SKM ~そんな求婚お断りっ! 魔王にされた少女

モノリノヒト

文字の大きさ
45 / 56
第4章 後来編

そんな45話 「未来を視る者」

しおりを挟む
 大都市ハンナベルの街はずれ。
 道そのものは整っているものの、それを使う人々によるものか、ごみが散乱しており決して綺麗な道ではない。

 そんなストリートを中心に置く、半ば貧民街のような閑散とした街並みは、積極的に働こうという者自体が少ない。

 だが、どんな場所でも商売というものは出来るようで、ストリートのあちこちに、まばらに露店が点在する。

 露店はどれも近づきたいとは思えない様相を示し、店主達も決して人を呼び込もうとはしない。

 そんな店主達が恨めしそうに見つめているのは、ストリートを歩く活気に溢れた人達。
 自分達の店には決して近寄らないくせに、目的の場所を探しさまよい歩く人達。

 特に女性が多かった。

 数人で固まって行動する集団。
 カップルのように見える二人組。
 どこかの貴族の令嬢と用心棒など。

 閑散としていたはずの街はずれは、ここ最近、妙に人が増えていた。
 それはなぜか。

 彼女達の目的が、噂になっている占い師にあるからだ。
 ふらりと現れ突然人気を得た、当たると評判の占い師。

 いつも店を構えているわけではない。
 かの占い師を必ず必要としている者の前に、ふらりと現れ助言をしていく。

 あまりの的中率に礼として金品を渡そうとする者も多いが。
 曰く、修行中なのでお金はいらない、との事。

 そんな冗談みたいな存在が、このハンナベルの街はずれに存在しているのだ。

 * * *

「お嬢さん…。そこのお嬢さん…」

 通りを歩いていると、突然話しかけられ驚く。
 こんな通りで突然声をかけられたのも驚きだが、何より"お嬢さん"と呼ばれた。
 久しぶりとはいえ、男装しているというのに。
 着こなしにミスがあっただろうか。

「何か?」
「探し人、ですか」
「えっ」

 いきなり目的を当てられた。
 バートフを探す、占い師を探す、どちらも探し人で間違いない。

 占い師かしら…。

 一瞬そう思いそうになるも、思いとどまる。
 私もきょろきょろと周りを見回していたかもしれない。
 何かを探している風に見えたなら、私だってきっと「何を探してるの」と尋ねるはずだ。

「1時間後、ここで仮面舞踏会が開かれるヴィジョンがえます。
 あなたの探し人はここに現れる」
「あ、あのっ」

 それだけを言うと、占い師のような人物はふらりと路地裏に消えてしまった。
 
 こ、この人だわ…。
 噂の占い師はこの人物に違いない。

 占いを必要とする者の前にふらりと現れ、的確に助言していくという。
 こんな路地で仮面舞踏会が開かれるとは思えないけど、それに近い何かが起きるという事。

 …1時間後ね。

 * * *

 一人で行くと言った時は、かなり反発された。
 王命を受けている人物がクライヴだけとは限らないから。

 それはわかる。

 でも無事に済むという予感めいた確信があった。
 エグザスに言わせれば「根拠がない」と一蹴されるだろうけど。

 これが運命に左右されている、という状態なら、ぞっとしない。

 あの占い師っぽい人物の言う通り、1時間後にまた路地へと戻ってきた私は、身なりの悪い男達に囲まれていた。
 人数は6。男達は覆面ふくめんで顔をおおい、大きな袋を持っている。

 その袋には何も入っていない。
 だがこの大きさなら、人一人ぐらいはなんなく入るだろう。
 要するに…。

「ひとさらい…!」

 私が憎々し気につぶやくと、男達は一度に襲い掛かってきた。

 普通、6人同時に来る!?

 魔力弾を放ち迎え撃つが、同時に相手取れるのは3人が限界だった。
 バックステップで距離を取ろうとするが、かかとが地面をつかめず、仰向けにのけぞってしまう。

 その瞬間、私がいた場所を通り抜ける巨大な物体。

 ───石斧!?

 あんなもので殴られたら、確実に背骨が砕けてしまう。
 当たりどころが悪ければ、命すら危うい。

 後先考えない行動に言い知れぬ恐怖を覚えた。
 
(この人たち、ただの人さらいじゃない…!)

