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1、幼少期
10歳ー2
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突然青い炎がわたしと司祭を中心に円を描くように燃えあがった。
周囲から悲鳴が上がる。他の大人たちが騒いでいる声が聞こえた。
「大丈夫ですか?」
司祭が慌てたように言ってきたのが、わたしは目の前に現れた青い火の玉に釘付けになっていた。
ゆっくりと手を伸ばす。
普通の炎のような熱さを感じない。
「あなたは誰?」
わたしの声に反応したのか、火の玉はゆっくりと形を変え青い鳥の形へと変化した。
『くくくっ』
青い鳥は軽やかに笑う。
『我が怖くないのか。やはりわたしの見込んだ通りだ』
頭の中に響くような声。
「喋れるの?」
鳥はまた笑った。
『当たり前だろう。我は炎を司る霊鳥、鸞という』
「不死鳥、ですか?」
司祭が呟くと、鸞という鳥は真っ青な目で彼を睨みつけた。
『あんなものと一緒にするな。我は鳳凰種にあたる。神獣である朱雀には及ばんが我は鳳凰種の中の鳳凰や鵷鶵より灼熱の炎を有しておる。確かに不死鳥は不死身であり涙や血にも力を宿しておるが、我は瑞鳥ぞ。同じにするでない』
その鳥は羽を大きくばたつかし自分をアピールした。
「申し訳ございません」
司祭は素直に頭を下げた。
「過去に一度だけ、不死鳥と契約した記録があり勘違いをいたしました。申し訳ありません。
鳳凰といえば東方に住まわれている霊鳥。鳳凰種とあれば高位精霊なはず。
なぜあなた様のような高位精霊が彼女に会いにきたのでしょうか?」
東方と聞いてわたしは驚いて、鳥を見ていた。
鳥は喉をくくくっと鳴らす。
『数年前、その者が力を使ったであろう?』
まさか王宮のことでのことだろうか?
思わず頷いた。
『心地よい力で、気に入ったのだ。だから、我が名乗りをあげた。他の輩に渡したくないからな』
青い炎が一層大きくなる。
『娘よ。我と契約せよ』
「契約?」
わたしは復唱した。
『そうだ。簡単なことだろう』
「お待ちください。まだ、彼女は10歳の少女です。普通は名前契約をして精霊を使役します。あなた様がいう契約は意味が違うはず」
『黙れ。お前には関係ない!!』
青い炎が司祭に向けられ、彼は怯えるように蹲った。
鳥は澄んだ目でわたしを見てきた。
『別に、今すぐというものではない。お前の命が尽きる時、その肉体と魂を我にくれればいい』
「わたしの肉体と魂?」
『ああ。さすれば、我はお前の手足にでもなろう』
「・・・」
『どうだ?』
「・・・死ぬ時・・・、おばあさんで、しわしわのくしゃくしゃになっててもかまわないの?」
わたしは首を傾げて聞いた?
鳥はわたしの問いに目を丸くしたかと思うと笑い出した。炎が笑い声に乗ってゆらゆらと揺れる。
『はははっ。そんなことは気にはしない。我らは不死鳥のように不死ではないが人間からすれば長寿の生き物だ。死ぬまでの楽しいおもちゃになるものは欲しい』
不死・・・、長寿・・・その言葉を聞いてわたしは俯いた。
もし、わたしが死んだら・・・一人になるのか・・・。
そう思うと、その鳥が可哀想になった。
「ひとりぼっちは・・・寂しいよね・・・」
『・・・?』
「うん、いいわよ」
わたしは頷いていた。
「エルファ様?」
「一人になったら寂しいもの。死んでからでいいなら、わたしの全部をあげる」
躊躇うことなどなかった。
「エルファ様!」
祭司が慌てたように叫ぶ。その顔はひどく焦っているように見えた。
なんでそんな顔をするの?
周囲から悲鳴が上がる。他の大人たちが騒いでいる声が聞こえた。
「大丈夫ですか?」
司祭が慌てたように言ってきたのが、わたしは目の前に現れた青い火の玉に釘付けになっていた。
ゆっくりと手を伸ばす。
普通の炎のような熱さを感じない。
「あなたは誰?」
わたしの声に反応したのか、火の玉はゆっくりと形を変え青い鳥の形へと変化した。
『くくくっ』
青い鳥は軽やかに笑う。
『我が怖くないのか。やはりわたしの見込んだ通りだ』
頭の中に響くような声。
「喋れるの?」
鳥はまた笑った。
『当たり前だろう。我は炎を司る霊鳥、鸞という』
「不死鳥、ですか?」
司祭が呟くと、鸞という鳥は真っ青な目で彼を睨みつけた。
『あんなものと一緒にするな。我は鳳凰種にあたる。神獣である朱雀には及ばんが我は鳳凰種の中の鳳凰や鵷鶵より灼熱の炎を有しておる。確かに不死鳥は不死身であり涙や血にも力を宿しておるが、我は瑞鳥ぞ。同じにするでない』
その鳥は羽を大きくばたつかし自分をアピールした。
「申し訳ございません」
司祭は素直に頭を下げた。
「過去に一度だけ、不死鳥と契約した記録があり勘違いをいたしました。申し訳ありません。
鳳凰といえば東方に住まわれている霊鳥。鳳凰種とあれば高位精霊なはず。
なぜあなた様のような高位精霊が彼女に会いにきたのでしょうか?」
東方と聞いてわたしは驚いて、鳥を見ていた。
鳥は喉をくくくっと鳴らす。
『数年前、その者が力を使ったであろう?』
まさか王宮のことでのことだろうか?
思わず頷いた。
『心地よい力で、気に入ったのだ。だから、我が名乗りをあげた。他の輩に渡したくないからな』
青い炎が一層大きくなる。
『娘よ。我と契約せよ』
「契約?」
わたしは復唱した。
『そうだ。簡単なことだろう』
「お待ちください。まだ、彼女は10歳の少女です。普通は名前契約をして精霊を使役します。あなた様がいう契約は意味が違うはず」
『黙れ。お前には関係ない!!』
青い炎が司祭に向けられ、彼は怯えるように蹲った。
鳥は澄んだ目でわたしを見てきた。
『別に、今すぐというものではない。お前の命が尽きる時、その肉体と魂を我にくれればいい』
「わたしの肉体と魂?」
『ああ。さすれば、我はお前の手足にでもなろう』
「・・・」
『どうだ?』
「・・・死ぬ時・・・、おばあさんで、しわしわのくしゃくしゃになっててもかまわないの?」
わたしは首を傾げて聞いた?
鳥はわたしの問いに目を丸くしたかと思うと笑い出した。炎が笑い声に乗ってゆらゆらと揺れる。
『はははっ。そんなことは気にはしない。我らは不死鳥のように不死ではないが人間からすれば長寿の生き物だ。死ぬまでの楽しいおもちゃになるものは欲しい』
不死・・・、長寿・・・その言葉を聞いてわたしは俯いた。
もし、わたしが死んだら・・・一人になるのか・・・。
そう思うと、その鳥が可哀想になった。
「ひとりぼっちは・・・寂しいよね・・・」
『・・・?』
「うん、いいわよ」
わたしは頷いていた。
「エルファ様?」
「一人になったら寂しいもの。死んでからでいいなら、わたしの全部をあげる」
躊躇うことなどなかった。
「エルファ様!」
祭司が慌てたように叫ぶ。その顔はひどく焦っているように見えた。
なんでそんな顔をするの?
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