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第164話 悪意の尋問③
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「正也……さん?」
私は急に様子が変わった彼を不思議に見つめる。
いま一瞬見えた影は……まさか!?
「カ……カカカカカカカカカカ……」
正也さんの表情がみるみる険しくなっていき、血管が浮き出て口が裂け始める。
「まさか、ベヒモス化しているの……!?」
「所長……あんた……」
歪んでいく彼の顔を、怒りに満ちた目で睨む死ぬ子先生。
どこからか、どうやってか知らないが、正也さんを暴走させようとしている。
そのようすを見て、私と先生はかつての病室での瞬を思い出していた。
あの時も……所長はこうやって瞬を暴走させたのか?
「カカカカカ……あっはははははははっ!! あ~~~~なるほどなるほど……こんな感じですか……意外と悪くないんですね」
正也さんは口から涎をポトポトと落としながら天井を見上げ笑った。
そしてふと諦めた表情を作ると、語り始めた。
「僕は……奈良の片田舎に生まれました……」
「……何を話すつもり?」
結界弾を込めた銃を油断なく構えて先生が正也さんを睨む。
それに応えることなく正也さんは続きを話す。
「物心がつき、父子家庭だった僕は、気が付けば周囲からイジメられる存在でした。……意味がわからず……とにかく毎日のように近所の同年代に攻撃されました。おもちゃは取られ、泥水はかけられ、おしっこは飲まされ……それでもね、周囲の大人たちは僕を助けてはくれませんでした。それどころか大人たちまで僕を殴り、蹴ったりもしました。父親に相談しても、父は悔しそうに僕を抱きしめるだけで……。
小学生になった頃、自分がイジメられる理由を知りました。簡単でした。……僕の母親が精神異常者だったからです。
ある日突然、職場で狂ったように暴れて周囲の人を傷つけたそうです。
すぐに取り押さえられましたが、その内の一人は重傷で……母はそのまま大きな病院の隔離病棟に入れられました。そしてその噂はあっという間に村に広まり、その子供である僕は異常者の子供として村中から避けられ、その日から父親とともに差別され始めました」
そう言って乾いた笑いを上げると、正也さんは目に涙を浮かべ始める。
縛られている渦女も、そんな正也さんを見て泣いていた。
「今から思えば……母はベヒモス化していたのかも知れませんね。……ともかく僕はそれからもずっとイジメられ続け、それでも理由がわかったおかげで納得……は出来ませんでしたけど、我慢はしようと思いましたね。でもある日――――」
正也さんの目が急につり上がった。
髪の毛は逆立ち、目は真っ赤に充血し始める。
「父親が村の男どもになぶり殺しにされました!!」
正也さんの涙に赤い色が混ざる。
怒りのせいか、身体の変化なのが、歯がガチガチと鳴り震え始める。
「集会での飲みで、息子である僕を侮辱されたのが引き金だったと聞きました。そこにいた男連中は逆らった異常者の家族を生意気に思い、酔った勢いもあって集団で暴行し、その後、死んでいる父を見て焦ったそのクズどもは、秘密裏に遺体を処分しました。その一週間後です……僕が所長に出会ったのは」
――――ブチブチブチブチ……。
腕を拘束していたインシュロックが引きちぎられる。
正也さんの体はすでにリミッターが外れていた。
「所長は教えてくれましたよ。父が細かく刻まれて川に流されたことと、それをやった男ども全員の名前をね。そして僕はその瞬間、能力に寝覚めたんです!!」
言い終わると同時に正也さんの殺気が一気に膨れ上がった。
「宝塚さんっ!! 存在値操作っ!! ベヒモス化を解除してっ!!」
先生が叫んだっ!!
「ラミアっ!!」
回復能力の応用――存在値操作をラミアに命じるっ!!
しかし――――!!
「うぐるぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!」
正気を失った正也さんが、その拳を全力で車の床に叩き込んだっ!!!!
――――ドコッ!! ゴンッ!!!!
貫かれる鉄板!!