 確実に私を狙った敵だわ。
 王命を受けているの? こんなガラの悪そうな連中なのに?
 だとすればリングリンランド王家は、もうダメなのかもしれない。

 という事は、あの占い師風の人物も敵…。

「きゃっ!」

 突然、片足を掴まれ引きずられる。
 そのまま遠心力を利用して回されてしまう。

 あ、頭が。
 頭に血がのぼる…。

 高速回転する世界に、段々と視界がぼやけていく。
 いつまで続くのかと思い始めていた頃、掴まれていた足が急に軽くなった。

 投げられた。

 そう気付いた頃には、もう魔法の詠唱が間に合う距離ではなかった。
 このままでは壁に叩きつけられる。
 こうなったら魔力弾で…。

「うぶっ!」

 思ったよりも早く到着した衝撃にうめく。
 軽い痛みが引いた後、何かふんわりとしたものに包まれていると感じた時、足が地面に着いた。

「守るべき立場にある男が、このような路地で一人の女性を襲うとは…。許せん!」

 仮面舞踏会の帰りなのか、うさんくさい仮面をつけた男が立っている。
 壁に激突すると思われた私の身体は、彼にしっかりと抱き留められ、最低限の衝撃で済んでいた。

「………」

 仮面の紳士に反応する事なく、彼らはこちらににじり寄ってくる。
 機会が整えば、すぐにでも攻め込んでくるだろう。

 だが。

 機先を制したのは仮面の紳士。
 一瞬で私の後ろから、人さらいの背後に回り込んだ。

「!」

 一人の手首を極め、行動不能にする。
 その姿を見ても5人の動きが止まる事はない。
 このままでは仮面の紳士も…。
 それなら!

「──闇帳魔法ダークネスカーテン!」

 男達だけの周囲に暗幕を張る魔法。
 常々、何に使うのかわからない魔法だったが、こんなところで役に立つとは。

「逃げましょう!」

 仮面の紳士の手を引いてその場を離れようとする。
 だが、彼は動かない。

「あなただけ逃げてください。
 後始末はわたくしが行います」

 彼はひとり残り、私の安全を確保しようというのか。
 バートフ、あなたはやっぱり、バートフだわ…。

「バートフ、一緒に逃げるのよ」

「またその名…。
 あなたは…あの時の、女性?
 なぜそんな格好を…」

 仮面の紳士は疑問を口にしながらも、私の手を優しく振りほどき、逃げろと誘導する。
 背中を押され、数歩だけ前に出てしまう。

「…またお会いできて嬉しく思います。
 さあ、ここはわたくしに任せて、逃げてください」
「でも…」
「早く!」

 バートフが言った事のない強い語気。
 初めての経験に、身が縮こまる。

 バートフ、せっかく会えたのに…!

 * * *

 その日、どうやって帰宅したのかは覚えていない。
 いつの間にか眠りについていたが、夜半の肌寒さでふと目覚める。

 最近、変だ。
 ぼーっとしているのか、日中の記憶が薄い。

 バートフに会えると、とても嬉しいのに、彼は私の事を知らない振りをする。
 その素振りを見せられると、心臓をナイフで刺されたような痛みが走るのだ。

(どなたと勘違いされているか存じませんが…)

 ……。

(早く!)

 ………。

 彼の声ははっきりと耳に残っている。
 嬉しい、怖い、悲しい、寂しい…。
 色々な想いが混じり、じわりと目がうるおってしまう。

(か弱き女性一人に対し、何たる暴虐)

 ……。

(守るべき立場にある男が、このような路地で一人の女性を襲うとは…。許せん!)

 思い出すと顔が熱くなる。

 だが。

 彼はバートフだ。
 完全にバートフだ。

 でも、彼はバートフではないと言う。
 バートフではないのなら、従者という身分の差もないという事。

 それなら、私はこの気持ちを認めてもいいのではないか。

(仮面をつけた紳士に救われます。お母様は次第に彼を好きになっていきます)

 運命。
 その通りになってしまうのが未来なら、ウスシィのしている事に意味はあるのだろうか。

(仮面の紳士はバートフでした。彼は……、影でお母様を何度となく助けてくれるのです)

 影で…というには、直接的に助けられている気がする。
 言い方の差なのか、それともわずかながら未来が変わっているという事なのか…。

(私の父はバートフではないです)

 そっか…。

 未来の通りなら、この気持ちは、この想いの行きつく先は…。

 …決まっているのね。

 諦めよう。
 せっかく得た想いではあるが、彼がバートフなら、私は諦めるしかない。

 両親という身分差を超えた例があるものの、私は両親とは違う。
 もう夢だけを見る子供じゃない。
 私は、魔王なのだから。

 だから…頑張る。
 頑張るね、バートフ…。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

処理中です...