モテモテのハイスペ友人がモテない平凡ぼくにメロメロってマジ?

鳥羽ミワ

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「彼女が欲しい!」
「文也が鳴いてる。ウケる」

 大学、昼休み、学食。一緒に昼食をとる同級生たちは、僕の心の叫びを嘲笑う。僕は「お前ら笑うな!」と、不服を訴えた。

「どうして! どうして僕はダメなんだ! こんなにがんばってるのに……!」
「確かに文也、入学したてのときに比べたら、結構変わったよなぁ」
「めちゃくちゃ痩せたし、かっこよくなったよ。かっこい~」

 わざとらしい連中の賛辞に、僕はうなだれた。しょぼくれて、オムライスをスプーンでつつく手も遅くなる。

「なんで僕はいつも、お友達止まりなんだ……」

 魂の嘆きが漏れた。
 僕は彼女――というか、恋人がほしい。お互いの理解者、甘えられる相手。ロマンチストだと笑うがいい。こっちだって、こんな夢見がちな妄想をやめられるくらい、ドぎつい体験がしてみたいんだ。
 そのために、大学へ入学してから、かなり、がんばった。身体を鍛え、髪と眉と肌を整え、服装に気を遣った。大好きな甘いものも断ってダイエットをして、人見知りの自分を克服しようと、いろんな人に話しかけた。調理部で女子を相手に萎縮していた、弱虫でぽっちゃりの僕は、もういない。今の僕は、立派な陽キャだ。
 そして努力の結果として、僕にできたのは、気のいい友達だけだった。今集まっているメンツの他にも、仲のいい友達はいる。異性の友達だっている。なのに、「お友達」止まりなのだ。みんな、僕を好ましく思ってくれていることは分かる。でも恋愛には発展しない。どうして……。
 もちろん、友達がたくさんいるもまた、僕の努力の成果ではあると思う。でも思った通りの報われ方ではない。
 どうせなら、思った通りの報われ方がいいに決まっている。嘆く僕の肩を、大きな手が叩いた。

「まあまあ、文也。俺がついてるだろ?」

 集まっている友達の一人、隼人がウィンクをする。長い睫毛がばしっと合わさって、華やかな顔だなぁと現実逃避した。隣に座った彼をちょっと上目遣いで見上げる。斜め下から見ても、相変わらず隙のないシャープな顔立ちだ。ずるい。

「いや、モテるお前に言われたところで嬉しくない」
「なんだよ。俺じゃダメなの?」

 つんと顔を背けると、悲しいと言わんばかりに隼人がしゅんと唇を尖らせる。わざとらしい。少し背中を曲げて、僕に視線を合わせるところもちょっと腹立つな。周りの席の女の子たちが、ちらちらこちらを見てくる。見せ物ではないんだけど、それくらい隼人はかっこいい。
 というか、僕の最大のライバルは隼人なのだ。僕がちょっと気になる相手は、なぜかことごとく隼人のことを好きになる。なんなら、ちょっと気になってた相手から、隼人の連絡先を聞かれたことすらある。個人情報だから断ったけど。
 隼人はイケメンで、背が高くて、中高運動部だったからか体格がよくて、筋肉質で、僕ではとても敵わない相手ではある。分かってはいるんだ。僕は脂肪を落とすのに成功しても、筋肉がつかなかった、貧相なチビだから……。
 だからこそ、僕は、こいつに対して素直になりたくない。嫌いじゃないけど。というか、今いちばん、仲のいい友達だけど。
 なんだか悲しくなってきて、僕は注文したオムライスを口いっぱいに頬張った。

「ふん」

 そっぽを向く僕を引き寄せて肩を組みつつ、隼人は「かーわいい」と笑う。その様子ですら様になるのだから、こいつのイケメンっぷりはまったく常軌を逸していた。
 周りの友人たちも「おいおい文也~」とはやしたてる。

「隼人がどんだけお前に尽くしてるか、いくら文也でも分かってるだろ?」
「だってこいつ、ずっと彼女いないんだぜ。お前にゾッコンすぎ」
「俺たち知ってるんだからな。隼人は、いつも絶対からあげ定食頼んで、からあげ大好き文也くんに分けてるんだよな。な?」

 ぐうの音も出ない。僕は、オムライスの皿の横に置かれた、からあげを恥じた。それは、隼人が分けてくれた、貴重なからあげだった。その上、お皿に乗っていた中で、一番大きいのをくれた。
 たしかに、隼人は僕に甘い。異常なくらいだ。隼人は「足りなかった?」と冗談めかして言って、二個目をお皿へ乗せようとする。僕はそれを固辞したけれど、恥ずかしくてたまらない。さすがにそこまで食いしん坊ではない。
 とはいえ、こんな恋人選び放題の男が、僕みたいなちんちくりんを選ぶわけがないんだ。だから面白がってからかっているんだろう。だから、こっちがドキドキするだけ損だ。
 というか、好きだったら、恥ずかしくてこんなに近づけないはずだろうが。僕なんか、これまで好きだった子たちと話すどころか、近づくだけでもドキドキして、何もしゃべれなかったのに。
 極めつけには、隼人はにこりと笑って、僕の頬をうりうり撫でた。唇が不格好に尖って、それすらも「かわいい」という言葉で流される。

「お前も、俺のことを好きになっちゃえば楽になるのに。いい加減、諦めたら?」
「ふん……」

 言外に、みんながこいつのことを好きになる、というニュアンスがにじんでいる。最初はいちいち照れていたけれど、長らくこんなシチュエーションに晒されたせいで、もはや恥も何もない。
 友人たちは呆れた様子で、「おいおい」と口々に言った。

「文也。いい加減、観念した方がいいぞ。隼人はこんなに、お前のことが、大好きなのに……」
「ぶっちゃけさぁ、お前と隼人、付き合ったら絶対楽しいと思うぜ。素直になれよ」
「絶対に、お前らは相性バツグンだと思うんだけどな~。いや、隼人がかわいそうだ」

 どうして僕がこんなに言われているんだ。僕は彼らを半目で見つつ、「はいはい」と手を叩いた。隼人は「そういえば」と顔を覗き込んでくる。

「俺の家で映画観るって約束、今日だろ。お互い三限で終わりだから、集まろうって話」

 僕は「うん」と頷いた。ぱっと気分が明るくなって、声も浮かれるのが自分でも分かる。

「帰ったらすぐ、隼人のアパート行くよ。ありがとう。大好き~」

 さっと掌を返す僕に、隼人は笑った。友人たちも「現金な奴」と笑う。
 だけど仕方がないだろう。隼人の家には大きな高画質ディスプレイがあり(ゲーマーのお兄さんのおさがりらしい)、さらに動画配信サブスクのファミリープランに加入していて、こいつの家では映画観放題なのだ。
 隼人はいい奴なので、僕が映画好きと知ってから、こうしてよく自宅に招いてくれる。こういうところもあって、僕はなんだかんだ、隼人のことが、かなり好きだ。もちろん、友人としてだけど。

「じゃあ、僕もおやつ持っていくね。欲しいのとかある?」
「文也お手製のパンケーキ。タッパにいっぱい持ってきてほしい」
「いいよ。まったく、安い奴だなぁ」

 あんな小麦粉と砂糖とベーキングパウダー、卵と牛乳を混ぜて焼くだけのものをありがたがって、まったくかわいい奴め。わはは、と笑えば、友人たちは生ぬるい目で僕たちを見ていた。なんだその視線は。僕は連中を無視して、隼人との会話に集中する。

「パンケーキなら、昨日焼いたやつがタッパにあるから、それ持ってく。はちみつもつけよう」
「やった」

 とはいえこれだけ喜ばれると、かなり気分がいい。だから僕も、約束の前日には、いつもパンケーキを焼いてやる。そして、映画を見ながら一緒に食べるんだ。もちろん食べにくいけど、フォークでそれぞれのケーキをつつく時間は、不思議と居心地がいい。
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