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30.
首にあるチェーンをたぐり、ペンダントを取り出す。帝国の印がついた小さなわたしの宝物。
わたしはこれで救われたことは何回もある。寂しい時や悔しい時に何度もにぎりしめ『大丈夫。大丈夫。やれる。まだやれる』そう呟いてきた。勇気をもらってきた。それを握りしめながら考えていた。
自由とはなんなのか?わたしは自信がない?みんなを信じてない?
不自由さも確かにあった。
でも、それを不便だとは感じたことはない。
イザベラ様にいわれたことが、胸のなかで渦になっているように思えた。
屋敷に帰るとおじいちゃんとお父さんが待ち構えていた。今日あったことを根掘り葉掘り聞き出そうとしてくる。
正直、そんな気分になれない。服を着替えてら一人で考え事をしたいのに、二人はわたしにかまってこようと扉の向こうでへばりついているのがわかった。
「セシリア?どうした?」
「何があったのか?」
「セシリア?」
何度も呼びかけてくる。
一言で言ってしまえばうざい。
「はい、はい、お二人はお仕事に戻ってくださ~い」
マザーが二人を追い立てるような声扉の向こうで聞こえてきた。
「フィアナ?」
「時には女同士の時間も必要なの。男にはわからない内容もあるのよ?」
「女にしか?もしかして男のことか?」
「・・・短絡思考ね。これだから男親はダメダメなのよ」
マザーいいすぎでは??
「入るわよ」
マザーはわたしの部屋に入ってきた。
扉の向こうにある顔にしっしっと手を振っりながらー。
「何があったの?」
にこやかな顔。
わたしはイザベラ様の話をした。
マザーは静かに聞いてくれた。
「そうだったの。確かにわたしから見てもセシリアは自由に見えないわね」
「そんな、わたしは不自由に思ったことはないわ」
「不自由でないから自由というは違うわよ。柵の中で生きている動物が不自由だと思ってる?」
どういうこと?
「柵があって当然と思っているなら、それは不自由とはいえないわね。でも、その柵がなくなればどう?初めは戸惑うでしょうね。
でも、外には柵がないの。どこまでも行くことができるの。
その時になって今まで自分が暮らしていた場所が不自由だったと知り、世界が自由であることを知るの。今のあなたがそれよ」
不自由だったと知り、世界が自由であること知る?
「今までセシリアは誰にも知られないように静かに暮らしていたわ。
でももう隠さなくていいのよ。堂々としていいの。あなたを護る人も味方もいる。わたしたちを信じて生きればいいのよ。我儘を言ってもいい。好きなだけ笑えばいい。わたしたちはみんなあなたが好きなのよ」
サラリと絡まって糸が解けた気がした。
そうだ、ずっとこの目を気にして生きてきた。
バレないように静かに。
ハラハラして、心休まる事がなかった。
だから怖かった。
知られたらわたしはどうなるの?この目を知っている人はどうなるのか?
ずっと思っていた。
この目を気にせずに生きてみたいと。
ありのままの自分で自由に生きてみたいと。
わたしらしくあってみたいと。
でもでもでも・・・。
すべて、この目の理由にして自分を閉じ込めてきた。
言い訳をして外に出るのを恐れていた。
もう、しなくていいの?
この目を隠さなくてもいいの?
恐れなくていいの?
素直に喜んでいい?
「もう、隠さなくていい?」
「ええっ」
「逃げなくていい?」
「ええっ」
「マザーっ」
縋り付くようにして泣いた。
悲しいのか嬉しいのかわからなかった。
ただただ、涙が溢れてきたのだった。
「フィアナ!セシリアを泣かしたな」
男二人が乱入してきた。
立ち聞きしていたのだろう。
仕方ない二人。
「女の子の部屋に押し入るなんて、男性のすべき行いではないわよ!!」
勿論マザーの怒りが炸裂したのは当然の事であった。
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