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18.ローレンス視点
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ー5年後
マリアの屋敷で久々に食べる母国の食事は美味しかった。
「先輩のおかげです。助かりました」
目の前にいる少しふくよかになったマリアが俺の書いた報告書を読みながら言ってきた。
4年前、後処理などを終え無事に貴族からの離れ、ゆるゆると平民に生活を謳歌するために挨拶をしにリューンに会いに行った際、俺はマリアに唆された。
「外の世界を見てみませんか?」と。
仕事というものに縛られるのも責任を伴うことをするのも嫌で初めは断る。だがマリアは諦めることはなかった。
「どんなことにも責任はついて回ります。結婚や子供を生んだりと・・・。人間は一人では生きとはいけません。だからこそ責任が伴うんです。そういう責任からは逃げられません。それに仕事をしながら自由でいいのですから魅力的ですよ。先輩は学生時代は外国語も得意でしたし、この仕事に向いているはずです」
気乗りしない俺をよそに内容を詳しく説明してきた。
仕事のため交通費は経費で落ちる。外国語ができて、交渉という仕事のため給料もよい。やるべきことをすれば自由に行動してもかまわない。
そんなことを言われたら、嫌とは言えなかったのだー。
そして、おれはブラント商会の国外交渉を担当になった。
外の世界は俺の価値観を変えてくれた。知らない文化。生活は刺激が強く、狭い世界しか知らなかった俺にとっては新しいことだらけだったのだ。
マリアの提案を受けて良かった。
今ではマリアに感謝しかない。
そのマリアは今では立派なブラント商会の社長をしている。国内外でも知らないものはいないだろう。
彼女の存在が一躍有名になったのは、4年前、彼女がパトロンしているリュカと名乗る平民の青年が有名な絵画コンクールで国王陛下賞をとったことだ。
その時に描かれていたのが、「我が女神、春の息吹」と題されたマリアをモデルにした絵画。優しい色遣いとマリアの慈愛に満ちた表情が誰しもの心に感動を生んだ。
その直後、彼女はその作者と結婚していると話題になる。
どんな人物か騒然としたが、マリアはにっこりと笑い、取材陣に「彼は照れ屋さんなので、そっとしておいてください」と言うにとどまり、ちゃっかりブラント商会を売り込んだのだ。
屋敷を出る直前に、その記事を見て俺は笑えてきて「うっしゃっ」と思わず声を漏らしていた。
リュカ・・・リューンに会うことができた時、以前と変わらない元気な姿で見て安心した。
その日はたくさん話をしたのを思い出す。
「そういやリューンは?」
「製作中よ。最終調整みたい。そうそう、次に行く時はリューンも行くそうだからお願いね」
次の仕事に行く時はリューンとともに国外を回る予定になっている。
前回は1年半前、その前は3年半にー。
3年半前の苦い過去を思い出してしまった。
「もちろん持ち物はスケッチブックと鉛筆。簡易水彩道具だけだよな」
「あたりまえでしょう!」
マリアがムッとする。彼女にとっても苦いものなのだ。
初めて俺と国外に回った時、キャンバスと絵の具を持って行ってしまい、リューンは2ヶ月以上その土地から離れなくなった。夢中でキャンバスにむかいだしたのだ。
俺は仕事があるというのに、動けなくなるし、変な女たちが興味本位でリューンに迫ろうとするわであたふた。俺の声は聞こえておらず、どうしようもできず、思わずマリアを緊急で呼んでもらった。
あの時の急いで駆けつけてきた、マリアの狂ったような表情は思い出すだけで身震いする。
てんやわんやした過去。我が弟ながら大変だ。
「この子が生まれるまでに帰ってきてくれると嬉しいんだけど・・・」
優しくお腹を撫ぜた。
やはりか・・・
増える家族に喜びが増す。
「なら、いて貰えばいいだろ?行くのは生まれてからでもいいんじゃないのか?」
「今ある構想は出し切ったんですって。それに生まれたら子育てが楽しいから動きたくないからって言ってたわ」
「変わらず子煩悩だな」
思わず笑う。
そんな時ノックが聞こえてきた。
「あれ?兄さん?帰ってきてたの」
リューンと、小さな子供を抱いて入ってくる。
「おう。ただいま」
「おかえり。今回はどうだった?」
「仕事は順調。楽しいものだった。マルクおいで、おじちゃんだよ。お土産あるぞ」
「ローおじちゃん」
4歳になる甥っ子がリューンの腕から下りてくると俺に駆け寄ってきた。小さい身体で体当たりしてくる。勢いよくて痛いが可愛くて仕方ない。
「できたの?」
「うん。できたよ」
リューンはマリアを愛おしそうに見つめていた。
幸せそうな二人の姿を見て思う。
良かったとー。