抜けた拳はそのまま地面をもぶち殴り、車体を持ち上げる!!
――――バァァァァァンッ!!!!
人間を遥かに超えた拳の破壊力と、車の速度がかけ合わさって宙に舞う車体。
「――――くぅ!???」
私の体も浮き上がりバランスが取れなくなる。
その隙きを逃さず正也さんは――――、
「ぐるぅぅぅぁっ!!!!」
車体に突き刺さった腕にもう一本の腕を差し込むと、その鉄板を力任せに引き裂いた!!
「な――――っ!??」
衝撃で瞬時に真っ二つになる車体。
車外に放り出される私と百恵ちゃん。
正也さんもまた渦女を抱えて飛び出した!!
――――ゴォォォォォォォォッ!!!!
時速100キロ以上で迫るアスファルト。
「ラミア、結界術っ!!」
『キュウイッ!!!!』
咄嗟に百恵ちゃんを抱きかかえ、ラミアに物理耐性のある結界を張らせる!!
――――ドガッガガガガガガガガガガガガッ!!!!
着地と同時に道路を削りながら減速する。
結界は私たちを完璧にその衝撃から守ってくれるが、
「姉貴、菜々ーーーーっ!!!!」
――――ドガォォォォォォォォンッガラガラガラッ!!!!
先生と菜々ちんを乗せた前半分が砕け散りながら道路を滑り――――止まった。
「先生、菜々ちんっ!!!!」
車体はひしゃげて原型はほとんど無くなっている。
けたたましいクラクションを鳴らして後続車が猛スピードでその脇をすり抜け走り去っていく!!
「――――くっ!! ガルーダァァァァッ!!!!」
百恵ちゃんが能力を呼び起こし、
――――ッドッドガババババババアンッ!!!!
後続車をせき止めるが如く、後方の道路を破壊し地面を抉った!!
何台かの車がフルブレーキをしながらその窪みに落ちていく。
その土煙の中からにじみ現れる二つの影。
完全にベヒモスへと姿を変え、モンスター化した正也さんと、拘束を解かれた渦女の姿だった。
私は急に様子が変わった彼を不思議に見つめる。
いま一瞬見えた影は……まさか!?
「カ……カカカカカカカカカカ……」
正也さんの表情がみるみる険しくなっていき、血管が浮き出て口が裂け始める。
「まさか、ベヒモス化しているの……!?」
「所長……あんた……」
歪んでいく彼の顔を、怒りに満ちた目で睨む死ぬ子先生。
どこからか、どうやってか知らないが、正也さんを暴走させようとしている。
そのようすを見て、私と先生はかつての病室での瞬を思い出していた。
あの時も……所長はこうやって瞬を暴走させたのか?
「カカカカカ……あっはははははははっ!! あ~~~~なるほどなるほど……こんな感じですか……意外と悪くないんですね」
正也さんは口から涎をポトポトと落としながら天井を見上げ笑った。
そしてふと諦めた表情を作ると、語り始めた。
「僕は……奈良の片田舎に生まれました……」
「……何を話すつもり?」
結界弾を込めた銃を油断なく構えて先生が正也さんを睨む。
それに応えることなく正也さんは続きを話す。
「物心がつき、父子家庭だった僕は、気が付けば周囲からイジメられる存在でした。……意味がわからず……とにかく毎日のように近所の同年代に攻撃されました。おもちゃは取られ、泥水はかけられ、おしっこは飲まされ……それでもね、周囲の大人たちは僕を助けてはくれませんでした。それどころか大人たちまで僕を殴り、蹴ったりもしました。父親に相談しても、父は悔しそうに僕を抱きしめるだけで……。
小学生になった頃、自分がイジメられる理由を知りました。簡単でした。……僕の母親が精神異常者だったからです。
ある日突然、職場で狂ったように暴れて周囲の人を傷つけたそうです。
すぐに取り押さえられましたが、その内の一人は重傷で……母はそのまま大きな病院の隔離病棟に入れられました。そしてその噂はあっという間に村に広まり、その子供である僕は異常者の子供として村中から避けられ、その日から父親とともに差別され始めました」
