怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo

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16)深夜の廃トンネル(岡山県)

岡山県には、古くから「決して行ってはいけないトンネル」の噂がある。
 そのトンネルは、地図には載っているものの、使われなくなって久しい。

 その理由は——
 そこを通った者の中には、帰ってこなかった者がいるからだ。

 私はフリーのライターとして、地方の都市伝説や心霊スポットを取材していた。

 ある日、岡山在住の知人からこんな話を聞いた。

「〇〇トンネルを知ってるか?」

 私は首を横に振った。

「それ、心霊スポット?」

 知人は渋い顔をした。

「いや……ただの心霊スポットとは違う。あそこを通ると、“消える”んだ」

「消える?」

「そう。今まで何人も行ったんだけど、なぜか数人は戻ってこなかった。警察の捜索でも、見つかっていない」

 私は興味をそそられた。

「つまり、失踪事件が起きてるってこと?」

「そう。ただ、問題は……」

 知人は一瞬、言葉を詰まらせた。

「戻ってきた人の証言が、おかしいんだよ」

「おかしい?」

「戻ってきた人たちは皆、こう言うんだ——『自分は、誰かと一緒にいた』ってな」

 私は背筋が寒くなった。

「……誰かと?」

「でも、実際にはその“誰か”は存在しないんだ」

***********************************

 私は、そのトンネルへ行くことにした。

 時刻は深夜0時。

 車を走らせ、問題の〇〇トンネルへ向かう。

 トンネルの入り口は、鬱蒼とした森に囲まれていた。

 壁にはコンクリートの亀裂が入り、黒ずんだシミが広がっている。

 私は、深く息を吸った。

「……行くしかないな」

 そして、車をゆっくりと進めた。

 トンネルに入ると、辺りは一気に暗くなった。

 ヘッドライトの光が、湿った壁を照らし出す。

 私は慎重にアクセルを踏んだ。

 しかし、トンネルの半ばを過ぎた頃——

 ふと、違和感を覚えた。

 妙に、車内が静かすぎる。

 私はルームミラーを見た。

 そして、血の気が引いた。

 後部座席に、誰かが座っていたのだ。

 それは、女だった。

 長い髪に白い服。

 彼女は、ゆっくりと顔を上げた。

「……ねぇ」

 私は、ハンドルを握る手が震えるのを感じた。

「お前、誰だ……?」

 すると、女は静かに微笑んだ。

「私を……降ろして?」

 私は、アクセルを踏み込んだ。

 トンネルの出口が見えた。

 私は必死に走り抜け、トンネルの外へ出た。

 車を急停止させ、振り返った。

 後部座席には、誰もいなかった。

 私は、大きく息を吐いた。

「……気のせいか?」

 そう思い、ルームミラーを再び覗いた。

 しかし、私はその瞬間、心臓が止まりそうになった。

 ミラーに映った自分の肩に、白い手が乗っていたのだ。

 慌てて車を降りた私は、スマホを取り出し、撮影した写真を確認した。

 しかし、そこには異常なものが映っていた。

 助手席に、誰かが座っていたのだ。

 私は震える手で、すぐに知人に連絡した。

「やっぱり……出たんだな」

 知人はため息をついた。

「それ、消さないとダメだ。早く」

「なんで?」

「消さないと、その女がまたお前の車に乗るぞ。」

 私は、すぐに写真を削除した。

***********************************

 そして、それ以来——

 私は、夜のトンネルを決して通らないようにしている。

 なぜなら、岡山のあのトンネルには——

 今も、“誰か”が待っているからだ。

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