再び君に出会うために 番外編

naomikoryo

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美綿(ミワ)と紗王(サオ)の冒険②

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影の使いを退けた美綿と佐王が足を踏み入れた道は、先ほどまでの荒れ果てた森とは異なり、不思議な美しさを湛えていました。
木々は青白い光を放ち、小鳥たちが希望を歌うようにさえずっています。
風には心地よい香りが漂い、草木が二人の足元を優しく撫でるように揺れています。

「こんなに綺麗な場所がまだ残ってるんだ…」
美綿は息を呑むように呟きました。
「でも、安心するのはまだ早いよね。
灯、この道は本当に安全なの?」
佐王は周囲を警戒しながら問いかけます。

灯はくるりと振り返り、
「安全とは言えません。
この道の先には、命の木を守る最後の守護者がいます。
その試練を乗り越えなくてはならないでしょう。」
と答えました。

進むにつれ、道は徐々に険しくなっていきました。
滑りやすい石が散らばる細い坂道や、巨大な根が張り巡らされたトンネルのような場所が続きます。
二人はお互いに手を取り合いながら、一歩一歩慎重に進みました。

「これって、普通の人間じゃ絶対たどり着けないよね…」
美綿は苦笑しながら言いました。
「そりゃそうだろ。
俺たちだって灯がいなかったら迷ってたかも。」
佐王も肩をすくめます。

しかし、灯は振り返らず、淡々と道を進みながら言いました。
「道中で見た景色や感じたこと、それ自体が試練の一部なのです。
命の木は、本当に必要な者にしか力を与えません。」

日が沈み、森に夜の帳が降りると、二人はふと足を止めました。
暗闇の中、命の木へと続く道を見失ってしまったのです。
辺りは深い静寂に包まれ、ただ月明かりが木々の間から差し込むばかりでした。

「どうするの?灯も黙っちゃってるし…」
美綿が不安そうに佐王に問いかけました。
「うーん、どっちに進めばいいか…」
佐王も言葉に詰まります。

そのとき、二人の胸の中にある温かい光が微かに輝き始めました。
光は二人の体を包み込むように広がり、周囲の景色を照らします。
その光に導かれるように、再び道が現れました。

「私たちの力が道しるべになるんだ!」
美綿が気づき、二人は手を取り合って進むことを決意しました。

やがて、二人は大きな広場にたどり着きました。
そこには、巨大な木の根が絡み合い、命の木を取り囲むようにそびえ立っています。
その中心に立ちはだかるのは、人間のような姿をした透明な存在――命の木の守護者でした。

「ここを通るには、試練を乗り越えなくてはなりません。」
守護者が静かな声で告げます。

「試練って何?戦うの?」
佐王が身構えますが、守護者は首を横に振りました。
「戦いではありません。
二人の絆と信念が試される場です。」

守護者が手を掲げると、二人の前にそれぞれ別の道が現れました。

「この道を選ぶのは、あなたたち自身の意志です。
一人ひとりが進む道を選び、互いを信じてたどり着きなさい。」

美綿と佐王は、それぞれの道に足を踏み入れました。
美綿の道には、暗闇が広がり、足元が見えないほどの闇に包まれています。
一方、佐王の道には、眩しい光が降り注ぎ、進むたびに視界を奪われるような錯覚に陥ります。

「これ、なんでこんなに辛いんだろう…」
美綿は不安に押しつぶされそうになりながらも、佐王の存在を思い浮かべて前に進みました。
「俺が足を止めたら、美綿が困るんだろうな…」
佐王も必死に目を凝らしながら進みます。

途中、二人はそれぞれの道の途中に立ちはだかる壁や罠に直面しました。
しかし、お互いの名前を呼び、声を掛け合うことで乗り越えていきます。

「佐王、大丈夫?」
「美綿、頑張れ!」

それぞれの道を進んだ先には、一つの光がありました。その光に向かって手を伸ばした瞬間、二人の体がふわりと宙に浮かび、同じ場所で再会します。

「佐王!」
「美綿!」

二人は手を取り合い、守護者の前に立ちました。
守護者は優しい微笑みを浮かべ、
「二人の絆と信念が試練を乗り越えた。
命の木はあなたたちを祝福するでしょう。」
と告げました。

