17 / 147
17)消えた廃ホテル(広島県)
広島には、昔から語り継がれる廃ホテルがあるという。
そのホテルは、決して地図には載っていない。
しかし、確かにそこに存在し、そして——
訪れた者は、二度と戻れない。
私はフリーのライターとして、日本各地の都市伝説を取材していた。
心霊スポット、呪われた場所、廃墟——
それらは単なる噂であることがほとんどだったが、広島の廃ホテルの話だけは、妙に現実味があった。
「広島の山奥に、幽霊が出る廃ホテルがあるって聞いたことあるか?」
地元の友人が、酒を飲みながら話し始めた。
「聞いたことないな。どんな話?」
「名前も場所もはっきりしないんだけどさ、そこに行ったやつが何人も行方不明になってるらしい」
私は、興味を引かれた。
「行方不明?」
「そう。しかも奇妙なのは、行った人の仲間が“元々そんなやつはいなかった”って証言するんだ。」
私は息を呑んだ。
「つまり……行方不明になった人間の存在自体が、消える?」
「そういうことだ。だから、あのホテルの話は広島でもタブーになってる」
そんな馬鹿な話があるだろうか。
しかし、私はこの都市伝説の真相を確かめるため、その廃ホテルを探すことにした。
***********************************
その廃ホテルは、広島県の某所にあるという。
ネットの情報を頼りに、私は車を走らせた。
しかし、問題があった。
どの地図にも、そのホテルは載っていないのだ。
だが、ある古い掲示板に、こんな書き込みを見つけた。
「国道から外れた山道を進め。途中で道がなくなっても、そのまま歩け。ホテルは、お前を待っている」
私は、その言葉を信じ、山道へと進んだ。
道は次第に細くなり、やがて舗装すらされていない獣道へと変わった。
しかし、奇妙なことに気がついた。
いつの間にか、車のナビが狂っている。
「おかしいな……」
電波は途切れ、ナビはぐるぐると同じ地点を指している。
私は、車を降り、歩いて進むことにした。
そして——
突然、目の前に巨大な廃ホテルが現れた。
そのホテルは、異様な雰囲気を放っていた。
朽ちた外壁、崩れかけた看板。
しかし、驚いたのは——
玄関のガラスが割れていなかったことだ。
通常、廃墟となればガラスは割れ、荒らされるものだ。
だが、このホテルには、人の手がつけられた形跡がなかった。
まるで——
ここは、まだ“生きている”かのように。
私は、意を決して中に足を踏み入れた。
ホテルのロビーは、時間が止まったように整然としていた。
床には埃が積もっていたが、テーブルや椅子は崩れていない。
壁には、昭和時代の観光ポスターが貼られたままだった。
私は、慎重に奥へ進んだ。
その時——
カチリ
エレベーターのランプが点灯した。
「……嘘だろ?」
私は、一瞬背筋が凍りついた。
このホテルには、もう電気が通っていないはずだ。
それなのに——
エレベーターが動いている。
エレベーターの扉が開いた。
私は、思わず中を覗いた。
誰もいない。
だが、ボタンパネルを見ると——
12階が、赤く点灯していた。
私は、ありえないと思った。
なぜなら、このホテルは11階建てのはずだったからだ。
「……12階なんて、ないはずなのに」
しかし、その時。
エレベーターの奥から、誰かの気配がした。
エレベーターの奥を覗き込むと——
鏡に、誰かが映っていた。
私は、叫びそうになった。
映っていたのは、私ではない。
知らない女だった。
長い髪、黒いワンピース。
その女は、じっとこちらを見ていた。
私は、慌てて後ずさった。
その瞬間、鏡の中の女がにたりと笑った。
「ここは、あなたの部屋よ」
私は、絶叫してロビーへと駆け戻った。
私は、一目散にホテルを飛び出し、山道を駆け下りた。
そして、車に乗り込み、振り返った。
だが——
そこには、何もなかった。
ホテルは、消えていた。
私は、心臓が破裂しそうになった。
「……そんな、馬鹿な」
しかし、確かに私は、あのホテルにいた。
そして、あの女を見た。
***********************************
私は、数日後、もう一度その場所へ行った。
しかし、ホテルの跡すらなかった。
私は、地元の老人に話を聞いた。
すると、彼はこう言った。
「お前さん、あのホテルを見たのか?」
「……はい。でも、もうなくなっていました」
老人は、静かに首を振った。
「そりゃそうだ。あのホテルは、昔、12階の客室で起きた事件のあとに取り壊されたんだからな。」
私は、言葉を失った。
「12階の……?」
「おかしな話だがな、その後も何人か、"消えたはずのホテルを見た"って言う奴がいるんだ」
私は、凍りついた。
つまり——
私は、すでに存在しないはずのホテルへ足を踏み入れてしまったのか?
