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第1章 異世界の姫を救出せよ
5.勇者は姫の救出に向かう(前編)
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僕はまだ日が昇り切らない早朝に目を覚ました。昨日は色々あったので、夕食を食べた後すぐに用意して貰った部屋に戻って厳重にカギをかけ、そのまま寝てしまったのだ。深く寝てたから気付かなかっただけかもしれないけど、誰の襲撃も無かった気がする。
(そう言えばここには温泉を使った大浴場があるからおすすめされてたっけ。今の時間なら誰も居ないだろうし、昨日は入らなかったから行ってみようかな)
僕は部屋を出て、誰にも気付かれないように静かに大浴場の方へ移動する。まだみんな寝ているようで、誰にも出会わなかった。
「ここか」
砦の一階の端に浴場と書かれた看板がかかっていた。見たところ男女で分かれていたりもしない。
(そもそもここには今は女性しかいないって言ってたっけ。中に誰も居なければ入っても問題無いかな)
扉を開けると中は脱衣所となっていて、着替え用のかごと、身体を拭いたり洗ったりに使える布が置いてあった。かごはどれも空なので中には誰もいないようだ。僕は早速服を脱いで、布を一枚持って浴場へと向かう。
「へー、凄いな」
大浴場は結構な広さで、魔法の灯りに照らされ、温泉から通したと思われるお湯が常に浴槽に流れ込んでいる。僕は洗い場におけでお湯を汲んできて、置いてあった石鹸で身体を洗う。この世界に入浴の習慣はあるけど、エルフの隠れ里にあったのは小さな浴室と、魔法でお湯が出るユニットバスみたいなものだった。なので、ここまでゆっくりと身体を洗うのはこの世界に来て初めてだ。
「ふぅ……」
身体も頭も洗ってスッキリし、大きな浴槽に一人で浸かる。今までの疲れが取れて行くようだ。このまま何時間もここに居たいと思ってしまう。
『ガチャ』
くつろいでいると浴室の扉が開いて、誰かが入ってきた。このままではマズイ。
「ごめん、今出るから、ちょっと待ってて」
「勇者さんですか?別に一緒で構いませんよ」
近付いて来たのは一糸纏わぬネルマだった。布は持っていたものの一切隠さず、アニメのように濃い湯気も謎の光も無い、綺麗な裸体が目の前にあった。
(エルフは痩せていて貧乳だって説もあるけど、僕はネルマみたいに肉感タップリでもいいと思うけどなあ)
ネルマの胸はこの世界で出会った女性の中では多分アリナに続いて巨乳で、乳首は濃いピンク色で乳輪も大きい。お尻も大きく、太ももも太く、病弱とは思えないほど見た目は健康的に見えた。と、見ていてはいけないと急いで目を背ける。
「い、いや、そういうわけには。僕が目の毒だし……」
「すみません、隠した方がよかったですかね。では、少々お待ちを」
ネルマは持っていた布を身体に巻き付ける。大きさ的にギリギリで、胸は乳首がはみ出そうだし、下も覗けば見えてしまいそうだ。
「いや、そうじゃなくて。
僕はもう出るから」
「そうだ、折角なのでお背中をお流し致しますね。今までの感謝を込めて」
「で、でも」
「別に性的なご奉仕ではありませんし、たまには私のお願いも聞いてくれませんか?」
そこまで言われては、断るわけにもいかない。
「じゃ、じゃあ、背中だけなら」
「では、こちらへ」
僕は浴室用の椅子に布で股間を隠すようにして座る。ネルマは布を持って来て、石鹸で泡立てた。
「それじゃあ、洗いますね」
ネルマが僕の首筋から背中を洗い始める。最初は緊張したけど、優しくゆっくり洗ってくれて、とても心地良い。
「よくネルルと洗い合うんですよ。あの子小さい頃はお風呂嫌いで、逃げるのを捕まえて洗ってたんです」
「そうなんだ」
「大きくなるとあの子胸が小さいのを気にしてて。私が揉んであげたんですけど、結局あのサイズからは大きくならなかったんです。私の方は別にこんなにいらなかったのに」
ネルマはネルルの事を楽しそうに話す。
「僕はどっちの胸もいいと思うけどなあ」
「ネルルに言ってあげて下さい。あの子喜びますよ」
「まさか、そんな事を言ったら殴られます」
変な事を言ってネルルからの評価をこれ以上下げたくは無いと思う。
「そういえばいつもこんな早朝に入浴してるんですか?」
「いえ、今日は相部屋だったので落ち着かなくて眠りが浅く、起きてしまったんです。それで折角だからと入浴に来たんです。ここの温泉はエルフの里のものに近くていいものでしたし」
「ごめん、僕は個室を使わせてもらってるのに」
「いいんですよ、勇者さんは特別なんですから」
と、そんな話をしていたら、突然背中の感触が変わった。とても柔らかく、大きなものが背中に押し当てられている。
「ネルマさん、何を……」
「勇者さん、みんなの事は呼び捨てにするって言ったじゃ無いですか」
「いや、そうじゃなくて」
背中に押し当てられた物はゆっくり上下に動き、僕の背中をマッサージする。見なくても分かるが、ネルマは布越しに大きな胸を僕の背中に押し当てているのだ。
「ネルルがこうすると喜ぶんです。勇者さんも気持ちよく無いですか?」
「確かに気持ちいいけど、さすがにそれはマズいです」
布で隠した僕の下半身が反応してしまう。でも、ここ数日の暴走を思い出し、ネルマにそういう所は見せたくない。
「駄目ですか?
では、私の事を呼び捨てで呼んでくれたらやめてあげます」
「分かりました。
ネルマ、もうそれ位でやめて下さい」
「分かりました。じゃあ、これで……」
僕の背中をお湯で流される前に、直に柔らかい何かが当たった気がした。
「ありがとうございました」
僕は勃起したものを見られないように急いで脱衣所へと逃げて行くのだった。
『コンコンッ』
「勇者クン、起きているかい?」
入浴後部屋でくつろいでいると、扉がノックされる。声からして三博士のミスナだろう。昨日の事があるので警戒しながら扉に近付く。
「起きてますが、何でしょうか」
「いや、朝食の準備が出来たので呼びに来たんだよ」
「分かりました、すぐに行きます」
僕は2人きりになるのを避けるよう少し間を置いてから扉を開ける。するとまだミスナが廊下で待っていた。
「おはよう、勇者クン。
昨日は少し悪ふざけが過ぎた。3人を代表して謝らせて欲しい。すまなかった」
「おはようございます。
まあ、もういいですよ」
ミスナの様子が昨日に比べて元気が無かったので、僕は許す事にする。
「そうか、ありがとう。
今日は今後の対策について話し合おうと思うのだけど、あの装備はどうやって作ったんだ?」
ミスナはすぐに元気になり、食堂に向かいながら聞いてくる。
「あれは、僕が想像した通りに勇者の力で作ってるんです。元々は僕の居た世界のゲームの装備で、ゲームと同じ技も使えるようになります」
「なるほど。装備はみんな違うようだけど、誰でも着れるのかな?どれぐらい種類があるかも気になるな」
「それぞれの職業と体型に合ったものなので、誰でも着れるわけでは無いです。種類は多いキャラは10種類ぐらい、新しいキャラだと2種類しか無い場合もあります」
ミスナは僕の装備を作る力に興味深々のようだ。昨日も僕自身の人体実験では無く、そういった方向で話が出来れば良かったのにと思う。
「と、もう食堂か。話はまた後でしよう」
食堂に着いたので話が終わり、僕達は少し質素な朝食を食べたのだった。
「では、作戦会議と行こうじゃないか」
朝食を食べ終わった食堂で、ミスナの仕切りでそのまま作戦会議へと移行した。
「北の塔に姫を救出に行きたいという事だが、勇者クンは何か案とかあるのかな?」
「今のところはまだ。敵の状況とかも分かってないですし。ただ、ドラゴンがいるらしいので、それに対応した装備にその場で変更しようと思っています」
「なるほど、なるほど。
誰か過去の情報でもいいので、北の塔の敵の戦力は知っているかね?」
「はい、自分が。
過去に行った偵察で、塔の周りにはドラゴンが1体とジャイアントやケルベロスなどの大型のモンスターが2~30体、オーガやオークなど中型から小型のモンスターが4~500体は確認出来たそうです。これらは魔王が女性狩りを始める以前に村や町を襲っていたモンスターで、その半数ぐらいをここに集めたようです。
そして、塔の中は完全に未知数です。外には魔王が新たに作りだした捕獲モンスターはいないので、塔の中にはそういった強力なモンスターがいる可能性があります。
これは2ヶ月前に最後に偵察に向かった者の情報ですので、状況は変わっているかもしれません」
ファイが北の塔の周りの戦力を説明してくれる。
「やっぱりやめた方がいいんじゃない?」
「……絶対大変」
「まあ、2人が言う通り普通に考えれば正気の沙汰ではないな。
だが、ここには勇者クンがいる。そうだね?」
「えーと、はい、何とか出来ればしたいと思ってます」
ミスナが僕を期待の目で見る。正直まだ助けられるビジョンは全然見えていない。
「7人だけで、ボクらを入れても10人で攻略出来る量では無い。
ちなみにボクもマレちゃんもランちゃんも戦闘要員とは考えないで貰いたい。昨日のように罠を張っての戦いなら出来るが、直接戦闘能力は皆無に近いからな」
「薬を投げるぐらいなら出来るけど数に限りがあるしねー」
「……攻撃魔法、苦手……」
「という事で、ボクらは近くにまでは行くけど、直接戦闘には参加しない予定なのでよろしく。
さて、となると、7人でどうこの数に立ち向かうかを考えなければならない。そこで重要なのは勇者クンの装備を作る力だ。ボクらは昨日遠くから戦う所を見ていたけど、それだけでも十分強力なものである事は分かった。そこから更に何が出来るかを検討しなければならない」
「それなんですけど、そもそも僕がどれぐらい力が使えるか、例えば装備を変えられる回数とかが分かっていないんです。日を分けて事前に作っておく事も出来るとは思いますが、そうなると着替える時間が必要になりますし」
僕が以前から気になっていた事を三博士に伝える。
「ふふ、その事かね。大丈夫、既に見当はついている。ランちゃん」
「……うん。昨日ユウシャが物を作った時に魔力が減っているのに気付いた。これを腕に付けて……」
ランはそう言うと何か目盛りが付いた腕輪を僕に渡してくれる。
「それって魔力計ですか?魔法使いになりたての時に訓練で使う」
「……そう。ただ、これはユウシャ用の特製。魔力の総量が違い過ぎる……」
レニーナの質問にランが答える。僕はその魔力計を付けてみる。すると一番左にあった目盛りがグッと右に動いた。
「私達魔法使いや僧侶は魔法を習う時にどれだけ魔力を消耗するか、その魔力計を見て覚えるんです。そのうち身体で覚えるので、正式な魔法使いになる前に使わなくなります」
「勇者クン、まずは今目盛りが指している位置を覚えておいてくれ。次に何でもいいので、小物を昨日のように作ってみて欲しい」
「小物、ですか?」
何でもいいと言われると困ってしまう。昨日と言うとオナホを作った事を指しているんだろうけど、あれをこの場で作るわけにはいかない。力を使って作るのだから、何か今後役に立つ物の方がいい。
(そういえば電化製品みたいな物は作れるのかな?でも、電池とか充電の物だと切れたらお終いだよなあ……。そうだ、あれなら)
僕は以前自然災害が多発した際に会社に勧められて買わされた、ラジオ付きのライトを想像し、創造する。電池の他にソーラーと手回しでの充電が出来るし、ライトの他にも警報音を鳴らす事や目覚まし時計にもなる。ラジオは多分使えないけど、ライトは持っていれば役に立つかもしれない。
「それは何かな?見た事の無い奇妙な機械のようだが」
「僕の世界にあった灯りです。ほら、こんな感じで」
「……魔力を使ってない、灯り、面白い……」
「まあ、それ自体は何でも良かったんだ。勇者クン、魔力計を見てみたまえ」
「えーと、はい。ああ、確かに少し目盛りが減ってる」
「見た感じ、そのぐらいの物なら100あるうちの1ぐらいしか使わないという事だ。今後は魔力計を確認しつつ、物を作ってみるといい」
目盛りは10あって、最初は一番右の10まであったのが、今は9の方へ少し動いている。ミスナの言う通り、MP100と仮定すれば1使ってMP99になった事がおおよそ分かるという事だ。
(これは便利だ。壁になった時にどれぐらい減るかも知っておきたいな)
「ちなみに勇者の魔力はマレちゃんの薬やランの魔法では回復しなかったからね」
「……普通の人と同じように時間で回復はする。寝ると回復速度は上がる……」
「いつの間にそんな事調べたんですか?」
「勇者クンが昨日寝ている間にだよ。別に身体を調べていただけじゃない」
