屋根裏の晩さん会

猫春雨

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屋根裏の晩さん会

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 ぼくはコツコツとふろしきにためたお菓子を持って天井裏に上がる。
 そしてふろしきを広げるとうす暗い天井裏は華やかな屋根裏へと変わった。
 ふろしき……今はおしゃれなテーブルかけをパパやママがにこやかに囲んでいる。
 パパ!
 ママ!
 話したいことがたくさんあるんだよ!
 家庭科のテストで百点取ったし、三段のとび箱が飛べたし、給食でキライなニンジンを残さず食べれたんだよ!
 そっかー、すごいわね!
 さすがパパの息子だな!
 パパもママも顔をかがやかせてほめてくれる。
 だからぼくは行きたくない学校でもがんばれるんだ。
 友達がいなくてもいい。
 バカにされてもいい。
 パパとママさえよろこんでくれたらぼくは幸せだ。
 そうこうしている内にお菓子を食べ切ってしまった。
 するとパパとママの表情がけわしくなり始める。
 男なのに家庭科だけ良くてどうするんだ!
 まだ三段しか飛べないのぉ。
 今日の夕飯は生のニンジンだけだな。
 ほんとダメな子!
 イヤだ! そんなこと言わないで!
 ぼくはテーブルかけをいきおい良く取りはらった。
 パパとママが消え、明るい屋根裏も暗い天井裏に変わり果てる。
 ぼくは泣いていた。
 でもすぐに涙をぬぐうと、下に降りる。
 またお菓子をためないと。
 そうすることでパパとママを笑顔にできる。
 一階の食卓でひとり冷たい食事をとるよりも、すきま風がふき抜ける天井……屋根裏で楽しく食べる方がずっといい。
 ぼくのふろしきは、あたたかな食卓を生む北風のくれたテーブルかけなのだから。
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