燐火の魔女〜あなたのために生きたわたし〜

彩華(あやはな)

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1、幼少期

11歳ー4

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 レイドリック様はわたしより一歳上と言う。

 わたしたちは茂みを背にして芝生の上に直に座りおしゃべりを始めた。

 同じくらいの子と一緒にいることも話をすることもなかったので、何をしゃべればいいのかわからなかったが、レイドリック様は色々な話をわたしにふってくれた。

 特にセイカの生まれ育った東方のことをよく知っていて嬉しくなる。
 西部の文化にも詳しく、わたしの知らない話をしてくれた。

 アウスラー先生とはまた違う。会話がこんなに楽しいとは思わなかった。
 
 

 あれだけ散歩しろと言っていたセイカはいつの間にかいなくなっているのには気づいたが、そんなことよりレイドリック様の話が面白くて夢中になる。

 レイドリック様はわたしの話にも聞き入ってくれ、反応をかえしてくれた。

 日が傾きかけた頃、セイカが帰ってきた。


『人が来る』

「そろそろ、終わりだね」

 レイドリック様が先に立ち上がり、わたしに手を差し伸べてくれる。

「もし、会えたらこうしておしゃべりしてくれる?」
 
 わたしでいいのなら。

 わたしは嬉しくて小さく頷いた。

「よかった」

 レイドリック様はほっとしたような表情を見せた。

「こうやって二人きりの時だけはレイって呼んで欲しい」
「レイ様?」 
「レイでいい。敬語もなくていい。でも本当に二人きりの時だけだ」

 レイは真剣な顔つきになった。

「ごめんね。僕の都合かもしれない。でも、エルファとは素の自分で向き合いたいんだ」

 そうか・・・。王子様だから。
 誰かがいる時に侯爵の娘がこうして話したら迷惑をかけてしまう。

「わかったわ」

 周りに気を配らなくてはならないのかと考えてしまう。できるかな?と。

『我が協力しよう』
「セイカ?」 
「よろしいのですか?」

 あれ?

「レイ・・・は、セイカの言葉がわかるの?」
「あっ・・・、えっと、なんとなく?」
『・・・』

 普通なら、精霊が言葉として話さない限りわからないと思うのだが、レイはきちんと聞き取ってような気がしたが気のせいだったようだ。
 セイカが教えてくれるなら、迷惑をかけずに済むだろうと思った。

 遠くで誰かを呼ぶ声と足音が聞こえ出した。ここでいると怒られるかもしれない。

 『エル。行くぞ。あっちだ』

 セイカは小さな顔で合図した。わたしはレイを振り返った。

「またね」
「うん、また・・・」

   レイは小さく手を振って見送ってくれる。

 わたしはセイカに促されて庭園をあとにして、両親が待っていると思われる場所に向かって歩き出した。





 無事に両親に会うと、冷たい視線を受けた。文句を言われないところをみるとわたしがいなくなったあとも国王陛下との面会は両親が望んだ以上のことがあったのだろう。


 疲れて寝入っているカリナの横で両親はウキウキと未来の話をし始めた。

 カリナは王太子妃候補となるようだった。
 
 現在、サブリナ国には三人の王子がいる。
側室の第一王子であるアスナルド様は上位精霊だがお身体が弱いらしい、第二王子のガナッシュ様は下位精霊だという。
 現在、上位精霊を使役しているとアスナルド様と王妃から生まれた第三王子のレイドリック様が王太子の候補だった。そしてレイドリック様が1番の有力候補である。

 盛り上がる両親の声を子守唄にうつらうつらするわたしは夢を見た。


 レイが大人になり国王陛下になって笑いかけてくる夢を。


 わたしは・・・この力で騎士になるのもいいかもしれない・・・。レイとカリナと護る騎士に・・・。そうすれば、ずっと2人の傍にいられるかな・・・。
 





 
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