もう大丈夫だなーと。
俺が見たかった未来はこれだったのだと安心した。
マリアの屋敷で久々に食べる母国の食事は美味しかった。
「先輩のおかげです。助かりました」
目の前にいる少しふくよかになったマリアが俺の書いた報告書を読みながら言ってきた。
4年前、後処理などを終え無事に貴族からの離れ、ゆるゆると平民に生活を謳歌するために挨拶をしにリューンに会いに行った際、俺はマリアに唆された。
「外の世界を見てみませんか?」と。
仕事というものに縛られるのも責任を伴うことをするのも嫌で初めは断る。だがマリアは諦めることはなかった。
「どんなことにも責任はついて回ります。結婚や子供を生んだりと・・・。人間は一人では生きとはいけません。だからこそ責任が伴うんです。そういう責任からは逃げられません。それに仕事をしながら自由でいいのですから魅力的ですよ。先輩は学生時代は外国語も得意でしたし、この仕事に向いているはずです」
気乗りしない俺をよそに内容を詳しく説明してきた。
仕事のため交通費は経費で落ちる。外国語ができて、交渉という仕事のため給料もよい。やるべきことをすれば自由に行動してもかまわない。
そんなことを言われたら、嫌とは言えなかったのだー。
そして、おれはブラント商会の国外交渉を担当になった。
外の世界は俺の価値観を変えてくれた。知らない文化。生活は刺激が強く、狭い世界しか知らなかった俺にとっては新しいことだらけだったのだ。
マリアの提案を受けて良かった。
今ではマリアに感謝しかない。
そのマリアは今では立派なブラント商会の社長をしている。国内外でも知らないものはいないだろう。
彼女の存在が一躍有名になったのは、4年前、彼女がパトロンしているリュカと名乗る平民の青年が有名な絵画コンクールで国王陛下賞をとったことだ。
その時に描かれていたのが、「我が女神、春の息吹」と題されたマリアをモデルにした絵画。優しい色遣いとマリアの慈愛に満ちた表情が誰しもの心に感動を生んだ。
その直後、彼女はその作者と結婚していると話題になる。
どんな人物か騒然としたが、マリアはにっこりと笑い、取材陣に「彼は照れ屋さんなので、そっとしておいてください」と言うにとどまり、ちゃっかりブラント商会を売り込んだのだ。
屋敷を出る直前に、その記事を見て俺は笑えてきて「うっしゃっ」と思わず声を漏らしていた。
リュカ・・・リューンに会うことができた時、以前と変わらない元気な姿で見て安心した。
その日はたくさん話をしたのを思い出す。
「そういやリューンは?」
「製作中よ。最終調整みたい。そうそう、次に行く時はリューンも行くそうだからお願いね」
次の仕事に行く時はリューンとともに国外を回る予定になっている。
前回は1年半前、その前は3年半にー。
3年半前の苦い過去を思い出してしまった。
「もちろん持ち物はスケッチブックと鉛筆。簡易水彩道具だけだよな」
「あたりまえでしょう!」
マリアがムッとする。彼女にとっても苦いものなのだ。
初めて俺と国外に回った時、キャンバスと絵の具を持って行ってしまい、リューンは2ヶ月以上その土地から離れなくなった。夢中でキャンバスにむかいだしたのだ。
俺は仕事があるというのに、動けなくなるし、変な女たちが興味本位でリューンに迫ろうとするわであたふた。俺の声は聞こえておらず、どうしようもできず、思わずマリアを緊急で呼んでもらった。
あの時の急いで駆けつけてきた、マリアの狂ったような表情は思い出すだけで身震いする。
てんやわんやした過去。我が弟ながら大変だ。
「この子が生まれるまでに帰ってきてくれると嬉しいんだけど・・・」
優しくお腹を撫ぜた。
やはりか・・・
増える家族に喜びが増す。
「なら、いて貰えばいいだろ?行くのは生まれてからでもいいんじゃないのか?」
「今ある構想は出し切ったんですって。それに生まれたら子育てが楽しいから動きたくないからって言ってたわ」
「変わらず子煩悩だな」
思わず笑う。
そんな時ノックが聞こえてきた。
「あれ?兄さん?帰ってきてたの」
リューンと、小さな子供を抱いて入ってくる。
「おう。ただいま」
「おかえり。今回はどうだった?」
「仕事は順調。楽しいものだった。マルクおいで、おじちゃんだよ。お土産あるぞ」
「ローおじちゃん」
4歳になる甥っ子がリューンの腕から下りてくると俺に駆け寄ってきた。小さい身体で体当たりしてくる。勢いよくて痛いが可愛くて仕方ない。
「できたの?」
「うん。できたよ」
リューンはマリアを愛おしそうに見つめていた。
幸せそうな二人の姿を見て思う。
良かったとー。
もう大丈夫だなーと。
俺が見たかった未来はこれだったのだと安心した。
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