし、真唯さんは私の向かいに座った。
煙草に火を付けて、少し辺りをキョロキョロし、灰皿が見当たらないとわかると、絨毯に転がっているビールの空き缶を代用品として目の前に置いた。
ぶわあぁぁぁぁぁぁ~~~~っと濃い煙を吐き出して私に一言。
「あ、煙草吸っていいかしら?」
吸っとるやんけ~~~~!! しかもソフトパッケージのピースだとう!?
たしかバイト先のオヤジが吸っていたのと同じ銘柄だ。
……こ、こやつ出来るな、と私は戦慄の汗を流す。
「ご、ごめんなさい散らかしてしまって、すぐ片付けますから」
私がそう言うと、
「ああ、いいわいいわ、どうせ明日は家政婦さんが来るから、ついでに掃除してもらうわ」
「か……家政婦さんを雇っているんですか??」
「そう、私、独身だしね。仕事も忙しいし、家事をする暇も気力もないから週二くらいで来てもらってるのよ。掃除も洗濯も料理もしてくれるし助かるわ」
ううむ……こんな優秀な美人さんが独り者とは勿体ない……これも時代かのぉ。
でも、女医師の悠々自適な一人暮らし生活かぁ……なんかそれはそれで憧れるなぁ。私も将来そんな生き方をしてみてもいいかもしれない。
「ところでさ。この生物どうしたの? 妙に縮んじゃってるけど?」
捲れた腹をツンツン突っつき生物《なまもの》の顔に煙をかける真唯さん。
「あ、え~~と……それはまぁ色々ありまして……でも、よくそれが死ぬ子先生だってわかりましたね?」
「死ぬ子?? ああ、この生物の事ね……まぁいいわ、そりゃ分かるわよ。ファントムを見ればね。……能力者に取り憑いたファントムはみんな人間と同じく違う顔をしているから、慣れればそれで判別が出来るわ」
「な……なるほど……??」
そうだったのか……しかし、先生のファントムなんて今は出ていないぞ? さっきも出ていなかったはずだし、いつの間にこの人はそれを見たのだろう??
わたしがマジマジと先生を凝視していると、
「ふふ、あなたが見てもわからないでしょ? 私は特に目がいいのよ」
と、笑った。
目? 目がいいだけでファントムって見えるものなのか??
そもそも視力の問題か??
「さて、私もお腹が空いたわ。せっかく遠くから来てくれた事だし、何か出前でも頼みましょうか?」
「マジすか!?」
真唯さんの言葉に、私の疑問は彼方に吹き飛んでいったのだった。
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