超能力者の私生活

盛り塩

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第157話 黒幕の正体③

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「――――エセ関西人!??」
「誰がエセやねんっ!! ウチは歴とした淡路民や!!」
「微妙だねぇ」

 正也さんのツッコミが聞こえてくるが、それに私は応えることが出来なかった。

「――――うぐっ!???」

 目の前が急に暗くなった。
 息が出来なくて苦しくなる。
 いや、息は出来ている。酸素が取り込めないだけだ。
 見ると他の三人もみな苦しそうに顔を歪めている。

「ウチの能力『水分操縦《ウンディーネ》』や。有効距離内の液体なら何でも動きを操作できるんやで? 悪いけど、あんたらの血流止めさせてもらったで?」

 なんだと……そんな事も……。
 くそ、それでも攻撃が見えていれば結界で防げただろうが、認識阻害のせいで完全に不意を付かれた。
 必死に息を吸い込むが血流が止められていたら意味がない。
 他の三人も酸欠で立っていられなくなっている。

「すまんなぁ。奇襲なんてウチの趣味やないんやけど、あんたら四人相手は流石のウチもしんどいさかいな」

 そんな彼女の声も遠くに聞こえる。
 ――――やばい、これ……地味にキツい。

「ラミア……結界……」
『キュキュ……』

 しかし酸欠で集中力を失った私は、ラミアが送り込んでくる結界エネルギーを形に変えることは出来なかった。

「やれやれ、意外とあっけなかったね。まぁ隙きを付けば誰でもこんなものかな?」
「兄ぃとウチのコンビやったら初見で負ける事なんてまず無いからな。すまんなぁ四人とも、死体は大事に葬ったるさかいな、恨みっこは無しやで?」

 そしてほとんど無くなる私の結界。

「うん。それじゃあ処分するとしようか? みんな撃っちゃっていいよ」

 ――――ジャジャキッ!!!!

 正也さんの号令とともに、再び私たちに向けられる銃口。
 まずい。結界が出せないいま撃たれたら、私たちなんてひとたまりもない。
 視界も無くなって意識も薄れてきた私たちに、その一斉掃射を躱す術もありはしない。
 だが、取り巻きたちの指がその引き金を引くより一瞬早く――――、

 ――――ガンッ!!!!
 一つ銃声が鳴った。

「え!?」

 その音の方角――――それはおそらく死ぬ子先生の銃から出た音。

「な……なんやそれ??? 七瀬先生、あんた自分の足を撃ち抜いて……酸欠で頭でもイカれたんか????」
 渦女の同情した声が聞こえるが、

「――――――――ふぅ~~~~~~~~……」
 先生は生き返ったかのように息を吐き、スッと立ち上がった。

「な、なんや???」

 そのようすに意味が分からず唖然とする渦女。
 そして、おぼろげな視界の中にいる先生は私に銃口を向けてきた。

 ……お、おい? ちょっとまてよ???

 ――――ガンッ!!!!
 間髪入れず放たれる弾丸!!

「がっ!???」

 ――――なぜだ!? なぜいま私を撃つ!??
 意味がわからないが、撃たれた腕に痛みと熱さが同時に走る。
 弾は私の二の腕をかすめ壁へとめり込んだ。
 そこが青く光っている。

 ――――結界弾?
 それを確認したとき、急に私の視界が戻ってきて息が楽になる。
 血流の流れが復活したのだ!!

「なんやて!??」
「私の弾は能力を打ち破る破邪の弾丸……。訓練生風情が、監視官を舐めるんじゃないわよ?」

 先生の撃った結界弾は私の腕の肉を少し削ぐ代わりに、渦女の能力を粉砕してくれていた。

「――――先生さすがっ!!」

 私はすぐに結界を再発動させる!!
 そして百恵ちゃんと菜々ちん、二人の体にそれを浸透させた。
 ――――バババリバリバリバリッ!!!!
 結界が煌めき火花を散らせる。
 先生に習い、私の結界で彼女らの中にある渦女の能力を消滅させたのだ!!

「――――っかはっ!?? はぁはぁっ!!!!」
 と、すぐに二人は息を吹き返した。

「大丈夫っ!?」
「あ、ありがとう宝塚さん」
「く……渦女……おヌシ本気で攻撃してきおったなぁっ!??」

 視界を回復させた百恵ちゃんが渦女を睨みつけ怒鳴った。

「当然やろ? 今はもう敵同士なんやで? 訓練所での馴れ合いはもう終いっちゅうことや!!」

 あっさり術を破った先生と私を最大限に警戒しつつ、渦女は百恵ちゃんに絶縁宣言を叩きつけた。

「――――わかった、ならば我輩も容赦はせんぞっ!!!!」

 百恵ちゃんが能力を充填し始める。
 そして両手を広げて叫んだ!!

「こいつら全員吹きとばせ!! 来い!! ガルーダッ!!!!」

 ブアァァァァァァァァァァァァァッ――――ッ!!!!
 瞬時に出現する圧縮空気の種。
 それは店内にいる全敵の周囲に展開し、逃げ場を完全に塞ぐ。

「ひぃぃぃっ!! 七瀬隊長っ!!!!」
 部下の怯えた声が聞こえてくるが、
「裏切り者にかける慈悲はない!! 全員ひとまとめに打尽してくれるわ!!」
 百恵ちゃんの瞳に躊躇の色は無かった。

 しかし――――、
「裏切り者はどっちやねん?」

 ガルーダが放たれる寸前、渦女が一矢、言葉を射って来た。

「――――ぐっ!!!!」

 それを聞いて百恵ちゃんは固まってしまう。

「百恵よぉ、あんたも所長に拾われた口やろうが? その所長――――いや、あんた風に言うたらオジサマか? が、付いてこい言うとんねん。それをあんた、なに弓引いとんねん? それこそが裏切りゆうんやで?」

「……そ、それは…………」
 百恵ちゃんの顔がみるみる青ざめていく。

 百恵ちゃんにとって、所長は親と同格の大事な存在。
 彼らを撃退すると言うことは、その所長との決別を意味するのだ。
 そんな判断、まだ幼い彼女に安々と出来るはずもなかった。

 シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……。
 圧縮空気がみるみる消えていく。

 渦女の言葉に、精神が折られた証拠であった。
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