(完結)泡沫の恋を人魚は夢見る

彩華(あやはな)

文字の大きさ
5 / 57

5.

 私はアンナ様に連れられアルフ様の仕事部屋に行く。

「フィー。あなた何をやらかしたの?」

 前を歩くアンナ様は少し呆れ気味に聞いてきた。

「何も・・・してないはず、ですが?」
「本当?木から降りられない猫を助けるのに木登りして、野犬を追い払うのに棒を持って立ち向かうのに?」
「うっ・・・」

 思い出したくないような事を言われ言葉に詰まる。

「あなたがきてまだ数ヶ月。なのにやらかした武勇伝は数知れず。働き振はいいのにこれじゃぁ、昇格しないわよ」
「いえ、別に昇格したいわけではないので・・・」
「そうなの?勿体無いわ」
「・・・ありがとうございます。ですが、私は・・・生活に困らずにいて、『人魚』について調べることができればいいんです」
「変わってるわね。それこそいい人を捕まえてゆっくり好きなことを調べたらいいじゃない。城内には仕事関係でくる男性は多いわ、チャンスじゃない?」

 こちらを振り返り笑ってきた。

「はははっ」

 私は空笑いする。
 言えない。とある事情で結婚なんて考えていないとは・・・。

「あら、ごめんなさい。おせっかいお姉さんみたいになったわね」
  
 ぺろんと舌をだす。
 三十路をぶら下げたアンナ様が可愛く見えた。

 そんなことを話しているうちにアルフ様の仕事部屋につく。

「アルフ様、フィーを連れてきました」
「入ってくれ」

 アンナ様は扉を開け中へと入る。私も入ると、アルフ様が窓辺に立っているのが見えた。

 日の光をうけ、金色の髪が輝いている。
 つい、その美しさに目を奪われ、目を細め見入ってしまった。

「アンナ。少し2人きりにさせてくれ」

 アルフ様の言葉にアンナ様の気配が微妙なものになる。

「心配するようなことはない」

 ため息混じりの言葉にアンナ様が刺々しくいう。

「あまりいいわけありませんけど」
「メイドに手を出すわけないだろう」

 およ?

 そっと口元に手を当ててアンナ様に聞いてみる。

「アンナ様?アルフ様はのですか?」
「なっ!?」
 
 アンナ様は呆れ顔で私に言ってきた。

「あのね、フィー。あなたは自分の容姿にもっと注意すべきよ。あなた、ほんとうにメイドなのが間違いなくらい綺麗なの。もしもがあったら目も当てられないわ」

 綺麗?
 
 確かに他にも言われたことはあったが、自分がそれに当てはまると思ったことはなかったので、綺麗という基準がわからない。

「では、その時はあの窓から逃げます」
「フィー、ここは三階だから飛び降りたら怪我ではすまないわ。せめて悲鳴をあげて扉から逃げてちょうだい」
「あっ、はい・・・」

 アンナ様の真剣な眼差しにおもわず頷いた。

「だから、そんなことはしない!第一、私には想い人がいるのはアンナも知っているだろう!」


 おぉっ!想い人がいるのか。
 ぜひにもおばさま方に言わなければ。

 少しだけドキドキしてしまう。

「それはわかっていますが、どんな方かは知りませんわ」
「アンナ・・・。話が進まない」

 少しだけ苛立ちかけているようで、声を低くするとアンナ様は咳払いをした。

「失礼しました。では私は仕事に戻ります。フィー、扉から出るようにね」

 そう言って、アンナ様は去っていく。

 2人きりになってしまい、どうしたものかと私はアレフ様を見る。

 彼は、私を目の前にしてにこやかな顔で上着のポケットから白い布切れを出してきた。

 もしや下着!!

 巷の三文小説に出てくる内容を思い出してしまったのは致し方ないと思って欲しい。
 
 


感想 0

あなたにおすすめの小説

沈黙の指輪 ―公爵令嬢の恋慕―

柴田はつみ
恋愛
公爵家の令嬢シャルロッテは、政略結婚で財閥御曹司カリウスと結ばれた。 最初は形式だけの結婚だったが、優しく包み込むような夫の愛情に、彼女の心は次第に解けていく。 しかし、蜜月のあと訪れたのは小さな誤解の連鎖だった。 カリウスの秘書との噂、消えた指輪、隠された手紙――そして「君を幸せにできない」という冷たい言葉。 離婚届の上に、涙が落ちる。 それでもシャルロッテは信じたい。 あの日、薔薇の庭で誓った“永遠”を。 すれ違いと沈黙の夜を越えて、二人の愛はもう一度咲くのだろうか。

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

『影の夫人とガラスの花嫁』

柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、 結婚初日から気づいていた。 夫は優しい。 礼儀正しく、決して冷たくはない。 けれど──どこか遠い。 夜会で向けられる微笑みの奥には、 亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。 社交界は囁く。 「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」 「後妻は所詮、影の夫人よ」 その言葉に胸が痛む。 けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。 ──これは政略婚。 愛を求めてはいけない、と。 そんなある日、彼女はカルロスの書斎で “あり得ない手紙”を見つけてしまう。 『愛しいカルロスへ。  私は必ずあなたのもとへ戻るわ。          エリザベラ』 ……前妻は、本当に死んだのだろうか? 噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。 揺れ動く心のまま、シャルロットは “ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。 しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、 カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。 「影なんて、最初からいない。  見ていたのは……ずっと君だけだった」 消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫── すべての謎が解けたとき、 影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。 切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。 愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

確かに愛はあったはずなのに

篠月珪霞
恋愛
確かに愛はあったはずなのに。 それが本当にあったのかすら、もう思い出せない──。

どうかこの偽りがいつまでも続きますように…

矢野りと
恋愛
ある日突然『魅了』の罪で捕らえられてしまった。でも誤解はすぐに解けるはずと思っていた、だって私は魅了なんて使っていないのだから…。 それなのに真実は闇に葬り去られ、残ったのは周囲からの冷たい眼差しだけ。 もう誰も私を信じてはくれない。 昨日までは『絶対に君を信じている』と言っていた婚約者さえも憎悪を向けてくる。 まるで人が変わったかのように…。 *設定はゆるいです。

月夜に散る白百合は、君を想う

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢であるアメリアは、王太子殿下の護衛騎士を務める若き公爵、レオンハルトとの政略結婚により、幸せな結婚生活を送っていた。 彼は無口で家を空けることも多かったが、共に過ごす時間はアメリアにとってかけがえのないものだった。 しかし、ある日突然、夫に愛人がいるという噂が彼女の耳に入る。偶然街で目にした、夫と親しげに寄り添う女性の姿に、アメリアは絶望する。信じていた愛が偽りだったと思い込み、彼女は家を飛び出すことを決意する。 一方、レオンハルトには、アメリアに言えない秘密があった。彼の不自然な行動には、王国の未来を左右する重大な使命が関わっていたのだ。妻を守るため、愛する者を危険に晒さないため、彼は自らの心を偽り、冷徹な仮面を被り続けていた。 家出したアメリアは、身分を隠してとある街の孤児院で働き始める。そこでの新たな出会いと生活は、彼女の心を少しずつ癒していく。 しかし、運命は二人を再び引き合わせる。アメリアを探し、奔走するレオンハルト。誤解とすれ違いの中で、二人の愛の真実が試される。 偽りの愛人、王宮の陰謀、そして明かされる公爵の秘密。果たして二人は再び心を通わせ、真実の愛を取り戻すことができるのだろうか。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。