18 / 43
13.一日目・夜 晩御飯(2)
しおりを挟む
「やぁやぁ、お三方、お揃いで。楽しそうだなぁ、僕も仲間に入れてくれないかな?」
首を向けると、こちらの顔の真横で笑っているのは、ヒカルだ。
ヒカルは我々の返事も待たずに、空席となっていたあーちゃんの隣に図々しく腰を下ろした。
宇佐美が明らかに不快そうに、眉をしかめる。
ロケットスタートの勢いさながらに、あーちゃんが大ボリュームで噛みついた。
「ちょっとぉ! あんた、このアタマ金ぴかヘルメット! どのツラ下げて馴れ馴れしくしてんのよ。まずは、うさみんに言うことがあるでしょうが!」
「わかってます、わかってます。宇佐美さん、あのときはすみませんでした。でもほら、推理はしないと。そういうゲームだから。ね? 僕ね、あれから冷静になって、反省したんです。女性を疑って申し訳なかったなと」
……あっさり謝ってきたな。
そのまま動向を見守っていると、
「今はもう疑っていないと?」
静かに、宇佐美が問い返した。
ヒカルは肩を竦めて、言った。
「あなたが犯人ではないと言い切ることはできません。だけど僕の推理は、そちらの彼にほとんど覆されてしまいましたからね。正直、白紙ですよ。完敗です」
思ったより素直な態度に、女性陣ふたりは、ヒカルの無礼を許すべきかどうか迷っているようだ。
たしかに「そういうゲームだから」と言われてしまうと、そのとおりだしな……。
そうこうしているうちに、存在感のあるNPCがキッチンから顔を出し、料理を運んできたため、会話はいったん中断した。
「は~い、お待たせ。お嬢さんたちが頼んだお品、お先にお持ちしたわよ」
マーリンさんが葉っぱの手を器用に伸ばし、テーブルにお皿をふたつ、配膳する。
あーちゃんが「ギャラクシアン・スターダストパフェ」。
宇佐美は「幾星霜ホットケーキ・マーキュリーソルトソースがけ」を頼んだらしい。
(こ、これが晩御飯なのか……?)
あっけに取られて眺めていると、
「あら、お兄さんたちふたり、ご注文はまだよね?」
何にする? と、マーリンさんが聞いてきたので、テーブル脇に立ててあるメニューを手に取った。
自分は無難な定食メニューから「宇宙カレーライス」を。
ヒカルは「じゃあ……」と悩んで「ブラックホールナポリタン」を注文する。
その流れで、結局ヒカルも同じテーブルで食事をすることに落ち着いてしまった。
「あっ、このパフェ美味しいわ。うさみん、一口食べる?」
「ホットケーキもなかなかよ。交換しましょうか」
スイーツがお気に召したようで、女性陣の機嫌も持ちなおしている。
なんだかんだでヒカルも会話に混ざり、ぎくしゃくした合コンのような雰囲気が漂っている……。
「自分は推理ゲームも好きだし、SNSも活用しています。フォロワーも多いですよ。せっかくのご縁だ。ゲームが終わっても、仲良くしましょうよ」
「えー……どうしよっかなぁ……フォロワーの数にもよるけど……」
「高尚な頭脳ゲームを出会いの場みたいにされると迷惑だわ」
「そう言わないでくださいよ。宇佐美さんだって、一人用の推理ゲームじゃつまらなくなって、対人要素があるMMVRを面白そうだと思ったんでしょう?」
「まぁ、それはそうだけど……」
しばらくして、マーリンさんが男性陣の食事を運んできて、会話が再び途切れる。
「ヘイお待ち! こちら宇宙カレー、そちらさんがナポリタンね!」
白いお皿の上に、ほかほかと湯気をたてるライス、とろりとしたブラウンのルー。そして食欲をそそる香辛料の香り。
ヒカルのナポリタンもイカ墨を使ったらしい本格派。鉄板プレート乗せに目玉焼きまでついて、ポイントが高い。
やっぱり定番メニューはちゃんと美味しそうだ。腕は悪くないんだ。ただ独創性を爆発させるときがあるだけで……。
マーリンさんの葉っぱが、ふいっと動いて、ヒカルの前にコトリとグラスが出された。
「そちらのお兄さん、当店のご利用は初めてよね? これサービスドリンクなの。どうぞ」
――うっ!? あの薄いピンクの濁った液体は……。
例の殺人サービスドリンクだ。
宇佐美とあーちゃんも、さっと蒼白になり、黙りこんだ。彼女たちもどうやらすでに洗礼済みのようだ。