そして、今でも夢に見る。
あの12階の部屋の扉が、ゆっくりと開く瞬間を——。
「ここは、あなたの部屋よ」
今でも、あのホテルはどこかに存在しているのかもしれない。
だが、地図に載っていないホテルを見つけたら、決して入ってはいけない。
そのホテルは、決して地図には載っていない。
しかし、確かにそこに存在し、そして——
訪れた者は、二度と戻れない。
私はフリーのライターとして、日本各地の都市伝説を取材していた。
心霊スポット、呪われた場所、廃墟——
それらは単なる噂であることがほとんどだったが、広島の廃ホテルの話だけは、妙に現実味があった。
「広島の山奥に、幽霊が出る廃ホテルがあるって聞いたことあるか?」
地元の友人が、酒を飲みながら話し始めた。
「聞いたことないな。どんな話?」
「名前も場所もはっきりしないんだけどさ、そこに行ったやつが何人も行方不明になってるらしい」
私は、興味を引かれた。
「行方不明?」
「そう。しかも奇妙なのは、行った人の仲間が“元々そんなやつはいなかった”って証言するんだ。」
私は息を呑んだ。
「つまり……行方不明になった人間の存在自体が、消える?」
「そういうことだ。だから、あのホテルの話は広島でもタブーになってる」
そんな馬鹿な話があるだろうか。
しかし、私はこの都市伝説の真相を確かめるため、その廃ホテルを探すことにした。
***********************************
その廃ホテルは、広島県の某所にあるという。
ネットの情報を頼りに、私は車を走らせた。
しかし、問題があった。
どの地図にも、そのホテルは載っていないのだ。
だが、ある古い掲示板に、こんな書き込みを見つけた。
「国道から外れた山道を進め。途中で道がなくなっても、そのまま歩け。ホテルは、お前を待っている」
私は、その言葉を信じ、山道へと進んだ。
道は次第に細くなり、やがて舗装すらされていない獣道へと変わった。
しかし、奇妙なことに気がついた。
いつの間にか、車のナビが狂っている。
「おかしいな……」
電波は途切れ、ナビはぐるぐると同じ地点を指している。
私は、車を降り、歩いて進むことにした。
そして——
突然、目の前に巨大な廃ホテルが現れた。
そのホテルは、異様な雰囲気を放っていた。
朽ちた外壁、崩れかけた看板。
しかし、驚いたのは——
玄関のガラスが割れていなかったことだ。
通常、廃墟となればガラスは割れ、荒らされるものだ。
だが、このホテルには、人の手がつけられた形跡がなかった。
まるで——
ここは、まだ“生きている”かのように。
私は、意を決して中に足を踏み入れた。
ホテルのロビーは、時間が止まったように整然としていた。
床には埃が積もっていたが、テーブルや椅子は崩れていない。
壁には、昭和時代の観光ポスターが貼られたままだった。
私は、慎重に奥へ進んだ。
その時——
カチリ
エレベーターのランプが点灯した。
「……嘘だろ?」
私は、一瞬背筋が凍りついた。
このホテルには、もう電気が通っていないはずだ。
それなのに——
エレベーターが動いている。
エレベーターの扉が開いた。
私は、思わず中を覗いた。
誰もいない。
だが、ボタンパネルを見ると——
12階が、赤く点灯していた。
私は、ありえないと思った。
なぜなら、このホテルは11階建てのはずだったからだ。
「……12階なんて、ないはずなのに」
しかし、その時。
エレベーターの奥から、誰かの気配がした。
エレベーターの奥を覗き込むと——
鏡に、誰かが映っていた。
私は、叫びそうになった。
映っていたのは、私ではない。
知らない女だった。
長い髪、黒いワンピース。
その女は、じっとこちらを見ていた。
私は、慌てて後ずさった。
その瞬間、鏡の中の女がにたりと笑った。
「ここは、あなたの部屋よ」
私は、絶叫してロビーへと駆け戻った。
私は、一目散にホテルを飛び出し、山道を駆け下りた。
そして、車に乗り込み、振り返った。
だが——
そこには、何もなかった。
ホテルは、消えていた。
私は、心臓が破裂しそうになった。
「……そんな、馬鹿な」
しかし、確かに私は、あのホテルにいた。
そして、あの女を見た。
***********************************
私は、数日後、もう一度その場所へ行った。
しかし、ホテルの跡すらなかった。
私は、地元の老人に話を聞いた。
すると、彼はこう言った。
「お前さん、あのホテルを見たのか?」
「……はい。でも、もうなくなっていました」
老人は、静かに首を振った。
「そりゃそうだ。あのホテルは、昔、12階の客室で起きた事件のあとに取り壊されたんだからな。」
私は、言葉を失った。
「12階の……?」
「おかしな話だがな、その後も何人か、"消えたはずのホテルを見た"って言う奴がいるんだ」
私は、凍りついた。
つまり——
私は、すでに存在しないはずのホテルへ足を踏み入れてしまったのか?
そして、今でも夢に見る。
あの12階の部屋の扉が、ゆっくりと開く瞬間を——。
「ここは、あなたの部屋よ」
今でも、あのホテルはどこかに存在しているのかもしれない。
だが、地図に載っていないホテルを見つけたら、決して入ってはいけない。
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
【累計55万PV突破‼】
話題作「アンケートに答えたら、人生が終わった話」が10万PVを記録。
日常に潜む“逃げ場のない恐怖”を集めた、戦慄の短編集。
その違和感は、もう始まっている。
帰り道、誰もいないはずの部屋、何気ない会話。
どこにでもある日常が、ある瞬間、取り返しのつかない異常へと変わる。
意味が分かると凍りつく話。
理由もなく、ただ追い詰められていく話。
そして、最後の一行で現実がひっくり返る話。
1話1000〜2000文字。隙間時間で読める短編ながら、
読み終えたあと、ふとした静寂が怖くなる。
これはすべて、どこかで起きていてもおかしくない話。
――あなたのすぐ隣でも。
洒落にならない実話風・創作ホラー。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。