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エピソード60 【兄の手紙】
しおりを挟む★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。
★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。
★「風船ウミウシ」→体を丸めて転がって移動する珍しい種族。みんなからスーパーウミウシとあがめられている。
★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。
★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。
******
「妹」は、「兄」からの手紙を受け取った。
水泡に近づけると、「兄」の言葉が伝わってくる。
『――まあ、お前とはぐれちゃうなんて、僕はどうしようかと思ったよ。僕らはあれからずっと《星の船》に乗って、旅を続けている。途中で「海に生きる風」に遭遇したのには参ったよ。ポーンと遥か北の果てまでつれてこられてしまったのだからね。お前はどうしている? 僕らはスリルとサスペンスの連続で、それから北の果ての大地の裏側の海中にもぐり、洞穴の中にある迷宮のような氷のトンネルをくぐり抜け、物知りの老シャチのジイさんの部屋まで泳いでいったんだ。今は「お母さん」も「いちご」さんもそこに一緒にいるよ。お前は元気かい? もうすぐ「お母さん」の恋のお相手のウミウシのいる場所が分かると思うんだ。分かったらみんなでそこへ行くことになるかも知れない。お前は、今、どこにいるの? もし、この手紙を読んだら、お前の方から手紙を僕におくれよ。居場所が知りたいんだ。《星の船》で、きっとすぐに、みんなで迎えにいくよ。
兄さんから妹へ――』
手紙が終わると、泡が水ににじんで消えた。
「妹」は、読み終わると飛び魚を待たせたまま、水泡をせっせと膨らませ、「兄」宛の手紙をこしらえた。
「妹」は、浅瀬のコアジやキスやタコ、遠方のサバやハナダイと以前から文通をしていたので、水泡の作り方は心得ていた。
「妹」の作り方は、エラから出して、少しずつ膨らますやり方だった。それには、まず海面に飛び跳ね空気を補給する必要がある。
ふたたび海面にジャンプした時、「妹」は宙に浮いたまま、ぐんと空に舞い上がった気がした。
空から舞い降りてきた、カモメの口に加えこまれたのだ。
すぐにそれに気がついたクジラがカモメめがけて噴水した。
〈続く〉
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