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一章
第七話 火事
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金を稼ぐ毎日は日本にいたころとなんら変わらない。
朝起きて、ギルドに立ち寄り、依頼を探し、依頼を達成に行く。
リザードマンの依頼は思いのほかすぐに終わった。その理由はカルルが個人的にこの依頼に手を出したからだ。俺とリーリアが倒した数はおよそ七体。カルルが倒した数は不明。ギルドに報告はされておらず、あくまで風の噂だが十数体倒したらしい。これによりリザードマンの目撃情報がなくなり、これにて依頼は完遂したことになる。カルルは依頼を正式に受理したわけではないので、報酬は俺とリーリアがすべて貰う形になったのだが、少し腑に落ちない。
この辺りをどうにかするべきだ。冒険者を守るために、被害に会う人々が守られなくなってしまっている。
そして何より驚いたのが、どれだけ依頼をこなしても、階級が上がらない点だ。リーリア曰く、4の数字になるまで二年の歳月が掛かったらしい。俺も同様にそれだけの年月がかかると思われる。
だから、神様は。
こんな不運を起こしたのかもしれない。
それはギルドの休憩スペースでのこと。
「火事?」
リーリアが不穏な噂を教えてくれた。
「そう。火事。何でも、街の家が昨日二つほど燃えてなくなったらしい」
「一体どうして?」
「サラマンダーの仕業よ。こんなことなかったのに」
サラマンダーとは、火を纏ったトカゲのことだ。ただ、ただのトカゲではない。一説では火の精霊と呼ばれる。建物の一つや二つ、簡単に消し炭にするほどの強さをサラマンダーは持っている。
「でも、問題なのは別よ」
「別?」
「今回のサラマンダーに勝てる人間が、この街に一人しかいないのよ。いや、勝とうとすれば沢山の冒険者で囲めば何とかなるけども。今回もたった1体のサラマンダーに対して、十数人の冒険者がチームを組んで討伐したわ」
これについてリーリアは詳しく教えてくれる。
サラマンダーの強さは4もしくは5。これを冒険者の階級にすると3か4になる。そして今回のサラマンダーはどれも4の強さを持つらしく、3以上の冒険者はカルルを除きいない。故に、サラマンダーに一対一で勝てる冒険者はカルル一人になるとリーリアは教えてくれた。
「そのカルルに依頼がいっているんじゃないか? 家を二峰燃やすようなモンスターだろ? 相当報酬が良いんじゃないのか?」
「今、カルルは別の依頼で街にいないのよ」
「カルルとは誰のことですか?」
それまで話に入ってこなかったティーファが聞いてきた。
「この街で一番強い冒険者のことよ」
「一番強い? イツキ様よりも強い方がおられるのですか? そんなわけないでしょう?」
「あなたのその、イツキへの評価を改めたほうが良いわよ」
「あら、リーリアちゃん。あなたの方がイツキ様への評価を改めたら?」
「喧嘩は止めろ。俺の評価はどうでも良いだろ」
そう言うと、ティーファはイツキ様がおっしゃられるのであればと小さくうずくまる。
ティーファは少し俺に依存している。
命を助けたは大きい恩を感じると思うが。これは、やはり異常だ。ティーファの人生を俺という命の恩人が潰しているように感じる。
早急に解決策を考えないといけない。
そして火事についても。
「そのサラマンダーはどこからきているんだ?」
「火の王の巣窟よ」
「火の王?」
ティーファが聞いた。俺も分からない。
「私も噂を聞いただけだけども。火の王と呼ばれている主がこの辺りにはいるのよ。カルルは見たことがあるみたい」
「強そうだな」
「強いでしょうね。あんたじゃ勝てないわよ」
「よし!」
俺は起き上がる。
「その火の王の巣窟に行こう」
「はぁ?」
リーリアが大声を上げる。
俺の言葉にギルドの建物内の冒険者が笑いだす。聞こえていたみたいだ。
