ある月の晩に  何百年ぶりかの天体の不思議。写真にも残そうと・・あれ?ココはどこ?何が起こった?

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清羅



清羅視点


杏里と初めて会ったのは、この世界に連れてこられた、召喚の間だった。
とても可愛い黒い犬を抱えて戸惑いつつも状況把握に努めている様に見えた。
そして、あの、天使のフリをした。
本性は、不躾でわがまま、感じの悪い王女から愛犬の黒鉄を守ろうとしていた。

普通と言われれば普通の反応なんだろうけど、あの状況の中、下手したら殺される可能性もあった。皆が王女の上辺に騙されていたあの時。 杏里は異様な空気を感じ取りそっと、王城から離れようとしているのが分かった。

私もだったから分かる。あそこは欺瞞ぎまんに溢れていた。まあ、生産者職だったから、心配せずとも"市井で自由に"なんて言っていたけど体の良いお払い箱。こちらにも都合が良かったけれどね?
でも、王女は杏里には、最初からあからさまに敵対心の様なモノを向けていた気がする。

別行動させ周りには、知らせず、直ぐに追放していたし。 初日に馬小屋の外・・ワンコが居たからだけとは思えなかった。
そして翌日には、強制退去させようとしていたなんて。 優さんが、おかしいと察してコンタクトを取らなければ知らぬ間に会えなくなっていただろう。
見知らぬ異世界で私達よりも、少ない資金しか渡されずに。悪意しかない。

でも、杏里は動物にすごく好かれるみたいで馬さん達に助けられたと、子供の様に喜んでいた。それに、ガントさんとかとも仲良くなって、ソレが今に繋がってるんだもんね。


杏里が日本に居る時どんな人生を送っていたのかは、知らない。
でも、タカシ?ヤーコ?達みたいなどうしようもないクズと接する事が多かっただろう事は察する事が出来る。本来、杏里はきっと天真爛漫だったに違いない。まあ、悪く言えばメンヘラ?でも、私の中では許容範囲。寧ろ、まともで、守ってあげたい子だ。

私は優さんと同い年の45歳だった。今は16歳だけどね。杏里が40歳と言っていたからリアルお姉さんね。
私も、職業柄いろんな子を見てきた。背伸びして悪ぶってる子。天使の皮を被った悪魔。 天性の詐欺師、人を陥れるのが大好きなタイプ。色々な腐った魂を観た。
その中で、たまに居る魂が弱っていても汚れない子。そう言う子は、生きるのが大変。分かっていても、騙されてし、遠慮する。コレは性分だから仕方ないわね。

杏里もそんな子の1人だと思う。でも、40歳を超えて、お勉強したんだね。傷ついた心を上辺の鎧で守ろうとしてる。
でも、スルリと人の心に入り込むのに、甘えるのは苦手。寂しくて擦り寄って来ても深入りする前に離れる。
どんな人生送って来たのよ。あの、寂しげだけど嬉しそうな笑顔は見ていて切ない。
そんな杏里の心のほぼ全ては愛犬の黒鉄君

お互いがお互いを愛しあって支え合って生きていたそう、 あの時も




あの時『あんリーーー!キャイン!』と黒鉄君であろう杏里を呼ぶ声と鳴き声

そして・・・悲痛な、胸が痛くなる様な杏里の黒鉄君を呼ぶ声・・・

振り返った私が見たのは、驚愕に見開かれた杏里の目。信じられないけれど悟った顔。更にオークが黒鉄君を蹴り飛ばした。声にならない悲鳴。
一瞬の後、杏里の顔から表情が抜け落ち知らぬ間にオークを全滅させていた。何かの凄まじい迄の力の様なモノを感じた。


その後は、見ていられなかった。そっと、そっと大切に黒鉄君を抱きしめ、ポーションを飲ませようと震える手を叱咤し必死な杏里。切り裂かれた黒鉄君にポーションをかけ、自分の口にポーションを含み飲ませる杏里。



「クロ、クロガネ、イヤだ、置いて、逝かないで、お願い・・・黒鉄」

『アンリ、だい、ダイスキだよ』ペロ
ゴフッと血を吐く、黒鉄君

「クロガネ、クロガネ、大好き、逝かないで」嘘でしょ?そんな事無い!逝かないよね、ずっと一緒だもんね

「泣かないで、杏里大好きだよ」ペロペロ
「キュン、キュン、クゥン」

「・・・クロ、クロ、ガネ」

キラキラとした、粒子が上に昇って逝く
何?コレ、なに?



