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エピソード15 【星明かりのすべてが、星の船目指して降り注ぐ】
しおりを挟む★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。
★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。
★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。
★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。
「ウミウシ時間」で生活するウミウシたちは、やがて、独自の「ウミウシスタイル」を身につけていく。
「おしゃれ」が、前に考えていたことをコロッと15秒で忘れたり、
「いちご」が、身に感じるすべてのことをあっけなく15秒で忘れてしまうあれのことだ。
この二匹の習性は、何も特異なことではなく、
「ウミウシ時間」で生活する二匹にとっては、ごく当たり前に必要なことなのだと思う。
とにかくも「ウミウシ時間」で暮らし、「ウミウシスタイル」を持つウミウシたちは、
海で暮らす他の生き物たちの感覚とは、ちょっとずれたところがあるのは事実のようだ。
「兄」と「妹」が5時間かけて、ようやく「いちご」の暮らす石珊瑚の前まで着いた時、
夜がとっぷりと深まった暗い水の中で、目の前にある石珊瑚がまぶしいほど輝いて……
そうそれは、名前通りの《星の船》の姿になっていた。
二匹がそれとなく上を仰ぐと、波打つ海面の裏が、透明な黒ガラスのように見え、
その中には光の点が数限りなく散らばって、そこから海水を下る幾条の光の帯が、明るく、
《星の船》の上に舞い降りてくるのが見えた。
おそらく海面の上に光っている星ぼしの明かりのすべてが、今宵この場において、
一つの明かりとして洩れずに《星の船》を目指して降り注いでいるのではないだろうか。
それは「兄」にも「妹」にもはじめて見る不思議な光景だった。
呆然と眺めていた二匹は、しばらくすると我に返り、《星の船》の上まで泳いで行って、
「いちご」を探しはじめた。
船形の《星の船》から、「いちご」を見つけるのは、たやすいことだった。
すぐに見つかった。
「いちご」は、長広く平らな《星の船》の上の真ん中で、星明かりを体に受けて異様に赤さを際立たせ、
べったりと横に寝そべっている。
二匹は近づいて行った。
〈続く〉
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