悠久の Madrugada〈マドゥルガダ〉 －蒼い闇－ 《本編完結》「後日譚」連載開始しました

La Madrugada 33 〔薄氷 2〕

　ぽちゃ……っ……ン……ーー。
　聴く者のいない、雫しずくが落ちる音が湯殿に響ひびく

「兄さま……」
「ん……？」

　弟は兄の背を抱きながら、少し伸び上がって胸の尖り乳首をーー兄の乳首と触れ合わせ、擦こすり合わせるように身体を上下させた。

「あぅ……ん……っ……は…………ぁ」

　焦じれったい悦よさに、弟は身悶みもだえては、また乳首を擦こすり合わせた。

「悦いいのか……？　リシェ」
　唇を合わせながら……兄は言葉を零こぼれさせた。

「……んっ…………もどかしくて……でも、気持ち悦いい……兄さまは……悦よく、ない……？」
　少し、泣きそうな表情かおになる弟に、兄は“悦いい”、と囁ささやく。

「そろそろ、お流ししても？」
「はい。日陰シェイ」

　日陰シェイドが湯を掛け、弟が泡シャボンを流していく……。

「兄さま、お湯へ……ひゃあ！」
「落とさない。日陰シェイ、リシェも流せ」
「主あるじ……リシェ様を下ろし」
「早く」
「…………リシェ様、どうか、そのまま動かないで」

　弟の泡シャボンを日陰シェイドが手早く流すと、すたすたと危な気なく弟を抱いたまま湯槽テルマへと歩みそっと弟を降ろすと、自らも湯に入り弟の足を開かせて兄に股がらせ、先程のように胸を合わせると、背筋を撫なでおろし、肛門アヌスの縁ふちをくすぐり……兄の指は、直ぐに弟の肛門アヌスに沈しずめられていった。

「兄さま……お湯、入るよ……」
「後で、|掻《か」き出してやる」
「や……恥ずかしいよ……！　お湯ラヴィの中で！！」
「ふ……もっと、恥ずかしくしてやろうか？　日陰シェイ！」

　呼ばれた日陰シェイドが、苦笑しつつ、白の花弁を湯に放した。

　ーー花嫁の花白のティゼ！
　湯に香りが溶け、ふわっと白のティゼの香が立ち込めた。

「日陰シェイーーひどいっ、僕リシェ、女の子じゃな……」
「……申し訳ありません。リシェ様。ですが、リシェ様は花嫁として、主あるじと慶夜を共にしました。慶夜を明かした今となっては、貴方が主あるじの妻です」
「日陰シェイっっ！！」
　真っ赤になって弟は叫んだが、兄も、そして日陰シェイドも取り合わなかった。

「諦めろ、リシェ」
　くすくす笑い、兄は機嫌きげんよく弟に告げ、日陰シェイドは、主あるじの心身みが解ほどけたことを見て取りほっと胸を撫なでおろした。

「ここで抱かれろ」

「ーー兄さ……さまっ！　……や、ーー悦いい！！　いやぁ……っ」
　パシャっっ……バシャ……っ……

　跳ねる水音と、弟の嬌声きょうせいが、湯殿に共鳴した……。



　§



　覚醒かくせいして、ぼんやりと薄暗い中天井を見つめた、その一瞬後に弟は、はっとして褥しとねの|隣《隣」を探った。

「もう、冷たい……」
　辛うじて、兄が眠った跡はあった。

「リシェ様、起きていらっしゃいますか？」
「はい……。ね、日陰シェイ……僕リシェ、できていた？　日陰シェイみたいには……上手く誘導できないできなかったけれど」
　つーー……と、流れる涙を弟は無造作むぞうさに拭ぬぐった。

「お上手でした。……明け方お起こしいたしましたが、良くお眠りになられたようです」
「兄さま……随分、痩せた……」
「ここで、食べて行かれました。食べなければ持たない。主あるじも解っていらっしゃいます」

　弟は、言うか、言うまいか逡巡しゅんじゅんした後、結局、口を開いた。
「本宮ほんきゅう……、危ないの……？」
「いえ……、そのような報告は入っておりません。ーー……ただ、主あるじが本宮ほんきゅうで食事をするのを厭いとわれる。影シャドウは、そのような時、その勘に従います。当分……食事はこちらでお出しします。夜だけでは、食事量が減るのは仕方ありません。長いことではないとーー信じます」
「うん……、影シャドウが兄さまを守ってくれるってーー僕リシェも信じる。