寝ている間に重要な事もきちんと調べており、三博士は確かに天才ではあるようだ。昨日の性的な事は置いておいて、少しだけ見直す。
「で、次にやりたいのは勇者クン以外の能力の確認だ。本当は色んな装備を試したいところだが、まずは今着ている装備での基礎能力の変化を確認したい」
「みんなにも昨日僕にしたような事するつもりですか?」
「まさかー。あれは勇者用の特別対応よ」
「……戦闘能力を主に確認する……」
「というわけで、勇者クンは一旦部屋に戻って休んでいてくれたまえ」
何となく三博士の確認を見学するのも気まずく、僕は言われた通り部屋に戻る事にした。僕なりに魔力の事とか装備の事とか考えてみたいとも思っていたし。
「作った物を消しても魔力は返って来たりしないか……」
僕は部屋で以前作った自分用の装備の靴を消してみたりして、魔力が増えないか確認してみた。結果としては増えず、作った物を消す事に意味が無い事が分かった。あと、さっき作ったライトのラジオを点けてみたけど、予想通り局調整してもノイズしか聞こえてこなかった。
「まだ時間がかかりそうだし、少し休もうかな……」
僕はベッドに寝転がる。寝転がるだけのつもりだったが、いつの間にか眠ってしまった。
(あれ、また壁になってる)
僕はまた無意識のうちにどこかの部屋の壁になっていた。僕がいた部屋と違ってベッドが沢山並んだ、大部屋のようだ。と、部屋の中央に手を組んで祈りを捧げる女性の姿があった。
「大いなる女神マリナよ、どうか我々にご加護をお与え下さい……」
祈っていたのは僧侶のアリナだった。いつもの砕けた感じと異なり、祈っているアリナは清楚で綺麗な女性だった。
「戻っていたのはアリナだけか」
と、大部屋に誰かが入ってきた。騎士のファイだ。アリナはゆったりと祈りを解いて、ベッドに腰掛ける。
「わたくしの能力は魔法の能力向上が主なので、一番早く解放されたみたい」
「自分も必殺技を既に披露してたからか他の者より早く三博士から解放されたよ。しかし、こんな事をして本当にうまく行くのだろうか」
「今は勇者と三博士を信じるしかないわ。そもそも他に頼れる人もいないでしょう?」
当たり前なのだが、僕はまだそこまで信頼されていない。今まで見せた能力はこの世界の人にとっては凄いけど、それでも捕獲モンスターを余裕で倒せたわけでも無いし、ダークナイツとは互角かそれ以下でしかなかった。モンスターが大量にいる北の塔を攻略出来るとは簡単に信じられないだろう。
「北の塔もだが、自分はダークナイツをどうにかしたい。昨日は捕らえるところまで出来たのだから、あと一息で洗脳も解けた筈なのだ」
「でも、同じような手は二度と通じないと思うわよ。転移する力もまた使うかもしれないし」
「うぅ、自分にもっと力があれば。折角勇者殿に装備をいただいたのに、団長に押し負けていては元も子もない。そもそも自分が勝てさえすれば、うまく行った筈なのだ!」
悔しがるファイの横へアリナは移動する。
「ファイちゃん一人の責任では無いわ。あなたはあの日からずっと後悔してる。もう十分だと思うわ。今は勇者のおかげでみんなも力が与えられたのだし、みんなでやればいいのよ」
アリナは優しくファイの頭を撫でる。ファイも気を許すようにアリナにもたれかかった。
(最近エッチな事ばかりだったから、こういう普通に仲がいいのを見ると心が安らぐな……)
2人には悪いけど、僕はまったりとその様子を見ていた。
「いつもありがとう、アリナ。
今回リンザ様を助けられれば、自分も変われる気がするんだ。全てがいい方向に進むのではと。だから、もう少しだけ手伝って欲しい」
「親友でしょ、今更そんな事言われなくても全力で援護するわよ。
それに、わたくしも二度と失敗はしたくない。だから、出来る事はどんな事をしてでも必ず成功へ導いてみせる」
2人はしばしお互いに身体を寄せ合っていた。僕は自分にもやるべき事がまだあると思い、2人の姿を目に焼き付けつつ、自分の部屋へと戻るのだった。
「それでは作戦会議を再開しようではないか」
6人全員の身体能力の確認が終わったという事で、僕は再びミスナに呼ばれ、食堂でもある部屋に集まった。
「勇者クンの能力による装備はボクらの予想以上に素晴らしいものだった。そこで、北の塔攻略に関していくつかの案を考えたのだが……」
「ちょっと待って下さい。三博士の案を聞く前に、いくつか話しておきたい事があります」
僕は待っている間に分かった事、調べた事を説明する為に挙手する。
「おお、勇者クンから何かあるのか。ぜひ聞かせてくれ」
「はい。
まずこれは今僕がみんなに創造出来る衣装とその特性や必殺技、特殊技の一覧です。持っているガルブレの画集の範囲でしか無いですが、約50種類が使えますので、今後の参考になると思います」
僕は整理して大きな紙に表にした一覧を食堂の壁に貼り付けた。プログラマーの仕事の時に上司に分かり易く説明する為に表を使っていたのが少しだけ役に立った。
「なるほど、なるほど。うん、これは凄い重要な情報だ。勇者クンありがとう」
「それともう一つ。僕は壁になる事が出来るのですが、その際は魔力の消費が無い事を先ほど確認出来ました。そして、記憶している範囲なら壁から壁へ魔力を使わず移動も出来ます。これを使えば、複数の場所に壁を作って、戦場を移動しながら装備の変更も出来ます。
なので、僕は北の塔の攻略に敵の主力と戦う部隊と塔に潜入する部隊を分け、僕が状況を見て装備を変更するのがいいのではないかと考えました」
とりあえず三博士の案を聞く前に僕なりの攻略作戦を話してみる。敵によるかもしれないけど、これならうまく行く気がする。
「なるほど、複数の戦場で勇者様が指揮をとるのですね。それなら私達も安心して戦えるかもしれません」
「可能だとは思うけど、あんたの負担が大きいんじゃない?」
何だかんだ言ってネルルが少し心配してくれているのが嬉しい。でも、僕の負担が増える事でみんなが助かるのなら僕がもっと頑張るべきだ。
「おお、勇者クンの結論も似たものになったか。
だが、ネルルクンの言う通り、勇者クンの負担が大きい。何より敵の主力と正面から戦うには今の人数ではやはり足りないと思うのだよ。
別に敵全てと戦う必要などないのではないかな?何の為に我々がいると思っているのかね」
「敵を混乱させるのは得意なのよねー」
「……相手はモンスター。知能はそこまで高く無い……」
「ボクらが考える作戦は部隊を三つに分ける事だ。
勇者クンの案と同じく塔を攻略し姫を救出する救出部隊。
塔の前を動かないであろうドラゴンの相手をする対竜部隊。
そして、周囲のモンスターを陽動し、罠や同士討ちを狙う陽動部隊だ。
直接戦闘が出来ないボクらも三つ目の部隊として参加させてもらうよ」
確かに敵の殲滅が目的では無いし、リンザ姫を救出出来たのなら、残りの敵は生かしておいても問題は無い。それこそドラゴンだって無理に倒さなくていいのだ。
「確かにその通りですね。あとはどう部隊を分けるかが重要なんですね」
「その通りだ。そこで、先ほどの勇者クンの表と指揮を分けて取れる事が重要になる。あと、もう一つ、ボクらは勇者クンを有効活用する秘策を思い付いたのだよ」
「秘策?」
それから僕達はみんなの意見を聞きつつ、最善な作戦を検討したのだった。
「馬車があると移動が楽ですね」
作戦が決まったのが昼で、昼食を食べた後、僕達は北の塔へ向かって出発した。マルメズ砦には馬車2台とそれを引ける馬と予備の馬が2頭おり、馬の扱いが上手いネルルとファイが予備の馬に乗って先導し、残りは2台の馬車に分けて乗っている。これならリンザ姫の救出後も馬車で脱出出来るという事だ。
「魔王軍に交通網を破壊されてからは馬も馬車もかなり希少な物で、本来なら姫の許可が無ければボクらも使えない物だったんだよ」
「……救出の為の異例の対応……」
「マレちゃん、偉そうなお姫様とはウマが合わなかったのよねー」
僕が乗っている馬車には三博士が乗っていた。もう片方の馬車にナーリとレニーナとネルマとアリナの4人が乗っている。運転はミスナとナーリがやっているが、魔法で補助されているので、ほぼ先導している2頭の馬を自動で追ってくれるそうだ。
(三博士と同じ馬車なのは嫌だったんだけど、今後の話し合いや対応もしながら移動する必要があるし、しょうがない)
馬車の座席部分は6人乗りで、3人の長椅子が前後に2列あり、前方の長椅子に僕とランに抱えられたマレーヤが座っている。運転席とは窓が開けられ、そこでミスナも含めて会話していた。
「3人は仲が良いんですね。昔からの友人だったりするんですか?」
「いや、ボクらが出会ったのは魔王が現れてからだよ。それ以前は3人別々に研究とかをしてたんだ」
「基本的にみんな人付き合い嫌いだったからねー。マレちゃんは可愛いからみんなに愛されてたけど」
「……運命の出会い……」
ランが気になる言い方をする。まあ、見た感じ、息が合ってるのはそうなんだろう。
「アレサングの王都破壊と魔王軍の襲撃で世界は大混乱だった。みな藁にも縋る思いで知恵者をかき集めたわけだ」
「といっても、あの魔王軍には常識的な戦いは無意味なのよねー」
「……好戦的な人から死んでいった……」
「で、戦うのを嫌ったボクらは協力してあの場から逃げる算段をして、何とか生き延びた訳だ。生死を賭けた行動は何よりも強い絆を産んだと。
なあ、感動的な話だろう」
「感動的……なのかなあ」
こういう状態で我先に戦う人と何としても生き延びようとする人のどちらが正解かなんて分からない。皆を守る為に戦う人は立派だと思うし、恥も何も捨てて逃げる人が卑怯だとも思えないからだ。
(現実世界で争いが起きたら僕は真っ先に逃げただろうしな)
特別な力があるとはいえ、誰かを守る為に行動するようになった僕は現実世界にいた頃の僕とは変わったのかもしれない。
「勇者クン。ボクはね、人間なんて自分が出来る範囲で足掻くしかないと思うんだよ。あんな馬鹿みたいな魔王が現れたら、それに対抗出来る人を待つぐらいしか出来やしない。
まあ、勇者クンが現れてくれなければ、ボクらはいずれ滅ぼされていたってわけだ」
「マレちゃんも珍しく期待しちゃってるわけ」
「……ユウシャ、カワイイから大丈夫……」
「なんか、みんなに期待されてるんですが、本当に僕で良かったんですかね……」
自分が可愛いかは置いておいて、三博士以外にも期待されているのは分かっている。ただ、ミスナの言う、出来る範囲で足掻くしかないというのは、その通りだとしっくり来たのだった。
「北の塔の周囲の偵察終わりました。おおよそ予想通りの敵の数で、見える範囲でダークナイツや捕獲モンスターはいませんでした。ただ、塔の中までは私の精霊では確認出来ませんけれど」
ネルマが風の精霊シルフを使っての偵察結果を教えてくれる。装備で強化されたネルマは敵に気付かれない高さでのシルフでの偵察が出来るようになり、最終確認をしてきてもらっていた。
ここは北の塔から1キロほど離れた高台の上で、敵が襲ってこないギリギリの位置といえる。北の塔は後ろに草木の生えていない高い岩山があり、そちらからは敵の恰好の的になるので攻められない。北の塔の前方は平原で、視界がよく、高い塔からは周囲は丸見えである。そしてその平原には報告の通り大量のモンスターがおり、そのままでは塔に辿り着くのも困難だ。北の塔自身は高さ200メートルぐらいの塔で、入り口は正門しかなく、上階の窓から侵入しようとも飛行モンスターや他のモンスターの監視の中飛んで近付く事は不可能だろう。そして正門の前には最強の敵であるドラゴンがいるのだ。
(作戦通りうまく行けばいいな)
ここまでの移動は大きな戦闘は無く、馬車で1日と少しかけて到着していた。今は昼過ぎで、明るくて見つかりやすいが、モンスターの活発な夜よりはこちらが有利な昼に作戦決行する事になっていた。
「では、予定通り行こうではないか。
勇者クン、司令官はキミだ。ここからは勇者クンが最後の説明をしたまえ」
「分かりました。
これから作戦を実行します。予定通り部隊を三つに分け、最初に動くのはネルル、ミスナ、マレーヤ、ランの陽動部隊です。塔の周囲の敵に対して、挑発、おびき寄せ、攪乱、罠への誘導をお願いします。
塔の周囲の敵が減りましたら、残り2つの部隊は塔への直線上の敵を排除しつつ塔へ突撃します。
2部隊目である対竜部隊はナーリ、ネルマ、アリナの3人で、倒す事が目的ではなく、リンザ姫救出までの間ドラゴンとその他の敵の足止めが目的です。勿論ドラゴンが倒せるなら、倒して下さい。
最後の部隊が少数精鋭で北の塔へ突入する救出部隊です。僕を含め、レニーナ、ファイの3名でなるべく戦いを避けつつ迅速にリンザ姫の囚われている場所を見つけ、救出するのが目的です。ただし、捕獲モンスターやダークナイツ、またはそれと同等の強さの敵がいる事も考えられますので、室内での最大火力が出せるレニーナとファイに僕が的確な指示を出す必要があります」
僕はみんなを見ながら頭の中に叩き込んだ作戦の内容を再度説明する。
「作戦中は魔法で連絡を取り合う必要がありますが、魔法使いである二人だけだと3部隊の連携が取れません。そこでランが作った誰でも使える魔法の通信装置を各部隊1つ配ります。陽動部隊はネルルが、対竜部隊はネルマが、救出部隊は僕が持ちます。想定外の事が起こった場合は常に情報を共有する事を心掛けて下さい。その際は、僕が壁を使って移動し、指示や装備の変更を行いますので」
「勇者様、本当に私が塔へ向かう救出部隊でいいのでしょうか?」
レニーナが何度目かになる質問をしてくる。重要な役割を自分に振られるとは思っておらず、決まってからずっと不安がっていた。
「北の塔の攻略には魔法が使える人が一人は必要で、僕が作れる装備を考えても、適切なのはレニーナだと考えて決めたので大丈夫です」
「……レニーナ、魔法の能力ワタシと同じぐらい高い……」
「ランさん……。分かりました、姫様の救出は任せて下さい」
レニーナの瞳に力が宿り、ようやく覚悟が決まったのが分かる。
「ドラゴン倒せるかなー」
「数値上は倒せる計算だね。攻撃特化したナーリクンがうまく隙を突けば倒せるとは思うよ」
「私が援護しますので、迷わず突進して下さい」
実は一番危険なのは対竜部隊の3人だ。回復役のアリナがいるので、長期戦も大丈夫な筈だけど、接近戦がナーリ一人なのでディフェンス面で少し不安は残る。
「対竜部隊は危なくなったら僕をすぐ呼んで下さい。態勢を立て直す時間稼ぎぐらいは出来るので」
「マレちゃんの薬も渡してるし、陽動部隊も機を見て戻ってくるから勇者はそんなに心配しなくて大丈夫だよー」
「ネルルがお姉ちゃんを危険な目に合わせるわけないからね」
「分かった、みんなを信じるよ」
僕も覚悟を決め、最後の準備に取り掛かる。僕は全員の装備を話し合いで決めた装備に変更した。魔力計を確認し、予定通りまだ半分は魔力が残っている事を確認する。
「可愛いは可愛いんだけど、なんでネルルの装備はどれもミニスカートでひらひらしてるの?」
「ネルルのはまだ可愛らしいですけど、私のは何か合ってない気がして恥ずかしいです」
ネルルもネルマも新学期に合わせた学生服風限定衣装で、ネルルはブレザータイプ、ネルマはセーラータイプだ。ネルマのお腹の出ているセーラー衣装は見た目年齢を考えれば確かに本人には厳しいけど、ガルブレのゲーム内ではネーラが恥ずかしがって着てるのが人気になっていた。
「お2人はまだいいでは無いですか。なぜ、自分は水着なのですか!」
「わたくしは噂に聞く東国風衣装で、締め付けはきついですが、鮮やかで気に入りました」
ファイは防御と攻撃力のバランスから夏の水着限定衣装を着て貰った。赤色のほぼビキニと剣だけの衣装で、この際恥ずかしいのは我慢してもらうしかない。アリナは新年の着物の限定衣装で、合わせて長髪も上で結ってもらっていてよく似合っていた。
「あたしはフワフワしてちょっと落ち着かないかなあー。身体が軽いのは分かるけどー」
「ナーリはまだいいです。私はまた露出度が高いですし、オレンジと黒の派手な色合いも敵に目立ちそうでどうも……」
ナーリは風属性の羽衣衣装で、ふわっとしていて見た目は可愛らしい。けど、ナーリの装備の中で一番攻撃力は高かったりする。レニーナは黒とオレンジ色のハロウィン限定衣装で、胸や股間は確かに艶やかでやや際どい。これもレニーナの装備で一番単体攻撃力が高いものだ。
「うん、これはいいものだな」
「なかなか可愛くてマレちゃんにも似合ってるわねー」
「……二人ともカワイイ……」
三博士は恒常のSSR衣装だけど、それぞれの特性が強化され、陽動にはもってこいの装備でこれを選んでいた。ミスナは動きやすそうで、罠を仕掛ける道具が各所についている作業服に近い緑色の衣装だ。マレーヤは白衣を基本として、中は可愛らしいピンクのスカートで、各所に薬剤関係の道具が付いている。マレーヤは露出度の低い紺色の魔女の衣装だが、身体の部分は肌にフィットした素材で身体の凹凸がよく分かりエッチだったりする。
「それじゃあ勇者クン、ちょっくら行って来るよ」
「はい、お願いします」
三博士が馬車に乗って事前の準備をしに出発する。この周辺にモンスターがいない事は確認済みなので、任せて大丈夫だろう。
数分後、3人の乗った馬車が帰ってきた。特に問題無さそうだ。
「勇者クン、準備はOKだ」
「じゃあ陽動部隊の皆さん、行きましょう」
「「はいっ」」
ネルルは一人で馬に乗り、僕は馬車の屋根の上に作っておいた背の高さの壁になる。ミスナが運転席に、マレーヤとランは馬車の屋根の上に登り、壁になった僕に掴まる形を取る。他の馬車と馬は森に隠していて、救出後まで使わない。
「まずはネルルの番ね」
「頑張って」
馬と馬車で塔の方へと向かうけど、ネルルは速度を上げて、単騎でモンスターがうろついている塔の前方へと近付いていく。そして、馬に乗ったネルルに気付いた敵が、警報である角笛のようなものを吹いた。周囲にバラバラにいたモンスターはネルルが近付く方向へと集結していく。ただしドラゴンやジャイアントなどの大型モンスターはまだ動かない。
「最初の1撃、派手にやるわよ。
みんなに届け、ネルルの気持ち!燃え上がれ、プロミネンスショット!!」
ネルルがゲームのセリフで必殺技を放つ。ネルルのブレザー装備は火の属性で、放った炎の矢は敵の集結したド真ん中に落下し、巨大な炎の柱を上げた。そして、周囲に燃え広がる。実はこの攻撃の攻撃力は他の必殺技に比べて劣るけど、炎の広がる範囲と持続時間からゴブリンやオークなどの大量の弱い敵にはかなりの被害を与えられるのだ。それに炎の柱は空中の敵も巻き込み、翼を焼いて多数落下させられる。また、必殺技の回復も早く、数分に1回撃てるのも今回の陽動に有効だという事で選ばれた。
「さあ、ネルルが相手よ付いてきなさい!」
ネルルが敵と接触する直前まで移動し、そこで反転する。矢や魔法を放つモンスターもいるが、それはランが事前に施した魔法のバリアで弾くか逸れていく。ネルルはあえて馬の速度を落とし、モンスターがギリギリ追い付かない位置をキープする。そして僕達の乗った馬車と合流し、馬車も反転する。
「次はマレーヤ、お願いします」
「マレちゃんって呼んでって言ってるでしょ。もう少し逸れたらやるわね。
うん、今がチャンス。
マレちゃんのお薬、とーっても効いちゃうの。そーれ、カオストリッパー!!」
必殺技のセリフを唱え、マレーヤが追ってくる敵の中心地に大量の瓶を投擲する。装備で投擲能力が上がり、薬品の瞬時調合も可能で、本来の物理的な所持量もかなり増幅されている。そして投げた薬は敵を混乱させる効果があり、興奮した敵は同士討ちを始め、そこから更なる混乱が生まれた。
馬で移動しながら、大きく塔の周りを円を描いて移動し、混乱していないモンスターもこちらに集めるよう工夫する。
「ラン、頼みます」
「……頑張る……。
見えざる魔法の糸よ、全てはワタシの思うがままに。スパイダーチャーム……」
セリフを唱え、ランが両手を天に広げる。ランの必殺技は複数個所での同時魅了効果で、ある程度思いのままに操る事が出来る。それに加え、ランの魔法での索敵能力が上がっていて、今彼女は効果的に敵の重要モンスターを操っている筈だ。そして敵を事前にこちらが仕掛けた罠へと誘導していく。
「……大丈夫、うまく行った……」
「ではミスナ、仕上げを」
「よし来た、マレちゃん、運転を変わってくれ」
マレーヤが運転席に移動し、ミスナが馬車の天井に乗る。そして、目的の場所が近付いて来た。モンスターの大群は馬車と馬に付いて来ている。
「うん、計画通りだ。
ボクの仕掛けは変幻自在。さあ、派手に行こうか!コズミックトラップ!!」
ミスナが馬車の上でセリフを言う。ゲームではシステム上罠を作るところからが必殺技なのだけど、この世界に合わせてアレンジされている。ここからはいわゆる必殺技の後半の演出で、敵の密集した場所のトラップが発動し、爆発、落とし穴、氷結、落石など、様々なトラップがそこかしこで展開された。これでモンスターを倒さずとも、多くがここら辺の位置に釘付けになった筈だ。
「じゃあ僕は戻ります。何かあれば呼んで下さい」
「大丈夫よ。ネルルは早く処理してお姉ちゃんを助けに行く予定なんだから」
「ボクらは逃げるのは得意だ。勇者クン、安心して行ってきたまえ」
僕は陽動を彼女らに任せ、残りの仲間がいる場所まで移動した。
「陽動部隊の方はうまく行った。対竜部隊と救出部隊も行こう。まずは僕が行くから」
みんなが待機している場所に人の姿で戻った僕はそう言ってから用意していた壁を見る。これが三博士が言っていた秘策だ。僕は準備していた壁になる。
「多脚移動防壁『ブレイブウォール初号機』起動!」
厨二感たっぷりのネーミングを僕は恥じずに読み上げる。ネーミング以前に見た目の方がとても変だから今更恥ずかしがることもない。
(それに一度ぐらいこういうセリフ言ってみたかったし)
僕は一体化した壁の下の脚を魔力で操り立ち上がらせる。見た目は一辺が極端に短い二等辺三角形の三角柱の下に8本の蜘蛛のような機械の脚が生えている高さ2.5メートル位の物体だ。二等辺三角形の柱部分は僕が作り、それ以外は三博士との共同製作で移動中に組み上げていた。
ブレイブウォールを造る発端は三博士とシニラというゴーレム製作者が共同で作った移動多脚魔導戦車が既にあった事が大きい。これは大量の魔王軍に対抗すべく企画設計をミスナがし、機構部分をシニラが、魔法力の燃料や武装をマレーヤが、動力炉や操縦部分をランが主体となり協力して作り上げたという。
が、移動多脚魔導戦車は脚部を狙われると結構脆くて壊れやすく、移動速度の慣性に操縦者が振り回され、攻撃する魔術師や弓兵がそもそも無防備過ぎるなど、難点が多かった。なので試作機を作って1回出撃した時点で封印されたという。
そこで今回僕の創造の力を使って難点を補う事になった。脚部はガルブレのボス敵である魔導兵器を真似、そのフレームや装甲を元の設計に合わせて作る事で強度が上がった。例え壊れても僕が随時作り直せるので途中で動けなくなる心配は無い。次に操縦者は僕なので壁になった時点で慣性による影響は無くなっている。最後に、壁部分が強固であり、それ自体が僕の武器となるのだ。
「では、行きます。みんなは僕に続いて」
「「はいっ!」」
僕が先頭に立ち、その複数の脚を使って走り出す。これでも馬並みにスピードが出て、僕は三角形の長い辺の頂点を前にして風を切って進む。
(ようやく戦闘自体に参加出来る。こんな格好だけど、重要なのは見た目じゃない)
北の塔に真正面から突っ込む僕達に敵が気付き動き始める。塔の周りにいた大半の敵が陽動部隊でいなくなってはいるけど、それでも中型のオーガや大型のジャイアントなどが残っていて、普通の部隊では突破出来ない数だ。
「さあ、かかって来い!」
僕は鋭く突き出た三角柱の頂点を集まった敵に向けて突進する。それは壊れない壁であると同時に、鋭利な刃となっていた。突進の勢いも合わさり、真正面に立った敵は縦に真っ二つに切り裂かれる。それでも勢いを止めず、オーガぐらいの大きさの敵を次々に破壊していった。
異様な壁の突進で敵は混乱し、僕の通った跡が道になり左右に分かれる。そこにレニーナとネルマが集団に対応出来る範囲魔法で攻撃し、残った敵はナーリとファイが移動の邪魔になる分だけ倒していく。モンスターの魔法や矢などの遠距離攻撃はアリナが防いでくれていた。
(ここまでは上手く行ってる。でも、ここからだ)
僕の勢いを止めようと塔を守っている大型のジャイアントが2体寄ってくる。体格差は壁になった僕の高さの2倍以上ある。脚を攻撃されれば強化したとはいえ、ただでは済まない。
「モードチェンジ!」
僕は移動を止め、変形した。まあ、変形といっても、脚部を壁の中の空洞部分に仕舞い、三角柱の壁になっただけだけど。
『ガンッ!!』
ジャイアントが全力で僕を殴った音がする。が、僕は揺るがず、倒れない。今の時点の僕はこの地面に立っている動かない壁なので、いくら攻撃しても壊れないし倒れないのだ。そして、ジャイアントはその手にダメージを食らい、痛みに叫びを上げていた。もう一体のジャイアントは僕を全力で蹴ったが、こっちも同様だ。
『ウォォォ!!』
「ナーリ、ファイ、今のうちに!」
「分かったー!」
「了解です!」
狼狽えたジャイアントの首を2人は跳躍し、1撃で斬り落とした。今の2人の装備ならそれが出来るのだ。そして残る問題は……。
(ドラゴン!)
僕は脚を再び出し、塔の正門の前で悠々と立っているドラゴンを睨む(まあ壁なんだけど)。茶色の巨大なドラゴンは翼は無く、2足の後ろ脚と尻尾で立ち、両手と長い首を使って攻撃してくるようだ。口からブレスを吐くだろうし、その鱗は見るからに堅そうではある。
「まずは僕が!」
僕は多脚で走り出し、三角柱の刃の部分をドラゴンに向けて突進する。
『ブォン!!ガッ!!!』
風を切る音が聞こえ、僕は右へと吹き飛んでいた。凄い速さでドラゴンが尾で僕を薙ぎ払ったのだ。脚を出している状態は地面に生えた壁では無いので、僕はそのまま横へ吹き飛ぶ。一旦脚を仕舞って脚部へのダメージを減らし、僕は地面に倒れた。
「勇者様!」
「大丈夫、ダメージは無い。けど、やっぱり凄いなドラゴンは……」
僕は脚部を使って立ち上がる。見た感じ一本の脚が少し壊れ始めてるけど、まだ作り直さなくて大丈夫だ。
(本当は僕がドラゴンを倒してお姫様を助けたいけど、今の僕は一人じゃない。仲間を守りつつ、協力して進まなくちゃいけないんだ)
僕はドラゴンの前に集まりつつあるみんなの方を見る。ここは計画通り行くしかない。
「ナーリ、ネルマ、アリナ、ドラゴンを頼む!」
「うん、やるよー!」
「任せて下さい」
「坊やも頑張るのよ」
ナーリがドラゴンの前に立ち、その少し後ろにネルマとアリナが付く。
「じゃあ、わたくしからね。
女神マリナよ。祝いの日に我らに大いなる祝福を与えたまえ。フェスティバルブレッシング!!」
アリナの着物衣装の必殺技で僕も含めて防御力が上がり、体力の自動回復が一定時間付与された。
「私も行きます。
優しき大地の大精霊グランドノームよ。その姿を現し、全てを包み込んで下さい。マウンテンバインド!」
ネルマのセーラー衣装の必殺技でグランドノームが召喚され、グランドノームはドラゴンの周囲の土を山のように盛り上げ、ドラゴンの足や尻尾を拘束する。ドラゴンはもがくが、すぐに移動出来そうにはない。
「仕上げはあたし!!
今日のあたしは一味違うよ。鳥のように舞い、鉢のように刺す!!ストームブレイク!!」
ナーリは羽衣衣装で拘束されたドラゴンの周りを軽やかに飛び回り、手や胴体を斬り付けつつ飛び上がる。そして最後にドラゴンの首にその斧を叩き付けた。流石に断ち切る事は出来なかったけど、首の鱗は割れ、そこから紫色の鮮血が噴き出した。
『グオォォォォ!!』
ドラゴンが怒りの咆哮を上げる。
「今がチャンスだ、行こう」
僕は拘束されたドラゴンの横をすり抜け、ファイとレニーナもそれに続く。残された3人が怒り狂ったドラゴンと戦うのが背後に見えた。
「門は私がやります。エクスプロージョン!」
レニーナが強化された爆発の呪文で北の塔の正門を壊す。近くで見る塔は巨大で、威圧感を感じる。塔の一階は広間になっていて、普段の身長より大きい壁になった僕も通れそうだ。
「僕が行くから付いて来て」
「分かりました」
「了解です!」
僕は1階の広間に侵入する。ここには罠や敵はいなそうだ。石造りの巨大な塔で中央に太い支柱のような柱があり、その他いくつか柱が立っている。そして太い柱の奥にらせん状の階段があるのが見えた。敵が待ち構えているなら階段の上だろう。
(姫がいるならすぐ逃げられる1階じゃなく上階の筈だ。レニーナに魔法で調べてもらいつつ、慎重に、かつ迅速に登っていかないと)
そして、気にするのはここだけじゃ無いと思い出し、僕は連絡を取る。
『こちら、救出部隊。塔への侵入に成功しました。他の部隊は大丈夫ですか』
魔法の連絡装置を使って他の部隊に連絡する。壁になった状態でも使えるのはどういう理屈か分からないけど、使えるのだから問題無い。
『陽動部隊よ。陽動は上手く行ってるけど、なかなか捌ききれないわ。対竜部隊の援護に行くにはまだ時間がかかるかも』
『対竜部隊です。ネルル、こちらはまだ大丈夫だから焦らないで』
陽動部隊のネルルと対竜部隊のネルマが応答し、状況を報告してくれた。
『分かりました。何か進展があれば連絡して下さい』
『『了解です』』
連絡を終わる。ひとまず塔の攻略に専念して大丈夫そうだ。
「行こう!」
僕は塔の階段を多脚を器用に使って上り始めた。流石に段差があるところで壁を使っての攻撃は出来ない。でも、盾になる事は出来る。
「タコ型のモンスターか。これは元々いたモンスター?」
階段を少し昇ったところに通路を巨体で塞ぐように赤色のタコに似た触手を生やしたモンスターが鎮座していた。倒さなけらば先に進む事は出来ないだろう。
「いえ、海に居るモンスターに似てはいますが、姿かたちが違うので、魔王軍の捕獲モンスターだと思います」
「この大きさなら自分が行きます」
「分かった、任せる」
レニーナに判定して貰い、大きさ的にファイに任せる事にする。というのも、ファイの水着衣装は火属性であり、海洋生物型モンスターに強い筈だからだ。ファイが階段と僕の隙間を抜けて前へ出た。
「私も援護します」
「覚悟!」
ファイは炎を纏った剣でオオダコに斬り付ける。迫って来たタコの触手が切れて、火が移ってタコの焼けるいい匂いが充満した。なんか縁日を思い出す。続いて僕の背後からレニーナがファイアボールを撃ち、それもオオダコの触手を何本か焼き払った。
(うまく行きそうだ。って、墨を吐く動作か!)
「ファイ、多分口から墨を吐くと思う。避けるのに専念して!」
「分かりました」
予想通りオオダコは口(本当は口じゃないらしいけど)から墨を吐いた。ファイは警戒していたのでそれを華麗に避ける。吐かれた墨の一部が僕の方へも飛んで来た。壁部分にかかったところは黒く汚れただけだけど、脚に当たったところは表面の装甲を溶かしていた。
「多分それに当たると装備が溶ける。ファイは一旦僕の後ろへ」
「では、私の出番ですね」
「うん、ファイが下がったらお願い」
僕はファイが戻ってくると一旦壁を横にしてみんなの盾になり墨と触手を防ぐ。そして、レニーナが準備出来るのを待つ。
「行きます。
今日は年に一度の祭りの日。私も派手に行っちゃいます!カーニバルバーニング!!」
レニーナがハロウィン衣装の必殺技を唱える。僕は壁を縦に戻して、レニーナの必殺技がオオダコに当たるようにする。レニーナのドクロの形をした杖から魔法がオオダコへ飛んで行く。オオダコの周りに花火が次々に上がり、一気に燃え上がらせた。これが現行パーティーでの魔法の最大火力になる。
「やりました、勇者様!」
「流石レニーナですな」
「急ごう!」
オオダコが消し炭になったので僕達は先を急いだ。
塔は予想通り強敵は多かったけど、ファイの攻撃力とレニーナの火力、そして壁としての僕がそれなりに役に立った。レニーナの魔法で塔の途中にある部屋に人影が無いことが分かり、結局リンザ姫がいるのが最上階だと分かった。
「勇者様、上に見えるあの部屋に2人の人間の反応があります。恐らく囚われたリンザ姫でしょう」
「ですが、前に居るのは強敵に思えますな」
「一旦僕が相手になる」
最上階の扉の前に居るのは腕が6本ある禍々しい鎧の騎士のような3メートルぐらいのモンスターだった。勿論この世界のモンスターでは無く、現実の有名RPGのモンスターに似ていた。腕には全て剣が握られ、見るからに隙が無さそうだ。
「これでどうだ!」
僕は最上階まで駆け上がり、脚を仕舞って壁になった。6本腕のモンスターは侵入者に対して斬りかかる。が、壁にはダメージを負わせられないと判断したのか、すぐに攻撃を止めた。攻撃で剣が壊れてくれればと思ったけど、そうはいかないようだ。僕にきちんと判断出来るかは分からないけど、剣の速度、威力共にファイとも大差ない気がする。
6本腕のモンスターは剣以外の攻撃手段は無いようで、扉の前に立ち、壁になった僕を睨み続ける。
(姫を人質に取るような知能が無くて助かった。けど、倒す方法を考えないと)
装備で防御力は上がってるとはいえ、今のファイの水着装備は盾が無いのであの攻撃を食らい続ければただでは済まない。レニーナは必殺技を再び使うのには時間が必要で、魔力も結構減ってるので、遠距離から削るのも難しそうだ。
(でも、ここには僕もいる。3人の力を合わせれば)
僕は戦国時代が舞台の漫画で農民達が知恵で凄腕の武士を追い払ったエピソードを思い出す。どんな卑怯な手でも勝てばいいのだ。
「レニーナ、僕が合図したら敵の頭上から例の特殊技を出して。ファイは僕が合図したら必殺技を」
「分かりました」
「了解です、勇者殿!」
僕は脚を出し、準備する。
「レニーナ!」
「はい、行きます、パンプキンパレード!!」
レニーナが魔法を唱えると6本腕の頭上から大量の顔の形がくり抜かれた燃えたカボチャが落ちてくる。この世界にハロウィンは無いし、カボチャのオバケもいないけど、ハロウィン装備の特殊魔法は使う事が出来た。ダメージとしての威力は微妙なので使いどころが無いと思ったけど、6本腕は必死に降って来るカボチャを斬り隙が出来た。
「いっけー!」
僕は壁を横にしつつ6本腕に体当たりする。ダメージは大して与えられないけど、これで相手の視界を壁で完全に塞げる。暴れる腕の剣で脚にダメージが来るけど、これは諦めるしかない。
「ファイ、今だ!」
「了解です。
真夏の太陽よ私に力を!悩殺ボディで砕け散れ!フレイムクラッシュ!!」
タイミングを合わせて僕は壁を横に倒す。そして開けた空間には既に跳躍するファイがいた。6本腕が反応する前にファイの炎の剣が八つ裂きに切り裂き、6本腕は砕け散った。
「やりました!」
「さあ、姫様を助けに行きましょう」
レニーナも最上階まで上がり、魔法で扉の鍵を開けてくれた。流石に壁のままでは扉はくぐれず、僕は人間の姿に戻り、先頭で部屋に入る。
「……どなたですか?」
部屋の中から可愛らしい声がする。僕は一呼吸おいて、喋り出した。
「僕は異世界から転生して来た勇者のリュートと申します。リンザ姫様を助けに参りました」
「そなたが、勇者か」
姿を現したのは水色を基調とした美しいドレスに身を包んだ、長い銀髪のとても小さなお姫様だった。やや釣り目の水色の大きな瞳が美しく、顔立ちはとても可愛らしい。ガルブレのリーズ姫に似ているが、それよりずっと可愛いと思った。リンザ姫の横には同じく小柄でメイド服に身を包み、薄紫の前髪で目が隠れている少女が控えていた。お付きのメイドだろう。
「リンザ様、ご無沙汰しております。救出が遅くなり申し訳ございませんでした」
「その声は、ファイか。そなたも来てくれたか」
「お久しぶりです、姫様。私や他の皆も姫の救出に助力させて頂きました」
「そなたはレニーナか。しかし、2人のその珍妙な服装はなんなのだ?」
毎度のことながら、やっぱり服装には疑問を持たれる。まあレニーナとファイは今いるパーティーの装備の中でも特に露出度が高いものではあるけど。
「すみません、色々説明したいのですが、今は外で戦っているみんなも待っていますので、急いで脱出しましょう」
「リュートと申したな、近くに寄ってその顔を見せてくれ」
「分かりました」
僕は褒められたり、もしかしたら惚れられたりするのかもとドキドキしながら近付く。こんな事ならもう少しイケメンな顔に転生しておけばよかった。僕は姫の前まで移動し、ファイを見習って片膝を付く形で跪く。
「ふむ、思ったよりだらしない顔だな。
転生して何日になる?」
「えーと、今日で7日目になります」
「一週間だと?今まで何をしておった。貴様、それでも勇者か、情けない!!」
何を思ったか、リンザ姫は跪く僕の顔や足を殴る、蹴るし始めた。魔法の鎧を着ているのでダメージは少ないけど、姫の力はそれなりに強いのか、素肌を晒している顔は結構痛い。
「え、何をするんですか」
「口答えするでない!」
「姫様、お止め下さい」
横に控えていたメイドが背後からリンザ姫を引っ張り、何とか暴力は止まった。ガルブレのリーズ姫が無口でクールなタイプだったのでその違いに僕は驚きを隠せない。
(一時期暴力系ヒロインが流行った事もあるけど、すぐに手を出すとバカっぽいからか消えていったんだよなあ。廃れた理由を何となく理解したよ)
「ごめんなさい、リンザ様はずっと閉じ込められ、何も出来ない自分を責めておられたのです。リュート様が救出に来て頂いた事には本当は感謝しておられるのです」
メイドの子がフォローしてくれたけど、不機嫌に椅子に戻ってふんぞり返っている姿からはそんな感情は読み取れなかった。僕は期待してきた分、感情がかなり乱されていた。
(そういえばリンザ姫に対して色々怪しい評判も聞いてたけど、みんなはこれを知っていたって事かあ)
振り返るとファイは申し訳なさそうな顔をしていて、レニーナも僕を見て軽く頭を下げた。アリバが姫の救出を止めた理由も今更分かった気がする。
(でも、これは僕が決めた事だ。それにリンザ姫だって本当は悪い人じゃないかもしれない。ファイだって優しい人だって言ってたし)
そんな事を思っていると魔法の連絡が僕に届く。
『勇者さん、ごめんなさい、アリナさんが。急いで来て下さい!!』
『分かった、すぐに行く!』
「リンザ姫、すみません、仲間を助けに行きます。
ファイ、後の事はお願い」
僕はそう言って返事を聞かずに、ドラゴンと戦うネルマ達の元へと向かうのだった。
(そう言えばここには温泉を使った大浴場があるからおすすめされてたっけ。今の時間なら誰も居ないだろうし、昨日は入らなかったから行ってみようかな)
僕は部屋を出て、誰にも気付かれないように静かに大浴場の方へ移動する。まだみんな寝ているようで、誰にも出会わなかった。
「ここか」
砦の一階の端に浴場と書かれた看板がかかっていた。見たところ男女で分かれていたりもしない。
(そもそもここには今は女性しかいないって言ってたっけ。中に誰も居なければ入っても問題無いかな)
扉を開けると中は脱衣所となっていて、着替え用のかごと、身体を拭いたり洗ったりに使える布が置いてあった。かごはどれも空なので中には誰もいないようだ。僕は早速服を脱いで、布を一枚持って浴場へと向かう。
「へー、凄いな」
大浴場は結構な広さで、魔法の灯りに照らされ、温泉から通したと思われるお湯が常に浴槽に流れ込んでいる。僕は洗い場におけでお湯を汲んできて、置いてあった石鹸で身体を洗う。この世界に入浴の習慣はあるけど、エルフの隠れ里にあったのは小さな浴室と、魔法でお湯が出るユニットバスみたいなものだった。なので、ここまでゆっくりと身体を洗うのはこの世界に来て初めてだ。
「ふぅ……」
身体も頭も洗ってスッキリし、大きな浴槽に一人で浸かる。今までの疲れが取れて行くようだ。このまま何時間もここに居たいと思ってしまう。
『ガチャ』
くつろいでいると浴室の扉が開いて、誰かが入ってきた。このままではマズイ。
「ごめん、今出るから、ちょっと待ってて」
「勇者さんですか?別に一緒で構いませんよ」
近付いて来たのは一糸纏わぬネルマだった。布は持っていたものの一切隠さず、アニメのように濃い湯気も謎の光も無い、綺麗な裸体が目の前にあった。
(エルフは痩せていて貧乳だって説もあるけど、僕はネルマみたいに肉感タップリでもいいと思うけどなあ)
ネルマの胸はこの世界で出会った女性の中では多分アリナに続いて巨乳で、乳首は濃いピンク色で乳輪も大きい。お尻も大きく、太ももも太く、病弱とは思えないほど見た目は健康的に見えた。と、見ていてはいけないと急いで目を背ける。
「い、いや、そういうわけには。僕が目の毒だし……」
「すみません、隠した方がよかったですかね。では、少々お待ちを」
ネルマは持っていた布を身体に巻き付ける。大きさ的にギリギリで、胸は乳首がはみ出そうだし、下も覗けば見えてしまいそうだ。
「いや、そうじゃなくて。
僕はもう出るから」
「そうだ、折角なのでお背中をお流し致しますね。今までの感謝を込めて」
「で、でも」
「別に性的なご奉仕ではありませんし、たまには私のお願いも聞いてくれませんか?」
そこまで言われては、断るわけにもいかない。
「じゃ、じゃあ、背中だけなら」
「では、こちらへ」
僕は浴室用の椅子に布で股間を隠すようにして座る。ネルマは布を持って来て、石鹸で泡立てた。
「それじゃあ、洗いますね」
ネルマが僕の首筋から背中を洗い始める。最初は緊張したけど、優しくゆっくり洗ってくれて、とても心地良い。
「よくネルルと洗い合うんですよ。あの子小さい頃はお風呂嫌いで、逃げるのを捕まえて洗ってたんです」
「そうなんだ」
「大きくなるとあの子胸が小さいのを気にしてて。私が揉んであげたんですけど、結局あのサイズからは大きくならなかったんです。私の方は別にこんなにいらなかったのに」
ネルマはネルルの事を楽しそうに話す。
「僕はどっちの胸もいいと思うけどなあ」
「ネルルに言ってあげて下さい。あの子喜びますよ」
「まさか、そんな事を言ったら殴られます」
変な事を言ってネルルからの評価をこれ以上下げたくは無いと思う。
「そういえばいつもこんな早朝に入浴してるんですか?」
「いえ、今日は相部屋だったので落ち着かなくて眠りが浅く、起きてしまったんです。それで折角だからと入浴に来たんです。ここの温泉はエルフの里のものに近くていいものでしたし」
「ごめん、僕は個室を使わせてもらってるのに」
「いいんですよ、勇者さんは特別なんですから」
と、そんな話をしていたら、突然背中の感触が変わった。とても柔らかく、大きなものが背中に押し当てられている。
「ネルマさん、何を……」
「勇者さん、みんなの事は呼び捨てにするって言ったじゃ無いですか」
「いや、そうじゃなくて」
背中に押し当てられた物はゆっくり上下に動き、僕の背中をマッサージする。見なくても分かるが、ネルマは布越しに大きな胸を僕の背中に押し当てているのだ。
「ネルルがこうすると喜ぶんです。勇者さんも気持ちよく無いですか?」
「確かに気持ちいいけど、さすがにそれはマズいです」
布で隠した僕の下半身が反応してしまう。でも、ここ数日の暴走を思い出し、ネルマにそういう所は見せたくない。
「駄目ですか?
では、私の事を呼び捨てで呼んでくれたらやめてあげます」
「分かりました。
ネルマ、もうそれ位でやめて下さい」
「分かりました。じゃあ、これで……」
僕の背中をお湯で流される前に、直に柔らかい何かが当たった気がした。
「ありがとうございました」
僕は勃起したものを見られないように急いで脱衣所へと逃げて行くのだった。
『コンコンッ』
「勇者クン、起きているかい?」
入浴後部屋でくつろいでいると、扉がノックされる。声からして三博士のミスナだろう。昨日の事があるので警戒しながら扉に近付く。
「起きてますが、何でしょうか」
「いや、朝食の準備が出来たので呼びに来たんだよ」
「分かりました、すぐに行きます」
僕は2人きりになるのを避けるよう少し間を置いてから扉を開ける。するとまだミスナが廊下で待っていた。
「おはよう、勇者クン。
昨日は少し悪ふざけが過ぎた。3人を代表して謝らせて欲しい。すまなかった」
「おはようございます。
まあ、もういいですよ」
ミスナの様子が昨日に比べて元気が無かったので、僕は許す事にする。
「そうか、ありがとう。
今日は今後の対策について話し合おうと思うのだけど、あの装備はどうやって作ったんだ?」
ミスナはすぐに元気になり、食堂に向かいながら聞いてくる。
「あれは、僕が想像した通りに勇者の力で作ってるんです。元々は僕の居た世界のゲームの装備で、ゲームと同じ技も使えるようになります」
「なるほど。装備はみんな違うようだけど、誰でも着れるのかな?どれぐらい種類があるかも気になるな」
「それぞれの職業と体型に合ったものなので、誰でも着れるわけでは無いです。種類は多いキャラは10種類ぐらい、新しいキャラだと2種類しか無い場合もあります」
ミスナは僕の装備を作る力に興味深々のようだ。昨日も僕自身の人体実験では無く、そういった方向で話が出来れば良かったのにと思う。
「と、もう食堂か。話はまた後でしよう」
食堂に着いたので話が終わり、僕達は少し質素な朝食を食べたのだった。
「では、作戦会議と行こうじゃないか」
朝食を食べ終わった食堂で、ミスナの仕切りでそのまま作戦会議へと移行した。
「北の塔に姫を救出に行きたいという事だが、勇者クンは何か案とかあるのかな?」
「今のところはまだ。敵の状況とかも分かってないですし。ただ、ドラゴンがいるらしいので、それに対応した装備にその場で変更しようと思っています」
「なるほど、なるほど。
誰か過去の情報でもいいので、北の塔の敵の戦力は知っているかね?」
「はい、自分が。
過去に行った偵察で、塔の周りにはドラゴンが1体とジャイアントやケルベロスなどの大型のモンスターが2~30体、オーガやオークなど中型から小型のモンスターが4~500体は確認出来たそうです。これらは魔王が女性狩りを始める以前に村や町を襲っていたモンスターで、その半数ぐらいをここに集めたようです。
そして、塔の中は完全に未知数です。外には魔王が新たに作りだした捕獲モンスターはいないので、塔の中にはそういった強力なモンスターがいる可能性があります。
これは2ヶ月前に最後に偵察に向かった者の情報ですので、状況は変わっているかもしれません」
ファイが北の塔の周りの戦力を説明してくれる。
「やっぱりやめた方がいいんじゃない?」
「……絶対大変」
「まあ、2人が言う通り普通に考えれば正気の沙汰ではないな。
だが、ここには勇者クンがいる。そうだね?」
「えーと、はい、何とか出来ればしたいと思ってます」
ミスナが僕を期待の目で見る。正直まだ助けられるビジョンは全然見えていない。
「7人だけで、ボクらを入れても10人で攻略出来る量では無い。
ちなみにボクもマレちゃんもランちゃんも戦闘要員とは考えないで貰いたい。昨日のように罠を張っての戦いなら出来るが、直接戦闘能力は皆無に近いからな」
「薬を投げるぐらいなら出来るけど数に限りがあるしねー」
「……攻撃魔法、苦手……」
「という事で、ボクらは近くにまでは行くけど、直接戦闘には参加しない予定なのでよろしく。
さて、となると、7人でどうこの数に立ち向かうかを考えなければならない。そこで重要なのは勇者クンの装備を作る力だ。ボクらは昨日遠くから戦う所を見ていたけど、それだけでも十分強力なものである事は分かった。そこから更に何が出来るかを検討しなければならない」
「それなんですけど、そもそも僕がどれぐらい力が使えるか、例えば装備を変えられる回数とかが分かっていないんです。日を分けて事前に作っておく事も出来るとは思いますが、そうなると着替える時間が必要になりますし」
僕が以前から気になっていた事を三博士に伝える。
「ふふ、その事かね。大丈夫、既に見当はついている。ランちゃん」
「……うん。昨日ユウシャが物を作った時に魔力が減っているのに気付いた。これを腕に付けて……」
ランはそう言うと何か目盛りが付いた腕輪を僕に渡してくれる。
「それって魔力計ですか?魔法使いになりたての時に訓練で使う」
「……そう。ただ、これはユウシャ用の特製。魔力の総量が違い過ぎる……」
レニーナの質問にランが答える。僕はその魔力計を付けてみる。すると一番左にあった目盛りがグッと右に動いた。
「私達魔法使いや僧侶は魔法を習う時にどれだけ魔力を消耗するか、その魔力計を見て覚えるんです。そのうち身体で覚えるので、正式な魔法使いになる前に使わなくなります」
「勇者クン、まずは今目盛りが指している位置を覚えておいてくれ。次に何でもいいので、小物を昨日のように作ってみて欲しい」
「小物、ですか?」
何でもいいと言われると困ってしまう。昨日と言うとオナホを作った事を指しているんだろうけど、あれをこの場で作るわけにはいかない。力を使って作るのだから、何か今後役に立つ物の方がいい。
(そういえば電化製品みたいな物は作れるのかな?でも、電池とか充電の物だと切れたらお終いだよなあ……。そうだ、あれなら)
僕は以前自然災害が多発した際に会社に勧められて買わされた、ラジオ付きのライトを想像し、創造する。電池の他にソーラーと手回しでの充電が出来るし、ライトの他にも警報音を鳴らす事や目覚まし時計にもなる。ラジオは多分使えないけど、ライトは持っていれば役に立つかもしれない。
「それは何かな?見た事の無い奇妙な機械のようだが」
「僕の世界にあった灯りです。ほら、こんな感じで」
「……魔力を使ってない、灯り、面白い……」
「まあ、それ自体は何でも良かったんだ。勇者クン、魔力計を見てみたまえ」
「えーと、はい。ああ、確かに少し目盛りが減ってる」
「見た感じ、そのぐらいの物なら100あるうちの1ぐらいしか使わないという事だ。今後は魔力計を確認しつつ、物を作ってみるといい」
目盛りは10あって、最初は一番右の10まであったのが、今は9の方へ少し動いている。ミスナの言う通り、MP100と仮定すれば1使ってMP99になった事がおおよそ分かるという事だ。
(これは便利だ。壁になった時にどれぐらい減るかも知っておきたいな)
「ちなみに勇者の魔力はマレちゃんの薬やランの魔法では回復しなかったからね」
「……普通の人と同じように時間で回復はする。寝ると回復速度は上がる……」
「いつの間にそんな事調べたんですか?」
「勇者クンが昨日寝ている間にだよ。別に身体を調べていただけじゃない」
寝ている間に重要な事もきちんと調べており、三博士は確かに天才ではあるようだ。昨日の性的な事は置いておいて、少しだけ見直す。
「で、次にやりたいのは勇者クン以外の能力の確認だ。本当は色んな装備を試したいところだが、まずは今着ている装備での基礎能力の変化を確認したい」
「みんなにも昨日僕にしたような事するつもりですか?」
「まさかー。あれは勇者用の特別対応よ」
「……戦闘能力を主に確認する……」
「というわけで、勇者クンは一旦部屋に戻って休んでいてくれたまえ」
何となく三博士の確認を見学するのも気まずく、僕は言われた通り部屋に戻る事にした。僕なりに魔力の事とか装備の事とか考えてみたいとも思っていたし。
「作った物を消しても魔力は返って来たりしないか……」
僕は部屋で以前作った自分用の装備の靴を消してみたりして、魔力が増えないか確認してみた。結果としては増えず、作った物を消す事に意味が無い事が分かった。あと、さっき作ったライトのラジオを点けてみたけど、予想通り局調整してもノイズしか聞こえてこなかった。
「まだ時間がかかりそうだし、少し休もうかな……」
僕はベッドに寝転がる。寝転がるだけのつもりだったが、いつの間にか眠ってしまった。
(あれ、また壁になってる)
僕はまた無意識のうちにどこかの部屋の壁になっていた。僕がいた部屋と違ってベッドが沢山並んだ、大部屋のようだ。と、部屋の中央に手を組んで祈りを捧げる女性の姿があった。
「大いなる女神マリナよ、どうか我々にご加護をお与え下さい……」
祈っていたのは僧侶のアリナだった。いつもの砕けた感じと異なり、祈っているアリナは清楚で綺麗な女性だった。
「戻っていたのはアリナだけか」
と、大部屋に誰かが入ってきた。騎士のファイだ。アリナはゆったりと祈りを解いて、ベッドに腰掛ける。
「わたくしの能力は魔法の能力向上が主なので、一番早く解放されたみたい」
「自分も必殺技を既に披露してたからか他の者より早く三博士から解放されたよ。しかし、こんな事をして本当にうまく行くのだろうか」
「今は勇者と三博士を信じるしかないわ。そもそも他に頼れる人もいないでしょう?」
当たり前なのだが、僕はまだそこまで信頼されていない。今まで見せた能力はこの世界の人にとっては凄いけど、それでも捕獲モンスターを余裕で倒せたわけでも無いし、ダークナイツとは互角かそれ以下でしかなかった。モンスターが大量にいる北の塔を攻略出来るとは簡単に信じられないだろう。
「北の塔もだが、自分はダークナイツをどうにかしたい。昨日は捕らえるところまで出来たのだから、あと一息で洗脳も解けた筈なのだ」
「でも、同じような手は二度と通じないと思うわよ。転移する力もまた使うかもしれないし」
「うぅ、自分にもっと力があれば。折角勇者殿に装備をいただいたのに、団長に押し負けていては元も子もない。そもそも自分が勝てさえすれば、うまく行った筈なのだ!」
悔しがるファイの横へアリナは移動する。
「ファイちゃん一人の責任では無いわ。あなたはあの日からずっと後悔してる。もう十分だと思うわ。今は勇者のおかげでみんなも力が与えられたのだし、みんなでやればいいのよ」
アリナは優しくファイの頭を撫でる。ファイも気を許すようにアリナにもたれかかった。
(最近エッチな事ばかりだったから、こういう普通に仲がいいのを見ると心が安らぐな……)
2人には悪いけど、僕はまったりとその様子を見ていた。
「いつもありがとう、アリナ。
今回リンザ様を助けられれば、自分も変われる気がするんだ。全てがいい方向に進むのではと。だから、もう少しだけ手伝って欲しい」
「親友でしょ、今更そんな事言われなくても全力で援護するわよ。
それに、わたくしも二度と失敗はしたくない。だから、出来る事はどんな事をしてでも必ず成功へ導いてみせる」
2人はしばしお互いに身体を寄せ合っていた。僕は自分にもやるべき事がまだあると思い、2人の姿を目に焼き付けつつ、自分の部屋へと戻るのだった。
「それでは作戦会議を再開しようではないか」
6人全員の身体能力の確認が終わったという事で、僕は再びミスナに呼ばれ、食堂でもある部屋に集まった。
「勇者クンの能力による装備はボクらの予想以上に素晴らしいものだった。そこで、北の塔攻略に関していくつかの案を考えたのだが……」
「ちょっと待って下さい。三博士の案を聞く前に、いくつか話しておきたい事があります」
僕は待っている間に分かった事、調べた事を説明する為に挙手する。
「おお、勇者クンから何かあるのか。ぜひ聞かせてくれ」
「はい。
まずこれは今僕がみんなに創造出来る衣装とその特性や必殺技、特殊技の一覧です。持っているガルブレの画集の範囲でしか無いですが、約50種類が使えますので、今後の参考になると思います」
僕は整理して大きな紙に表にした一覧を食堂の壁に貼り付けた。プログラマーの仕事の時に上司に分かり易く説明する為に表を使っていたのが少しだけ役に立った。
「なるほど、なるほど。うん、これは凄い重要な情報だ。勇者クンありがとう」
「それともう一つ。僕は壁になる事が出来るのですが、その際は魔力の消費が無い事を先ほど確認出来ました。そして、記憶している範囲なら壁から壁へ魔力を使わず移動も出来ます。これを使えば、複数の場所に壁を作って、戦場を移動しながら装備の変更も出来ます。
なので、僕は北の塔の攻略に敵の主力と戦う部隊と塔に潜入する部隊を分け、僕が状況を見て装備を変更するのがいいのではないかと考えました」
とりあえず三博士の案を聞く前に僕なりの攻略作戦を話してみる。敵によるかもしれないけど、これならうまく行く気がする。
「なるほど、複数の戦場で勇者様が指揮をとるのですね。それなら私達も安心して戦えるかもしれません」
「可能だとは思うけど、あんたの負担が大きいんじゃない?」
何だかんだ言ってネルルが少し心配してくれているのが嬉しい。でも、僕の負担が増える事でみんなが助かるのなら僕がもっと頑張るべきだ。
「おお、勇者クンの結論も似たものになったか。
だが、ネルルクンの言う通り、勇者クンの負担が大きい。何より敵の主力と正面から戦うには今の人数ではやはり足りないと思うのだよ。
別に敵全てと戦う必要などないのではないかな?何の為に我々がいると思っているのかね」
「敵を混乱させるのは得意なのよねー」
「……相手はモンスター。知能はそこまで高く無い……」
「ボクらが考える作戦は部隊を三つに分ける事だ。
勇者クンの案と同じく塔を攻略し姫を救出する救出部隊。
塔の前を動かないであろうドラゴンの相手をする対竜部隊。
そして、周囲のモンスターを陽動し、罠や同士討ちを狙う陽動部隊だ。
直接戦闘が出来ないボクらも三つ目の部隊として参加させてもらうよ」
確かに敵の殲滅が目的では無いし、リンザ姫を救出出来たのなら、残りの敵は生かしておいても問題は無い。それこそドラゴンだって無理に倒さなくていいのだ。
「確かにその通りですね。あとはどう部隊を分けるかが重要なんですね」
「その通りだ。そこで、先ほどの勇者クンの表と指揮を分けて取れる事が重要になる。あと、もう一つ、ボクらは勇者クンを有効活用する秘策を思い付いたのだよ」
「秘策?」
それから僕達はみんなの意見を聞きつつ、最善な作戦を検討したのだった。
「馬車があると移動が楽ですね」
作戦が決まったのが昼で、昼食を食べた後、僕達は北の塔へ向かって出発した。マルメズ砦には馬車2台とそれを引ける馬と予備の馬が2頭おり、馬の扱いが上手いネルルとファイが予備の馬に乗って先導し、残りは2台の馬車に分けて乗っている。これならリンザ姫の救出後も馬車で脱出出来るという事だ。
「魔王軍に交通網を破壊されてからは馬も馬車もかなり希少な物で、本来なら姫の許可が無ければボクらも使えない物だったんだよ」
「……救出の為の異例の対応……」
「マレちゃん、偉そうなお姫様とはウマが合わなかったのよねー」
僕が乗っている馬車には三博士が乗っていた。もう片方の馬車にナーリとレニーナとネルマとアリナの4人が乗っている。運転はミスナとナーリがやっているが、魔法で補助されているので、ほぼ先導している2頭の馬を自動で追ってくれるそうだ。
(三博士と同じ馬車なのは嫌だったんだけど、今後の話し合いや対応もしながら移動する必要があるし、しょうがない)
馬車の座席部分は6人乗りで、3人の長椅子が前後に2列あり、前方の長椅子に僕とランに抱えられたマレーヤが座っている。運転席とは窓が開けられ、そこでミスナも含めて会話していた。
「3人は仲が良いんですね。昔からの友人だったりするんですか?」
「いや、ボクらが出会ったのは魔王が現れてからだよ。それ以前は3人別々に研究とかをしてたんだ」
「基本的にみんな人付き合い嫌いだったからねー。マレちゃんは可愛いからみんなに愛されてたけど」
「……運命の出会い……」
ランが気になる言い方をする。まあ、見た感じ、息が合ってるのはそうなんだろう。
「アレサングの王都破壊と魔王軍の襲撃で世界は大混乱だった。みな藁にも縋る思いで知恵者をかき集めたわけだ」
「といっても、あの魔王軍には常識的な戦いは無意味なのよねー」
「……好戦的な人から死んでいった……」
「で、戦うのを嫌ったボクらは協力してあの場から逃げる算段をして、何とか生き延びた訳だ。生死を賭けた行動は何よりも強い絆を産んだと。
なあ、感動的な話だろう」
「感動的……なのかなあ」
こういう状態で我先に戦う人と何としても生き延びようとする人のどちらが正解かなんて分からない。皆を守る為に戦う人は立派だと思うし、恥も何も捨てて逃げる人が卑怯だとも思えないからだ。
(現実世界で争いが起きたら僕は真っ先に逃げただろうしな)
特別な力があるとはいえ、誰かを守る為に行動するようになった僕は現実世界にいた頃の僕とは変わったのかもしれない。
「勇者クン。ボクはね、人間なんて自分が出来る範囲で足掻くしかないと思うんだよ。あんな馬鹿みたいな魔王が現れたら、それに対抗出来る人を待つぐらいしか出来やしない。
まあ、勇者クンが現れてくれなければ、ボクらはいずれ滅ぼされていたってわけだ」
「マレちゃんも珍しく期待しちゃってるわけ」
「……ユウシャ、カワイイから大丈夫……」
「なんか、みんなに期待されてるんですが、本当に僕で良かったんですかね……」
自分が可愛いかは置いておいて、三博士以外にも期待されているのは分かっている。ただ、ミスナの言う、出来る範囲で足掻くしかないというのは、その通りだとしっくり来たのだった。
「北の塔の周囲の偵察終わりました。おおよそ予想通りの敵の数で、見える範囲でダークナイツや捕獲モンスターはいませんでした。ただ、塔の中までは私の精霊では確認出来ませんけれど」
ネルマが風の精霊シルフを使っての偵察結果を教えてくれる。装備で強化されたネルマは敵に気付かれない高さでのシルフでの偵察が出来るようになり、最終確認をしてきてもらっていた。
ここは北の塔から1キロほど離れた高台の上で、敵が襲ってこないギリギリの位置といえる。北の塔は後ろに草木の生えていない高い岩山があり、そちらからは敵の恰好の的になるので攻められない。北の塔の前方は平原で、視界がよく、高い塔からは周囲は丸見えである。そしてその平原には報告の通り大量のモンスターがおり、そのままでは塔に辿り着くのも困難だ。北の塔自身は高さ200メートルぐらいの塔で、入り口は正門しかなく、上階の窓から侵入しようとも飛行モンスターや他のモンスターの監視の中飛んで近付く事は不可能だろう。そして正門の前には最強の敵であるドラゴンがいるのだ。
(作戦通りうまく行けばいいな)
ここまでの移動は大きな戦闘は無く、馬車で1日と少しかけて到着していた。今は昼過ぎで、明るくて見つかりやすいが、モンスターの活発な夜よりはこちらが有利な昼に作戦決行する事になっていた。
「では、予定通り行こうではないか。
勇者クン、司令官はキミだ。ここからは勇者クンが最後の説明をしたまえ」
「分かりました。
これから作戦を実行します。予定通り部隊を三つに分け、最初に動くのはネルル、ミスナ、マレーヤ、ランの陽動部隊です。塔の周囲の敵に対して、挑発、おびき寄せ、攪乱、罠への誘導をお願いします。
塔の周囲の敵が減りましたら、残り2つの部隊は塔への直線上の敵を排除しつつ塔へ突撃します。
2部隊目である対竜部隊はナーリ、ネルマ、アリナの3人で、倒す事が目的ではなく、リンザ姫救出までの間ドラゴンとその他の敵の足止めが目的です。勿論ドラゴンが倒せるなら、倒して下さい。
最後の部隊が少数精鋭で北の塔へ突入する救出部隊です。僕を含め、レニーナ、ファイの3名でなるべく戦いを避けつつ迅速にリンザ姫の囚われている場所を見つけ、救出するのが目的です。ただし、捕獲モンスターやダークナイツ、またはそれと同等の強さの敵がいる事も考えられますので、室内での最大火力が出せるレニーナとファイに僕が的確な指示を出す必要があります」
僕はみんなを見ながら頭の中に叩き込んだ作戦の内容を再度説明する。
「作戦中は魔法で連絡を取り合う必要がありますが、魔法使いである二人だけだと3部隊の連携が取れません。そこでランが作った誰でも使える魔法の通信装置を各部隊1つ配ります。陽動部隊はネルルが、対竜部隊はネルマが、救出部隊は僕が持ちます。想定外の事が起こった場合は常に情報を共有する事を心掛けて下さい。その際は、僕が壁を使って移動し、指示や装備の変更を行いますので」
「勇者様、本当に私が塔へ向かう救出部隊でいいのでしょうか?」
レニーナが何度目かになる質問をしてくる。重要な役割を自分に振られるとは思っておらず、決まってからずっと不安がっていた。
「北の塔の攻略には魔法が使える人が一人は必要で、僕が作れる装備を考えても、適切なのはレニーナだと考えて決めたので大丈夫です」
「……レニーナ、魔法の能力ワタシと同じぐらい高い……」
「ランさん……。分かりました、姫様の救出は任せて下さい」
レニーナの瞳に力が宿り、ようやく覚悟が決まったのが分かる。
「ドラゴン倒せるかなー」
「数値上は倒せる計算だね。攻撃特化したナーリクンがうまく隙を突けば倒せるとは思うよ」
「私が援護しますので、迷わず突進して下さい」
実は一番危険なのは対竜部隊の3人だ。回復役のアリナがいるので、長期戦も大丈夫な筈だけど、接近戦がナーリ一人なのでディフェンス面で少し不安は残る。
「対竜部隊は危なくなったら僕をすぐ呼んで下さい。態勢を立て直す時間稼ぎぐらいは出来るので」
「マレちゃんの薬も渡してるし、陽動部隊も機を見て戻ってくるから勇者はそんなに心配しなくて大丈夫だよー」
「ネルルがお姉ちゃんを危険な目に合わせるわけないからね」
「分かった、みんなを信じるよ」
僕も覚悟を決め、最後の準備に取り掛かる。僕は全員の装備を話し合いで決めた装備に変更した。魔力計を確認し、予定通りまだ半分は魔力が残っている事を確認する。
「可愛いは可愛いんだけど、なんでネルルの装備はどれもミニスカートでひらひらしてるの?」
「ネルルのはまだ可愛らしいですけど、私のは何か合ってない気がして恥ずかしいです」
ネルルもネルマも新学期に合わせた学生服風限定衣装で、ネルルはブレザータイプ、ネルマはセーラータイプだ。ネルマのお腹の出ているセーラー衣装は見た目年齢を考えれば確かに本人には厳しいけど、ガルブレのゲーム内ではネーラが恥ずかしがって着てるのが人気になっていた。
「お2人はまだいいでは無いですか。なぜ、自分は水着なのですか!」
「わたくしは噂に聞く東国風衣装で、締め付けはきついですが、鮮やかで気に入りました」
ファイは防御と攻撃力のバランスから夏の水着限定衣装を着て貰った。赤色のほぼビキニと剣だけの衣装で、この際恥ずかしいのは我慢してもらうしかない。アリナは新年の着物の限定衣装で、合わせて長髪も上で結ってもらっていてよく似合っていた。
「あたしはフワフワしてちょっと落ち着かないかなあー。身体が軽いのは分かるけどー」
「ナーリはまだいいです。私はまた露出度が高いですし、オレンジと黒の派手な色合いも敵に目立ちそうでどうも……」
ナーリは風属性の羽衣衣装で、ふわっとしていて見た目は可愛らしい。けど、ナーリの装備の中で一番攻撃力は高かったりする。レニーナは黒とオレンジ色のハロウィン限定衣装で、胸や股間は確かに艶やかでやや際どい。これもレニーナの装備で一番単体攻撃力が高いものだ。
「うん、これはいいものだな」
「なかなか可愛くてマレちゃんにも似合ってるわねー」
「……二人ともカワイイ……」
三博士は恒常のSSR衣装だけど、それぞれの特性が強化され、陽動にはもってこいの装備でこれを選んでいた。ミスナは動きやすそうで、罠を仕掛ける道具が各所についている作業服に近い緑色の衣装だ。マレーヤは白衣を基本として、中は可愛らしいピンクのスカートで、各所に薬剤関係の道具が付いている。マレーヤは露出度の低い紺色の魔女の衣装だが、身体の部分は肌にフィットした素材で身体の凹凸がよく分かりエッチだったりする。
「それじゃあ勇者クン、ちょっくら行って来るよ」
「はい、お願いします」
三博士が馬車に乗って事前の準備をしに出発する。この周辺にモンスターがいない事は確認済みなので、任せて大丈夫だろう。
数分後、3人の乗った馬車が帰ってきた。特に問題無さそうだ。
「勇者クン、準備はOKだ」
「じゃあ陽動部隊の皆さん、行きましょう」
「「はいっ」」
ネルルは一人で馬に乗り、僕は馬車の屋根の上に作っておいた背の高さの壁になる。ミスナが運転席に、マレーヤとランは馬車の屋根の上に登り、壁になった僕に掴まる形を取る。他の馬車と馬は森に隠していて、救出後まで使わない。
「まずはネルルの番ね」
「頑張って」
馬と馬車で塔の方へと向かうけど、ネルルは速度を上げて、単騎でモンスターがうろついている塔の前方へと近付いていく。そして、馬に乗ったネルルに気付いた敵が、警報である角笛のようなものを吹いた。周囲にバラバラにいたモンスターはネルルが近付く方向へと集結していく。ただしドラゴンやジャイアントなどの大型モンスターはまだ動かない。
「最初の1撃、派手にやるわよ。
みんなに届け、ネルルの気持ち!燃え上がれ、プロミネンスショット!!」
ネルルがゲームのセリフで必殺技を放つ。ネルルのブレザー装備は火の属性で、放った炎の矢は敵の集結したド真ん中に落下し、巨大な炎の柱を上げた。そして、周囲に燃え広がる。実はこの攻撃の攻撃力は他の必殺技に比べて劣るけど、炎の広がる範囲と持続時間からゴブリンやオークなどの大量の弱い敵にはかなりの被害を与えられるのだ。それに炎の柱は空中の敵も巻き込み、翼を焼いて多数落下させられる。また、必殺技の回復も早く、数分に1回撃てるのも今回の陽動に有効だという事で選ばれた。
「さあ、ネルルが相手よ付いてきなさい!」
ネルルが敵と接触する直前まで移動し、そこで反転する。矢や魔法を放つモンスターもいるが、それはランが事前に施した魔法のバリアで弾くか逸れていく。ネルルはあえて馬の速度を落とし、モンスターがギリギリ追い付かない位置をキープする。そして僕達の乗った馬車と合流し、馬車も反転する。
「次はマレーヤ、お願いします」
「マレちゃんって呼んでって言ってるでしょ。もう少し逸れたらやるわね。
うん、今がチャンス。
マレちゃんのお薬、とーっても効いちゃうの。そーれ、カオストリッパー!!」
必殺技のセリフを唱え、マレーヤが追ってくる敵の中心地に大量の瓶を投擲する。装備で投擲能力が上がり、薬品の瞬時調合も可能で、本来の物理的な所持量もかなり増幅されている。そして投げた薬は敵を混乱させる効果があり、興奮した敵は同士討ちを始め、そこから更なる混乱が生まれた。
馬で移動しながら、大きく塔の周りを円を描いて移動し、混乱していないモンスターもこちらに集めるよう工夫する。
「ラン、頼みます」
「……頑張る……。
見えざる魔法の糸よ、全てはワタシの思うがままに。スパイダーチャーム……」
セリフを唱え、ランが両手を天に広げる。ランの必殺技は複数個所での同時魅了効果で、ある程度思いのままに操る事が出来る。それに加え、ランの魔法での索敵能力が上がっていて、今彼女は効果的に敵の重要モンスターを操っている筈だ。そして敵を事前にこちらが仕掛けた罠へと誘導していく。
「……大丈夫、うまく行った……」
「ではミスナ、仕上げを」
「よし来た、マレちゃん、運転を変わってくれ」
マレーヤが運転席に移動し、ミスナが馬車の天井に乗る。そして、目的の場所が近付いて来た。モンスターの大群は馬車と馬に付いて来ている。
「うん、計画通りだ。
ボクの仕掛けは変幻自在。さあ、派手に行こうか!コズミックトラップ!!」
ミスナが馬車の上でセリフを言う。ゲームではシステム上罠を作るところからが必殺技なのだけど、この世界に合わせてアレンジされている。ここからはいわゆる必殺技の後半の演出で、敵の密集した場所のトラップが発動し、爆発、落とし穴、氷結、落石など、様々なトラップがそこかしこで展開された。これでモンスターを倒さずとも、多くがここら辺の位置に釘付けになった筈だ。
「じゃあ僕は戻ります。何かあれば呼んで下さい」
「大丈夫よ。ネルルは早く処理してお姉ちゃんを助けに行く予定なんだから」
「ボクらは逃げるのは得意だ。勇者クン、安心して行ってきたまえ」
僕は陽動を彼女らに任せ、残りの仲間がいる場所まで移動した。
「陽動部隊の方はうまく行った。対竜部隊と救出部隊も行こう。まずは僕が行くから」
みんなが待機している場所に人の姿で戻った僕はそう言ってから用意していた壁を見る。これが三博士が言っていた秘策だ。僕は準備していた壁になる。
「多脚移動防壁『ブレイブウォール初号機』起動!」
厨二感たっぷりのネーミングを僕は恥じずに読み上げる。ネーミング以前に見た目の方がとても変だから今更恥ずかしがることもない。
(それに一度ぐらいこういうセリフ言ってみたかったし)
僕は一体化した壁の下の脚を魔力で操り立ち上がらせる。見た目は一辺が極端に短い二等辺三角形の三角柱の下に8本の蜘蛛のような機械の脚が生えている高さ2.5メートル位の物体だ。二等辺三角形の柱部分は僕が作り、それ以外は三博士との共同製作で移動中に組み上げていた。
ブレイブウォールを造る発端は三博士とシニラというゴーレム製作者が共同で作った移動多脚魔導戦車が既にあった事が大きい。これは大量の魔王軍に対抗すべく企画設計をミスナがし、機構部分をシニラが、魔法力の燃料や武装をマレーヤが、動力炉や操縦部分をランが主体となり協力して作り上げたという。
が、移動多脚魔導戦車は脚部を狙われると結構脆くて壊れやすく、移動速度の慣性に操縦者が振り回され、攻撃する魔術師や弓兵がそもそも無防備過ぎるなど、難点が多かった。なので試作機を作って1回出撃した時点で封印されたという。
そこで今回僕の創造の力を使って難点を補う事になった。脚部はガルブレのボス敵である魔導兵器を真似、そのフレームや装甲を元の設計に合わせて作る事で強度が上がった。例え壊れても僕が随時作り直せるので途中で動けなくなる心配は無い。次に操縦者は僕なので壁になった時点で慣性による影響は無くなっている。最後に、壁部分が強固であり、それ自体が僕の武器となるのだ。
「では、行きます。みんなは僕に続いて」
「「はいっ!」」
僕が先頭に立ち、その複数の脚を使って走り出す。これでも馬並みにスピードが出て、僕は三角形の長い辺の頂点を前にして風を切って進む。
(ようやく戦闘自体に参加出来る。こんな格好だけど、重要なのは見た目じゃない)
北の塔に真正面から突っ込む僕達に敵が気付き動き始める。塔の周りにいた大半の敵が陽動部隊でいなくなってはいるけど、それでも中型のオーガや大型のジャイアントなどが残っていて、普通の部隊では突破出来ない数だ。
「さあ、かかって来い!」
僕は鋭く突き出た三角柱の頂点を集まった敵に向けて突進する。それは壊れない壁であると同時に、鋭利な刃となっていた。突進の勢いも合わさり、真正面に立った敵は縦に真っ二つに切り裂かれる。それでも勢いを止めず、オーガぐらいの大きさの敵を次々に破壊していった。
異様な壁の突進で敵は混乱し、僕の通った跡が道になり左右に分かれる。そこにレニーナとネルマが集団に対応出来る範囲魔法で攻撃し、残った敵はナーリとファイが移動の邪魔になる分だけ倒していく。モンスターの魔法や矢などの遠距離攻撃はアリナが防いでくれていた。
(ここまでは上手く行ってる。でも、ここからだ)
僕の勢いを止めようと塔を守っている大型のジャイアントが2体寄ってくる。体格差は壁になった僕の高さの2倍以上ある。脚を攻撃されれば強化したとはいえ、ただでは済まない。
「モードチェンジ!」
僕は移動を止め、変形した。まあ、変形といっても、脚部を壁の中の空洞部分に仕舞い、三角柱の壁になっただけだけど。
『ガンッ!!』
ジャイアントが全力で僕を殴った音がする。が、僕は揺るがず、倒れない。今の時点の僕はこの地面に立っている動かない壁なので、いくら攻撃しても壊れないし倒れないのだ。そして、ジャイアントはその手にダメージを食らい、痛みに叫びを上げていた。もう一体のジャイアントは僕を全力で蹴ったが、こっちも同様だ。
『ウォォォ!!』
「ナーリ、ファイ、今のうちに!」
「分かったー!」
「了解です!」
狼狽えたジャイアントの首を2人は跳躍し、1撃で斬り落とした。今の2人の装備ならそれが出来るのだ。そして残る問題は……。
(ドラゴン!)
