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エピソード63 【神秘の味】
しおりを挟む★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。
★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。
★「風船ウミウシ」→体を丸めて転がって移動する珍しい種族。みんなからスーパーウミウシとあがめられている。
★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。
★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。
******
~ひとつ、神秘は海の世界の常である。
~ひとつ、神秘を形たらしめ、生かしめよ。
~ひとつ、神秘を自然の中にあるべき姿として形を創り与えよ。
~ひとつ、神秘を海の生き物の力や習慣の中に形を創り与えよ。
~ひとつ、神秘を海の大循環を行き来できる移動手段として形を創り与えよ。……
これが神秘の章の五ヵ条ですよ」
「妹」は思う。
今まで海の世界は分からないことだらけだと思っていたが、原因はこの神秘の掟のせいだろうか?
だとすれば何故なのだろう。
海の世界をより難しいものにする掟を、この方は何故創るのだろう。
「わたしには、よく分からない。なぜ神秘がそんなに必要なのでしょう? 」
「妹」は咽奥に向かって語りかける。
「フッフッ、簡単なことですよ。生きるためには食べることが必要だからですよ。この海の世界は、生き物です。あなたはそこに宿る生命だ。あなたと同じく海も生きているのです。食べなければ死んでしまう。海は神秘を食べます。海に絶えず神秘が満ち溢れていなければ、海の世界は飢えて死んでしまうでしょう。そうしたら、あなたも、ワタクシもいなくなってしまう」
海の世界のことを、今まで「妹」は生き物の暮らす広大な場所だと思っていた。
生きているのは、そこで生活している自分たちのような動く生き物だけだと。
海の世界が生きているのだとすれば、海水は、きっとウロコのようなものだろうか?
海に射し込む光や影は、発光する生き物たちと同じ原理なのだろうか?
砂や岩礁は、波や泡や潮の干満は、なんと説明がつくのだろうか。
いま、不思議なことに外界の海の感触が変わっていく。
クジラの口の中にいても「妹」にはそれが分かる。
この海水も神秘の味だ。
〈続く〉
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