「どうして?」
「だって、火の王の巣窟に原因がありそうじゃないか」
「確かにそうだけども。でも、ダメに決まっているでしょ。第一、この依頼をアンタは受けることができないわよ?」
「そうなのか? だったら個人的に行ってみる」
「死んだらどうするの!」
「大丈夫だろ」
「その自信はどこからくるの!」
「さあ?」
正直な話、負ける自信はない。
火の王が吸血鬼の王と同等なら負けるが、おそらく吸血鬼の王と同等ではない。それよりも下級の存在だ。そうでなければ、もっと大きな問題になっていたはずだ。
だったら十分勝機はある。
「はぁ、別に良いわよ。好きにすればいい。でも、私は行かない」
「分かった」
「分かったって!」
「イツキ様。私も行きます」
「いや、ティーファはダメだろ」
「どっちも駄目よ!」
「リーリア五月蠅い」
そう言うと、やっとで自分の声の大きさに気づいたのか、リーリアの声がでもと小さくなる。
「で、その火の王の巣窟はどこにあるんだ?」
「教えない。エミリアさんに聞いてみたら?」
「分かった」
リーリアからはどうやっても聞きだせないと思い、俺はエミリアさんの元へ行く。
するとエミリアさんは怒った表情をしていた。
聞くも、もちろんダメと言われた。その理由は詳しく教えてくれなかったが、やはり何か都合が悪いのだろう。
仕方なく、俺はリーリアの元へ戻る。
「駄目だったでしょ?」
「仕方ないから、一人で探してみる」
俺はそう言って、立ち上がり、ギルドを出た。
リーリアは終始あきれた表情をしていた。
ギルドを出ると、すぐにまた扉が開き、ティーファがテクテクと着いてきた。そして俺の隣に並ぶと俺の顔を覗き込んでくる。
「行ったらダメですか?」
「だって、そもそも冒険者じゃないだろ?」
「確かにそうですが。でも、私はイツキ様から離れるつもりはありません」
ティーファはティーファでリーリア同様、頑固者だ。
「それでもダメだ。宿にいてくれ」
「いやです。それに」
ティーファはこう続けた。
「私は火の王の巣窟を知っているかもしれません」
朝起きて、ギルドに立ち寄り、依頼を探し、依頼を達成に行く。
リザードマンの依頼は思いのほかすぐに終わった。その理由はカルルが個人的にこの依頼に手を出したからだ。俺とリーリアが倒した数はおよそ七体。カルルが倒した数は不明。ギルドに報告はされておらず、あくまで風の噂だが十数体倒したらしい。これによりリザードマンの目撃情報がなくなり、これにて依頼は完遂したことになる。カルルは依頼を正式に受理したわけではないので、報酬は俺とリーリアがすべて貰う形になったのだが、少し腑に落ちない。
この辺りをどうにかするべきだ。冒険者を守るために、被害に会う人々が守られなくなってしまっている。
そして何より驚いたのが、どれだけ依頼をこなしても、階級が上がらない点だ。リーリア曰く、4の数字になるまで二年の歳月が掛かったらしい。俺も同様にそれだけの年月がかかると思われる。
だから、神様は。
こんな不運を起こしたのかもしれない。
それはギルドの休憩スペースでのこと。
「火事?」
リーリアが不穏な噂を教えてくれた。
「そう。火事。何でも、街の家が昨日二つほど燃えてなくなったらしい」
「一体どうして?」
「サラマンダーの仕業よ。こんなことなかったのに」
サラマンダーとは、火を纏ったトカゲのことだ。ただ、ただのトカゲではない。一説では火の精霊と呼ばれる。建物の一つや二つ、簡単に消し炭にするほどの強さをサラマンダーは持っている。
「でも、問題なのは別よ」
「別?」
「今回のサラマンダーに勝てる人間が、この街に一人しかいないのよ。いや、勝とうとすれば沢山の冒険者で囲めば何とかなるけども。今回もたった1体のサラマンダーに対して、十数人の冒険者がチームを組んで討伐したわ」
これについてリーリアは詳しく教えてくれる。
サラマンダーの強さは4もしくは5。これを冒険者の階級にすると3か4になる。そして今回のサラマンダーはどれも4の強さを持つらしく、3以上の冒険者はカルルを除きいない。故に、サラマンダーに一対一で勝てる冒険者はカルル一人になるとリーリアは教えてくれた。
「そのカルルに依頼がいっているんじゃないか? 家を二峰燃やすようなモンスターだろ? 相当報酬が良いんじゃないのか?」
「今、カルルは別の依頼で街にいないのよ」
「カルルとは誰のことですか?」
それまで話に入ってこなかったティーファが聞いてきた。
「この街で一番強い冒険者のことよ」
「一番強い? イツキ様よりも強い方がおられるのですか? そんなわけないでしょう?」
「あなたのその、イツキへの評価を改めたほうが良いわよ」
「あら、リーリアちゃん。あなたの方がイツキ様への評価を改めたら?」
「喧嘩は止めろ。俺の評価はどうでも良いだろ」
そう言うと、ティーファはイツキ様がおっしゃられるのであればと小さくうずくまる。
ティーファは少し俺に依存している。
命を助けたは大きい恩を感じると思うが。これは、やはり異常だ。ティーファの人生を俺という命の恩人が潰しているように感じる。
早急に解決策を考えないといけない。
そして火事についても。
「そのサラマンダーはどこからきているんだ?」
「火の王の巣窟よ」
「火の王?」
ティーファが聞いた。俺も分からない。
「私も噂を聞いただけだけども。火の王と呼ばれている主がこの辺りにはいるのよ。カルルは見たことがあるみたい」
「強そうだな」
「強いでしょうね。あんたじゃ勝てないわよ」
「よし!」
俺は起き上がる。
「その火の王の巣窟に行こう」
「はぁ?」
リーリアが大声を上げる。
俺の言葉にギルドの建物内の冒険者が笑いだす。聞こえていたみたいだ。
「どうして?」
「だって、火の王の巣窟に原因がありそうじゃないか」
「確かにそうだけども。でも、ダメに決まっているでしょ。第一、この依頼をアンタは受けることができないわよ?」
「そうなのか? だったら個人的に行ってみる」
「死んだらどうするの!」
「大丈夫だろ」
「その自信はどこからくるの!」
「さあ?」
正直な話、負ける自信はない。
火の王が吸血鬼の王と同等なら負けるが、おそらく吸血鬼の王と同等ではない。それよりも下級の存在だ。そうでなければ、もっと大きな問題になっていたはずだ。
だったら十分勝機はある。
「はぁ、別に良いわよ。好きにすればいい。でも、私は行かない」
「分かった」
「分かったって!」
「イツキ様。私も行きます」
「いや、ティーファはダメだろ」
「どっちも駄目よ!」
「リーリア五月蠅い」
そう言うと、やっとで自分の声の大きさに気づいたのか、リーリアの声がでもと小さくなる。
「で、その火の王の巣窟はどこにあるんだ?」
「教えない。エミリアさんに聞いてみたら?」
「分かった」
リーリアからはどうやっても聞きだせないと思い、俺はエミリアさんの元へ行く。
するとエミリアさんは怒った表情をしていた。
聞くも、もちろんダメと言われた。その理由は詳しく教えてくれなかったが、やはり何か都合が悪いのだろう。
仕方なく、俺はリーリアの元へ戻る。
「駄目だったでしょ?」
「仕方ないから、一人で探してみる」
俺はそう言って、立ち上がり、ギルドを出た。
リーリアは終始あきれた表情をしていた。
ギルドを出ると、すぐにまた扉が開き、ティーファがテクテクと着いてきた。そして俺の隣に並ぶと俺の顔を覗き込んでくる。
「行ったらダメですか?」
「だって、そもそも冒険者じゃないだろ?」
「確かにそうですが。でも、私はイツキ様から離れるつもりはありません」
ティーファはティーファでリーリア同様、頑固者だ。
「それでもダメだ。宿にいてくれ」
「いやです。それに」
ティーファはこう続けた。
「私は火の王の巣窟を知っているかもしれません」
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