僕は脚を再び出し、塔の正門の前で悠々と立っているドラゴンを睨む(まあ壁なんだけど)。茶色の巨大なドラゴンは翼は無く、2足の後ろ脚と尻尾で立ち、両手と長い首を使って攻撃してくるようだ。口からブレスを吐くだろうし、その鱗は見るからに堅そうではある。
「まずは僕が!」
僕は多脚で走り出し、三角柱の刃の部分をドラゴンに向けて突進する。
『ブォン!!ガッ!!!』
風を切る音が聞こえ、僕は右へと吹き飛んでいた。凄い速さでドラゴンが尾で僕を薙ぎ払ったのだ。脚を出している状態は地面に生えた壁では無いので、僕はそのまま横へ吹き飛ぶ。一旦脚を仕舞って脚部へのダメージを減らし、僕は地面に倒れた。
「勇者様!」
「大丈夫、ダメージは無い。けど、やっぱり凄いなドラゴンは……」
僕は脚部を使って立ち上がる。見た感じ一本の脚が少し壊れ始めてるけど、まだ作り直さなくて大丈夫だ。
(本当は僕がドラゴンを倒してお姫様を助けたいけど、今の僕は一人じゃない。仲間を守りつつ、協力して進まなくちゃいけないんだ)
僕はドラゴンの前に集まりつつあるみんなの方を見る。ここは計画通り行くしかない。
「ナーリ、ネルマ、アリナ、ドラゴンを頼む!」
「うん、やるよー!」
「任せて下さい」
「坊やも頑張るのよ」
ナーリがドラゴンの前に立ち、その少し後ろにネルマとアリナが付く。
「じゃあ、わたくしからね。
女神マリナよ。祝いの日に我らに大いなる祝福を与えたまえ。フェスティバルブレッシング!!」
アリナの着物衣装の必殺技で僕も含めて防御力が上がり、体力の自動回復が一定時間付与された。
「私も行きます。
優しき大地の大精霊グランドノームよ。その姿を現し、全てを包み込んで下さい。マウンテンバインド!」
ネルマのセーラー衣装の必殺技でグランドノームが召喚され、グランドノームはドラゴンの周囲の土を山のように盛り上げ、ドラゴンの足や尻尾を拘束する。ドラゴンはもがくが、すぐに移動出来そうにはない。
「仕上げはあたし!!
今日のあたしは一味違うよ。鳥のように舞い、鉢のように刺す!!ストームブレイク!!」
ナーリは羽衣衣装で拘束されたドラゴンの周りを軽やかに飛び回り、手や胴体を斬り付けつつ飛び上がる。そして最後にドラゴンの首にその斧を叩き付けた。流石に断ち切る事は出来なかったけど、首の鱗は割れ、そこから紫色の鮮血が噴き出した。
『グオォォォォ!!』
ドラゴンが怒りの咆哮を上げる。
「今がチャンスだ、行こう」
僕は拘束されたドラゴンの横をすり抜け、ファイとレニーナもそれに続く。残された3人が怒り狂ったドラゴンと戦うのが背後に見えた。
「門は私がやります。エクスプロージョン!」
レニーナが強化された爆発の呪文で北の塔の正門を壊す。近くで見る塔は巨大で、威圧感を感じる。塔の一階は広間になっていて、普段の身長より大きい壁になった僕も通れそうだ。
「僕が行くから付いて来て」
「分かりました」
「了解です!」
僕は1階の広間に侵入する。ここには罠や敵はいなそうだ。石造りの巨大な塔で中央に太い支柱のような柱があり、その他いくつか柱が立っている。そして太い柱の奥にらせん状の階段があるのが見えた。敵が待ち構えているなら階段の上だろう。
(姫がいるならすぐ逃げられる1階じゃなく上階の筈だ。レニーナに魔法で調べてもらいつつ、慎重に、かつ迅速に登っていかないと)
そして、気にするのはここだけじゃ無いと思い出し、僕は連絡を取る。
『こちら、救出部隊。塔への侵入に成功しました。他の部隊は大丈夫ですか』
魔法の連絡装置を使って他の部隊に連絡する。壁になった状態でも使えるのはどういう理屈か分からないけど、使えるのだから問題無い。
『陽動部隊よ。陽動は上手く行ってるけど、なかなか捌ききれないわ。対竜部隊の援護に行くにはまだ時間がかかるかも』
『対竜部隊です。ネルル、こちらはまだ大丈夫だから焦らないで』
陽動部隊のネルルと対竜部隊のネルマが応答し、状況を報告してくれた。
『分かりました。何か進展があれば連絡して下さい』
『『了解です』』
連絡を終わる。ひとまず塔の攻略に専念して大丈夫そうだ。
「行こう!」
僕は塔の階段を多脚を器用に使って上り始めた。流石に段差があるところで壁を使っての攻撃は出来ない。でも、盾になる事は出来る。
「タコ型のモンスターか。これは元々いたモンスター?」
階段を少し昇ったところに通路を巨体で塞ぐように赤色のタコに似た触手を生やしたモンスターが鎮座していた。倒さなけらば先に進む事は出来ないだろう。
「いえ、海に居るモンスターに似てはいますが、姿かたちが違うので、魔王軍の捕獲モンスターだと思います」
「この大きさなら自分が行きます」
「分かった、任せる」
レニーナに判定して貰い、大きさ的にファイに任せる事にする。というのも、ファイの水着衣装は火属性であり、海洋生物型モンスターに強い筈だからだ。ファイが階段と僕の隙間を抜けて前へ出た。
「私も援護します」
「覚悟!」
ファイは炎を纏った剣でオオダコに斬り付ける。迫って来たタコの触手が切れて、火が移ってタコの焼けるいい匂いが充満した。なんか縁日を思い出す。続いて僕の背後からレニーナがファイアボールを撃ち、それもオオダコの触手を何本か焼き払った。
(うまく行きそうだ。って、墨を吐く動作か!)
「ファイ、多分口から墨を吐くと思う。避けるのに専念して!」
「分かりました」
予想通りオオダコは口(本当は口じゃないらしいけど)から墨を吐いた。ファイは警戒していたのでそれを華麗に避ける。吐かれた墨の一部が僕の方へも飛んで来た。壁部分にかかったところは黒く汚れただけだけど、脚に当たったところは表面の装甲を溶かしていた。
「多分それに当たると装備が溶ける。ファイは一旦僕の後ろへ」
「では、私の出番ですね」
「うん、ファイが下がったらお願い」
僕はファイが戻ってくると一旦壁を横にしてみんなの盾になり墨と触手を防ぐ。そして、レニーナが準備出来るのを待つ。
「行きます。
今日は年に一度の祭りの日。私も派手に行っちゃいます!カーニバルバーニング!!」
レニーナがハロウィン衣装の必殺技を唱える。僕は壁を縦に戻して、レニーナの必殺技がオオダコに当たるようにする。レニーナのドクロの形をした杖から魔法がオオダコへ飛んで行く。オオダコの周りに花火が次々に上がり、一気に燃え上がらせた。これが現行パーティーでの魔法の最大火力になる。
「やりました、勇者様!」
「流石レニーナですな」
「急ごう!」
オオダコが消し炭になったので僕達は先を急いだ。
塔は予想通り強敵は多かったけど、ファイの攻撃力とレニーナの火力、そして壁としての僕がそれなりに役に立った。レニーナの魔法で塔の途中にある部屋に人影が無いことが分かり、結局リンザ姫がいるのが最上階だと分かった。
「勇者様、上に見えるあの部屋に2人の人間の反応があります。恐らく囚われたリンザ姫でしょう」
「ですが、前に居るのは強敵に思えますな」
「一旦僕が相手になる」
最上階の扉の前に居るのは腕が6本ある禍々しい鎧の騎士のような3メートルぐらいのモンスターだった。勿論この世界のモンスターでは無く、現実の有名RPGのモンスターに似ていた。腕には全て剣が握られ、見るからに隙が無さそうだ。
「これでどうだ!」
僕は最上階まで駆け上がり、脚を仕舞って壁になった。6本腕のモンスターは侵入者に対して斬りかかる。が、壁にはダメージを負わせられないと判断したのか、すぐに攻撃を止めた。攻撃で剣が壊れてくれればと思ったけど、そうはいかないようだ。僕にきちんと判断出来るかは分からないけど、剣の速度、威力共にファイとも大差ない気がする。
6本腕のモンスターは剣以外の攻撃手段は無いようで、扉の前に立ち、壁になった僕を睨み続ける。
(姫を人質に取るような知能が無くて助かった。けど、倒す方法を考えないと)
装備で防御力は上がってるとはいえ、今のファイの水着装備は盾が無いのであの攻撃を食らい続ければただでは済まない。レニーナは必殺技を再び使うのには時間が必要で、魔力も結構減ってるので、遠距離から削るのも難しそうだ。
(でも、ここには僕もいる。3人の力を合わせれば)
僕は戦国時代が舞台の漫画で農民達が知恵で凄腕の武士を追い払ったエピソードを思い出す。どんな卑怯な手でも勝てばいいのだ。
「レニーナ、僕が合図したら敵の頭上から例の特殊技を出して。ファイは僕が合図したら必殺技を」
「分かりました」
「了解です、勇者殿!」
僕は脚を出し、準備する。
「レニーナ!」
「はい、行きます、パンプキンパレード!!」
レニーナが魔法を唱えると6本腕の頭上から大量の顔の形がくり抜かれた燃えたカボチャが落ちてくる。この世界にハロウィンは無いし、カボチャのオバケもいないけど、ハロウィン装備の特殊魔法は使う事が出来た。ダメージとしての威力は微妙なので使いどころが無いと思ったけど、6本腕は必死に降って来るカボチャを斬り隙が出来た。
「いっけー!」
僕は壁を横にしつつ6本腕に体当たりする。ダメージは大して与えられないけど、これで相手の視界を壁で完全に塞げる。暴れる腕の剣で脚にダメージが来るけど、これは諦めるしかない。
「ファイ、今だ!」
「了解です。
真夏の太陽よ私に力を!悩殺ボディで砕け散れ!フレイムクラッシュ!!」
タイミングを合わせて僕は壁を横に倒す。そして開けた空間には既に跳躍するファイがいた。6本腕が反応する前にファイの炎の剣が八つ裂きに切り裂き、6本腕は砕け散った。
「やりました!」
「さあ、姫様を助けに行きましょう」
レニーナも最上階まで上がり、魔法で扉の鍵を開けてくれた。流石に壁のままでは扉はくぐれず、僕は人間の姿に戻り、先頭で部屋に入る。
「……どなたですか?」
部屋の中から可愛らしい声がする。僕は一呼吸おいて、喋り出した。
「僕は異世界から転生して来た勇者のリュートと申します。リンザ姫様を助けに参りました」
「そなたが、勇者か」
姿を現したのは水色を基調とした美しいドレスに身を包んだ、長い銀髪のとても小さなお姫様だった。やや釣り目の水色の大きな瞳が美しく、顔立ちはとても可愛らしい。ガルブレのリーズ姫に似ているが、それよりずっと可愛いと思った。リンザ姫の横には同じく小柄でメイド服に身を包み、薄紫の前髪で目が隠れている少女が控えていた。お付きのメイドだろう。
「リンザ様、ご無沙汰しております。救出が遅くなり申し訳ございませんでした」
「その声は、ファイか。そなたも来てくれたか」
「お久しぶりです、姫様。私や他の皆も姫の救出に助力させて頂きました」
「そなたはレニーナか。しかし、2人のその珍妙な服装はなんなのだ?」
毎度のことながら、やっぱり服装には疑問を持たれる。まあレニーナとファイは今いるパーティーの装備の中でも特に露出度が高いものではあるけど。
「すみません、色々説明したいのですが、今は外で戦っているみんなも待っていますので、急いで脱出しましょう」
「リュートと申したな、近くに寄ってその顔を見せてくれ」
「分かりました」
僕は褒められたり、もしかしたら惚れられたりするのかもとドキドキしながら近付く。こんな事ならもう少しイケメンな顔に転生しておけばよかった。僕は姫の前まで移動し、ファイを見習って片膝を付く形で跪く。
「ふむ、思ったよりだらしない顔だな。
転生して何日になる?」
「えーと、今日で7日目になります」
「一週間だと?今まで何をしておった。貴様、それでも勇者か、情けない!!」
何を思ったか、リンザ姫は跪く僕の顔や足を殴る、蹴るし始めた。魔法の鎧を着ているのでダメージは少ないけど、姫の力はそれなりに強いのか、素肌を晒している顔は結構痛い。
「え、何をするんですか」
「口答えするでない!」
「姫様、お止め下さい」
横に控えていたメイドが背後からリンザ姫を引っ張り、何とか暴力は止まった。ガルブレのリーズ姫が無口でクールなタイプだったのでその違いに僕は驚きを隠せない。
(一時期暴力系ヒロインが流行った事もあるけど、すぐに手を出すとバカっぽいからか消えていったんだよなあ。廃れた理由を何となく理解したよ)
「ごめんなさい、リンザ様はずっと閉じ込められ、何も出来ない自分を責めておられたのです。リュート様が救出に来て頂いた事には本当は感謝しておられるのです」
メイドの子がフォローしてくれたけど、不機嫌に椅子に戻ってふんぞり返っている姿からはそんな感情は読み取れなかった。僕は期待してきた分、感情がかなり乱されていた。
(そういえばリンザ姫に対して色々怪しい評判も聞いてたけど、みんなはこれを知っていたって事かあ)
振り返るとファイは申し訳なさそうな顔をしていて、レニーナも僕を見て軽く頭を下げた。アリバが姫の救出を止めた理由も今更分かった気がする。
(でも、これは僕が決めた事だ。それにリンザ姫だって本当は悪い人じゃないかもしれない。ファイだって優しい人だって言ってたし)
そんな事を思っていると魔法の連絡が僕に届く。
『勇者さん、ごめんなさい、アリナさんが。急いで来て下さい!!』
『分かった、すぐに行く!』
「リンザ姫、すみません、仲間を助けに行きます。
ファイ、後の事はお願い」
僕はそう言って返事を聞かずに、ドラゴンと戦うネルマ達の元へと向かうのだった。
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