婚約者の王太子が偽聖女を連れてきたので、城から出て行くことになりました。【短編集】

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王子は秘密の恋を知っている

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城下町で働くナタリーは、ある日迷子の少年を助けた。
後日、その少年の兄としてお礼に現れたのは国中の女性が憧れる第一王子アレックスだった。

「君が弟を助けてくれたんだね?ありがとう」

柔らかく手を差し出された瞬間、胸が熱くなる。
けれど庶民の自分が王子に触れるなんて、とナタリーは後退りする。
しかし、それを見たアレックスは静かに微笑んだ。

それからというもの、彼は理由をつけては城下へ降り、ナタリーに会いに来た。

ある夜、ナタリーをアレックスは祭りに誘う。
一緒に巡ることになったナタリーとアレックス。

祭りの喧騒から少し外れたところで、アレックスはそっとの頬に触れた。

「君といると、王子じゃなくて、“ひとりの男”になってしまう。身分なんて関係ない。ナタリーのことを愛している」

ナタリーの心臓が跳ねる。

「アレックス様…」

ナタリーが名前を呼ぶと、アレクは彼女の耳元で囁いた。

「ねぇ、ナタリー。どうか、俺の隣を選んでくれないか?」

ナタリーは胸の奥がじんと熱くなるのを感じた。
王子の言葉だとは思えないほど、真っ直ぐでどこか不器用な言葉。

「アレックス様が私のことをそんなふうに思ってくれていたなんて…」

ナタリーの声は震える。
アレックスはそっとナタリーの手を握り、指を絡めるように包み込んだ。

「様なんていらない。アレックスと呼んで」

その願いにナタリーは小さく息を飲み、意を決して口を開いた。

「…アレックス」

たったそれだけなのに、彼の金色の瞳が驚くほど優しく揺れる。

「今、世界で一番うれしい言葉だよ、ナタリー」

祭りの灯りは2人の影を重ねた。
アレックスは一歩近づくと、ナタリーの額にそっと唇を落とす。
微笑むナタリーをアレックスは愛おしく思い、抱きしめた。
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