3 / 5
第1奏──旅立ちの始奏曲 〜grave〜
旅立ちの始奏曲②
しおりを挟む
いつからかは、わからない。けど、確かに自分はここにいる。
真っ白な景色が、果てしなく続いている。
ここは、どこなのだろう。どこを見渡しても、どこまでも続く変わらない何もない『白』だけが在る。
歩こう。そう思って、歩みを進めた。
──なにも、ないなあ。
しばらく歩いても、変わらない景色がさみしい。すこしだけ、やすもう。
ちょっとだけ、歌ってもいいかな。
そういえば、ここにはおひさまがないなあ。
Saul lamite
──上から、あたたかな光が降り注いでくる。そうだ。いつも自分が知る、おひさまのあたたかさだ。
でも、なんでおひさまがあるの?ボクが歌ったから、出てきたのかな。
うーん、わからない。でも、歌ったら出てきたんだよね。だけど真っ白だから、おひさまがみえない。
……あおいおそらがみたいな。
Sciy bwe blroe
そう歌うと、天上は鮮やかなスカイブルーで彩られた。ちゃんと、さっき出てきたおひさまも見える。
そうだ。すこしのどがかわいた。なにかのみたいな。
Acqorl bwe wieye
ぽちゃん、と音がして。足元に広い水たまりができた。澄んだ水は青空の太陽の光を反射して、キラキラと光っている。
水面には、自分の姿が映っている。ふわふわと長く伸びた、おひさまのようなかみのけ。青空みたいな、スカイブルーの目。
うん、間違いなく自分だ。そう思いながら、手で水をすくって、口まではこんだ。
おいしい。つめたいお水は、カラカラになったのどを潤した。
なんか、歌いたくなっちゃったな。
Vergeef bwe wieye,Solf bwe whiby
──真っ白な景色が、緑の草原になっていく。ボクが大好きな、白いお花でいっぱいにしていこう。
歌うたびに、この世界の色が染まっていくのなら。楽しいから歌いたい。
高らかに、真っ白だった世界で。彼の綺麗なソプラノがこだまする。草原には木々の苗が芽を出し、そこから──
──大樹へとなり、赤い果実を実らせた。
果実には、どこからか飛んできた白い小鳥が集まっていく。
草原のしげみからは元気に跳ねる獣が見え、果実に向かって走っていった。
えへへ、たのしいな。
意味はなく、ただそこには歌いたい、という感情だけがそこにあった。
ララ、と歌えば歌うほど、世界は色づいていった。
──ぃ、……ろ
少し自分とは違う声が聞こえた。ん、と耳を済ませたけど聞こえない。
──きろ、ね……って
その時だった。グラグラと、世界が揺れた。樹からはバサバサと白い鳥が飛び立って、獣たちはみんなどこかへ行ってしまった。
どうしよう。何が起きているんだろう。
わあっ!?
ドスン、と大きく地面が鳴り響き、バリバリと割れていく。
怖い。どうしよう!?
地面は割れて、足元は消えた。ギュッと目を瞑り、放り投げられた身体。
勢いをつけて落ちていく感覚に、身を震わせた。
『吾子よ。恐れるな』
手に、柔らかく、暖かな何かが触れる。
目を開けると、そこにいたのは。
白い翼と角を閃かせ、白銀の長髪を鬣のようにたなびかせる白の『異形の者』。
『私はお前を見守っている。吾子よ、何があっても恐れるな』
母のようで、父のような優しい微笑みを浮かべ、『彼』は自分の手を取った──
──起きろっ!!!この、ねぼすけっっ!!!!
その瞬間。全部の景色が、暗くなっていって、『ボクの世界は消えてなくなった』。
真っ白な景色が、果てしなく続いている。
ここは、どこなのだろう。どこを見渡しても、どこまでも続く変わらない何もない『白』だけが在る。
歩こう。そう思って、歩みを進めた。
──なにも、ないなあ。
しばらく歩いても、変わらない景色がさみしい。すこしだけ、やすもう。
ちょっとだけ、歌ってもいいかな。
そういえば、ここにはおひさまがないなあ。
Saul lamite
──上から、あたたかな光が降り注いでくる。そうだ。いつも自分が知る、おひさまのあたたかさだ。
でも、なんでおひさまがあるの?ボクが歌ったから、出てきたのかな。
うーん、わからない。でも、歌ったら出てきたんだよね。だけど真っ白だから、おひさまがみえない。
……あおいおそらがみたいな。
Sciy bwe blroe
そう歌うと、天上は鮮やかなスカイブルーで彩られた。ちゃんと、さっき出てきたおひさまも見える。
そうだ。すこしのどがかわいた。なにかのみたいな。
Acqorl bwe wieye
ぽちゃん、と音がして。足元に広い水たまりができた。澄んだ水は青空の太陽の光を反射して、キラキラと光っている。
水面には、自分の姿が映っている。ふわふわと長く伸びた、おひさまのようなかみのけ。青空みたいな、スカイブルーの目。
うん、間違いなく自分だ。そう思いながら、手で水をすくって、口まではこんだ。
おいしい。つめたいお水は、カラカラになったのどを潤した。
なんか、歌いたくなっちゃったな。
Vergeef bwe wieye,Solf bwe whiby
──真っ白な景色が、緑の草原になっていく。ボクが大好きな、白いお花でいっぱいにしていこう。
歌うたびに、この世界の色が染まっていくのなら。楽しいから歌いたい。
高らかに、真っ白だった世界で。彼の綺麗なソプラノがこだまする。草原には木々の苗が芽を出し、そこから──
──大樹へとなり、赤い果実を実らせた。
果実には、どこからか飛んできた白い小鳥が集まっていく。
草原のしげみからは元気に跳ねる獣が見え、果実に向かって走っていった。
えへへ、たのしいな。
意味はなく、ただそこには歌いたい、という感情だけがそこにあった。
ララ、と歌えば歌うほど、世界は色づいていった。
──ぃ、……ろ
少し自分とは違う声が聞こえた。ん、と耳を済ませたけど聞こえない。
──きろ、ね……って
その時だった。グラグラと、世界が揺れた。樹からはバサバサと白い鳥が飛び立って、獣たちはみんなどこかへ行ってしまった。
どうしよう。何が起きているんだろう。
わあっ!?
ドスン、と大きく地面が鳴り響き、バリバリと割れていく。
怖い。どうしよう!?
地面は割れて、足元は消えた。ギュッと目を瞑り、放り投げられた身体。
勢いをつけて落ちていく感覚に、身を震わせた。
『吾子よ。恐れるな』
手に、柔らかく、暖かな何かが触れる。
目を開けると、そこにいたのは。
白い翼と角を閃かせ、白銀の長髪を鬣のようにたなびかせる白の『異形の者』。
『私はお前を見守っている。吾子よ、何があっても恐れるな』
母のようで、父のような優しい微笑みを浮かべ、『彼』は自分の手を取った──
──起きろっ!!!この、ねぼすけっっ!!!!
その瞬間。全部の景色が、暗くなっていって、『ボクの世界は消えてなくなった』。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる