黒の瞳の覚醒者

一条光

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番外編~フィオ・ソリチュード~

みんなで日本へ

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「へー、フィオっち達も日本行くんだ?」
「ん、ワタルを元気付ける為にティナが行けるようにしてくれた」
「ん? 先輩なんかあったの? 友達もお姫様も無事って聞いたけど」
「ワタルはすぐ色々悩む」
「あ~……まぁ先輩って打ち明けて悩み相談とか柄じゃないもんね……じゃあさ、そろそろクリスマスだしギシアンでセイヤッセイヤッな性夜を過ごせば悩みなんか吹っ飛んで元気になるんじゃない?」
 聖夜で悩みが吹っ飛んで元気になる……? 日本にはそんな便利な日があるの?

「どうすればいいの? 教えて」
「え、いや……あっ、そう、これは相手教えてもらうのがいいから先輩と二人きりになったら聞くといいよ」
「わかった」
「頑張ってね~」
「ん、がんばる……恋は日本に帰らないの?」
「あ~……前にも言ったけどさ、うちの親最悪だから恋しさとかないし周りも良い環境ってわけじゃなかったからね……それにほら、こっちだとお城住まいだし、フィオっちとか友達も居るしね」
 友達……もさ以外で初めて。

「あれ? フィオっち照れてる?」
「人間の友達は初めて、だから」
「へ? いやお姉ぇとか秀麿とか居るじゃん」
 あれは友達って言うのかな……紅月は付き合いは長いけど、ワタルのする事にすぐ突っかかるから……う~ん?
 秀麿は……色々教えてくれる、ティナとは違う相談役。
 ちゃんと友達って言ってくれたのは恋が初めて。
「あれ、しっくり来てない? じゃあリオさんとか――」
「リオは家族」
「って、あぁそっか、そういう考え方で行くとフィオっちの周りって友達じゃなくて家族が多い感じになっちゃうんだ」
「ん、最初は私とリオだけがワタルの事特別だったのにワタルと関わると良いところに気付く人が増えてきた」
「うわー、フィオっちに惚気られるとは……ま、先輩悪人ではないよね」
 む……恋もワタルを良いって思ってる?

「そんなに睨まなくっても別に先輩に恋愛感情なんて持ってないよ、尊敬はしてるけどね」
「尊敬?」
「そ、尊敬、親に人生ぐちゃぐちゃにされてても今はちゃんと前向いて歩いてるじゃん? そういうのすごいなって……私もそう有りたいって思うんだ」
 前向いてるというか、なりふり構わず走ってるだけな気もする。
「まっ、フィオっちの大事な人取ったりしないから安心してよ。じゃあ日本楽しんできてね、土産話期待してるよ~ん」
 ……日本に住んでた恋に何を話すの?
 楽しそうに笑いながら紅月の部屋に戻っていく恋の背中を見つめながら私は首を傾げた。

「はぁ、まったくもう、面倒な条件を付けるんだから」
「ティナさんやっぱり私達の同行は難しいですか?」
 リオと日本行きの準備をしてると顔を顰めたティナが帰ってきた。
 みんなで日本に行くの楽しみだったのにダメになったの……?
「今回もティナだけなのじゃ?」
「ああ、ううん、そういう事じゃないわ。みんなを連れて行く代わりに日本の大臣と面会するよう頼まれたのよ」
 自衛隊は日本人救出の為にって色々協力的だけど、彼らに指示を出してる人間はそれだけとは限らない。
 日本人の救出と保護に関係の無さそうな調査をしてるみたいってティナが言ってた事があった。
 最初にヴァーンシアに戻る時にもティナとワタルは高官を警戒してたみたいだし今回も――。

「是非ナハト様もご一緒になんて言うんだもの……ナハトの粗暴さがバレてワタル評判が落ちないか不安だわ」
「あぁ……確かに立場の割りに色々と雑なのじゃ」
「なんだとっ! 私がワタルにとって恥ずかしい女だとでも言うのか!」
「あはは……とりあえずお話の途中で声を荒らげてしまうのは良くないと思いますよ」
「ほら~、家庭的で一般的な良妻に一番近そうなリオから注意が入ったわよ」
「ぬぐ……」
「ティナさんもですよ? いつもの調子で抱き付いたりキスをしたりしたらワタルが姫という立場の人に人前でそんな事を強要してる頭のおかしい人みたいに思われてしまいます」
 ……その辺は、もう日本では色々手遅れかもしれない。
 てれびとかいんたーねっとっていうので色んな情報が簡単に拡散するって言ってたし……。

「まったく、年長者二人が揃いも揃って情けないのじゃ」
「あら、ミシャだって所構わずワタルを誘惑して尻尾とお尻を撫で回されてるじゃない――」
 っ!? リオが怒ってる……みんな誰が一番ワタルに迷惑かけてるか責任を押し付け合ってて気づいてない。
「し、尻は撫でられてないのじゃっ!」
「あらでも、こぉんな感じで触らせてるでしょう?」
「ち、違うのじゃ! ティナみたいないやらしい手つきじゃないのじゃ! もっとこう――」
「ねっちこい感じだったな」
「そう――って違うのじゃ!」
 ここは、危険かもしれない……少し外に居よう。

