【完結】君が見ているその先には

彩華(あやはな)

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 父は怒ることはしなかった。
 ただ、深いため息をつく。

 僕が何も知らないから。単純なことができないため父は呆れているのだ。

 学園時代もこんな感じだった。
 どれだけ頑張っても兄に勝てたためしはない。
 兄は本当に優秀だった。
 成績は五位以内は当たり前。運動もできていたため先生からの覚えも良かった。優しいので女性からも声をよくかけられていた。同性の友人も多くよくグループの中にいるのを見たことがある。
 一人でいた自分とは違う。
 
 何をしても鈍臭い自分。成績だっていたって普通。足が悪いせいで運動はからっきしできない。
 そんな僕だから両親は何も期待していなかった。
 経営など領地を統べる勉強などしていない。
 
 それが今になって後悔するとは思わなかった。
 両親だって思わなかっただろう。

「ローレンスまでとはいかなくても・・・」 

 父の口からそんな言葉が漏れた。

「申し訳ありません」
「そう思うなら少しでも勉強しようとは思わないのか?」

 している。
 でも、専用用語などすぐに理解できない。聞いたこともない単語が頭に残らない。仕組みだってわからない。まずそこからなのだ。
 基礎から始めなくてはならない。

 それも一人で。
 誰も助けてはくれなかった。
 屋敷の誰もが冷たく見てくる。
 執事のロイドでさえため息をつく。

「ローレンス様なら・・・」

 小さく呟いている。

 誰にも聞くことはできない。それでも本をあさり勉強をした。
 やっと理解すれば周りはできて当然だと言わんばかりの反応しかしてこない。
 
 どれだけ頑張れば・・・。

「まだ足りません」

 睡眠時間を削ってもまだ足らない。
 僕の理解力が悪いのだ。
 それならもっと頑張らなくてはならないのか。

 食堂に行く時間さえ惜しく、いつの間にか執務室が自分の部屋になっていた。簡単に食べられるものを持ってきてもらい仕事と勉強をしながら片手間で食べる。

 そのおかげか、父から任せられる仕事は増えていった。
 だが、褒めてはくれることはない。

 できて当然なのだろう。

「ローレンスはお前の年には全てを任せれるほどだった」

 それは・・・
 
「無駄なことをしていたツケだな」

 絵を描くことが無駄なこと。
 唇を噛み締める。
 もっと頑張らなくては・・・

 認めて欲しい。
 
 そんな思いは叶わない。

 父は呆れているし、母は僕を見ることはない。ヴィクトリアは冷たい表情で優雅な生活を送るだけ。
 屋敷の者たちも僕を腫れ物扱いする。
 兄のことを慕う者たち、両親を倣うもの。

 このまま頑張る意味があるのか自分に問うことがある。
 でももう兄はいないのだ。
 家族を大事にしていた兄。使用人のこと家族のように接していた。
 彼らのために投げ出してはいけない。

 そう、できない僕が悪いのだ。
 きっと、認めて欲しいと思っていることが悪いのだ。

 もっと・・・もっと頑張らなくては・・・

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