守護者が姿を消すと、二人の前に現れたのは、黄金色に輝く命の木でした。
その光は森全体を包み込み、すべてを癒していきます。
美綿と佐王の胸にも温かい光が宿り、森の声が心の中に響きました。

「ありがとう。
あなたたちのおかげで、森は再び命を取り戻すことができました。」

命の木の祝福を受けた二人は、森の再生を目の当たりにしながら、静かに手を取り合って微笑みました。
彼らの絆は、森の力と共にこれからも輝き続けるのでした。

美綿と佐王が命の木に触れると、黄金色の光が森全体に広がり始めました。
枯れていた木々は鮮やかな緑を取り戻し、澄んだ水が再び川を流れ出しました。
遠くで鳥たちのさえずりが響き、風が柔らかく二人の頬を撫でます。

「わぁ…森が元に戻っていく!」
美綿が目を輝かせて声を上げました。
「やっぱり俺たちの力、やるじゃん。」
佐王は照れ隠しのように頭をかきながら微笑みました。

命の木の根元には、二人を包むように小さな花々が咲き始めます。
その中で、一際大きく輝く花が二人の前に現れました。

「これを持って行きなさい。」
不思議な声が二人の心に直接語りかけてきました。

「この花は森と命の象徴。
いつか困難に直面したとき、これが道を照らしてくれるでしょう。」
「ありがとう…!」
二人はその花を大切に抱えました。

命の木の再生を見届けると、灯が二人の前に現れました。
「あなたたちは本当に素晴らしい双子です。
この森も、命の木も、これからずっとあなたたちの力を感じて生き続けます。」
灯は微笑みながら言いました。

「これで終わりなの?」
美綿が寂しそうに尋ねると、灯は優しく首を振りました。
「終わりではなく、始まりです。
森は再び元気を取り戻しましたが、この力を求める者が他にも現れるかもしれません。
そのときは、あなたたちが再び立ち上がるのです。」

「俺たちにできるかな…」
佐王は少し不安げに呟きますが、灯は力強く頷きます。
「あなたたちならできます。
そして、森の力はいつでもあなたたちを守るでしょう。」

灯が光の粒となって空へ溶けていくと、二人は少しの寂しさと同時に、新たな責任感を感じていました。

森が再生したことで、動物たちが次々と帰ってきました。
鹿の親子が命の木の周りで草を食み、リスが木の実を運ぶ姿も見えます。
小鳥たちも賑やかに空を飛び回り、森はまるで祝福を受けたような活気に満ちていました。

「みんな、帰ってきたんだね。」
美綿が感動して呟きました。
「これからは俺たちが見守らないとな。」
佐王が力強く答えます。

ふと、森の入り口に目を向けると、そこで見知らぬ少女が二人を見つめていました。
薄い緑色の瞳を持つその少女は、森と同じ香りをまとっているようでした。

「あなたたちが森を救った双子?」
「えっ、あ、うん…そうだけど。」
二人が戸惑いながら答えると、少女はにっこりと笑いました。

「私はリーフ。
この森に住む精霊の一人です。
あなたたちに会えて嬉しいわ。
これからは一緒に森を守りましょう。」
「よろしくね!」
美綿と佐王も笑顔で答えました。

リーフの案内で、二人は森の奥深くにある隠された泉へと向かいました。
そこには、森の歴史や秘密が刻まれた石碑が立ち並んでいました。

「ここは森の中心地であり、これからのあなたたちの活動拠点になる場所です。」
リーフが説明します。
「活動拠点って、何をすればいいんだ?」
佐王が尋ねると、リーフは少し神妙な表情になりました。