「あっ、フィオさん! 聞きましたか? わたくしたちも日本へ連れて行ってくださるそうなんですよ!」
 リオが落ち着くまでワタルの部屋に避難しよう部屋から抜け出したところでクロエとシロナが戻ってきた。
 ワタルに聞いたのかな?
「ん、ティナが頼んでくれた」
「お礼を言わないといけませんね――それにしてもワタル様の世界、いったいどんな場所なんでしょう、フィオさんは行った事があるんですよね?」
「一回だけ」
「どのような場所でしたか――」
「クロエ様落ち着いてください、それは明日のお楽しみにして今は日本行きの準備を済ませてしまいましょう」
「そ、そうね、わたくし興奮のあまり気が急いてしまって……何を準備したらいいかしら?」
「必要な物はその都度買ってくださるとワタル様は仰っていたので着替えと……あとは何がいいでしょう?」
 二人してキラキラした目を私に向けてくる……私も一回行っただけなのに、それも事故で……。

「日本は何でもある、自分が持っていたい物だけあればいいと思う」
「とても豊かな国なのですね! 楽しみで胸が高鳴って……わたくし今夜眠れるでしょうか」
「準備を済ませたらすぐに寝る準備に入りましょう」
 シロナは普段クロエを落ち着かせたり諌めたりしてるけど……今はちょっと変かも、まだお昼なのに今寝てどうするの……。

 そんな期待いっぱいのクロエたちを連れて私たちは日本へ移動した。
 前の時は空へ放り出されたけど、今回は地面から少し上に出た程度で乗ってる車が少し揺れる程度で住んだ。
「もさのおかげ」
『きゅ?』
 撫でると気持ち良さそうに頭を押し付けてくる。
 買い物の時に動物用のおやつ買ってもらおう、日本だといっぱいあるはず。

「ここが、日本、ですか?」
 ただ広いだけの開けた場所にクロエの落胆した声が聞こえる。
「ここは移動用の場所だからな、さっき見たろ? 結構な規模で吸い込むからな、なんにもない場所が都合が良いんだ」
「そうなのですね、ワタル様、これからのご予定は?」
「とりあえず日本政府が用意してくれた宿に行く、そっからは追々決めるよ」
 ワタルの補足でクロエの笑顔が戻ってきた。
 心なしかリオたちもそわそわしてる、リオと、みんなと日本に来たんだ。
 日本の楽しい事をみんなと一緒に過ごせる……私もそわそわしてるかも。

「前の所じゃないの?」
「ん、ああ、前泊まってた所はバレてるし色々あるんだろ――ちょっと待てミシャ、座敷は靴を脱いでからだ」
「うにゅ、靴を脱ぐのじゃ? 建物も変わっておるし変な決まりなのじゃ」
 ワタルに促されてみんな変だ変だって言いながら可笑しそうに靴を脱いでいく。

「ワタル様、ベッドはどこでしょうか? 今のうちに整えておきたいのですが」
「ベッドは無いぞ、ここは布団だけだ」
「なっ!? クロエ様に床で寝ろと仰るのですか!?」
「床じゃない、これは畳だ。こうやってごろごろする為にある」
 それは……違うんじゃないの……?
 畳に寝そべったワタルを真似たクロエをシロナが慌てて止めてる。

 ひとしきりごろごろした後にワタルはテーブルにぱそこんを広げてみんなに見せる。
「まずはみんなの服を買おう」
「このままだと駄目なんですか?」
「目立つからな、それに結構寒いだろ? 買っといた方がいいと思うけど」
 前の時は私とティナが目立ったのを気にしてたしリオたちの服は日本のと違うから変えてほしいのかも?
 私もてれびのやつが集まってくるのは嫌だし。
「旦那様、絵を見たところで服は買えないのじゃ」
「あぁ、これは注文用紙みたいなもんだ。欲しいの選んで注文するとここに届くから――」
「この絵を選ぶだけで服が届くのですか!? 日本の文明は凄いのですね! シロナ色んな服がありますよ」
 通販に驚いたクロエとミシャは二人してぱそこんの画面に張り付いて服を選んでる。

「旦那様、何着までよいのじゃ?」
「ん~? 着替とか色々あるだろうし自分が困らない程度に買ってくれ」
「いいんですか?」
「いいよ、リオも好きなの買ってしっかり寒くないようにしてくれ」
「ワタル様、この服の大きさはどのくらいなのですか?」
「あぁ、見方教えるから――」
 まだしっかり町を見てもないうちからみんな騒がしく盛り上がってる。
 みんながひっきりなしにワタルに声をかけるから悩んだり暗い顔をしてる暇が無くて感化されて少しだけ元気になったように見える。
 ティナたちが大臣との面会を済ませて帰ってくればもっと騒がしくなるはずだし、聖夜もある……早く考え込むの終わってくれたらいいな。
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