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32.立ち話
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セイネ様の洗濯物を運んだ帰り道、アルフ様に声をかけられ立ち止まった。
あの村・・・ティセア村で作られたクリームが完成したと幾度かの改良を重ね、やっと最終確認段階の品物ができたらしい。
手のひらに収まる大きさのピンクのお洒落なレリーフが入った容器を手渡された。
「簡単に言ってくれたが、作るのに必要な蜜蝋や香油など用意するのが大変だったぞ。しかも赤子にも使えるようにと、シアバターを用意しろとか急に言うし」
言葉では怒っているようだが、顔はニヤついている。
私は匂いを嗅いだり使い心地を確かめるために手に塗りながら、アルフ様を見た。
「文句を言う割には顔が緩んでますが?」
「ごほっ、それは、まぁ、なんだ。これは良い商売になりそうでな」
「そんなにですか?他には誰か試しました?」
「事情を知っているアンナが率先して使ったんだが、すごく喜んでいた。洗濯や炊事のメイドたちにも8割方に好評だったな。匂いの好みもあるようだからもう少しバリエーションはほしいが、それでもすでに注文が入っている状態だ。このままゆけば国外輸出の大きな商品になるだろうな」
ニヤニヤが止まらないほど、有益になるならよかった。
そんなことを話していると、目の端にロイド殿下とカラナイ国の王女殿下の姿が映る。
今日も仲良く散歩にでも行っていたのだろう。微笑み合うお二人はお似合いだ。
「ソレイユ王女殿下か」
わずかに視線をやったのがわかったのか、アルフ様が聞いてきた。
「ずいぶんとロイド殿下と仲がよろしいのですね」
「そうだな、ロイド殿下が特にご執心だ。国王陛下もお二人の婚約を早めようと動いている」
セイネ様の悲しそうな顔がよぎった。
でもあの仲の睦まじそうなお二人を見ていると勝ち目はないかもしれない。
ー早くしないといけないかもしれない。
「そういえばフィー。ティセラ村でもらった真珠はどうしたんだ?何をする気なんだ」
アルフ様の突然の問いに我に返る。
考えていたことにもつながることで、口が滑りそうになったが、なんとか持ち堪えた。
「作りたいものがあるんです」
「何をだ?」
「今は言えません」
そう、言えるわけがない。『言葉がでる薬』なんて普通はないのだから。
私の部屋の窓辺にある机の上にはもらった真珠が置かれている。真珠は月の光を浴びゆっくりと海の力を蓄えている。後数日すれば、それを呪いをかけながら海水で煮るのだ。それでできた塩を飲ませば・・・。
セイネ様の気持ちが少しでも軽なるならばと思う。
アルフ様はそれ以上追求しなかった。ただ、私の頭を軽く叩いてくる。
「あまり、一人で抱え込むな」
「そんなつまりはありませんが」
この人は私を子供扱いするのが好きなのだろうか。
文句でも言ってやろうと顔を上げた時、ロイド殿下がこちらに来ていた。アルフ様も気付き、そちらを見る。
「殿下。どうかされましたか?」
「アルフ。ソレイユ嬢がセイネやルネとお茶会をしたいそうだ。都合はつけれそうか?」
私は咄嗟にアルフ様を見た。
彼の顔はかすかに引き攣っている。
ロイド殿下はソレイユ様の願いを純粋に叶えたかったのはわかる。
でも身分がない二人を王女様に会わせるのはいかがなものか。
「きっと彼女も同じような年齢の友人がほしいんだろう」
つい、下を向いてしまった。
この方は素直なのだ。悪意や女性の嫉妬や怖さを知らずに生きてきたのだろう。
ソレイユ様の真意はわからないが、間違いなく友人云々は違う。
それに、セイネ様はともかく、ルナ様は何しでかすかわかったものではない。
かと言って私には口を出す権利がないので、黙って聞くしかなかった。
ロイド殿下は悪意なくニコニコと語るため、アルフ様を拒否できずにいる。
なので、最終的には許可を出した。
「わ、わかりました」
「そうか、アルフ頼む。あ、それとフィー・・・」
ロイド殿下の声がこちらに聞こえてくる。
「はい。なんでしょうか?」
返事をし、顔を上げるとそこには屈託ないロイド殿下の笑顔があった。
「君も、参加者だからお洒落してくるんだよ」
とんでもない発言に返事することができなかった。
あの村・・・ティセア村で作られたクリームが完成したと幾度かの改良を重ね、やっと最終確認段階の品物ができたらしい。
手のひらに収まる大きさのピンクのお洒落なレリーフが入った容器を手渡された。
「簡単に言ってくれたが、作るのに必要な蜜蝋や香油など用意するのが大変だったぞ。しかも赤子にも使えるようにと、シアバターを用意しろとか急に言うし」
言葉では怒っているようだが、顔はニヤついている。
私は匂いを嗅いだり使い心地を確かめるために手に塗りながら、アルフ様を見た。
「文句を言う割には顔が緩んでますが?」
「ごほっ、それは、まぁ、なんだ。これは良い商売になりそうでな」
「そんなにですか?他には誰か試しました?」
「事情を知っているアンナが率先して使ったんだが、すごく喜んでいた。洗濯や炊事のメイドたちにも8割方に好評だったな。匂いの好みもあるようだからもう少しバリエーションはほしいが、それでもすでに注文が入っている状態だ。このままゆけば国外輸出の大きな商品になるだろうな」
ニヤニヤが止まらないほど、有益になるならよかった。
そんなことを話していると、目の端にロイド殿下とカラナイ国の王女殿下の姿が映る。
今日も仲良く散歩にでも行っていたのだろう。微笑み合うお二人はお似合いだ。
「ソレイユ王女殿下か」
わずかに視線をやったのがわかったのか、アルフ様が聞いてきた。
「ずいぶんとロイド殿下と仲がよろしいのですね」
「そうだな、ロイド殿下が特にご執心だ。国王陛下もお二人の婚約を早めようと動いている」
セイネ様の悲しそうな顔がよぎった。
でもあの仲の睦まじそうなお二人を見ていると勝ち目はないかもしれない。
ー早くしないといけないかもしれない。
「そういえばフィー。ティセラ村でもらった真珠はどうしたんだ?何をする気なんだ」
アルフ様の突然の問いに我に返る。
考えていたことにもつながることで、口が滑りそうになったが、なんとか持ち堪えた。
「作りたいものがあるんです」
「何をだ?」
「今は言えません」
そう、言えるわけがない。『言葉がでる薬』なんて普通はないのだから。
私の部屋の窓辺にある机の上にはもらった真珠が置かれている。真珠は月の光を浴びゆっくりと海の力を蓄えている。後数日すれば、それを呪いをかけながら海水で煮るのだ。それでできた塩を飲ませば・・・。
セイネ様の気持ちが少しでも軽なるならばと思う。
アルフ様はそれ以上追求しなかった。ただ、私の頭を軽く叩いてくる。
「あまり、一人で抱え込むな」
「そんなつまりはありませんが」
この人は私を子供扱いするのが好きなのだろうか。
文句でも言ってやろうと顔を上げた時、ロイド殿下がこちらに来ていた。アルフ様も気付き、そちらを見る。
「殿下。どうかされましたか?」
「アルフ。ソレイユ嬢がセイネやルネとお茶会をしたいそうだ。都合はつけれそうか?」
私は咄嗟にアルフ様を見た。
彼の顔はかすかに引き攣っている。
ロイド殿下はソレイユ様の願いを純粋に叶えたかったのはわかる。
でも身分がない二人を王女様に会わせるのはいかがなものか。
「きっと彼女も同じような年齢の友人がほしいんだろう」
つい、下を向いてしまった。
この方は素直なのだ。悪意や女性の嫉妬や怖さを知らずに生きてきたのだろう。
ソレイユ様の真意はわからないが、間違いなく友人云々は違う。
それに、セイネ様はともかく、ルナ様は何しでかすかわかったものではない。
かと言って私には口を出す権利がないので、黙って聞くしかなかった。
ロイド殿下は悪意なくニコニコと語るため、アルフ様を拒否できずにいる。
なので、最終的には許可を出した。
「わ、わかりました」
「そうか、アルフ頼む。あ、それとフィー・・・」
ロイド殿下の声がこちらに聞こえてくる。
「はい。なんでしょうか?」
返事をし、顔を上げるとそこには屈託ないロイド殿下の笑顔があった。
「君も、参加者だからお洒落してくるんだよ」
とんでもない発言に返事することができなかった。
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