首を向けると、こちらの顔の真横で笑っているのは、ヒカルだ。
ヒカルは我々の返事も待たずに、空席となっていたあーちゃんの隣に図々しく腰を下ろした。
宇佐美が明らかに不快そうに、眉をしかめる。
ロケットスタートの勢いさながらに、あーちゃんが大ボリュームで噛みついた。
「ちょっとぉ! あんた、このアタマ金ぴかヘルメット! どのツラ下げて馴れ馴れしくしてんのよ。まずは、うさみんに言うことがあるでしょうが!」
「わかってます、わかってます。宇佐美さん、あのときはすみませんでした。でもほら、推理はしないと。そういうゲームだから。ね? 僕ね、あれから冷静になって、反省したんです。女性を疑って申し訳なかったなと」
……あっさり謝ってきたな。
そのまま動向を見守っていると、
「今はもう疑っていないと?」
静かに、宇佐美が問い返した。
ヒカルは肩を竦めて、言った。
「あなたが犯人ではないと言い切ることはできません。だけど僕の推理は、そちらの彼にほとんど覆されてしまいましたからね。正直、白紙ですよ。完敗です」
思ったより素直な態度に、女性陣ふたりは、ヒカルの無礼を許すべきかどうか迷っているようだ。
たしかに「そういうゲームだから」と言われてしまうと、そのとおりだしな……。
そうこうしているうちに、存在感のあるNPCがキッチンから顔を出し、料理を運んできたため、会話はいったん中断した。
「は~い、お待たせ。お嬢さんたちが頼んだお品、お先にお持ちしたわよ」
マーリンさんが葉っぱの手を器用に伸ばし、テーブルにお皿をふたつ、配膳する。
あーちゃんが「ギャラクシアン・スターダストパフェ」。
宇佐美は「幾星霜ホットケーキ・マーキュリーソルトソースがけ」を頼んだらしい。
(こ、これが晩御飯なのか……?)
あっけに取られて眺めていると、
「あら、お兄さんたちふたり、ご注文はまだよね?」
何にする? と、マーリンさんが聞いてきたので、テーブル脇に立ててあるメニューを手に取った。
自分は無難な定食メニューから「宇宙カレーライス」を。
ヒカルは「じゃあ……」と悩んで「ブラックホールナポリタン」を注文する。
その流れで、結局ヒカルも同じテーブルで食事をすることに落ち着いてしまった。
「あっ、このパフェ美味しいわ。うさみん、一口食べる?」
「ホットケーキもなかなかよ。交換しましょうか」
スイーツがお気に召したようで、女性陣の機嫌も持ちなおしている。
なんだかんだでヒカルも会話に混ざり、ぎくしゃくした合コンのような雰囲気が漂っている……。
「自分は推理ゲームも好きだし、SNSも活用しています。フォロワーも多いですよ。せっかくのご縁だ。ゲームが終わっても、仲良くしましょうよ」
「えー……どうしよっかなぁ……フォロワーの数にもよるけど……」
「高尚な頭脳ゲームを出会いの場みたいにされると迷惑だわ」
「そう言わないでくださいよ。宇佐美さんだって、一人用の推理ゲームじゃつまらなくなって、対人要素があるMMVRを面白そうだと思ったんでしょう?」
「まぁ、それはそうだけど……」
しばらくして、マーリンさんが男性陣の食事を運んできて、会話が再び途切れる。
「ヘイお待ち! こちら宇宙カレー、そちらさんがナポリタンね!」
白いお皿の上に、ほかほかと湯気をたてるライス、とろりとしたブラウンのルー。そして食欲をそそる香辛料の香り。
ヒカルのナポリタンもイカ墨を使ったらしい本格派。鉄板プレート乗せに目玉焼きまでついて、ポイントが高い。
やっぱり定番メニューはちゃんと美味しそうだ。腕は悪くないんだ。ただ独創性を爆発させるときがあるだけで……。
マーリンさんの葉っぱが、ふいっと動いて、ヒカルの前にコトリとグラスが出された。
「そちらのお兄さん、当店のご利用は初めてよね? これサービスドリンクなの。どうぞ」
――うっ!? あの薄いピンクの濁った液体は……。
例の殺人サービスドリンクだ。
宇佐美とあーちゃんも、さっと蒼白になり、黙りこんだ。彼女たちもどうやらすでに洗礼済みのようだ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる