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閑話、エリザ
あの方に再び逢えるとは思わなかった。
夢現に現れたあの方に。
自分が知っている時より、いい意味で歳を重ねた姿をしていた。それでも変わらない眼差し。
だから、本当にあの方にだとわかった時、どんなに驚いた事か。
嬉しい反面、こんな場所でこんなわたくしがいる事を知られたくなかった。
あの方は全てを知っているようだった。
セシリアの名前を口にしたのだ。
わたくしの娘。
あの男との子供。
疑いのない事実の証。
あの子がお腹にいる事に気づいた時、奈落の底に落とされたように思った。今いる場所でさえ、地獄同然だと言うのにそれ以上のショックを受けたのだ。
堕ろす?
堕したい。
でも、王族の血を引く子供。
もしかすると、復讐できる?
そう思ったのも事実。
膨らむお腹。
動き出すのがわかりだす。
気持ち悪かった。自分の胎内にある異物。あの男のものが混じっていると思うだけで気持ちが悪かった。
でもその反面、『命』が愛おしかった。
相反する想い。
わたくしは、娼館にとってもお荷物だった。
それでも、わたくしはあの子を産んだ。
苦しいお産。一人で迎える初めてのお産。
誰かに助けて欲しかった。
自然にあの方の名前を呼んでいた。呼ばずにはいられなかった。
何もなければ、わたくしはあの方の子供を・・・産むはずだったのに・・・。生まれた子供を見れば、あの男の目の色をしていた。紛いない色。
突きつけられる、変えることのできない事実。
ふにゃふにゃの赤ちゃんは可愛い女の子。でも、憎い男の色を持っている。
苦しかった。
『生まれてきてありがとう』
そう言いたくとも、口にできなかった。
セシリアと名付けた。
あの方と一度だけ話した未来の話。
もし・・・。その時の名前。
いいわよねって、思って・・・。
わたくしは、働いた。
拒否権もない仕事。
公爵令嬢として生きてきたわたくしにとって、自尊心を捨てることに等しい行いだった。
でも、生きていく為には必要だった。
セシリアを育てる為にも必要な行為。
必死だった。
必死だった。
セシリアの気持ちをおざなりにしてー、生きてきた。
ひどい事を言ったのも一度や二度ではない。
あの子の存在を否定したこともあった。
お酒も抜け、冷静になると自己嫌悪に陥ることも度々あった。
母親として何が正しいのかわからなくなっていった。
そんなとき、娼館の主人がセシリアを売り出す計画を立てているのを立ち聞きしてしまったのだ。
あの瞳を目玉にして、貴族に売り出すと言うのだ。
血の気が引いた。
あの子を政治に使うのだろうか。
そうなれば、あの子の幸せはない。
自分もあの男の復讐に使おうとは思ったこともある。でも、あの子は物じゃない。
わたくしの娘だ。
幸せになる権利はあるのだ。
客から、フィアナらしき女性の噂話を聞いた事を思い出した。元公爵令嬢が孤児院を営んでいると。
フィアナ・・・、わたくしのせいで・・・、助けてくれるだろうか?
いや、フィアナなら大丈夫だ。
フィアナであると確証を得たわたくしは、手紙を書いた。
そして、それをセシリアに託して、あの子を追い出した。
娼館の主人には、あの子のこれまでの養育費や、これからあろうはずのあの子の損失分をわたくし自身が払うと約束した。
そう、わたくしは公爵令嬢よ。
馬鹿にしないで。
そこらにいる娼婦とは違うの。教育も、美貌も全て違う。これを武器にして成り上がって見せるわ。
娼婦のマナーを向上させ、質を上げることにも協力した。
だが、わたくしにとって過酷な環境下だった。
肺病に侵されたのだからー。
夢現に現れたあの方に。
自分が知っている時より、いい意味で歳を重ねた姿をしていた。それでも変わらない眼差し。
だから、本当にあの方にだとわかった時、どんなに驚いた事か。
嬉しい反面、こんな場所でこんなわたくしがいる事を知られたくなかった。
あの方は全てを知っているようだった。
セシリアの名前を口にしたのだ。
わたくしの娘。
あの男との子供。
疑いのない事実の証。
あの子がお腹にいる事に気づいた時、奈落の底に落とされたように思った。今いる場所でさえ、地獄同然だと言うのにそれ以上のショックを受けたのだ。
堕ろす?
堕したい。
でも、王族の血を引く子供。
もしかすると、復讐できる?
そう思ったのも事実。
膨らむお腹。
動き出すのがわかりだす。
気持ち悪かった。自分の胎内にある異物。あの男のものが混じっていると思うだけで気持ちが悪かった。
でもその反面、『命』が愛おしかった。
相反する想い。
わたくしは、娼館にとってもお荷物だった。
それでも、わたくしはあの子を産んだ。
苦しいお産。一人で迎える初めてのお産。
誰かに助けて欲しかった。
自然にあの方の名前を呼んでいた。呼ばずにはいられなかった。
何もなければ、わたくしはあの方の子供を・・・産むはずだったのに・・・。生まれた子供を見れば、あの男の目の色をしていた。紛いない色。
突きつけられる、変えることのできない事実。
ふにゃふにゃの赤ちゃんは可愛い女の子。でも、憎い男の色を持っている。
苦しかった。
『生まれてきてありがとう』
そう言いたくとも、口にできなかった。
セシリアと名付けた。
あの方と一度だけ話した未来の話。
もし・・・。その時の名前。
いいわよねって、思って・・・。
わたくしは、働いた。
拒否権もない仕事。
公爵令嬢として生きてきたわたくしにとって、自尊心を捨てることに等しい行いだった。
でも、生きていく為には必要だった。
セシリアを育てる為にも必要な行為。
必死だった。
必死だった。
セシリアの気持ちをおざなりにしてー、生きてきた。
ひどい事を言ったのも一度や二度ではない。
あの子の存在を否定したこともあった。
お酒も抜け、冷静になると自己嫌悪に陥ることも度々あった。
母親として何が正しいのかわからなくなっていった。
そんなとき、娼館の主人がセシリアを売り出す計画を立てているのを立ち聞きしてしまったのだ。
あの瞳を目玉にして、貴族に売り出すと言うのだ。
血の気が引いた。
あの子を政治に使うのだろうか。
そうなれば、あの子の幸せはない。
自分もあの男の復讐に使おうとは思ったこともある。でも、あの子は物じゃない。
わたくしの娘だ。
幸せになる権利はあるのだ。
客から、フィアナらしき女性の噂話を聞いた事を思い出した。元公爵令嬢が孤児院を営んでいると。
フィアナ・・・、わたくしのせいで・・・、助けてくれるだろうか?
いや、フィアナなら大丈夫だ。
フィアナであると確証を得たわたくしは、手紙を書いた。
そして、それをセシリアに託して、あの子を追い出した。
娼館の主人には、あの子のこれまでの養育費や、これからあろうはずのあの子の損失分をわたくし自身が払うと約束した。
そう、わたくしは公爵令嬢よ。
馬鹿にしないで。
そこらにいる娼婦とは違うの。教育も、美貌も全て違う。これを武器にして成り上がって見せるわ。
娼婦のマナーを向上させ、質を上げることにも協力した。
だが、わたくしにとって過酷な環境下だった。
肺病に侵されたのだからー。
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