怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo

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06)消えた村の記録

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私が新聞社で働いていた時のことだ。田舎町の小さな新聞社で、私は地域の噂話や奇妙な出来事を取材するのが仕事だった。そんな中、私は奇妙な話を耳にした。

「〇〇村が消えた」

 消えた村——そんな馬鹿な、と思った。だが、実際にその村は地図からも、記録からも消えていた。私は興味を引かれ、真相を確かめるべくその地へ向かった。

***********************************

 村のあったとされる場所は、山奥の険しい道を進んだ先にあった。
 地元の人々は口を閉ざし、誰もその村について語ろうとしなかった。

「やめておけ、あそこは……呪われている」

 しかし、私の好奇心は抑えられなかった。車を降り、細い山道を歩き始めた。鬱蒼と茂る木々の間を縫うように進むと、次第に空気が重く感じられるようになった。

 やがて、開けた場所に出た。そこには、廃墟と化した家々が並んでいた。

「ここが、〇〇村か……」

 確かに、ここにはかつて人々が住んでいた痕跡が残っている。しかし、何かがおかしい。全ての家の窓や扉が黒く塗り潰されているのだ。

 私はカメラを手に取り、廃墟を撮影しながら中を探索した。
 家の中には家具や日用品がそのまま残されており、まるで住人たちが突然姿を消したかのようだった。

 しかし、ひとつ奇妙なことがあった。

どの家にも、鏡がすべて割られていたのだ。

 それも、単に割れたのではない。まるで何かを隠すかのように、細かく砕け散っていた。

「いったい、何があったんだ……?」

 私は不安を感じながらも、さらに奥へと進んだ。

 村の中心部に、小さな神社があった。

 鳥居は倒れかけ、参道は雑草に覆われていたが、かすかに人の気配を感じた。

 境内に足を踏み入れると、ひどい悪臭が漂ってきた。

 それは、腐敗した何かの匂いだった。

 私は手で口を覆いながら、本殿に近づいた。

 すると、扉がわずかに開いているのが見えた。

「……誰かいるのか?」

 返事はなかった。

 恐る恐る扉を押し開けると、中には無数の白骨が散らばっていた。

——村人たちの遺体だ。

 私は衝撃を受け、言葉を失った。

 その時——

カタ……カタ……

 背後で何かが動く音がした。

 振り返ると、境内にある古びた御神体が微かに揺れている。

「……?」

 誰もいないはずなのに——いや、何かがいる。

 私は後ずさりしながら、本殿を後にした。

 村を出ようとしたその時、背後から低い声が聞こえた。

「まだ、終わっていない……」

 振り返ると、そこには誰もいない。

 だが、地面には無数の足跡が続いていた。

 それは、村の外れへと向かっているようだった。

 私は躊躇したが、記者としての好奇心が勝った。

 足跡をたどって進むと、古い祠が現れた。

 その前には、何かが埋められた跡があった。

「これが原因か……?」

 私は手で土を掘り起こした。

 すると、古びた木箱が出てきた。

 蓋を開けると、中には——

無数の写真が詰まっていた。

 それは、村人たちの顔写真だった。

 しかし、全ての写真の目の部分が刃物で切り裂かれていた。

「いったい、何が……?」

 その時、背後から冷たい風が吹き抜けた。

 気がつくと、辺りはすでに暗くなっていた。

 私は急いで村を出ようとした。

 しかし、どこを歩いても同じ場所に戻ってきてしまう。

 出口が見つからない。

「まさか……ここに閉じ込められたのか?」

 不安が恐怖に変わり、私は必死に道を探した。

 その時、村の中央で焚き火が燃えているのが見えた。

 近づいてみると、そこには無数の村人たちが集まっていた。

 彼らは全員、無表情で私を見つめている。

「……誰だ、お前たちは?」

 声をかけても、何の反応もない。

 その時、村人の中から一人の老婆が進み出てきた。

「帰れぬ者よ……共に行こう」

 その言葉を聞いた瞬間、私は理解した。

 彼らはすでにこの世の者ではない——

 私は全身の力を振り絞り、村の出口を目指して走った。

 背後から無数の足音が追いかけてくる。

 必死で走り続けた先に、わずかに明るい光が見えた。

 そこが出口だと直感した私は、全力で飛び込んだ。

 気がつくと、私は村の入り口に立っていた。

 朝の光が眩しく、辺りには人の気配はなかった。

 振り返ると、そこにはあの村の跡すら存在していなかった。

まるで最初から存在しなかったかのように——

***********************************

 その後、私は再びその場所を訪れることはなかった。

 調査記録には何も残らなかったが、あの日の記憶は今でも鮮明だ。

 ただ一つ、あの時拾った木箱だけが、私の手元に残っている。

 中の写真は今でも、その目を閉ざしたままだ。

 そして時折、あの老婆の声が耳元で囁く。

「帰れぬ者よ……共に行こう」
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