【完結】あなたに抱きしめられたくてー。

彩華(あやはな)

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3.

 十四歳になる年、マザーに王都にある学園行きを勧められた。

「エリザがあなたを隠したいのもわかってるわ。あなた自身も静かに生きたいと願っていることも。
 ここで、良くみんなの面倒も見てくれて、助かってるわ。
 でもね、勿体無いと思うの。あなたは頭がいいわ。だからこそ、こんな狭い世界に閉じ込めておくことが勿体無いの。もっと外の世界を見て欲しいの」
「マザー・・・」

 マザーは私の手をとった。

 皺が増えたカサカサした手は温かかった。

「でも、この目の事がバレたら・・・」
「ふふっ、そう言うと思って、ほら」

 マザーはポケットの中から、小さな小箱を取り出した渡してくれた。
 中を開けると、小さな丸く薄いガラスが二枚、入っていた。

「目に入れて色を変えることができるレンズですって。帝国では、お洒落でつける人もいるらしいわ」

 まるで若い女の子のように笑って見せる。

「マザー、出費が・・・」
「大丈夫よ。未来の投資だと思えば、たいしたことないわ。それに出資者が現れたの」


 嘘だ。
 毎日、かつかつの生活をしているのに、こんな物をかうお金があるはずがない。

 
 これだって、高価なものだ。帝国で流行っているのだったら、手に入れるのも苦労したに違いない。

 私のために・・・。
 私を気遣う為に嘘までついて・・・。

 そこまでしてくれるのに、断る事はできなかった。

 マザーの気持ちが嬉しかった。

「マザー、ありがとう」

 マザーを抱きしめた。

「つけてみて」

 私はレンズをつけて鏡の前に立った。どこにでもある茶色い瞳の色になる。

 世界が明るく見えた。

 これで、目を隠さなくてもいいと思うと泣けた。

「マザー・・・」
「似合うわよ。セシリア」
「マザー、ありがとう」

 マザーは抱きしめてくれた。


 それから数ヶ月後、必死に勉強を頑張った。私は学園の入学試験を受け、無事に入学を果たした。

 入学式を間近に控えたころ、孤児院をでた。王都まで馬車で一週間はかかる。これからは学園の寮で暮らすことになる。

 小さな鞄一つが、私の荷物だった。

「マザー、いってきます」
「いってらっしゃい。セシリア。いいこと。あなたの味方はここにいることを忘れてはいけないわ。どうにもならないことがあったなら、逃げてもいいのよ。帰っておいで。ここはあなたの家だからね」
「・・・わかったわ」
「セシー、行くの?」

 小さな子たちが足に縋り付いてくる。涙をため上目遣いで見上げてくる姿は後髪をひかれる。

「こら、ダメだろ!セシーが困るだろ」

 私の次の年長組の二人の男の子・・・バルと、ボブが縋り付く子を抱き上げる。

「気をつけろ。セシーはぬけてるからな」
「虐められたら言えよ!仕返しに行くからな」
「バル!ボブ!」

 マザーに叱られた。

「じゃあ、いってきます」

 私は外の世界に踏み出した。
 これから待つ生活は、私にとっては大変なものになると思う。
 でも、それを乗り越えることができれば、孤児院に恩返しができる。

 そして、母を迎えに行く・・・。

 
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