【完結】君が見ているその先には

彩華(あやはな)

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5.マリア視点

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 彼は無理をしている。
 どんなに隠しても私にはわかる。

 少し・・・たかだか半年国を空けていただけでこんなことになっているなんて思わなかった。

 お兄さんであるローレンス先輩が土砂崩れに巻き込まれて行方不明。二ヶ月間の捜索しても見つからず泣く泣く打ち切ると、リューンを後継にと急遽決まる。ヴィクトリアとの結婚。そしてー。

 まさか、こんなに痩せ細っているとは思わなかった。
 この感じだと自分がどう変化しているのか気づいていないのかもしれない。
 顔色も悪く、目の下には濃い隈。頬もこけている。何キロ体重が落ちた?
 半年前の面影はほぼない。

 周りは何も言わないの?気づいてない?気づいてるけど気にかけてないの?

「ヴィクトリアとはどうなの?」

 彼女がリューンの一目惚れの相手というのは知っている。あまり新婚家庭の内情を知りたいとは思わないがあえて聞いた。ヴィクトリアなら注意喚起してると信じたかったのだ。

「彼女は今も兄さんが帰ってくるのを待っているよ」

 そうかー。
 やはりー。
 彼女がずっとローレンス先輩に恋しているのは知っていた。
 彼女の気持ちもわからないでもないが、リューンを目にすることさえ放棄しているということだ。

「帰ってくるのを信じてるのね。リューンも・・・?」
「帰ってきて欲しいね。両親も・・・安心するだろうし・・・」

 力なく笑う。

 どれだけ彼の自信を潰しているのだろう。
 ずっと近くで見てきたからこそ、リューンが褒められたいことも認められたいと思っていることも知っている。自己肯定感が低すぎだ。

「絵は・・・絵は描いてるのよね?」

 表情が強張る。瞳の光がわずかに揺れた。
 そして首を振る。

「もう・・・やめたんだ」
「やめた・・・」

 あんなに自分の全てをさらけざし楽しそうに描いていたことを半年足らずで辞めるなんてあり得ない。
 辞めさせられた?

 悔しかった。

「マリア。泣かないで」

 ハンカチが差し出されたことで、自分が泣いているのに気づく。

「心配してくれてありがとう」

 こんな時にお礼を言われるなんてー。

 なぜ私は国外に行ってしまったのだろう。
 後悔しかない。

 信用のおける人間からの手紙を受け取った時には日程の半分を終えた三ヶ月経ってからだった。移動を繰り返していたため手紙は追いかけるようにして送られてきたのだ。
 手紙を読んで引き返そうとしたが、父に「この手紙は三ヶ月前の話だ。現在の状況は違っているだろう。急いで帰ったことで変わらん。今は自分のすべきことをきちんとしろ」と諭され苦々しい思いをしつつ、予定を遂行した。

 もし、手紙がもっと早くついていたなら。近くの国で私がいたならば。もし、ローレンス先輩がいなくなった時にリューンの傍でいたなら・・・もっと違う未来があったかもしれない。

 
 わかっている。過ぎたことを後悔してもどうしようもない。過去を帰ることは出来ないのだ。


 今できることをするまでー。

 私はリューンを見た。

 

 
 
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