「森が再生したことで、新たな命と可能性が生まれました。
しかし、それは外の世界にとっても大きな影響を与えることを意味します。
森の力を狙う者が現れる可能性もあります。」
「私たちがその力を守るってこと?」
美綿が真剣な表情で尋ねます。

「そう。
そして、森の力を正しく使う方法を見つけることもあなたたちの使命です。」
リーフが微笑みながら答えました。

再生した森を後にする日、二人は少しの寂しさを感じながらも、新たな決意を胸に歩き出しました。
命の木の輝きは、いつでも二人を見守っているように感じられます。

「ねぇ、美綿。」
「何?」
「これからも二人で力を合わせてやっていけるかな。」
「当たり前でしょ。私たちは双子なんだから。」

二人は手を取り合い、再び現実の世界へと戻っていきました。
けれども、その心の中には、森の祝福と新たな使命が輝き続けています。
森の力が、そして双子の絆が、これからも新しい冒険と物語を紡いでいくことでしょう。


*****
夕食の後、テーブルの片付けを手伝い終わった美綿と佐王は、今日の「不思議な森の冒険」の話を太一に話し始めました。
「ねぇ、聞いてよ、お父さん。
今日はね、森の中で命の木を助けたの!」
「そうそう、それでね、小鳥を助けたみたいに、木も光りだしてさ。」

二人が身振り手振りを交えながら熱心に話すのを、太一はニコニコと微笑みながら聞いていました。
「それは素晴らしい冒険だなぁ。
美綿も佐王も、本当に良いことをしたね。」

そう言いながら、太一は二人の頭を優しく撫でます。
美綿は少し照れくさそうに
「そうでしょ?」
と笑い、佐王は
「俺たち、やっぱりヒーローだな!」
と得意げな顔をしました。

すると、いつものように貴子が勢いよくリビングにすっ飛んできました。
「ねぇ、私だって頑張ったんだから!
今日は休んだパートの恵理さんの分までお仕事してきたのよ!」

太一にすり寄り、まるで自分の頑張りを報告せずにはいられない様子です。
「はいはい、貴子も頑張ったね。」
太一は貴子の頭を撫でながら、優しい笑顔を向けました。

「お父さん、贔屓してない?」
とふくれる美綿。
「うん、こっちは真剣に命の木を救ったんだぜ?」
と佐王も同調しますが、太一は
「家族みんなが頑張ってるのが一番なんだよ。」
と返します。

そんなやり取りに、貴子はさらに甘えるように太一に寄りかかり、
「もっと褒めて!」
と言わんばかりの表情を見せます。

美綿は佐王の方を向いて、
「また始まっちゃったわね。」
と少し呆れた様子で呟きました。
「な、なぁ、美綿。
あっちでゲームでもしようぜ?」
と佐王が誘います。
「そうね、行きましょう。」

二人はお互いに顔を見合わせて頷き、静かにリビングを抜け出していきます。
その背中を見送りながら太一は、
「ほら、貴子。
子供たちに見られてるぞ。」
と笑いました。
「いいのよ、夫婦なんだから。」
と満面の笑みで返す貴子に、太一は
「全く、君は変わらないなぁ。」
と呆れつつも、心から幸せそうな顔をしていました。

一方、二人は自分たちの部屋でゲームを始めていました。
「お父さんとお母さん、いつもあんな感じだよな。」
とコントローラーを握りながら佐王が言います。
「うん、でも仲が良いのは悪くないわよ。」
美綿がゲーム画面を見つめながら答えました。

「それにしても、今日の冒険、すごかったよな。」
「そうね。
森のみんなも喜んでくれてたし。
これからも私たちが守っていかなくちゃね。」

ゲームをしながらも、二人は自然と今日の出来事を振り返り、新たな使命を胸に刻んでいました。

その夜、家全体には、家族の温かさと絆が静かに満ちていました。
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