そう言って乾いた笑いを上げると、正也さんは目に涙を浮かべ始める。
縛られている渦女も、そんな正也さんを見て泣いていた。
「今から思えば……母はベヒモス化していたのかも知れませんね。……ともかく僕はそれからもずっとイジメられ続け、それでも理由がわかったおかげで納得……は出来ませんでしたけど、我慢はしようと思いましたね。でもある日――――」
正也さんの目が急につり上がった。
髪の毛は逆立ち、目は真っ赤に充血し始める。
「父親が村の男どもになぶり殺しにされました!!」
正也さんの涙に赤い色が混ざる。
怒りのせいか、身体の変化なのが、歯がガチガチと鳴り震え始める。
「集会での飲みで、息子である僕を侮辱されたのが引き金だったと聞きました。そこにいた男連中は逆らった異常者の家族を生意気に思い、酔った勢いもあって集団で暴行し、その後、死んでいる父を見て焦ったそのクズどもは、秘密裏に遺体を処分しました。その一週間後です……僕が所長に出会ったのは」
――――ブチブチブチブチ……。
腕を拘束していたインシュロックが引きちぎられる。
正也さんの体はすでにリミッターが外れていた。
「所長は教えてくれましたよ。父が細かく刻まれて川に流されたことと、それをやった男ども全員の名前をね。そして僕はその瞬間、能力に寝覚めたんです!!」
言い終わると同時に正也さんの殺気が一気に膨れ上がった。
「宝塚さんっ!! 存在値操作っ!! ベヒモス化を解除してっ!!」
先生が叫んだっ!!
「ラミアっ!!」
回復能力の応用――存在値操作をラミアに命じるっ!!
しかし――――!!
「うぐるぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!」
正気を失った正也さんが、その拳を全力で車の床に叩き込んだっ!!!!
――――ドコッ!! ゴンッ!!!!
貫かれる鉄板!!
抜けた拳はそのまま地面をもぶち殴り、車体を持ち上げる!!
――――バァァァァァンッ!!!!
人間を遥かに超えた拳の破壊力と、車の速度がかけ合わさって宙に舞う車体。
「――――くぅ!???」
私の体も浮き上がりバランスが取れなくなる。
その隙きを逃さず正也さんは――――、
「ぐるぅぅぅぁっ!!!!」
車体に突き刺さった腕にもう一本の腕を差し込むと、その鉄板を力任せに引き裂いた!!
「な――――っ!??」
衝撃で瞬時に真っ二つになる車体。
車外に放り出される私と百恵ちゃん。
正也さんもまた渦女を抱えて飛び出した!!
――――ゴォォォォォォォォッ!!!!
時速100キロ以上で迫るアスファルト。
「ラミア、結界術っ!!」
『キュウイッ!!!!』
咄嗟に百恵ちゃんを抱きかかえ、ラミアに物理耐性のある結界を張らせる!!
――――ドガッガガガガガガガガガガガガッ!!!!
着地と同時に道路を削りながら減速する。
結界は私たちを完璧にその衝撃から守ってくれるが、
「姉貴、菜々ーーーーっ!!!!」
――――ドガォォォォォォォォンッガラガラガラッ!!!!
先生と菜々ちんを乗せた前半分が砕け散りながら道路を滑り――――止まった。
「先生、菜々ちんっ!!!!」
車体はひしゃげて原型はほとんど無くなっている。
けたたましいクラクションを鳴らして後続車が猛スピードでその脇をすり抜け走り去っていく!!
「――――くっ!! ガルーダァァァァッ!!!!」
百恵ちゃんが能力を呼び起こし、
――――ッドッドガババババババアンッ!!!!
後続車をせき止めるが如く、後方の道路を破壊し地面を抉った!!
何台かの車がフルブレーキをしながらその窪みに落ちていく。
その土煙の中からにじみ現れる二つの影。
完全にベヒモスへと姿を変え、モンスター化した正也さんと、拘束を解かれた渦女の姿だった。
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