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3.光に照らされて
暗い。
光一つない暗闇。息もできない孤独な世界。
その世界の中で、落ちた人を探すのは困難だろう。
でも、私には見えていた。
海の底に落ちていく船員の姿を確認して手を伸ばし服を掴む。
もう1人の腕も掴む。あと、殿下は・・・。
目を凝らし探していると、微かに光るものを見つけた。
人魚が暗い海を泳ぐために身につけている夜光貝の光。
食用の巻貝であるヤコウガイとは違い、内側を薄く削った二枚貝の中に夜光虫をいれた、暗い海の中を仄かに照らす人魚の道具。
その光に照らされた人魚が殿下の上半身を抱いて海の上へと引っ張り上げようとしている。
人魚が泳ぐたびに腰に吊らされたり夜光貝が揺れ、真っ暗な海の世界に方向をさ指し示してくれているように見えた。
その跡を追うように私も上へと上へと泳ぐ。
海の中とはいえ、2人を引っ張り上げるのは重くて大変なことだった。
やっと海の上に出ると、船員を顔を空に向けて浜を目指した。
肺が重い。
空気を大きく取り入れむせそうになるのを我慢する。
浅瀬までくると船員の2人を仰向けにしたまま、1人ずつ浜に引き上げた。
2人は息をしていない。
わたしは額に人差し指を置いて呪いを唱えた。昔から伝わる方法である。
指先から光がともりすぐに消えると、船員の男は咳をした。肺に入っていた水を吐き出したのを見て、もう1人にも同じことを行う。
まだ春先の海は冷たい。
それでも凍るような冬の海でなかったのが幸いだが、これ以上身体が冷えると危ない。
寒さで震えている彼らの周りにぐるりと円を描くと再び呪いをかけた。
ーこれで大丈夫
震えも治まり落ち着いたように眠る2人を見て安堵で息を吐くと、思わず咳が出てしまった。
呼吸音も安定している2人の船員を横目に体力の回復を図るためしばらく身を小さくした。
東の空が次第に明るくなってくる。
水平線が赤く染まり、輝く太陽が煌めいている。
いつ見ても朝日が昇る光景は美しく思う。
水面に太陽が輝き始めたのを見て立ち上がる。
殿下は・・・きっと大丈夫だという確信はあったが、確認しなくてはと思った。
あたりを見回すと、岩場の向こうに人影が見えた気がしてゆっくりと覗きに行く。
そこには人魚がいた。
人魚は浜に横たわった殿下らしき人を見守っている。
貝や真珠のネックレスが抜けるような白い胸元を貝や真珠でできたネックレスと太陽の光で金色に輝く長い髪で隠していた。
もちろん、下半身は赤い鱗のヒレ。
尾鰭を動くたびにキラキラと宝石のように反射していた。
その光景が美しく、私は涙が溢れそれを手で拭う。
ぎゅっ・・・ぎゅっ・・・。
美しい光景を邪魔するような砂浜を踏む音が近づいてきて、わたしは慌ててそちらを振り向こうと動いてしまった。
すると人魚は私の気配を察知したのだろう、こちらを見てきた。
一瞬だけ海の色の目と合う。
だが、すぐにそらし人魚は海へと逃げるように戻って行く。
私はそれを見て、隠れるようにして城に帰ることにした。
誰かがきたなら、その人にあとは任せようと思ったのだ。余計なことに巻き込まれたくない。
それに、いつまでもこうしてはいられない。メイドの仕事が私を待っている。
海に飛び込んだ際、メイドキャップを落としたようなので、身につけていたエプロンを外し目立つ銀色の髪を覆い隠して、城に向かった。
逃げ帰る際、殿下の方向を横目で見る。
1人の女性が殿下を見つけ駆けつける姿があった。
『人魚姫』の伝説のような光景に、なぜか私はの心臓は締め付けられるように痛かった。
光一つない暗闇。息もできない孤独な世界。
その世界の中で、落ちた人を探すのは困難だろう。
でも、私には見えていた。
海の底に落ちていく船員の姿を確認して手を伸ばし服を掴む。
もう1人の腕も掴む。あと、殿下は・・・。
目を凝らし探していると、微かに光るものを見つけた。
人魚が暗い海を泳ぐために身につけている夜光貝の光。
食用の巻貝であるヤコウガイとは違い、内側を薄く削った二枚貝の中に夜光虫をいれた、暗い海の中を仄かに照らす人魚の道具。
その光に照らされた人魚が殿下の上半身を抱いて海の上へと引っ張り上げようとしている。
人魚が泳ぐたびに腰に吊らされたり夜光貝が揺れ、真っ暗な海の世界に方向をさ指し示してくれているように見えた。
その跡を追うように私も上へと上へと泳ぐ。
海の中とはいえ、2人を引っ張り上げるのは重くて大変なことだった。
やっと海の上に出ると、船員を顔を空に向けて浜を目指した。
肺が重い。
空気を大きく取り入れむせそうになるのを我慢する。
浅瀬までくると船員の2人を仰向けにしたまま、1人ずつ浜に引き上げた。
2人は息をしていない。
わたしは額に人差し指を置いて呪いを唱えた。昔から伝わる方法である。
指先から光がともりすぐに消えると、船員の男は咳をした。肺に入っていた水を吐き出したのを見て、もう1人にも同じことを行う。
まだ春先の海は冷たい。
それでも凍るような冬の海でなかったのが幸いだが、これ以上身体が冷えると危ない。
寒さで震えている彼らの周りにぐるりと円を描くと再び呪いをかけた。
ーこれで大丈夫
震えも治まり落ち着いたように眠る2人を見て安堵で息を吐くと、思わず咳が出てしまった。
呼吸音も安定している2人の船員を横目に体力の回復を図るためしばらく身を小さくした。
東の空が次第に明るくなってくる。
水平線が赤く染まり、輝く太陽が煌めいている。
いつ見ても朝日が昇る光景は美しく思う。
水面に太陽が輝き始めたのを見て立ち上がる。
殿下は・・・きっと大丈夫だという確信はあったが、確認しなくてはと思った。
あたりを見回すと、岩場の向こうに人影が見えた気がしてゆっくりと覗きに行く。
そこには人魚がいた。
人魚は浜に横たわった殿下らしき人を見守っている。
貝や真珠のネックレスが抜けるような白い胸元を貝や真珠でできたネックレスと太陽の光で金色に輝く長い髪で隠していた。
もちろん、下半身は赤い鱗のヒレ。
尾鰭を動くたびにキラキラと宝石のように反射していた。
その光景が美しく、私は涙が溢れそれを手で拭う。
ぎゅっ・・・ぎゅっ・・・。
美しい光景を邪魔するような砂浜を踏む音が近づいてきて、わたしは慌ててそちらを振り向こうと動いてしまった。
すると人魚は私の気配を察知したのだろう、こちらを見てきた。
一瞬だけ海の色の目と合う。
だが、すぐにそらし人魚は海へと逃げるように戻って行く。
私はそれを見て、隠れるようにして城に帰ることにした。
誰かがきたなら、その人にあとは任せようと思ったのだ。余計なことに巻き込まれたくない。
それに、いつまでもこうしてはいられない。メイドの仕事が私を待っている。
海に飛び込んだ際、メイドキャップを落としたようなので、身につけていたエプロンを外し目立つ銀色の髪を覆い隠して、城に向かった。
逃げ帰る際、殿下の方向を横目で見る。
1人の女性が殿下を見つけ駆けつける姿があった。
『人魚姫』の伝説のような光景に、なぜか私はの心臓は締め付けられるように痛かった。
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