奏世の歌使い〜鳥籠を失くした金糸雀は、楽園創造の旋律を謳う〜

華宮理子

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第1奏──旅立ちの始奏曲 〜grave〜

旅立ちの始奏曲②

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いつからかは、わからない。けど、確かに自分はここにいる。

真っ白な景色が、果てしなく続いている。

ここは、どこなのだろう。どこを見渡しても、どこまでも続く変わらない何もない『白』だけが在る。

歩こう。そう思って、歩みを進めた。

















































──なにも、ないなあ。


しばらく歩いても、変わらない景色がさみしい。すこしだけ、やすもう。

ちょっとだけ、歌ってもいいかな。

そういえば、ここにはおひさまがないなあ。





Saul lamiteおひさま、光って





──上から、あたたかな光が降り注いでくる。そうだ。いつも自分が知る、おひさまのあたたかさだ。

でも、なんでおひさまがあるの?ボクが歌ったから、出てきたのかな。

うーん、わからない。でも、歌ったら出てきたんだよね。だけど真っ白だから、おひさまがみえない。

……あおいおそらがみたいな。




Sciy bwe blroeおそらは、あおい




そう歌うと、天上は鮮やかなスカイブルーで彩られた。ちゃんと、さっき出てきたおひさまも見える。

そうだ。すこしのどがかわいた。なにかのみたいな。

Acqorl bwe wieyeみずは、ひろがっていく



ぽちゃん、と音がして。足元に広い水たまりができた。澄んだ水は青空の太陽の光を反射して、キラキラと光っている。



水面には、自分の姿が映っている。ふわふわと長く伸びた、おひさまのようなかみのけ。青空みたいな、スカイブルーの目。



うん、間違いなく自分だ。そう思いながら、手で水をすくって、口まではこんだ。

おいしい。つめたいお水は、カラカラになったのどを潤した。

なんか、歌いたくなっちゃったな。



Vergeef bwe wieye,Solf bwe whiby草は草原になり、白いお花が咲いている




──真っ白な景色が、緑の草原になっていく。ボクが大好きな、白いお花でいっぱいにしていこう。



歌うたびに、この世界の色が染まっていくのなら。楽しいから歌いたい。

高らかに、真っ白だった世界で。彼の綺麗なソプラノがこだまする。草原には木々の苗が芽を出し、そこから──









──大樹へとなり、赤い果実を実らせた。


果実には、どこからか飛んできた白い小鳥が集まっていく。


草原のしげみからは元気に跳ねる獣が見え、果実に向かって走っていった。

えへへ、たのしいな。

意味はなく、ただそこには歌いたい、という感情だけがそこにあった。

ララ、と歌えば歌うほど、世界は色づいていった。




──ぃ、……ろ

少し自分とは違う声が聞こえた。ん、と耳を済ませたけど聞こえない。

──きろ、ね……って







その時だった。グラグラと、世界が揺れた。樹からはバサバサと白い鳥が飛び立って、獣たちはみんなどこかへ行ってしまった。

どうしよう。何が起きているんだろう。

わあっ!?

ドスン、と大きく地面が鳴り響き、バリバリと割れていく。

怖い。どうしよう!?





地面は割れて、足元は消えた。ギュッと目を瞑り、放り投げられた身体。

勢いをつけて落ちていく感覚に、身を震わせた。




『吾子よ。恐れるな』



手に、柔らかく、暖かな何かが触れる。


目を開けると、そこにいたのは。


白い翼と角を閃かせ、白銀の長髪をたてがみのようにたなびかせる白の『異形の者』。


『私はお前を見守っている。吾子よ、何があっても恐れるな』





母のようで、父のような優しい微笑みを浮かべ、『彼』は自分の手を取った──













──起きろっ!!!この、ねぼすけっっ!!!!










その瞬間。全部の景色が、暗くなっていって、『ボクの世界は消えてなくなった』。
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