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エピソード73 【ぎょっとした顔】
しおりを挟む★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。
★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。
★「風船ウミウシ」→体を丸めて転がって移動する珍しい種族。「妹」が出会った「浦島太郎」は、実は玉手箱を開けて風船ウミウシに変身した元人間だった。
★「ターコイズブルーウミウシ」→おしゃれ金平糖ウミウシの恋のお相手。背中の突起したイボイボの先端を発光させる発光性のウミウシ。
★「イシガキ竜宮ウミウシ」→ウミウシながらウミウシが大好物。皆から恐れられている。
★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。
★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。
******
「おのれ、だまされないぞ。お前が「妹」を誘拐した犯人だな。見かけはウミウシの姿だが、あれえ、よく見ると風船ウミウシに似ていなくもないが、正体はしかり。大ダコ入道だろう? 」
手紙は届かなかったのだろうか。
「妹」はまたしても、「兄」のことがよく分からなくなった。
「妹」が事情を説明すると太郎は、皆に歓迎された。
「おお、とんだ失礼を。あなた様が、「妹」の恋のお相手でしたか? で、あなたと「妹」が結ばれると、はて、生まれてくるのは、ウミウシかな? それともサカナ? 考えれば考えるほど悩むなあ。どうしよう」
そんなことに悩まなくたっていい。
つくづく「兄」が分からないと、今度は「妹」が悩む番だった。
悩みはじめて間もなく、「妹」が現実に戻されたのは、太郎の驚いた一声を聞いたからだ。
「うわぁ、あれは、オレの乗ってきた亀じゃん! やった、これで帰れるぞ」
太郎がホシガメを見てそう声を上げた時、地面から勢いよく煙が上がった。
太郎は煙に包まれて、見えない。
「おしゃれ」も「いちご」も「兄」も「妹」も、皆が「海に生きる風」かと思ったが違っていた。
煙がおさまった時、太郎は人間の姿をして立っていた。
その時の「おしゃれ」と「いちご」と「兄」のぎょっとした顔を「妹」は生涯忘れることはないだろう。
浦島太郎は、ホシガメに乗って帰って行った。
<続く>
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