超能力者の私生活

盛り塩

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第136話 森田真唯④

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「透視能力……?」

 確か百恵ちゃんのお世話係の瀬戸さんが透視能力持ちだと言っていた。
 彼女はトランプを透かせて見るくらいが精一杯だと言っていたが、最上級と言うからには真唯さんのはもっともっとすごい能力だということだろう。

 しかし凄いとはいえ透視能力。
 物を透かして見ること意外に何か効果があるとでも言うのだろうか?

「虚にして霊なり、寂にして照す、眼にあって色を見れども、諸の色惑をかふむらず、これ天眼通なり」
 死ぬ子先生が意味不明な呪文を唱え始めた。

「こらこら、不思議な顔で私を見ないの。……これはね、昔のとあるお坊さんが書き記した書の一文よ。
 意味は……まぁざっくり言えば、あらゆる事象を自由自在に見通すことが出来る能力、これすなわち天眼通ってところかしらね?」

「あらゆる事象を見通す!???」

「そ、古今東西過去未来、全ての事柄を彼女はその目で見ることが出来るのよ」
「な……なんじゃそら……!!」
 想像とは違う答えに私は目を丸くした。

 すべての事柄を見通すだとぅ……? 

 もしそれが本当なら、彼女の能力は菜々ちんや先生の比ではない、世界の全ての情報を自由に掌握出来るということ。
 それはまさに情報系能力最強、神にも匹敵する超チート能力ではないか!?
 私が羨望の眼差しをむけていると、真唯さんは冷ややかな目線で、

「いや、ないない。さすがにそれは無い」
 と手を振って否定してきた。

「なによぉ、別に嘘は言ってないでしょ?」
 先生がそんな真唯さんを見て膨らむ。

「嘘よ、大嘘よ。……私の能力はそんな大したものじゃないわ」
 疲れた表情で憮然と先生を睨む真唯さんだが、

「でも、ただ透視するってわけじゃ無いんですよね?」
 私が興味津々な顔で聞くと、彼女は少しはにかんで、

「まぁね、この馬鹿がいうほど凄くはないけども、一応、透視能力系では最強と言われているのは事実よ。とは言っても『みる』以外は出来ないから、あなたやこの馬鹿の妹さんみたいに派手な活躍は出来ないけどね?」
 と答えてくれた。

「馬鹿馬鹿と失礼ね。いいからとっととその天眼通で画像を解析してみせなさいな」
「……ふう、いいけどね……このレベルの透視ってかなり疲れるのよね……」

 そう言うと真唯さんはスマホの画像を凝視し始める。
 私はなにが始まるのだろうと、その様子をワクワクしながら見ていると、

 ――――ボワッと彼女の背中からファントムが現れた。

 そのファントムは人の形をしていて、薄衣を纏った妖艶な女性だった。
 何となく古代日本を連想させる雰囲気があるが――――?

「出たわね真唯のファントム『アマノウズメ』が」
 先生がそれを見て可笑しそうに呟いた。

「はぁ!? アマノウズメ……ってあの天の岩戸伝説の??」
「そうよ、古代の神様の一人よ」
「そ、そ、そ、そ、そ、そんなお人がファントムとして憑いてるんですか??」
「まぁ、あの伝説のご本人ってわけじゃないでしょうけどね。そもそもファントムの名前なんて何時、誰が、どうやって決めたのなんてイマイチわかっていないし、組織も昔からの伝統的な呼び名をそのまま検証もしないで使ってるから『アマノウズメ』なんてものはただの記号と思って貰ってかまわないわ。
 ただ、それでも古代日本の神の名を冠しているファントムが弱い存在のわけないけどね」

 ……でしょうねと、私は汗を流してそのアマノウズメを観察した。

 彼女は真唯さんから上半身だけ抜け出していて、まるで何かを受け止めるかのように天に向かって両手を掲げている。
 その強いエネルギーがチリチリと私の肌を刺激してくる。
 ラミアもなにやら警戒心を露わに、それを見ていた。
 真唯さんはアマノウズメから流れてくるエネルギーを全て目に集結させて画像を凝視し続けている。
 彼女の目が結界と同じ青色に輝いていた。

「真唯はね、この能力で人の命を救っているのよ」
 唐突に先生が呟いた。

「はい? 人の命を?」
「ええ、彼女の透視能力は人の身体の隅々まで鮮明に見渡す事が出来るわ。レントゲンやCT、超音波などと言った検査機器とは比べ物にならないくらいに正確にね」
「そ、それで医者を?」
「ええ、どんな重病も彼女にかかれば、普通なら観測出来ないほどの初期段階で見つける事が出来るわ」
「す……すごい」
「ええ、でも本当に凄いのはここからで、たとえ病気を見付けたとしてもそれが治療出来ないような難病なら意味がない、けど、彼女の能力はその治療法すらしまうのよ」
「……見通す」
「そう、アマノウズメが持つ天眼通は、世界の理《ことわり》を見る能力。病気の正体を見通して、それを消す方法すらも見透かしてしまうのよ」

 ちょっと待て。
 えっと……それじゃまるでこの御方は本当に神様なんじゃないか??
 不治の病の治療法を見通す能力なんて……私のラミアとはまた違うチート能力じゃないか!?
 なぜなら、私は一人を対象にしているが、真唯さんなら数多の人間をまとめて救うことが出来る。

「じゃ、じゃあ真唯さんってノーベル賞とか取り放題っていうか、この人がいればこの世から不治の病が無くなるんじゃないですか!??」
「ノーベルって、俗的な事を言うのね」

 先生が小馬鹿にしたように笑う。
 なんだよう、べつにいいじゃないか本当のことだしよう。

「でもね、そんなうまい話でも無いのよこれが」

 先生がいまだ画像を凝視している真唯さんを見つめて言った。
 真唯さんの頬には幾筋の汗がつたっていた。
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