怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo

文字の大きさ
12 / 147

12)消えた村の廃神社(埼玉県)

埼玉県の山奥には、地図にも載っていない神社があるという。
 それは、廃村となった集落にある神社で、今では誰も訪れる者はいない。

 だが、そこには決して行ってはいけない理由がある。

 私は、その都市伝説の真相を探るため、現地へ向かった——。

 その話を聞いたのは、古いオカルト掲示板だった。

『埼玉の某所に、消えた村がある。その村には神社があったが、ある時を境に村ごと封鎖された』

『あの神社には、"目のない神"がいる』

『夜中に参拝すると、帰ってこられない』

 最初は単なるネット上の怪談かと思った。

 しかし、興味を持った私は地元の郷土史を調べることにした。

 すると、実際に昭和の初め頃に村ごと消滅した集落があったことが分かった。

 その理由は、不明。

 村に疫病が流行ったのか、それとも別の何かがあったのか——

 ただ、ひとつだけ気になる記録があった。

『ある日を境に、村人たちは一人ずつ消えていった』

***********************************

 私は、その村の跡を訪れることにした。

 場所は埼玉県の山中にあり、県道を外れた獣道を進んだ先にあるらしい。

 地元の人に聞いても、「そんな村は知らない」と言われた。

 しかし、偶然出会った老人が、小さくこう呟いた。

「……あそこには行かんほうがいい」

 私は礼を言い、車を降りて山道を歩いた。

 そして、森の中を抜けた先——

 村の跡に着いた。

 そこには、崩れた家の基礎や、雑草に埋もれた石垣が残されていた。

 しかし、決定的におかしなことがあった。

 村の中央に、ぽつんと神社だけが残されていたのだ。

 神社の鳥居は、異様だった。

 普通、神社の鳥居には「○○神社」と名前が刻まれているものだ。

 だが、この鳥居には何も書かれていない。

 そして——

 鳥居には、無数の手形のような跡がついていた。

「……これは」

 私は写真を撮りながら、境内へ進んだ。

 神社の拝殿は、すでに朽ち果て、屋根が崩れていた。

 しかし、不自然なことがあった。

 拝殿の前に、何かが埋められた跡がある。

「……これは、封印か?」

 私は、軽く土を掘り返した。

 すると、木の箱が出てきた。

 私は慎重にそれを開けた。

 すると——

 中には、無数の"目玉のない仏像"が詰まっていた。

 私は、全身に鳥肌が立つのを感じた。

 その時——

「オマエハ、ミタナ」

 背後から、低い声がした。

 私は息を呑み、振り向いた。

 しかし、誰もいない。

 だが、異変はすぐに起きた。

 私は、拝殿の屋根を見た。

 そこに——

 目のない何かが、こちらを見下ろしていた。

 私は、逃げようとした。

 しかし、足が動かない。

 耳元で、再び声が囁く。

「目ヲ、カエシテクレ」

 私は全力で振り払い、一目散に神社を飛び出した。

 だが、森の道が分からなくなっていた。

 村を出たはずなのに、何度歩いても、同じ神社の前に戻ってくる。

「……まずい」

 私は、ふと鳥居を見上げた。

 すると——

 鳥居の上に、無数の“手”が張り付いていた。
 
 その手が、ゆっくりと私を指さした。

 そして——

「次は、お前だ」

 気がつくと、私は山道の入り口に倒れていた。

 時間を見ると、たった30分しか経っていなかった。

 だが、私は確かに“目のない何か”を見たのだ。

 あの神社は、ただの廃墟ではない。

 "何か"が封じられていた場所なのだ。

 そして、それを解いてしまったのかもしれない。

 私は帰宅後、撮影した写真を確認した。

 だが——

 神社の写真だけが、すべて真っ黒になっていた。

 それ以来、私の身には不思議なことが起こるようになった。

 夜中、目を閉じると——

 必ず、誰かが私を見ている気配がする。

 そして、ある晩。

 私は夢の中で、あの神社を見た。

 すると、鳥居の上から、無数の手が伸びてきた。

「次は、お前だ」

 目を覚ますと——

 私の枕元に、小さな仏像が置かれていた。

 その仏像には、やはり“目”がなかった。

 私は、すぐに地元の寺にその仏像を持ち込んだ。

 住職は、それを見るなり青ざめた。

 「……これをどこで?」

 私は、埼玉の山奥の神社のことを話した。

 すると、住職はこう言った。

 「そこは……“目を持たぬ神”を封じた場所だ」

 「目を持たぬ神?」

 「その神は、目を奪い、代わりに“見る者”を必要とする。封印が破れれば、新たな者が“神”になる……」

 私は、手が震えるのを抑えた。

 そして、住職は私に警告した。

 「二度と、そこへ行ってはいけない」

 私は、何も言えなかった。

 なぜなら——

 住職の背後の仏像が、私の方を見て微笑んでいるように見えたからだ。

***********************************

 今でも、あの神社は埼玉のどこかにある。

 そこを訪れた者は、帰れなくなるという。

 もしも、目のない仏像を見つけたら——

 決して、それに触れてはいけない。

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
【累計55万PV突破‼】 話題作「アンケートに答えたら、人生が終わった話」が10万PVを記録。 日常に潜む“逃げ場のない恐怖”を集めた、戦慄の短編集。 その違和感は、もう始まっている。 帰り道、誰もいないはずの部屋、何気ない会話。 どこにでもある日常が、ある瞬間、取り返しのつかない異常へと変わる。 意味が分かると凍りつく話。 理由もなく、ただ追い詰められていく話。 そして、最後の一行で現実がひっくり返る話。 1話1000〜2000文字。隙間時間で読める短編ながら、 読み終えたあと、ふとした静寂が怖くなる。 これはすべて、どこかで起きていてもおかしくない話。 ――あなたのすぐ隣でも。 洒落にならない実話風・創作ホラー。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。