「お願い、お願い、逝かないで・・・」


「クゥン」と、黒鉄君が笑った


あの、一連の出来事が、夢だったら良かったのに。黒鉄君の杏里を想う気持ちと杏里の慟哭が離れない
あんなに、辛そうな、哀しい慟哭は見た事が無かった。息が出来なかった

今まで、動物もモンスターも死んでしまった後、亡骸は残った。でも、黒鉄君はキラキラと粒子になり昇って行った。どうしてだろう?理解出来ない。


あの時から、杏里の刻は止まった

無になり。オークとゴブリンが現れた時だけ刻が動く。 しかし、淡々とだ
杏里の三日月丸は、赤黒くなり段々とその濃さを増していく。杏里の心の闇を吸い取るが如く。



そして、オークの集落が見つかった。私達は、できる範囲のオークを討伐する予定だった。野放しにするにも、そのままにするにも数が多過ぎた。
出来る範囲の討伐、ソレは杏里の逃げる、隠れるのスキルがあってこその戦術だった


そして、決行された。 杏里は、誰も追いつけない程、鬼神の様な動きでゴブリンとオークを屠って行った。 きっと、トップに居るオークを討つつもりだ。死ぬ気なのかもしれない。 このままでは、本当に杏里を逝かせてしまう。優さんは、今にも後を追おうとしているが少し躊躇っていた。

「「優(さん)!!」」とガントさんと被った、目を見合わせ、同じ事を考えていると察した

「此処は、俺たちが何とか頑張る!ポーションも有る!逃げる、隠れるが有るから何とかなる! ガアッ!! お前は、杏里の所に行け!!!もしもの時は、抱えて連れ帰って来いっ!!」

優さんは、逡巡した後、
「すまない!頼む!!!」と言い残して隠れて、逃げるで杏里を追った



私達が杏里と優さんの元に辿り着いた時、キングとクイーンとの戦いに苦戦している時だった。だが、キングも片手を失い、お互いが満身創痍。しかし、クイーンが魔法を使えた様だ。とても、苦戦している


既に陽は落ち、大きな三日月が昇っていた。三日月を背負う、キングとクイーンはとてつもなく大きく見えた。
そして、三日月の光を反射して煌めいた三日月丸は漆黒となり、刃紋を血の様な赤へとその刀身を染めていた・・・


ああ、杏里・・・どうしたら貴女を助けてあげられる?


大きな傷の優さんに、回復魔法を使えると思った。全快する様に、心身共に癒される様に!助けたい!と祈りを込めてヒールを放つ。

そして、まだ痛手の残る杏里に全快と、どうか、どうか、彼女の心も癒したい!!!そう強く、強く想いを込めて癒しのヒールを放つ。

月の光と同じ優しい煌めきを放った後、杏里はオークに対峙した。そして、今迄とは違う何かを纏いながらキングに切り込んだ

その時、月の光に煌めいた三日月丸は漆黒ではなく、赤くもない・・・
月の光を写し込んだ様な穏やかで優しくも凛とした美しさに煌めいていた・・・
優さんと杏里によりキングは討たれた。首を刎ねられたのに、落ちたキングの表情かおは穏やかで優しげだった
ああ、元のキングの本性なんだ、と思った

キングが討たれた直後、クイーンの表情かおつきも変わり、キングの側で果てた・・・


皆が言葉を失う中、その瞳に何も写していないかの様な杏里が緊張の糸が切れたのかフラリとよろめき倒れる瞬間、優さんが抱きとめた。



異様な空気の中、オークキングとクイーン

優さんと杏里

2つの影が、大きな三日月に照らされている。



暫くして、我に返った私達は夥しい数のゴブリンとオークを浄化する。何故か浄化の仕方が分かった。そして、全てのゴブリンと、オークをインベントリへ入れた。


浄化の光で綺麗になった、元集落。このままにしておくとまたオークやゴブリンが集落を作りやすいからと樹凛さんがこの辺り一帯に植物と木を緑魔法で植えて行った。
この集落に苗床として囚われて居る人がいなくて良かった


こうして、全ての片付けを終えた私達は眠り続ける杏里と共にヨワヒムさんの所に戻った。


杏里がもう、夢の中でまで慟哭しません様に。 また、ほっぺを食べ物でいっぱいにして笑ってくれます様に。心からの切なる願いを込めて・・・



☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆


新年あけましておめでとうございます

明けて早々から、暗い話ですみません。

読んでくださる方がいる。とても幸せな事です。心からの感謝を。

今年もよろしくお願いします⸜( ´ ꒳ ` )⸝♡︎









感想 4

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