【完結】ターニャの歌

彩華(あやはな)

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覚悟

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 何年経っただろうか。
 小さな窓から入る、光は希望の光。否、希望もない光。
 静かな小さな世界で、一人手を動かす。
 粘土をこね、形を成形する。関節を作りつなぎ合わせる。
幾度も失敗を重ね、自分の思う形を作り出していく。
 いつの間にか、歌を口ずさむ。
 涙が溢れては土に染み込んでゆく。

 心が壊れればどれだけ楽になるのか・・・。
 でも、無理なのだ。自分の心はなんなのであろうかと、考える。手放してはならないのだ。未来に繋げるために自分は存在するのだ。そう、植え付けられた記憶が言っている。
 人間の醜さ、美しさを得るために生きている。
 一から生きた自分。
 好きになる気持ち。
 嫌いになる気持ち。
 それが自分の得たもの。
 カジェロが残した思い。 
 自分は次に何を託すのか・・・。
 自分が得たかったものはなんだったのか?
 
「ターニャ、久しぶりだな」

 振り向くと、ファロットがたっていた。目は窪み、青白い顔をしている。いい話ではないのがわかる。近づき鉄格子越しに見つめ合う。
 あれ以来、彼はアルフェルドの側近として働いていた。最愛のライラと結婚したとも聞く。

「・・・あの街が、滅びた」
「そう・・・」
「そう、って。お前それだけか?親父もおふくろも死んだんだ!!まだ、まだ、何も返せてない・・・。友人たちも、お前の師匠もだろ?」
「だから?」
「だから?なんだそれは?お前は、お前はそれでいいのか?お前はあの街を愛してだだろう!!なのに・・・」

 膝をつき、むすび泣く。
 それを冷静にターニャは見つめていた。
 いつからか。人の泣くのを冷淡に見出したのは・・・。
 彼の気持ちとターニャに気持ちは違っていた。
 
「もう、10年・・・」
「ターニャ?」
「ここに閉じ込められて10年。貴方はわたしを責めるだけ。わたしは何もできない。ここに入ってから、わたしは覚悟をしたの」
「ターニャ!」
「よく考えたの。師匠が、手紙をくれないわけはない。きっと握り潰したのね。わたしに情報を入れないよう・・・師匠せんせいもきっと協力しゃ・・・。もう少し・・・もう少しでできる・・・」
「ターニャ?」
「ファロット、お願いがあるの。時がきたら、そっとしておいて。わたしは・・・もう、疲れたわ。全てを終わらす。全てを。だから、だからもう放っておいて・・・」

 それだけを言うと、ズルズルと戻っていった。



 作り続ける。
 次を結ぶドールを。
 リアは歌う喜びと優しさそして寂しさを知った。次代は楽しさを知り嫉妬を羨むことを知った。カジェロは友人を信頼を知り、怒りと悲しさを知った。彼らは自分に愛情を託した。だがどうだろう。自分は今、裏切りを知り復讐しようとしている。
 この子には守ることを知って欲しい。希望を知って欲しい。
 溢れる思い。
 誰にもわかってくれない思い。

 最後が来るまで作り続ける。


 それは唐突だった。
 アルフェルドが直接きたのだ。いつ以来なのか・・・。

「久しぶりだな。毎日何をしているかと思えばドールづくりか。魔核もないのによくやるな」
「お久し、ぶりです。戦争はいかがです?」
「順調だよ。君が作ったものをもとに改良。多少不良があるのは否めないが、多いに役に立っているよ」
「そう、ですか。で、今日は何かごようです?」
「そう、正式にわたしが王太子になることになったんだ。兄上に勝てたのも君のおかげだよ。だから、ささやかなお祝いをあげようと思ってね」


 ゾッとするような不気味な笑いをする。

「そうですか。どのようなものでしょう?」
「戦犯として、君を磔にすることが決まったんだ」

 ターニャは目を閉じた。
 遅かれ早かれそうなるだろうと思っていた。だからこそ、こうして無闇に生かされてきたのだ。

「そう、ですか」
「あれ?驚かないの?面白くないな・・・」
「いえ、驚いていますよ。わたしに罪を被せ、ご自分の地位を価値を上げるおつもりでしょう?」
「それも、お見通しか・・・。そうだよ。君に良く働いてくれね。最後の最期のまで。良い子だね」

 既に心動かされることもない言葉。
 軽くて、中身のない上辺だけの言葉。
 その言葉に一喜一憂していた、あの頃が懐かしい。

「いつですか?」
「ほんと、面白くなくなったね。まあ、いいよ。一週間後。君の泣き叫ぶ様が見たいね」

 クスクス笑いながら去って行った。

「一週間・・・。良かった」

 ターニャは安心したように笑って作業に戻った。



 
 
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