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十四歳になる年、マザーに王都にある学園行きを勧められた。
「エリザがあなたを隠したいのもわかってるわ。あなた自身も静かに生きたいと願っていることも。
ここで、良くみんなの面倒も見てくれて、助かってるわ。
でもね、勿体無いと思うの。あなたは頭がいいわ。だからこそ、こんな狭い世界に閉じ込めておくことが勿体無いの。もっと外の世界を見て欲しいの」
「マザー・・・」
マザーは私の手をとった。
皺が増えたカサカサした手は温かかった。
「でも、この目の事がバレたら・・・」
「ふふっ、そう言うと思って、ほら」
マザーはポケットの中から、小さな小箱を取り出した渡してくれた。
中を開けると、小さな丸く薄いガラスが二枚、入っていた。
「目に入れて色を変えることができるレンズですって。帝国では、お洒落でつける人もいるらしいわ」
まるで若い女の子のように笑って見せる。
「マザー、出費が・・・」
「大丈夫よ。未来の投資だと思えば、たいしたことないわ。それに出資者が現れたの」
嘘だ。
毎日、かつかつの生活をしているのに、こんな物をかうお金があるはずがない。
これだって、高価なものだ。帝国で流行っているのだったら、手に入れるのも苦労したに違いない。
私のために・・・。
私を気遣う為に嘘までついて・・・。
そこまでしてくれるのに、断る事はできなかった。
マザーの気持ちが嬉しかった。
「マザー、ありがとう」
マザーを抱きしめた。
「つけてみて」
私はレンズをつけて鏡の前に立った。どこにでもある茶色い瞳の色になる。
世界が明るく見えた。
これで、目を隠さなくてもいいと思うと泣けた。
「マザー・・・」
「似合うわよ。セシリア」
「マザー、ありがとう」
マザーは抱きしめてくれた。
それから数ヶ月後、必死に勉強を頑張った。私は学園の入学試験を受け、無事に入学を果たした。
入学式を間近に控えたころ、孤児院をでた。王都まで馬車で一週間はかかる。これからは学園の寮で暮らすことになる。
小さな鞄一つが、私の荷物だった。
「マザー、いってきます」
「いってらっしゃい。セシリア。いいこと。あなたの味方はここにいることを忘れてはいけないわ。どうにもならないことがあったなら、逃げてもいいのよ。帰っておいで。ここはあなたの家だからね」
「・・・わかったわ」
「セシー、行くの?」
小さな子たちが足に縋り付いてくる。涙をため上目遣いで見上げてくる姿は後髪をひかれる。
「こら、ダメだろ!セシーが困るだろ」
私の次の年長組の二人の男の子・・・バルと、ボブが縋り付く子を抱き上げる。
「気をつけろ。セシーはぬけてるからな」
「虐められたら言えよ!仕返しに行くからな」
「バル!ボブ!」
マザーに叱られた。
「じゃあ、いってきます」
私は外の世界に踏み出した。
これから待つ生活は、私にとっては大変なものになると思う。
でも、それを乗り越えることができれば、孤児院に恩返しができる。
そして、母を迎えに行く・・・。
「エリザがあなたを隠したいのもわかってるわ。あなた自身も静かに生きたいと願っていることも。
ここで、良くみんなの面倒も見てくれて、助かってるわ。
でもね、勿体無いと思うの。あなたは頭がいいわ。だからこそ、こんな狭い世界に閉じ込めておくことが勿体無いの。もっと外の世界を見て欲しいの」
「マザー・・・」
マザーは私の手をとった。
皺が増えたカサカサした手は温かかった。
「でも、この目の事がバレたら・・・」
「ふふっ、そう言うと思って、ほら」
マザーはポケットの中から、小さな小箱を取り出した渡してくれた。
中を開けると、小さな丸く薄いガラスが二枚、入っていた。
「目に入れて色を変えることができるレンズですって。帝国では、お洒落でつける人もいるらしいわ」
まるで若い女の子のように笑って見せる。
「マザー、出費が・・・」
「大丈夫よ。未来の投資だと思えば、たいしたことないわ。それに出資者が現れたの」
嘘だ。
毎日、かつかつの生活をしているのに、こんな物をかうお金があるはずがない。
これだって、高価なものだ。帝国で流行っているのだったら、手に入れるのも苦労したに違いない。
私のために・・・。
私を気遣う為に嘘までついて・・・。
そこまでしてくれるのに、断る事はできなかった。
マザーの気持ちが嬉しかった。
「マザー、ありがとう」
マザーを抱きしめた。
「つけてみて」
私はレンズをつけて鏡の前に立った。どこにでもある茶色い瞳の色になる。
世界が明るく見えた。
これで、目を隠さなくてもいいと思うと泣けた。
「マザー・・・」
「似合うわよ。セシリア」
「マザー、ありがとう」
マザーは抱きしめてくれた。
それから数ヶ月後、必死に勉強を頑張った。私は学園の入学試験を受け、無事に入学を果たした。
入学式を間近に控えたころ、孤児院をでた。王都まで馬車で一週間はかかる。これからは学園の寮で暮らすことになる。
小さな鞄一つが、私の荷物だった。
「マザー、いってきます」
「いってらっしゃい。セシリア。いいこと。あなたの味方はここにいることを忘れてはいけないわ。どうにもならないことがあったなら、逃げてもいいのよ。帰っておいで。ここはあなたの家だからね」
「・・・わかったわ」
「セシー、行くの?」
小さな子たちが足に縋り付いてくる。涙をため上目遣いで見上げてくる姿は後髪をひかれる。
「こら、ダメだろ!セシーが困るだろ」
私の次の年長組の二人の男の子・・・バルと、ボブが縋り付く子を抱き上げる。
「気をつけろ。セシーはぬけてるからな」
「虐められたら言えよ!仕返しに行くからな」
「バル!ボブ!」
マザーに叱られた。
「じゃあ、いってきます」
私は外の世界に踏み出した。
これから待つ生活は、私にとっては大変なものになると思う。
でも、それを乗り越えることができれば、孤児院に恩返しができる。
そして、母を迎えに行く・・・。
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